2018/01/22 鈴木邦男

プロレタリア文学はものすごい!

①『君たちはどう生きるか』を読んだ

『プロレタリア文学はものすごい』 『プロレタリア文学はものすごい』

正月からカゼをひいている。頭が痛い。体がだるい。

でも1月18日(木)から学校が始まる。気合いを入れて、行かなくちゃと思いました。

今年初めての「読書ゼミ」では、今、日本で一番売れてる本、話題になっている本を取り上げて、皆で読みました。

こう言えば分かりますよね。吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)です。

80年前に出た本ですが、今、復刊し爆発的に売れてます。百万部近い売れ行きです。

〈日本を代表する歴史的名著!〉
(池上彰氏絶賛〉

と本の帯には書かれています。又、マンガにもなって、同時に発売されてます。

羽賀翔一がマンガを描き、やはり、マガジンハウスから発売です。

原作の吉野の本には、池上彰が解説を書いてます。〈『君たちはどう生きるか』を読む前に、「私たちはどう生きるか」〉と題して。

池上は小学生の時にこの本に出会ってます。父親が買ってきて、「読め」と渡されたそうです。親からそう言われれば反撥するのが普通ですが、ちょっと読んだら思わず目を奪われ、夢中になって読んでしまったそうです。

著者の吉野源三郎は1899(明治32)年生まれ。1981(昭和56)年に82才で没しています。

児童文学者であると共に、編集者として手腕を発揮しました。

いったん東京帝国大学経済学部に入学しますが、哲学への思いが募(つの)り、文学部哲学科に移ります。

社会主義系の団体に出入りしていたことから、1931(昭和6)年には治安維持法違反で逮捕されます。

この経験から第二次大戦後は、いわゆる戦後民主主義の立場から反戦運動にも取り組みます。活動的な人です。

そして、岩波書店の雑誌『世界』の初代編集長を務め、岩波少年文庫の創設にも尽力しました。

この本は、そもそも、1937(昭和12)年7月に発行されました。80年前ですね。

「日本少国民文庫」全16巻シリーズの最後の刊行だったのです。(あれっ、この「全集」は読んだような気がするな。じゃ、吉野の『君たちはどう生きるか』も読んでるのかな)。

この時期は、中国大陸で盧溝橋事件が起き、日本が日中戦争の泥沼に入っていく時でした。

日本国内では、軍国主義が進み、社会主義的な思想の持ち主はもちろんのこと、リベラルな考え方の人まで弾圧された時代です。

一方、ヨーロッパでは、ドイツにヒトラーが、イタリアにムッソリーニが登場。ヨーロッパはキナ臭くなっていきます。まもなく第二次世界大戦が始まろうとしていました。

そんな時代だからこそ、偏狭な国粋主義ではなく、ヒューマニズムに根差し、自分の頭で考えられる子供に育てたい。そんな思いから、吉野は、この本に着手したのです。

戦前に発行されにもかかわらず、戦後も売れ続けます。

いや、むしろ戦後になった方が、よく売れるようになったと言っても過言ではありません。ヒューマニズムに根差した良い本は、時代を超えて人々の心をつかむのです。

…と、池上氏は紹介し、解説しています。80年前に出た本とは知らなくても、今の本として読めるでしょう。

それに、この頃は、たとえ子供向けでも、皆、真面目だし、一生懸命に書いてます。

昔読んだ『路傍の石』にしても、又、先週、紹介した『二十四の瞳』にしても、グングンと読む人の心に入ってきます。

たとえ時代はどうなろうと、「人間はこう生きるべきだ」という強いメッセージがあります。その意味で、80年前の吉野の本に今の人たちは感動するのでしょう。

今だったら、こういう本は書けません。国家や改憲運動に乗っかった本を書くでしょう。

又、アメリカと一緒になって、北朝鮮を叩くのが正義だ、といった〈空気〉の中で書かれるでしょう。でも吉野は、そんな空気や雰囲気など全く無視しています。

なんせ、捕まってもかまわない、という覚悟がありますし。

②荒俣宏の本がものすごい

壺井栄の『二十四の瞳』も、実にいい。

「左翼的だ」「プロレタリア文学じゃないか」と今だったら言われて終わりでしょう。でも、これが出た時は、そんな「空気」など吹っ飛ばすものがあったのです。

あっそうだ。荒俣宏さんが、プロレアリア文学を弁護し、評価した本を書いてたな、と思って、本棚を探したら、あった!

