2008/07/21 鈴木邦男

「崖の上のクニョ」ですね、私は

①大阪夏の陣で大敗しました

「たかじんのそこまで言って委員会」より

 「飛んで火に入る夏の虫」とは私のことですよ。さんざんでした。まるで、サンドバック状態ですね。7月13日(日)放映の「たかじんのそこまで言って委員会」です。そこまで苛(いじ)めていいんかい?と思っちゃいましたよ。私一人が北朝鮮問題で集中砲火を浴びました。ボロボロです。もうこの人は立ち直れないでしょう。「崖の上のクニョ」です。崖から見事に突き落とされちゃいました。
 でも、あれだけ徹底的にやっつけられると、逆に、かえって爽やかになります。集中豪雨の中を走ってきて、全てが洗い流されたような爽快感すら感じました。もしかしたら、「たかじん」に出ることで、マゾ的快楽に目覚めているのかもしれません。(と、強がりを言ったりして)

 あの日は、初めから「嫌な予感」はあったんですよ。北朝鮮問題がテーマになるというし。「テロ支援国家指定解除」に私は「賛成だ」と 言ったんだから。北朝鮮を交渉のテーブルにつかせることはいい事だ。北朝鮮を逃がさず、強力に交渉すべきだ。せっかくのチャンスなんだし、 と私は思った。「断固、経済制裁しろ!」「戦争も辞さず、北朝鮮を追いつめろ!」という威勢のいい言葉だけでは、何十年たっても解決しない。 そう思ったからだ。

「たかじんのそこまで言って委員会」より

 番組が始まると、いきなり例の「加藤発言」の話になった。拉致被害者5人について、加藤さんは「北朝鮮に返すべきだった」と発言した。それで家族会、救う会をはじめ、強硬な批判があり、各新聞でも一斉に叩いていた。加藤さんの発言は、これだけ見ると誤解を与えるかもしれないが、全員救出に向けて、国家間の約束は守って、交渉すべきだと言ったのだ。そうしたら、交渉はもっともっと進展があったはずだ、と。
 ところが、「犯罪国家との約束など守る必要はない!」「5人を再び地獄に戻すのか?」「それでも日本人か!」という感情的批判を浴びた。加藤さんの事務所には、毎日、50件以上の脅迫、抗議電話が来ている。 加藤さんの発言については「産経新聞」(7月10日付)に報じられているので、それを基に説明しよう。

〈自民党の加藤紘一(元幹事長)が拉致被害者5人について「国家と国家の約束だから北朝鮮に返すべきだった」と発言したことを受けて、拉致被害者「家族会」(飯塚繁雄代表)と「救う会」(藤野義昭会長)は9日、「拉致被害者や家族の思いや不安をまったく理解しようとしない加藤氏に強い憤りを覚える」と抗議声明を出した〉
「たかじんのそこまで言って委員会」より

 では、加藤氏はどこで、そんな発言をしたのか。あるBS番組で言ったという。その点を産経はこう報じている。

〈加藤氏は7日夜のBS番組で、小泉純一郎首相(当時)が訪朝した平成14年秋、拉致被害者5人が帰国した際、政府が5人を北朝鮮に返さないことを決めたことを「当時官房長官だった安倍晋三前首相を中心に(拉致被害者を)返すべきでないと決めたことが日朝間で拉致問題を打開できない理由だ。
 返していれば「じゃあまた来てください」と何度も何度も交渉していたと思う。そこが外交感覚の差だ」などと発言〉

 これは言えると思う。あの当時、5人は日本に「一時帰国」するといわれていた。当時の新聞を見たら、皆、そう出ている。その「一時」が、果たして一週間か10日か。それが問題になっていた。又、一旦北朝鮮に帰って、今度は子供も連れて一緒に日本に帰る。他の人達も救出する、という交渉も出来る。その道筋が立っていた。
 ところが日本政府は、5人を「北には帰さない」と決断した。そして、北朝鮮との「約束」を一方的に破った。そんな「約束」など、元々、無いと言い放った。では、「一時帰国」という言葉は何だったのだ。北朝鮮は激怒し、交渉は決裂した。子供たちは帰したが、その後の進展は全くない。

