2008/03/24 鈴木邦男

『失敗の愛国心』発売です!
=「中学生向け」だけど。大人も読んで下さい=

①「本当に私でいいの?」と聞き返しました

 凄い本になりました。驚きました。なんとも楽しい本です。手に取った瞬間、オオッ!と私自身が叫んでしまいました。今年初めての本です。今までとは全く違った本です。タイトルからして凄いです。
 『失敗の愛国心』(理論社・1200円)です。「中学生向け」の本です。生まれて初めて挑戦しました。去年の秋頃から必死に書きました。
 理論社は「よりみちパン!セ」という中学生向けの本を出してます。学校でも家庭でも学べない、リアルな、突出したテーマを選んで出してます。今まで34冊出ています。全国の中学校、図書館にも置かれ、全国の書店でも売れてます。「中学生向け」ですが、大人も読んでます。「中学生以上すべての人のよりみちパン!セ」なのです。こんなキャッチコピーです。

〈寄り道の楽しさ・気持ちよさを知っているこどもたちと、
もう一度、こども時代からやり直したい、
おとなのために〉

 いいですね。私は、もう一度、こども時代からやり直したいですね。このシリーズの存在を初めて知ったのは、小熊英二の『日本という国』でした。内容もいいが、本の作り方が実にお洒落だし、うまい。頁をめくるのが楽しい。これは中学生だけなんて勿体ない。そう思い何冊か読んだ。新井紀子『生き抜くための数学入門』、森達也『いのちの食べかた』…と。そして次々と読んでいった。
 そんな時に、このシリーズ本の編集者から手紙が来た。丁寧な手紙だ。去年の9月4日だ。「ぜひ、このシリーズで一冊書いてほしい」と言う。嬉しかった。でも、「僕なんかでいいの?」と思った。「中学生向け」なんて生まれて初めてだ。やってみたい。しかし、出来るかな。何度か編集者と会い、書いた。必死で書いた。そしてやっと年末に書き上げた。

 それからが又、大変だった。中学生に分かるように書き直したり、書き加えたり、さらに私の原稿を素材にして、イラスト、写真、漫画が入る…それも大量に入る。事前に部分的には見た。しかし、表紙をはじめ、始めて見るものが多い。だから3月18日(火)に見本誌を見た時は、「オッ!こんな本なのか!」と驚いた。
 今まで出した本の中で、一番、手がかかっている。一番楽しい。読ませる工夫をしている。これは驚くべきことだ。こんなところまで…と思うほど、手が込んでいる。少し紹介してみよう。
 まず表紙だ。海から昇る大きな太陽をバックに私が立っている。そして自己紹介している。普通ならタイトルの横に著者名があるが、この表紙は、私が吹き出しで「自己紹介」をしている。胸に大きく「S」と書かれたトレーナーを着ている。きっとスーパーマンなのだろう。いや、鈴木の略か。吹き出しから本の帯にセリフは続く。こんなことを言っているんだよ。スーパー鈴木は。

〈ぼくが著者の鈴木邦男です。日本のためによかれと思い、四十年間「右翼」をやってきました〉
〈でも、「こころ」を強制されることだけは、まっぴらごめんだ!
 国家も人生も、おんなじだ。まちがえたらちゃんとあやまる。深く、複雑な「愛国心」をまるごとそのからだで体験してきた新右翼の雄がみずからの「失敗」を足がかりに示す。「力」よりも「言葉」へ。「正義」よりも他者を受け入れる真摯な「謙虚さ」への、切実な問いとねがいに満ちた軌跡。
 この社会に生きるすべてのこどもと大人へおくる、あるべき「日本のすがた」を考えるための必読書!〉

