電話が鳴った。受話器を取る。「ニイハオ」という声に、「ヨボセヨ(今日は)」と答える。わが家の電話はインターナショナルだ。
「ラベンダーです」と向こうは自己紹介する。花だ。花が電話してきた。三島由紀夫や坂本龍馬、吉田松陰など亡くなった人からの電話はよくあるが、植物からの電話は初めてだ。
「久しぶりです。昔、富良野のラベンダー畑で会いましたね。とてもきれいでしたね」と言った。北海道の富良野には広大なラベンダー畑がある。観光客が大勢訪れる。もう咲く頃だろう。又、見てみたいものだ。
そう思っていたら、「ちゃいまんねん。ホンコンテレビのラベンダーです」と言う。人間なんだ。女性だ。雌しべだ。映画「靖国」の上映中止騒動について取材したいという。「靖国」の監督は李さんで中国人だ。「日中問題」としてこの映画には関心があるようだ。だから応じた。5月4日(日)の午前中だ。北朝鮮から帰ってきたのが4月30日(水)だから、帰国して4日目だ。まだ、ボーッとしている(いつでもボーッとしてるけど)。
しかし、「靖国」問題では随分と取材された。新聞、週刊誌は数え切れない。「もっと他の右翼の人に聞きなよ」と言うが、「でも、怖い」と言う。マスコミがそんな偏見を持っちゃいけんよ。会えば皆、キチンと話してくれる。そう言って、何人か紹介した。取材に応じた人もいるし、断わった人もいる。
「靖国」問題に加えて、北朝鮮訪問も重なり、さらに取材が増えた。東京新聞、毎日新聞、北海道新聞などでは随分大きく取り上げられた。テレビは5月だけで何と4回、ラジオは2回も出た。出過ぎだ。もうこんな事はないだろう。
テレビは5月4日(日)のホンコンテレビの他、12日(月)のBS11で西川のりおさんと2時間話した。25日(日)放映の「たかじんのそこまで言って委員会」(大阪読売テレビ)では「終身刑」と「四川省大地震」だった。そうだ。「カレオヤジ」のコーナーもあった。
次の26日(月)は大阪朝日放送の「ムーブ」に出た。これは凄い。「新右翼の見た北朝鮮」コーナーがあった。北朝鮮での報告。「よど号」帰国への大胆な提言などが紹介された。東京じゃちょっとやらない。大胆な企画だ。
「たかじん」と「ムーブ」は東京では見れないはずなのに、見た人が多い。ネットの「ユーチューブ」や「動画サイト」で見たらしい。だから、「ヘエー、お前がカレオヤジか」とか、「よど号についてアホな提言をしてたな」とか、よくからかわれている。「こんな時に北朝鮮に行くとは許せん!」とか、「中国に甘過ぎる!」という批判、罵倒もいただいた。ありがたいです。鈴木邦男はどんどん、ぶっ飛ばしましょう。
そうそう。ラジオは5月6日(火)のJ-WAVE。9日(金)の文化放送だ。気が弱いから私は、余り喋れん。皆大変だった。そうだ、新しい発見をした。ラジオは1人で喋るか、あるいは2人の対話だ。多くても3人だ。それ以上だと混乱する。「じゃ、ラジオで朝生をやってみたらどう?」と言った。「できっこありません」と言う。そうだね。15人位が出て、一斉に喋る。怒鳴り合う。声がかぶる。一体誰が喋ってるのか分からない。それを3時間もやる。こりゃ面白いかもしれない。ダメ元でやってみたらいいのに。と、文化放送の人に提案した。他にも、会う人ごとに、いろんな提案をしている。革命的な「提案オヤジ」だ。
さて、ラベンダーさんの話だ。「靖国」問題よりも今や、日中「結婚」問題の方が大きな問題だ、と私は言った。「それは気がつきませんダー」とラベさんは言っていた。中国人の女性と結婚し、その後、苦労している日本の男がいる。それも沢山いる。その現実を教えてあげた。勿論、日本の男が悪い。日本の中年男はもう日本の女性からは見向きもされない。それで、「中国お見合いツアー」に行って結婚する。いや、国内でも、いろんな場所で中国女性と知り合うケースが多い。かわいい。優しい。よく気がつく。こんな娘は日本にはいない!と思う。感動する。惚れる。結婚する。ところが…。
そんなケースが多いのだ。中国女性は実は内面的には強い。それを知らないで、早トチリして結婚した日本の中年男が悪い。その問題で皆、苦しんでいる。右翼の人にもいる。新左翼の人にもいる。有名なフリーライターにもいる。
「それはね、身勝手な男の願望を中国女性に押しつけてるんです」とラベさん。「まるで、かつての西欧人が東洋の女性に、“従順さ”を求めていたようなものです」。そうなのか。日本の中年男は皆、欧米化しているのか。
「でも、日中間の問題だけではありません」と言う。「中国の結婚事情も大変動しています」。これは中国の「一人っ子政策」に原因があるという。中国では人口抑止策として、「一人っ子政策」をやっている。子供は1人だから、大事に大事に育てられる。親は食わなくても子供の教育費には惜しみなく金を使う。だから子供は、我が儘一杯だ。そして、「小皇帝」と言われている。NHKスペシャルでそのことを詳しく報道していた。