李英和さん(左)と(7/11)

 あの時、「かわいそうだ」「又、北に戻すのか」という国民の声が強くて、「じゃ、帰さない」と政府は決めた。だったら、北にキチンと説明したらいい。「帰すと約束しましたが、国民やマスコミが強く反対している。約束を破って申しわけないが、返せない」と。
 あるいは、国民やマスコミの〈不安〉に対し、身をもって、説明し、説得したらよかった。「いや、全員を取り戻すために一旦帰るのだ。そのために首相はじめ国会議員も何十人も付いて行く。子供も、他の人達も連れて帰る。それまでは断固として北朝鮮に留まる」と。その位、言って国民やマスコミを説得し、実行してもよかったのではないか。少なくとも、そういう声はあった。又、向こうが差し出すどんな手だって利用して、交渉に持ち込む。その位の覚悟がなくてはダメだろう、と私は思った。

 だから、「たかじん」の冒頭で、「加藤発言」に対し皆が「もっての外だ」「許せん」と言ってる時、私はつい、「加藤発言」を弁護した。もっとも、「そうだ。許せん」と一緒に批判することも出来た。でも、私は加藤さんの真意を知ってるし、加藤さんの勉強会でも話した。だから、「ちょっとそれはひどい」「加藤さんの発言も、もっともだ。理がある」とフォローした。そしたら、ドッと批判が私にきた。  それに、実は、加藤発言は「他人事」として見過せない事情があったのだ。実は加藤さんがBSで発言した時に、私のことが出てたからだ。

②元凶は又しても、私だったのか

田代まさしさん(右)と(7/16)

 加藤さんはBS11の「西川のりおの言語道断」(7月7日放映)で話したのだ。あれっ、この番組は私も先月、出てるよ。
 02年、拉致被害者の帰国に際して、官房長官だった福田さんは、「返そう。これは約束だから」と言った。安部さんは官房副長官で、「いや、返せない」と言った。「で、返した方がよかったわけですか」と西川さんは聞く。
 「当然です。国家と国家の約束ですから」と加藤さんは言う。そのあとだ。

(西川)でも、国民の感情としては、もともと拉致されたものである。返すという道理はないっていうのがありますよね。なにを返すんだと、なりましたよね。加藤さんは、返したほうがよかったと。
(加藤)よかったと思いますよ。あのときに、ある新右翼の方が、毎日新聞にこう書いてました。「民族主義派、右翼の私がこんなことを言ったら、明日から私の家の電話はなりつづけるであろう。ただ、言う。返しなさいと。で、あんな北朝鮮みたいな国に、日本は政府と政府の約束さえ守らない国だといわれるのは片腹痛い。この理屈でしょう。
 で、あのときに、実は、これ返すってことを、みんなで、政府も約束して、それで日本に帰ってきて、いつ、じゃあ、こんど平壌に帰るんだろう、その時期を政府は何日と決めるんだろう、それをスクープ合戦してましたよね。メディアも。
大盛況のロフト(左から)篠田さん、田代まさしさん、鈴木

 えっ、私が原因だったのか。少なくとも私の発言で加藤さんは、「うん、そうだ」と思ったんだ。じゃ、今回の「加藤発言」は、いろいろバッシングされてるが、本当は私のせいだ。申しわけない。じゃ、加藤さんに抗議電話をしないで、私にしてくれよ。まあ、私にも電話は少しはあるけど、加藤さんほどではない。加藤さんの事務所には電話だけでなく、直接、抗議に行く人もいるし、又、ビラを配って、「ここに抗議の電話、FAXを入れましょう」と呼びかけている人もいる。しかし、こんなビラ配りはいいのかな、と思う。だって、文句あったら、本人が堂々と名乗りをあげて行けばいい。それなのにビラに相手の電話を書いて、「ここに電話、FAXを集中させましょう」と不特定多数の人に呼びかけ、煽る。いいのかな、と思う。もう、これは「犯罪」に近いよ。まあ、私も昔やったから、自己批判をこめて言うのだが。