荒俣宏『プロレタリア文学はものすごい』(平凡社新書)という本だ。タイトルもすごいが、内容もすごい。

2000年10月18日初版だ。18年前か。

〈読んでみればこんなに楽しめる! 破天荒な時代を描破した“プロレタリア芸術”をいま新たに読みなおす驚異の文学ガイド〉

と、本の帯には書かれている。

真面目な文学評論であるようだが、違う。プロレタリア文学をからかい、面白がってるようだが、それも違う。

ただ、こんな読み方もあったのか、と我々は驚く。プロレタリア文学って、こんなにも奥深く、広いものだったのか。そんなふうに思った。

たとえば、こんな目次がある。

「第Ⅰ部 プロレタリア文学はおもしろい」では。

第1章 疲れることの怖さ―プロレタリア文学はホラー小説である
第2章 江戸川乱歩の困惑―プロレタリア文学は推理小説だった
第3章 肉体と労働―プロレタリア文学はセックス小説だった
第4章 メトロポリスの人造人間―プロレタリア文学はSFだった
第5章 忍術小説と労働文学―プロレタリア文学は立川文庫だった

第Ⅱ部は「プロレタリア文学はものすごい」で、坪内逍遥、平林たい子、葉山嘉樹のすごさを紹介し、「強いぞ、女教師!―女性たちはプロレタリア文学を変えた」に続く。このラストには壺井栄も取り上げている。

第Ⅲ部は「プロレタリア文学は奥深い」。藤村の『夜明け前』、志賀直哉の『暗夜行路』の裏事情、各派のはざまで…と続く。

時代や「空気」への抵抗、闘いだけではない。作家仲間の恋愛、嫉妬があるし、闘いもある。又、「実は、そんな内輪の争いがこの背景にあるんです」と荒俣は解説してくれる。それが実に面白い。

荒俣さんには一度会って話したことがあるが、あの時は代表作『帝都物語』の話ばかりになった。フィクションなのに、三島や森田が出てくるし、そこが面白かった。

今度会った時は、この『プロレタリア文学はものすごい』の話を聞こう。これも代表作だ。

③日本で最も読まれたプロレタリア文学は?

この本の中で、荒俣さんは書いている。

〈もしかすると、日本で最もよく読まれたプロレタリア文学は壺井栄の『二十四の瞳』かもしれない〉。

こう断言する。そうだよな、と思いましたね。

単なる先生と生徒の物語ではない。それに、大石先生の父親なんて、小学校の時に級友をそそのかして一日ストを打った人物だった。小学生にしてストライキを構えた父親はまさに「生まれながらのプロレタリア運動家」だった。

その子供の大石先生。そして時代は、戦争に近づく暗い時代だ。プロレタリア運動も全国で盛んになっている。そんな時に起こったのだ。

そんな背景があり、警察からも目をつけられている。だからといって、おとなしくはしない。この問題を教室に持ち込み、生徒に向かって挑発的な問いかけを試みる。「赤ってなんのことか知ってる人?」

誰も手をあげない。

「プロレタリアって知っている?」

これにもあげない。自分を危険視する学校、警察へ、あえて挑戦するように授業をする。大石先生はプロレタリア解放運動の初歩を子供に手ほどきしているのだ。

当然ながら教頭に叱られる。しかし大石先生は負けない。闘う。女性教師の闘いの文学なのだ。

『二十四の瞳』、そして荒俣の快著。

正月から元気を与えられた。よし、頑張ろうと思いましたね。

「古代アンデス展」を観ました。1/11(木)
「古代アンデス展」を観ました。1/11(木)
巨大なクジラが!
巨大なクジラが!
パンダ誕生を祝って
パンダ誕生を祝って
「生瀬範義展」も観た
「生瀬範義展」も観た
ゴジラも描いてます
ゴジラも描いてます
映画のポスターも
映画のポスターも
「日本沈没」も
「日本沈没」も
これもそうです
これもそうです
文庫本のカバーだけでもこんなに
文庫本のカバーだけでもこんなに
あべあゆみさんと。1/11(木)
あべあゆみさんと。1/11(木)
康芳夫さんとトーク。1/13(土)
康芳夫さんとトーク。1/13(土)
終わって、お酒を
終わって、お酒を
スタッフの人たちと
スタッフの人たちと
「三島生誕祭」で。1/14(日)
「三島生誕祭」で。1/14(日)
下田で。三島と織田さん
下田で。三島と織田さん
その織田さんが来てくれた!
その織田さんが来てくれた!
織田さんと
織田さんと
織田さん。横山さん。御手洗さんと
織田さん。横山さん。御手洗さんと
横山郁代さん
横山郁代さん
満員の会場
満員の会場