②四コマ漫画があり、政治的事件の写真があり。それを「クニオ少年」が解説する

 これだけの分量が表紙に詰まっている。直球勝負だ。でも、中学生が分かるんだろうか。「大丈夫、分かります」と編集者は言う。これは原稿を書く前にも念を押された。「子供向けだからと思って、わざとやさしくしたり、手を抜いてはダメです。子供はすぐに見抜きますから」「ハイ、分かりました」と言った。そして必死で書いた。漫画がふんだんにあり、イラストもあり、そして写真もある。それに、ハードな〈事件〉の写真が多い。殺伐とした誌面になるのではないか。山口二矢の浅沼社会党委員長刺殺事件、よど号ハイジャック事件、連赤事件…と衝撃的な事件が多い。その解説もつける必要がある。だったら、それらの〈事件〉も、イラストにして〈衝撃度〉をやわらげたらいいんじゃないの。と言った。
 「いや、歴史的事件だから、キチンと写真で見せましょう。それで文中で〈スーパー・クニ君〉がやさしく説明して下さい」と言う。なるほど、こうすると、殺伐感が薄れる。こんな方法があったのかと驚いた。
 写真は何十枚も入っている。それも、ドカーンと大きく。私の好きなマイトガイ旭の写真は一頁だ。よど号ハイジャック事件は二頁の見開きだ。タラップの上では田中義三さんが日本刀を構えている。田中さんが生きてたら、どんなに喜んでくれただろう、と思う。残念だ。
 野村秋介さん、見沢知廉氏の写真もある。三島由紀夫、森田必勝の写真もある。私の高校時代の写真もある。私の仙台の実家の写真もある。古くは、安保闘争、ハガチー事件、早大闘争の写真もある。写真を見ているだけでも楽しい。ワクワクする。
 又、イラストも多いし、何と、四コマ漫画が、九つも入っている。9頁だ。だって、表紙をめくったら、まず四コマ漫画がある。「気がつけば右翼」だ。こんな楽しい本はない。大体、四コマ漫画が入ってる本なんて、生まれて初めてだ。最初にして最後だろう。
 四コマ漫画は、さらに続く。「子どもみたいな大人」「キミの成分は?」「愛って…」「おまえこそいらない」「赤尾の豆単」「いつまでもお母さん」「鈴木くんがもうひとり」「元を成敗だ!」
 さらに、イラストが沢山ある。たとえば、「はじめに」のところでは、クニオ君がキチンとスーツを着て、ネクタイをしめて出ている。「はじめに」の挨拶をしている。「あとがき」のところでは、キチンとお礼を言っている。

③パラパラ漫画の中に〈私の一生〉が入っている。走馬燈のように

 さらに凄いのは、「パラパラ漫画」なのだ。こんなの今でもあるんだと驚いた。僕らは小、中学校で遊んだ。本の左下に小さな絵がある。パラパラとめくると、絵が動く。本の中にビデオが入っているようだ。実はこの「パン!セ」シリーズ34巻のうち、3巻ほどは、この「パラパラ漫画」がついている。「これはいい!」と言ったら、「つけてほしいですか」と言う。「ほしい!ほしい!」と言ってつけてもらった。嬉しかった。生まれて初めてだ。ホント、生まれて初めての体験ばっかりだ。
 では、パラパラ漫画を見てみよう。表紙と違い、グンと若いクニオ君だ。昔、ゲーセンに「熱血硬派クニオ君」というゲーム機があったけど、あんな感じ。あるいは「少年クニョニョンの冒険」といった感じ。いやいや、この本自体が「クニョニョンの冒険物語」だ。
 さて、「パラパラ漫画」だ。日の丸の鉢巻をした少年のクニョニョンがいる。ランニング(「S」のマークがある)姿で走る。疾走する。マンホールの穴がある。水たまりかな。ポンと飛び越える(うん、こんなことがあったな)。さらに走る。全力疾走をする。
 お、前途にパンが現われた。じゃ、運動会の「パン食い競争」か。でも、運動会には落とし穴なんてない。これは、きっと〈人生〉そのものだ。大きな穴(=障害)がある。誘惑(=パン)がある。さて、どうする。どうなる、クニョニョンだ。
 でも少年クニョニョンは食べちゃうんだよね、パンを。キリスト教でいえば「知恵の木の実」を食べたんだ。愚かだ。パンに食いつくところが、ちょうど第3章「少年は『愛国心』で人を殺した」の所だ。ちゃんと本文と連動している。勝手にパラパラしてるわけじゃない。実に芸が細(こま)かい。芸術作品だ。
 さらに少年は走る。そして第1章「『宗教』が認めた『暴力』」になると、突如、クニョニョン少年は月光仮面に変身する。うーん、これは私の「非合法闘争」時代を暗示しているのか。あるいは「赤報隊事件」のことか。いつかは書かなくてはならない。鈴木史の中の「闇」だ。胸が痛い。
 クニョニョン少年の疾走は続く。今度は、ロープ登りをする。第5章、「気がつけば『ぼくは右翼』」の所だ。何にでも好奇心を持つバカなガキなんだよな、こいつは。目の前にパンがありゃ、すぐ食いつくし。ロープが垂れ下がっていれば登ってみようとする。そして無事、登り切り、次のステップに行く。でもここで突然、こける。