 「でも、あの時、5人を帰していたら殺されるんじゃないか。帰せなんて、よくそんな酷い事を言えるもんだ。それでもお前は日本人か」という批判も出た。又、そう言われるのを恐れて皆、口をつぐんだ。でも、それに対し、加藤さんは断言した。
 「そこが、外交感覚の差ですね。そんなことが出来るわけがない」と。
 実は、「たかじん」では、李英和さん(関西大学教授)がゲスト出演した。この人は、北朝鮮とは命を賭けて闘っている人だ。脱北者の支援もやっ ているし、本当に勇気のある人だ。でも、「テロ支援国家指定」を解除しても、拉致被害者を取り戻すことは出来ると発言した。その途端、 「あんたは二重スパイじゃないの」なんて言われた。それはないだろう。命を賭けて闘ってる人に対して。

(左から)鈴木、松崎明さん、木村三浩さん(7/14)

 李英和さんとは久しぶりに会ったので、番組が終わった後で話をした。「あの時5人を帰す」ということには反対だが、もし、帰していても、殺されることはないと言っていた。又、「最悪の事態」を憂慮する評論家もいるので、その点を聞いたら、「結構、理性のある国ですよ、北朝鮮は」と言う。「むしろ、ブッシュのアメリカの方が狂気の国ですよ」と。これには驚いた。北の酷さを知り抜いている李さんが言うからこそ、説得力がある。
 李さんは命がけで北朝鮮と闘っている。でも、とても視野の広い人だ。狭量ではない。実は10年ほど前、李さんが主催するシンポジウムに出た。「在日の人の参政権」をめぐるシンポジウムだった。何と右翼の人を3人も呼んだ。まず、「参政権反対」の右翼2人。それに対抗するのが李さんと私だ。参政権を認める立場だ。かなり激しいバトルになった。
 このあと、右翼の新聞には、私は徹底的に批判された。「鈴木が売国発言!」と。「反日だ!」と。あれは、激しかった。でも、李さんは立場の違う右翼、3人も呼んでシンポジウムをやってくれたんだ。本当に偉いと思った。頭が下がる。

③小国とあなどって、約束は破っていいのか

鹿砦社弾圧3周年集会で(7/12)

 ここで、「加藤発言」に戻る。加藤さんは北朝鮮に行った小泉さんを評価する。小泉さんのやったことで唯一よかったことだという。これは賛成だ。それまでは、皆、口だけ激しいことを言っても誰も行こうとしなかった。遠くにいて文句だけ言ってれば支持率は上がるからだ。「現実」に向き合おうとしなかった。それを唯一、小泉さんはやった。だから、あの路線でやれば、もっともっと進展があった。それなのに、日本が約束を破り、その進展をぶち壊してしまった。さらに加藤さんは「BS11」で、こう言っている。あの当時、福田さんは、約束だから一旦帰そうと言った。それを受けて、こう言う。

〈だからもし、その当時、福田さんの言うとおりやってたら、六者会談は日本で行なわれ、日本がアジアの一番困難な問題を解決し、世界の中のひとつの大問題の北朝鮮の核という問題も非核化し、おっ、日本もやるじゃないかと、世界に思ってもらえたと思います〉

 今年の4月末に私は木村三浩氏と共に北朝鮮に行ってきた。労働党の幹部の人と徹底的に話してきた。その時、この「一時帰国」の話が出た。「北朝鮮は小さな国だと思って、日本はあなどっている。約束なんか破ってもいいと思ったんだ」と言う。確かにそう思われても仕方ない。
 これは日本とアメリカの関係をみたら分かりやすい。日本は小国とあなどられ、アメリカから無理難題を押しつけられている。だから、同じ小国の北朝鮮の事情も分かるはずなのに、今度は自分が大国気分で小国北朝鮮をいじめている。約束なんて、初めからなかった、と居直っている。これじゃ、「日本は交渉しようという気がない」と思われてしまう。
 又、日本の保守派の論調もひどい。「戦争を辞さずの覚悟で臨め」「金正日体制を打倒しよう」と言う。「この政権を打倒しない限り拉致問題の解決はない」と言う人もいる。
 これは全て、北朝鮮も見ている。テレビも週刊誌も、保守派オピニオン雑誌も見ている。そして思う。「何だ日本は、我が国の崩壊を望んでいるのか。 じゃ、交渉するつもりはないのか!」と。