【だいありー】

一水会で講演する武貞さん
一水会で講演する武貞さん
武貞秀士さん
武貞秀士さん
小沢遼子さんと
小沢遼子さんと
懇親会で
懇親会で
三島由紀夫『芝居日記』
三島由紀夫『芝居日記』
横山郁代『三島由紀夫の来た夏』
横山郁代『三島由紀夫の来た夏』
  1. 1月15日(月)午前中、原稿。
     午後から、雑誌の対談。
  2. 1月16日(火)午前中、原稿。
     午後2時、「ザ・アール」の奥谷禮子さんと対談。「前にも対談してるんですよ」と言われた。
     20年以上も前だ。奥谷さんとは「朝生」などでご一緒した。小沢遼子さんのパーティで会ったのが初めてだと思う。
     憲法問題、それに、経営者の心構えなどについて話を聞く。
  3. 1月17日(水)午前中、原稿。
     午後2時、取材。
     6時半、一水会フォーラム。  武貞秀士さん。とてもいい話だった。北朝鮮については私も知らない話が多く、とても勉強になった。
     会場は満員。「鈴木さん、久しぶり」と後ろの人に声をかけられた。振り向くと、何と小沢遼子さんだった。「今日の先生とお知り合いですか?」と聞いたら、「全然。テレビでよく見てるし、じっくり話を聞いてみたかったので来た」と言っていた。
     「昨日、ザ・アールの奥谷さんと対談して、小沢さんの話をしてましたよ」と言いました。小沢さんが浦和市議だった頃、よくパーティを開いていて、そこで、いろんな人に知り合えた。奥谷さんともそこで会った。
  4. 1月18日(木)午前11時、サンルート。出版社の人と打ち合わせ。
    午後から学校。冬休みが終わり、今日から学校だ。
     3時、「現代文要約」。
     5時、「読書ゼミ」。今日読んだ本はこれだ。吉野源三郎『君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)。
  5. 1月19日(金)午前中、原稿。
     午後3時、学校で映画を観る。「帰って来たヒトラー」。ドイツでよくこんな映画が作れたものだ。驚いた。面白かったし、考えさせられた。
  6. 1月20日(土)午前中11時、打ち合わせ。
     午後2時、取材。
  7. 1月21日(日)朝から図書館で勉強。

【写真説明】

「古代アンデス展」を観ました。1/11(木)

①上野の国立科学博物館で「古代アンデス文明展」を観ました。当時の世界最大の文明です。マチュピチュはあるし、ナスカの地上絵もあるし、天を相手にして訴えています。すごい文明です。でも「人を殺す」ことには力を入れず、たった100人ほどのスペイン人によって、滅ぼされました。王は拉致され、殺され、住民は銃でバタバタと殺されました。大虐殺です。そして、世界最大の文明消え去ったのです。

巨大なクジラが!

②観終わって、外に出ると、名物の「巨大クジラ」がありました。

パンダ誕生を祝って

③そのあと、食堂に行ったら、パンダ誕生を祝う定食やアイスクリームがありました。

「生瀬範義展」も観た

④そのあと、上野の森美術館に行きました。「孤高のイラストレーター・生瀬範義展」を観ました。迫力がありました。圧倒されました。昔からこの人のことは知ってます。でも、名前の読み方を知りませんでした。「生瀬」と書いて、「おおらい」と読むんですね。孤高にして、世界最高のイラストレーターでしょう。本のカバーや映画のポスターも描いてます。「ゴジラ」や「日本沈没」なども。我々が目にする有名なイラストは皆、彼が描いてます。

ゴジラも描いてます

⑤ゴジラです。生瀬さんが描いたとは知りませんでした。

映画のポスターも

⑥映画のポスターも随分と描いてます。

「日本沈没」も

⑦映画「日本沈没」もそうだったんですね。迫力がありますね。

これもそうです

⑧こういうエロい絵ばかりと思ってました。

文庫本のカバーだけでもこんなに

⑨文庫本のカバーも随分と描いてます。そのカバーだけで、ピラミッドが出来てました。

あべあゆみさんと。1/11(木)

⑩そのあと、下北沢に行って、あべあゆみさんの主演する芝居を観ました。下北沢OFF・OFFシアターです。あべさんが、「あべ定」をやってました。「アベサダ・リローデッド」です。今日は、上野で、アンデス展、生瀬範義展、そして下北沢であべさんの芝居を観ました。濃い文化の日でした。勉強になりました。

康芳夫さんとトーク。1/13(土)