山口二矢、鈴木邦男、森田必勝(私が説明してる)。左下はパラパラ漫画

 本文は、〈死んだ「三島」とズルイ俺たち〉だ。ここで、つまづく。うーん、うまいね。そして、「逮捕された僕」でバッタリと倒れる。まさにその通りだ。でも、倒れながら、前方回転をして、ちゃんと「受身」をとっている。ヒャー、凄い。この辺は野村秋介さんとの出会いの頃だ。
 あれっ、でも、さらに又倒れて、今度は頭からバッタリと倒れるよ。第7章「失敗したから、道は開けた!」の所だ。そして、やっと立ち上がる。小見出しは、「父が伝えてくれたこと」。ちゃんと連動している。父親の言葉に、むっくりと立ち上がるのだ。いや、立ち上がろうとする。
 でも、すぐには立ち上がらない。グズグズしている。失敗ばっかりしていて、それをいつまでも引きずっている私だ。それがよく出ている。やっと立ち上がった時に、鈴木ファミリーの写真が出てくる。父母、弟、姪っ子たちとコタツに入って、にこやかに笑っている。うーん、映画だよ、これは。ホームドラマにもなっている。いやいや、大河ドラマですよ。あるいは、一族のつまはじき者を迎え入れた寅さん一家のようなものか。
 パラパラ漫画の続きだ。ようやくのことに立ち上がったクニョニョンは、身体についた埃をパタパタと払う。そして、又、健気(けなげ)に走り出すのだ。「長距離ランナーの孤独」だ。そして、右翼に襲われて死ぬ。いや、そこまでは描いてないか。
 しかし、凄い、凄い。パラパラ漫画にこれほどの思想と予言と物語があったなんて。驚いた。感服した。これを見てるだけでも楽しい。これだけでも一冊の価値はある。これだけでも1200円の価値はある。毎日、パラパラとやって一人で楽しんでいる私です。

④「愛国いじめ事件」「愛国殺人事件」「愛国割腹事件」と続く、炎の日本史です

今まで出した「パン!セ」の34冊は全部読んだ!

 そうそう、〈目次〉も紹介しよう。パラパラ漫画からみで書いたとこもあるが、キチンと紹介する。この目次がいいね。一応、私が試案を書いたが、「この方がいいでしょう」と編集部も案を出してくれ、さらに検討して、こんな結果になった。中学生向けの本を長年作ってきた人々だから、その辺のスキルと感性が素晴らしい。

失敗の愛国心

はじめに
第1章 「愛国心」がきみを追い回す
第2章 「右翼」と「左翼」は、ひとりの人間のなかにいる
第3章 少年は「愛国心」で人を殺した
第4章 「宗教」が認めた「暴力」
第5章 気がつけば「ぼくは右翼」
第6章 「お前はつかまりたかったんだね」
第7章 失敗したから、道は開けた!
第8章 でかい「正義」に気をつけろ!
おわりに

 「あとがき」も苦労した。頑張って書いた。自分の人生の「自己批判」を書いた。この本は、書きながら、中学生向けに書くなんて無理だ。不可能だと思った。何度も何度も思った。しかし、編集者の言葉に励まされて書き続けた。そのあたりの詳しい話も「あとがき」に書いた。
 ところが、「あとがき」を書いてもまだ終わりではない。それがこの「よりみちパン!セ」の奥深い所だ。このシリーズを書いてる全員に対しての〈課題〉というか、〈質問〉があるのだ。谷川俊太郎が出した質問だ。それに答えなくてはならない。最後の難関だ。ハードな「質問」は4つだ。