毎日新聞(02年12/25)より

 又、そう思われても仕方ない情況だ。さて、最後に、事の発端になった「毎日新聞」を紹介しよう。02年12月25日だ。6年前のクリスマスの日に、私は言っている。まるでキリストだ。じゃ、いろんな人々に、このテーマで聞いたのだろう。では、その時の私の発言を紹介しよう。

手詰まり日朝。私はこう見る
=日本社会は気味が悪い状態になってる= 鈴木邦男

〈仮に拉致被害者5人の誰かが「いったん北朝鮮に戻って子供に会いたい」と言い出したら、日本の社会は許すだろうか。たとえ北朝鮮がひどい国だとしても、5人を一度北朝鮮に戻すと約束したのなら、政府は約束を破ったことを北朝鮮にわびるべきだ。そのうえで、日本の事情を説明すればよい。だが、日本の社会はそういう意見が言える雰囲気だろうか。
 9月の日朝首脳会談後、日本社会は気味が悪い、危ない状態になっている。北朝鮮問題に関する言論の自由がない。自由な言論を許さない人が政治家、そして市民の中に大勢いる。本当の意味での「戦い」をした経験がなく、拉致問題など二十数年間、無関心だったくせに、声の大きさで相手を威圧して押し切ろうとする「対北朝鮮強硬派」の大量出現である。
 彼らの抗議が怖いから、特に民放テレビは北朝鮮を悪くいう意見ばかり報道する。「北朝鮮にも幸せを感じながら、暮らしている人がいるかもしれない」などと言おうものなら大変だ。私のこの発言を読み、早速、抗議と脅迫を考える人がいるかもしれない。多様な言論を認めない社会は北朝鮮と同じだ。
 北朝鮮が独裁体制の危険な国だというのは分かるが、正常化交渉再開には賛成だ。交渉したから拉致被害者5人は帰ってきた。当面は中国やロシアに北朝鮮へ圧力をかけてもらうようお願いし、北朝鮮が話し合いのテーブルにつくのを待つしかないだろう。
 「どうしようもない国だ」と言い続けるのは、外交ではない。強硬に臨むだけでは、問題は何も解決しない。〉
【だいありー】
(左から)田島泰彦さん、松岡利康さん、鈴木(7/12)
  1. 7月14日(月)朝10時40分からジャナ専の授業。「時事問題」。北朝鮮と「加藤発言」について話をした。「たかじん」に出た時の話も。今日で前期は終わり。レポートを提出してもらった。
     授業を早めに切り上げて、目黒さつき会館に行く。ここは昔は、「鬼の動労」の本部だった。私も昔、街宣車で抗議に来た。今はJR東労組の建物だ。そのJR東労組の人に呼ばれて、木村三浩氏(一水会代表)と私が講演した。JR東労組元委員長の松崎明さんが主宰する「国際労働総研」の「役員リーダースコース」で話したのだ。会場一杯の人だった。木村氏は松崎氏とは初めてだった。お互い国際的に活躍しているし、スケールの大きい人物同士だ。すぐに意気投合して、話し合っていた。
     一水会をつくるまでの話を私がやり、そのあと、北朝鮮、アメリカ、イラクを含めて、国際情勢の中で、どう闘ってきたのかを木村氏が講演した。質疑応答も活発だったし、意義深い講演会になった。
  2. 7月15日(火)朝一番の新幹線で大阪へ。アムネスティの人と一緒に大阪拘置所に行く。「和歌山カレー事件」の容疑者・林眞須美さんの面会に行く。前から手紙のやりとりはあったが、初対面だ。新聞やテレビで報じられている印象とは全然違っていた。あの事件から、もう10年だ。一貫して無罪、無実を訴えている。保険金詐欺は認めている。だからこそ、「金にもならないことをやるはずがない」と言う。これは説得力がある。
     一般マスコミは、「いや、保険金詐欺をやる人間だから殺人もやってるに違いない」と言う。しかし、それは全く違う。それに、動機がない。目撃者がいない。自供もない。それでも「他に怪しい人間がいないから」というだけで10年もぶち込まれている。「疑わしきは罰せず」という言葉があるが、疑わしきは全て罰しているのではないか。なんともひどいと思う。