⑪1月13日(土)は、新宿で康芳夫さんとトークしました。初めての会場です。新宿・歌舞伎町ブックセンターで。「虚人奇談会」と銘打ってますが、本当は真剣なトークでした。康さんは三島由紀夫や森田必勝とも付き合いがあったし、『家畜人ヤプー』を出版して、三島に絶讃されてます。その頃の話を聞きました。

終わって、お酒を

⑫終わって、一杯飲みました。

スタッフの人たちと

⑬スタッフの皆さんと。中央は康芳夫さんと鈴木。右は平井有太さん。左は手塚マキさん。

「三島生誕祭」で。1/14(日)

⑭1月14日(日)は、銀座TACTで、「三島由紀夫生誕祭」に行きました。自決の前年、1969年に下田に行った時の三島の写真が写し出されてました。

下田で。三島と織田さん

⑮これも下田東急ホテルプールサイドで。右は国立劇場にいた織田(おりた)紘二さんです。三島が「椿説弓張月」をやった時に一緒に仕事をした人です。

その織田さんが来てくれた!

⑯その織田さんがこの日、来てくれました。あの写真から、48年くらいです。驚きましたし、感動しました。

織田さんと

⑰実は、1969年に私は、あの歌舞伎をリアルタイムで観たのです。すごい芝居でした。そんな話を織田さんとしました。

織田さん。横山さん。御手洗さんと

⑱織田さん。横山郁代さん。御手洗志帆さん。鈴木。

横山郁代さん

⑲横山さんは後半、三島の好きだった歌をうたってくれました。横山さんは『三島由紀夫の来た夏』(扶桑社)という本を出してます。下田でお母さんがお菓子屋をやっていて、そこに毎年、三島はマドレーヌを買いに来てました。又、三島とのハラハラする出会いについても書かれてます。〈自決前、伊豆・下田で見せていたお茶目で家族思いの素顔〉と本のカバーには書かれてます。三島の意外な顔が見て取れます。実にいい本です。歌の前に、三島の好きな写真を皆に紹介しています。

満員の会場

⑳会場は満員でした。

一水会で講演する武貞さん

㉑1月17日(水)。一水会フォーラムです。武貞秀士さん(拓大特任教授)が講演してくれました。「揺れ動く朝鮮半島情勢」について。

武貞秀士さん

㉒とてもわかりやすいし、詳しいです。

小沢遼子さんと

㉓小沢遼子さんも聞きに来たのでビックリしました。武貞さんを知ってるのかと思ったら、違いました。テレビでよく見てるし、今日は「じっくり話を聞きたいと思って来た」と言ってました。

懇親会で

㉔講演会のあとの懇親会で。中央が武貞さん。立って挨拶してるのが木村代表です。

三島由紀夫『芝居日記』

㉕これは「三島生誕祭」の時に織田さんが紹介してた本です。大型で函入りの豪華本です。1万円近い本です。普及版や文庫は出ていません。「アマゾンで1万円で買った」という人もいました。三島は芝居や歌舞伎を小さい時から観ていて、それについて詳しく書いたものです。ぜひ読んでみたいのですが、でも1万円です。

横山郁代『三島由紀夫の来た夏』

㉖三島生誕祭の主宰者・横山郁代さんの書いた本です。『三島由紀夫が来た夏』(扶桑社)。

『プロレタリア文学はものすごい』

㉗はじめの「主張」のとこで取り上げましたが、荒俣宏の『プロレタリア文学はものすごい』(平凡社新書)。

【お知らせ】

  1. 2月14日(水)午後6時半。一水会フォーラム。講師・井脇ノブ子さん(元衆議院議員)。「日中平和条約締結40年=未来遣唐使の活動から生まれたもの」。
  2. 2月17日(土)14時開演。岩井正和さん主催で、金沢市で「鈴木邦男講演会。憲法について語ろう!」が行われます。
    第1部は鈴木邦男憲法講演会。
    第2部は飛松五男さんとの対談。
    場所:労済会館 第一研修室。
    TEL:076(223)5911 JR金沢駅より徒歩9分。
    参加費用:2000円。
    申し込み方法:事前に電話かメール。
    電話:080(5702)8405 イワイ
    メール:masa_kazui@yahoo.co.jp
  3. 2月23日(金)午後7時より渋谷ロフト9。木村文洋監督の映画「息衝(いきづ)く」が2月24日(土)より、ポレポレ東中野で公開になります。その前日にロフト9で前夜祭トークを行います。出演は、木村監督、宮台真司さん。そして鈴木です。「宗教と政治」「この国のありよう」…などについてトークします。
  4. 2月24日(土)。名古屋の中学で講演会です。
  5. 3月4日(日)午後2時より。連合会館。塩見孝也さんのお別れ会。