そして、「一人っ子政策」の産物である男女が結婚する。つまり、「小皇帝」同士が結婚する。どちらも、贅沢に、自由気儘に、我が儘に育てられてきた。だから、「我慢」することを知らない。ちょっとした事ですぐに衝突する。大喧嘩する。即、離婚だ。
「もしかしたら、中国は世界一、離婚が多いのかもしれませんね」。そうなのか。「中国女性は強いし、怖いから日本女性がいい」と、日本女性と結婚する中国の金持ちも多い。どこの国の男も、女性に求めるものは「優しさ」だ。それも自分勝手につくった「優しさ」のイメージだ。そして、裏切られる。求めよ、さらば裏切られん、だ。
「台湾の男性も同じです」と言う。中国と同様、台湾も離婚が多い。女性が強くなったからだ。いや、女性としては当然の主張、自覚なのだが、男にとっては、「強い、怖い」と映る。こんなはずじゃなかったと思う。仕事はつらい。人間関係もキツイ。家に帰ってきた時だけホッとしたい。優しい妻に迎えてもらいたいと思う。自分勝手な願望だ。
でも、女性だって働いている。仕事はつらい。人間関係もキツイ。私だって家で優しくされたい。癒されたいと思う。両方の願望が同じだ。プラスとプラスの電極同士だと相反撥する。それと同じことだ。
「だから台湾の男性は、もう台湾の女性に絶望しています。そして、ベトナムの女性と結婚する人が増えてます」。そうなのか。民主主義、資本主義の中で女性は強くなる。いや、「当然の権利」に目覚め、その権利を獲得し、行使する。
その新しい変化に男もはついていけない。「怖い」と思う。男の方が、常に保守的なのだ。そして、オロオロし、「外国の女性ならばもっと優しいのでは」と思い、錯覚する。そして、「青い鳥」を求めて外国の女性と結婚する。さすらう。映画「靖国」よりも、こっちの方が大きな日中問題だ。
一水会の幹部でもいる。「中国女性は優しい。かわいい」と思い結婚した。ところが…。元新左翼・過激派の男もそうだ。「日本の女はうるさい。優しさがない。その点、中国の女性は優しい」と思って結婚したら、ところが、強い、強い。「理論闘争」をしても毎日、論破されている。だらしがない左翼だ。何のために左翼運動をやってきたんだ。
又、ある大手サラ金の不正を糾弾し、名をはせたライターがいる。「日本の女は強いから嫌だ。中国女性はかわいいし、優しい」と結婚。ところが、彼女は豹変。彼女の店に毎晩通いづくめで、やっと結婚したのに…。欲しいものは何でも買った。「家が大変だ」と相談されれば、そのたびに大金を出した。でも、結婚した後、中国に行って帰ってこない。二千万円も使って、たった2回しかさせてもらえなかった、と言っている。巨大なサラ金の不正は見破れても、中国女性の企みは見破れないのか。だらしがない。
話は変わる。北朝鮮の「喜び組」が韓国に行った時の話だ。サッカーの応援に行ったんだっけ。韓国の男どもは大歓迎だった。「今どき、こんな可憐な、かわいい、優しい女性はいない」と皆、感動した。表情や仕種も、ちょっとギコチなくって、ういういしい。「韓国の女は強いから嫌だ。北朝鮮の女性と結婚したい!」と皆、思ったそうだ。そうすると、最後の理想郷は北朝鮮かもしれない。
資本主義、自由主義、民主主義は女性を強くする。男は本当は弱いから、強くなった女性に恐怖する。それで、ロリコンに走ったり、ペット愛に走ったり、ゲームの中の女性に理想を求めて、現実逃避する。日本の女性は強い。怖い。でも中国の女性なら優しいだろう。台湾の女性なら、ベトナムの女性なら…と思うが、そうはいかない。でも、北朝鮮にはいる。優しい女性が。
私も一抹の希望がありました。いや、予想がありました。北朝鮮の女性は全員が「喜び組」のような美人ばかりなんだろうか。だったら凄いな。でも、怖いな、と思ってました。ところが行ってみると、そんな事はありません。ホテルや商店、街を歩いても、普通の女性ばかりでした。ホッとしました。普通の人間の生活があるんだ、と思いました。同時に、失望したこともありました。
でも、優しそうです。控え目です。謙虚です。そして愛国心に満ちあふれています。国を守る気概があります。やはり、北朝鮮女性は「最後の理想」なのかもしれません。資本主義国の女どものように出しゃばりません。謙虚です。控え目です。だから胸も控え目です。自己主張しません。
同じ朝鮮民族でも、韓国は女性も自己主張しています。胸も自己主張しています。又、「同じ社会主義国家」でも中国女性は、自己主張が強いです。発育もいいし、かなり大きな女性もいます。胸も自己主張しています。その点、北朝鮮だけは、皆、小柄です。控え目です。
控え目だが、控え目な胸につまった愛国心で胸は一杯です。胸の大きさと愛国心は反比例するのかもしれません。『失敗の愛国心』の次は、『ペチャパイの愛国心』を書こうかと思っています。