「谷川俊太郎さんからの四つの質問への鈴木邦男さんのこたえ」

私の「こたえ」は本を読んでほしい。四つの「質問」だけを紹介する。

「何がいちばん大切ですか?」
「誰がいちばん好きですか?」
「何がいちばんいやですか?」
「死んだらどこへ行きますか?」

 難しいね。皆さんならどう答えますか。考えてみて下さい。私も、この重大なテーマを前にして、考え込んでしまいました。いや、本文を書きながらも、この最後の「質問」が気になって、考え込んだ。それで筆が進まない。そんなこと度々でした。でも、必死で考えました。そして書きました。
 このHPの原稿ならば、「好きなものは枝豆」「嫌いなものは右翼」。これで終わりでしょうが、1200円出して本を買ってもらうのです。こんな、いいかげんな、素っ気ない答えではいけません。頑張って書きました。後々まで残る本だと思ったので、その覚悟を持って書きました。さらに、「次の本」の予告までやっています。恐るべし少年アシベです。いや違った。少年クニョニョンです。さて、「次」はいつになるでしょうか。
 何度も言いますが、これだけ、手の込んだ、豪華な本はありません。私の文章よりも、そちらの方を堪能して下さい。最高の編集者の最高の腕と技があります。匠(たくみ)の世界です。そして、イラスト、写真、パラパラ漫画…と。豪華絢爛絵巻です。そう、本というよりは、「絵巻き」ですな。私の本はこれで61冊目。61冊目にして到達した豪華な頂点です。美の極(きわ)みです。手にとって、その編集の極みに酔って下さいませな。

 「うーん、うまいなー。楽しい本だな」と、つくづくながめております。おかげで他の仕事が進みません。まあ、そんな時間もいいいもんです。
 この「パン!セ・シリーズ」は売れてます。中学生や高校生に社会問題を考えてもらおうという本は他の出版社からも出ています。しかし、「パン!セ」は群を抜いてます。勝負になりません。全国の中学校、学校図書館、地域図書館に入っています。でも心配です。私のことなど全く知らない子供たちが読むのです。「こんなの読みたくねーよ」と拒否されるかもしれません。いや、イラストや漫画につられて読むかもしれません。どう読み、どう反応するのでしょうか。楽しみというよりも、不安です。恐いです。全国の中学生に私が〈面接〉されるのです。面接試験に合格できるか、落とされるか。やっぱり不安です。
 それに何と、初版が15,000部です。今までで一番多いです。〈文庫や新書〉ならば、1万部位出しますが、こうした単行本では初めてです。大丈夫なんでしょうか。編集者に聞いたら、「大丈夫。すぐに重版になりますから」。ヒャー、強気た。その前に中学生の〈面接〉があるよ。

⑤次は、『地獄の愛国心』だな。あるいは、『悦楽の愛国心』か

カナちゃん(左)の出版パーティで。右はレナちゃん(3/3)

 そうだ。最後にタイトルの話だ。愛国心の全てが「失敗」というわけではありません。成功した愛国心、成功した愛国者もいたでしょう。私の場合は、愛国心に目覚めて、楽しいこと、素晴らしいこともあったが、ヤバイこと、失敗したことも多かった。そんな反省を込めて付けたタイトルです。失敗した私の愛国心人生かもしれない。いや、私の「失敗学」と、私の「愛国運動」の関連話かもしれない。
 「うん、私にも失敗があった」と思う人もいるだろう。「バカヤロー、俺には失敗なんかねーよ」と言う人もいるだろう。どっちにしろ、自由に読んで、自由に批判してほしい。そして、鈴木をぶっとばしてほしい。
 そうだ。先週「読書対談」をやった高木尋士さんは、フクロウを飼っている。「いちばん大切なもの」はフクロウだ。フクロウと相思相愛だ。じゃ、『フクロウと愛国心』を書きなよ、と勧めている。写真もふんだんに入れて。巻末にはフクロウとの「愛国対談」も入れて。きっと話せるだろう。だって、高木氏は、フクロウと同棲しているうちに頭も体も、フクロウに似てきた。フクロウ語も出来るんだろう。フクロウが、この日本をどう思っているのか。憲法や天皇制をどう思っているのか。聞いてほしい。何なら私が司会をしてもいい。
 「鈴木さんに勧められてパンセシリーズを全巻買いました」と言っていた。偉い。僕の本を含め、34巻読破したら、又、対談してもいいな。「読書戦争・パンセ編」で。