ちょっといやらしい話が続くようですが、最近、面白い映画を見ました。試写会の案内が来てたのですが、ずーっと忙しくて見れなかったんです。でも5月27日(火)、無理して見てきました。タイトルを紹介するのも恥ずかしいのですが、「コミュニストはSEXがお上手?」という映画です。
何だ、コメディか。阿呆らしい。と思うでしょうが、違うんです。部分的にアニメも入っている。案内の葉書にはアニメがあったので、「何じゃい。エッチなアニメなのか?」と思った。しかし、何でコミュニストなんだ、と不思議だった。新左翼出身の中川文人氏の映画かなと思ったほどだ。それで好奇心で見に行ったのだ。
予想に反して、真面目なドキュメンタリーだった。監督・脚本はアンドレ・マイヤーさん。ドイツ文化センターが協力だ。じゃ、ドイツの文化庁も助成金を出したのだろう。でも、ドイツ人は大人だから、「これは反独映画だ」「助成金を返せ!」なんて騒ぐ人はいないんだろう。
「全人類必見の話題作!」と銘打っている。大きく出たな、と思ったが、見て分かった。決して、ハッタリではない。凄い映画だった。いい映画だ。我々の「偏見」というか、「期待」がものの見事に裏切られた。それも、東西ドイツが統一したので分かった「新事実」だ。統一されなければ、こうした事実も明らかにされなかった。
だって、西ドイツは資本主義の国で、性産業は氾濫していた。ポルノショップがあり、ポルノ映画は上映され、売春も盛んだ。乱れに乱れ、爛れた「性の自由」の国だ。一方の東ドイツは貧しい。慎ましやかだ。性の自由化もない。ポルノ映画もポルノショップもない。勿論、売春もない。潔癖で、健康的で、ストイックな国だ。そう思っていた。
ところが違っていたのだ。セックスの面では東ドイツの方がぐんと進んでいたのだ。社会主義の暗い国家だから、人民の避難所はベッドしかなかったのか。それもある。しかし、西ドイツのように、あまりにアッケラカンと性産業がはびこると、かえって、男は萎えるのかもしれない。「秘すれば美」がないんだ。「それやれ!すぐやれ!」と煽られて出来るもんじゃない。押さえつけられ、禁止されるから、かえって欲望は強くなるのかもしれない。
それに、東ドイツは女性が皆、働いていた。自立していた。だから結婚しても男女は全く平等だし、離婚も多い。それに女性は、セックスも貪欲に楽しんでいた。その実態が社会学者の研究によって、次々と発表され、驚くべき事実が明かされる。衝撃の科学ドキュメントだ。パンフレットにはこう書かれている。
〈東ドイツでは、セックス初体験の年齢は西ドイツより早く、回数&テクニックも西を遥かに超えており、85%の女性たちがオルガズム体験者。しかも東の男性は西の男性よりもペニスが6ミリ長いという驚きのデータが。ピルも妊娠中絶も早くから合法化され、女性は経済的に自立していて、すでにセックスと結婚制度を切り離して考えていた。
西ドイツではポルノやフリーセックスが話題になっていた頃、壁の向こう側では、セックスがオープンに語られ、公に性教育を実施。セックスは親密な関係をつくり、楽しむものとみなされていた。一体、何故このような現象が起こってしまったのだろうか?〉
そして、当時の人々の証言、性教育フィルム、社会学者の研究・分析が紹介される。やけに真面目なドキュメンタリーだ。ウーン、と考えさせられた。確かに「全人類必見の話題作」だ。
映画の中で分かったが、西ドイツは、ポルノやセックス産業が盛んだ。しかし、同時に、「良妻賢母」を育てようという傾向というか国是がある。だから花嫁学校が大繁盛してるし、性道徳は教会がコントロールしている。案外と古いのかもしれない。そして、ストイックなのかもしれない。
一方、東ドイツは、女性は経済的に自立してるし、SEXと結婚は別だと思っている。結婚しても離婚率は高い。それに、「オルガズム到達率85%」だという。又、「西の男性よりもペニスが6mm長い」という。全ての男を計ってみたのだろうか。
女性が強くなり、性にも奔放になるのは分かる。でも、男はそうしたら、引くのではないか。ところが、社会主義国家だ。引いたって逃げられない。「こんな強い女たちから逃げたい。東洋の従順な女性がいい」と思っても、かなわぬ夢だ。そんな逃げ場のない男たちに、女たちは容赦なく襲いかかる。そして、教育する。トレーニングする。地獄の特訓だ。その結果、6mmも長くなったのだろう。かわいそうな気もする。
でも、SEXについて、「資本主義国はお盛ん。社会主義国は控え目」といった通説は嘘だったんだ。本当に目からウロコの映画だった。6月21日(土)から、ユーロスペースで上映される。私も、もう一回、見に行こう。考えさせられる映画だ。新左翼の中川文人、早見慶子さんにも見てもらって、又、話し合おう。あっ、いや、その前に連合赤軍の座談会をやらなくっちゃ。