 それと、早見慶子、中川文人さんとも、この本をテーマにやってみたいな。映画「実録・連合赤軍」も「壮大な失敗物語」だ。又、中川さんは「地獄」についての本を最近書いた。
 学生運動の苛酷な体験がベースになって、この地獄物語を書いたという。早見さんも、新左翼運動で「天国と地獄」を体験した。私の『失敗の愛国心』も、「地獄めぐり」だ。じゃ、それらをテーマにして、又、三人で話してみたい。お二人にお願いしたい。映画「母(かあ)べえ」と「明日への遺言」も見てほしい。そして、戦争と愛国心と失敗について語り合いましょう。連合赤軍については、もう語り尽くされたと思われるだろうが、この三人が話したら、又、新しい発見、分析があるだろう。タイトルは「地獄の愛国心」だ。あるいは、「死の病い。愛国心」だ。

ジャナ専の卒業パーティで(3/3)

 うーん、愛国心についてならいくらでも書けるな。それに「失敗」についても。この本について、「鈴木さんは失敗談の天才ですね」と言われた。「失敗を書かせると右に出る人はいない」とも。右翼の右に出ようなんて、誰もいねーよ。それに、私は生まれた時から失敗の連続だ。今もしている。これからもずっと失敗ばかりだ。「ミスター・失敗」だ。私の中に失敗があるのではない。失敗の中に私がいる。そうか。じゃ、『失敗の愛国心』をシリーズ化すればいいかな。ビルドゥングスロマン(教養小説)のように、「愛国ベイビー」たった頃から、中学、高校、大学と行き、そして…と。その辺まではこの本で書いたが。じゃ、その後だね。そうするとヤバイ活動も出てくるし。時効になったこと、まだ時効にならない事件もある。うーん、難しい。でも考えてみよう。挑戦するだけの価値はある。
 今まで、私の本でシリーズ化したのは「他人」「事件」について書いた本ばかりだ。『がんばれ新左翼』が3巻。『夕刻のコペルニクス』が3巻。今度の本は、他人の事件ではない。自分のことだ。『失敗のクニョニョン』シリーズだ。「夕刻」じゃなくて、『たそがれのクニョベー』シリーズにしてもいいな。これじゃ、盗作っぽいな。と、夢が膨らんだところで終わろう。ともかく、1200円ですが、買ってみて下さい。つまらなかったら私に送り返して下さい。3倍のお金を払って賠償します。それだけの覚悟と自信を持って出した本です。

【だいありー】
田中森一、筆坂秀世さんの出版記念会で挨拶した(3/17)
  1. 3月17日(月)昼、打ち合わせ。いろんな仕事があって、頭がパニックだ。それでなくても頭が悪いのに。じっくりと考えられん。それに夜は二つの行事が重なった。筆坂秀世、田中森一さんの『どん底の流儀』(情報センター出版局)の出版記念パーティと一水会フォーラムだ。
     6時に、まず出版パーティに行く。帝国ホテルだ。情報センター出版局は昔は、ほのぼのとした本を出していた。椎名誠の『哀愁の街に霧が降るのだ』とか、『国分寺のオババ…』がどうしたとか。私は好きで、このシリーズは全巻読んだものだ。ところが去年から、急に、「反体制」ものというか、「政治的」な対談本を作るようになった。第一弾は筆坂秀世さんと私の『私たち日本共産党の味方です』だ。第二刷まで行った。そして、第二弾目がこの『どん底の流儀』だ。
     田中森一さんは「時の人」だ。最高裁の判決がおりた。懲役3年だ。3月末には下獄する。だから、どっと取材陣も来た。私もあいさつをさせられた。「おめでとうございます」と言っていいのか、「大変ですね」と言ったらいいのか、迷った。でも「壮行会」を兼ねてるんだから、「おめでとう」でいいだろう。帝国ホテルの孔雀西の間が超満員だった。田原総一朗、大谷昭宏、涛川栄太、鈴木宗男、二木啓孝さんら錚々たる人々が挨拶する。松山千春なんて歌までうたっていた。大サービスだ。そんな大物の中で、無名の「失敗者」がたった一人、挨拶だ。恥ずかしかった。でも、この〈対談本〉シリーズの第1弾をやったのだし。きっとこのあと「失敗パンセ」シリーズとして30巻も出るだろう。そうだよ、筆坂さんも田中さんも「失敗学」の大家だ。うん、じゃ「失敗パンセ」の他に、「失敗学校」をつくったらいい。「失敗塾」でもいいな。そして、「失敗のすすめ」「左翼失敗者養成コース」「失敗右翼更生コース」などを設けて授業をする。いいねー。でも学校経営もすぐに失敗しそうだ。
     このパーティで、宮崎学、青山細子、康芳夫さんらと会った。「『創』の連載はいいねえ」と康さんに言われた。初めてだ。嬉しかった。自分では頑張ってるつもりだが、「どうせ日記だろう。楽でいいよね」と言われることが多い。だから、ムキになって、日記体裁はとらないようにしている。でも、無視されてる。実力がないから仕方ないか。でも、康さんに誉められて力が湧いた。
     田中森一さんが、もうすぐ収監されるとのことでテレビ局が全局来ていた。何社かに私も取材された。オーマイニュースには出たらしい。
     終わって、一水会フォーラムに駆けつける。宮本雅史さん(産経新聞社会部編集委員)の「戦後60年余、日本人が忘れてきたもの=特攻精神にみる自己犠牲の精神=」。二次会に間に合った。皆と話し合った。
     この日の産経新聞に澤田サンダース・文、増山麗奈・絵の『幼なじみのバッキー』(月曜社)の書評が出ていた。美術ジャーナリストの村田夏さんが書いていた。好評で売れてるようだ。じゃ、出版パーティでレナちゃんと撮った写真を載せよう。ついでに、ジャナ専の卒業パーティの写真も載せよう。
筆坂秀世さん(右)と(3/17)
  1. 3月18日(火)午後1時。理論社に行く。『失敗の愛国心』の見本が出来たのだ。こんな素晴らしい本が出来、嬉しい。感謝感激だ。来週全国書店に出る。「売れますよ。営業も張り切ってます」と言われた。ありがたい。同時発売の藤井誠二さん(マンガ=武富健治さん)の『「悪いこと」したらどうなるの?』(理論社)をもらう。これは凄い。初めの30ページは漫画だ。よく書いたもんだ。考えさせられた。
     午後6時から四谷の天ぷら屋「若水」で、月刊「創」の座談会。森達也さん、綿井健陽さんと三人で「ドキュメンタリー映画の現状」について話す。映画「靖国」「ヒロシマ・ナガサキ」「Tokko(特攻)」などを中心に話をする。特に今、話題の「靖国」だ。「反日映画だ!」と保守系の新聞、週刊誌が叩き、国会議員、右翼が攻撃している。私はいい映画だと思い、パンフレットにも「推薦の言葉」を載せた。それで私も、「右翼のくせに反日映画を推薦するとは何事か!」と糾弾されている。
     私個人が批判されるのはいくらでも構わないが、これで映画館がビビったら困る。と思っていたら、上映館のひとつ〈新宿バルト9〉が降りてしまった。上映を取りやめたのだ。右翼が襲ってきたら大変だ、というわけだ。日教組大会もつぶしたし、これも「右翼の勝利」か。そんなことはない。「右翼の敗北」だ。「失敗の愛国心」だ。これで右翼の〈思想〉が国民に伝わったわけではない。ただの「妨害屋」「うるさい奴ら」と思われただけだ。かえってマイナスだ。
     「これは反日だ」と言うのは自由だ。だったら、その〈声〉をキチンと反映させなければならない。テレビでも新聞でも雑誌でもいい。そうした〈対話〉がない。テレビはお笑い芸人の遊び場だし、新聞、月刊誌は、党派の機関紙のようだ。反対意見を載せる度量がない。偏狭な日本人たちだ。こんな日本なんて嫌いだ。
     そんな日本にあって、「靖国」は大きな問題提起になってるし、いい映画だ。〈政治性〉があることはいいことだ。今の時代、貴重な映画だ。日本を批判したからといって(批判ではないが)、「反日映画だ!」と決めつけ、「上映させるな!」という。実際、一館は上映を中止した。これでは国民の「観る自由」を奪うことになる。国会議員や右翼がそんなことをやっていいのか!まだ上映前だよ。上映して、その上で、「これはけしからん」という声が上がったら、いくらでも批判し、討論したらいい。ところが、力で上映前につぶす。国民に見せない。さらに「反日映画に金を出すな!」と叫ぶ。文化庁は750万出したという。いいことだ。日本を批判する映画にも金を出す。日本の自信だし、寛大さだ。世界に誇っていいことだ。それなのに…。
(左から)大谷昭宏さん、康芳夫さん、鈴木(3/17)
  1. 3月19日(水)仕事が多い。進まない。無能だ。夕方まで必死にやる。夜7時、ANAインターコンチネンタルホテル東京に行く。「お陰さまで20周年。〈サンデープロジェクト〉感謝の夕べ」に出る。もう20年になるのか。偉い。下らないバラエティばっかりの中で健闘している。政、財界、言論界の主だった人は全て来ていた。凄い顔ぶれだ。共産党の小池晃さんに会ったら、「本で僕のことを愛国者と書いてくれてありがとう」と言われた。他に土井たか子さん、福島みずほさん、辻元清美さんらと話す。知り合いは社民党と共産党ばっかりだな。田原総一朗さん、高野孟さん、猪瀬直樹さん、蓮舫さん等と久しぶりに会う。
  2. 3月20日(木)昼、図書館、打ち合わせ。
  3. 3月21日(金)昼、取材。夜6時半から赤坂の日本自転車会館。木村三浩氏の出版記念会。有田芳生、猪瀬直樹、平沢勝栄、、竹田恒泰、長島昭久、加藤紘一、池内ひろ美、二宮正純、大川豊、浅香光代さんらが挨拶する。300人の出席者で、超満員だった。その人脈には驚くばかりだ。たいしたものだ。骨法の堀辺正史先生、小中陽太郎、蓮池透、ケビン、宮崎学、江川紹子さんらも来ていた。
     自分のことのように嬉しい。私も挨拶をさせられた。木村氏は現役の活動家で、しかも、本も精力的に書いている。こうした例は希有だ。私は運動をリタイアして好き勝手なことを言ってる。「ふざけんな!許すな!」と言う右翼の人も多い。そのたびに木村氏に助けられている。木村氏が運動の現場にいて、闘っているから、信頼がある。皆、木村氏の話なら聞く。説得力がある。それで私も生きていられる。ありがたいと思う。
  4. 3月22(土)午前中、取材。午後2時。劇団「燐光群」の芝居「だるまさんがころんだ」を見る。笹塚ファクトリーで。なかなかよかった。地雷と戦争をめぐる思想的な芝居だった。終わって、作・演出の坂手洋二さんと話をした。隣の席が偶然、田嶋陽子さんだった。久しぶりだった。いろいろ話をした。夕方、雑誌の対談。
【お知らせ】
  1. 3月24日(月)7:30 阿佐ヶ谷ロフト。康芳夫さんが映画「家畜人ヤプー」を作るそうです。それを記念してのトークです。「暗黒プロデューサー・康芳夫の世界」です。康さんの他、高取英さん(月蝕歌劇団主宰者)、秋山祐徳太子さんなど。「暗黒武闘」の私も出ます。
  2. 4月3日(木)7:30p.m.新宿のロフトプラスワン。映画「靖国」の公開記念トーク。私も出ます。
  3. 4月7日(月)阿佐ケ谷ロフト。7時半。藤井誠二さん(漫画は武富健治さん)の『「悪いこと」したらどうなるの?」(理論社)と、私の『失敗の愛国心』の出版記念トーク。『ついていったら、だまされた』の著者・多田文明さんも特別出演してくれるそうです。「よりみちパン!セ」のプロデュースだ。人気作家、漫画家と会えるし、私も楽しみだ。
  4. 4月9日(水)岩波ブックレット『使える9条』(800円)発売。私も書いてます。
  5. あの衝撃の舞台、「天皇ごっこ」が再び帰ってきます。何と今度は阿佐ヶ谷ロフトで。4月12日(土)、13日(日)の2日間です。終わって高木尋士さんのトークがあります。切通理作さん、そして私が出ます。詳しくは又、お知らせします。
  6. 4月12(土)より、今最も熱い話題の映画「靖国」が上映開始です。4館中、1館は降り、他もいつ打ち切られるか分かりません。早いうちに見た方がいいでしょう。歴史に残る映画です。
  7. 4月14日(月)一水会フォーラム。7時、高田馬場サンルートホテル。
  8. 4月17日(木)別冊宝島『左翼はどこへ行ったのか』発売。荒岱介さんと私の対談も載ります。
  9. 5月10日(土)「マスコミ市民」主催で、筆坂秀世さんと私の対談をやります。テーマは、大闘論『憂国主義と社会主義。一致点はあるのか?』
  10. 若松孝二監督の映画「実録・連合赤軍」が大ヒット上映中です。大入り満員です。指定制ですから、入れなかったら次の回を予約して見て下さい。朝日新聞社から出ている本も好評です。