サスケさん(プロレスラー)と(7/10)
  1. 7月16日(水)10時半、歯医者に行く。夜まで、必死に原稿を書いた。夜7時から阿佐ケ谷ロフト。田代まさしさんが出所後、初出演した。凄い人だった。マスコミの人が入ると、一般の人が入れない。そこで急遽、5時からマスコミ向けの記者会見をやった。
     そして、「創」イベントは7時から。第1部は香山リカさんと篠田編集長で、「宮崎勤死刑」。第2部は田代まさしさん、篠田さん、私。第三部は阿曽山大噴火さんを中心に、裁判員制度について。
     私は2部から終わりまで出た。会場は立錐の余地もない。ビッチリだ。立ち見の人も多い。北海道、九州から駆けつけたたファンもいる。「マーシー!」とファンの歓声。中には、「右翼なんかに負けるな!」という声も飛ぶ。別に私は闘うわけじゃないよ。田代さんの味方だ。マーシーも感動していた。
     それにしてもご苦労様でした。3年半ぶりの娑婆で、まだ「リハビリ中」と言いながらも、ギャグを飛ばしたりして、ファンサービスに努めていた。逮捕される直前、田代さんとロフトプラスワンでイベントをやった。田代さんは金嬉老のビデオ(全3巻)を撮った。その話を中心にした。とてもいいビデオだ。金嬉老は1968年に、静岡県の寸又峡に立てこもった。その中で、「朝鮮人差別」を糾弾し、差別をした警察官がテレビに出て謝罪した。凄い事件だった。
     それまでも、人質をとった事件はある。しかし、皆、金や女など個人的動機だ。この金嬉老事件は、人質をとって、〈思想〉を訴えた事件としては初めてだ。この2年後、よど号ハイジャック事件、三島由紀夫事件が起きる。これらに与えた影響も大きい。
     田代さんとはその話をした。金嬉老は釈放されて韓国にいる。田代さんは韓国まで行き、「その後の金嬉老」も撮っている。「じゃ、今度僕も連れて行って下さいよ」と言った。ぜひ金嬉老に会ってみたい。「思想的」立てこもりのルーツだし。「じゃ、行きましょう」と田代さんは言っていた。でも、その直後に捕まってしまった。
     はじめ、中野警察署に入っていたので、家から近いこともあり、何度か面会に行った。それから3年半か。「長かった。つらかった」と言っていた。
     「これからは月一回、田代さんのイベントをロフトでやります」と篠田さんは言っていた。いいことだ。捕まるまで田代さんは「創」で連載を持っていた。じゃ、又、連載を再開したらいい。連載が多過ぎるのなら、私を外してもらってもいい。ぜひ田代さんに「敗者復活戦」のチャンスを与えてあげてほしい。そう言った。
     仕事のない私は、言ってから、「しまった!」と思ったが、もう遅い。田代さんのためなら、連載をクビになってもいいですよ。
「SPA!」(7/22号より)
  1. 7月17日(木)昼、取材。午後3時から河合塾コスモ。本当は先週で前期は終わりなんだが、北朝鮮に行って一回、休んだので、この日は補講だ。5時からの基礎教養ゼミは、牧野剛先生が選んだ本をやる。喜安朗の『パリの聖月曜日=19世紀都市騒乱の舞台裏=』(平凡社)を読む。9月18日(木)のこの時間は、特別に「雨宮処凛講演会」をやることになった。17日(木)、午後7時から汐留で、週刊誌記者との合同勉強会。北朝鮮問題などを中心に話す。
     この日、『週刊SPA!』(7月22日号)発売。特集「16年ぶりに勃発した大阪西成暴動の真実」。6ページの特集で、最後のページは、「現代の思想家が語る西成暴動」。二人が出ている。一人は、「希望は戦争」の赤木智弘さん。「暴動はグリーンピースの窃盗と同じ。実績を崩壊させる」。もう一人は、私。「正義の暴動と“批判の刃”で、政治も変わる!」。
     この暴動は権力に向かっている点がいい。どんどんやれ。そうしたら秋葉原事件のような「陰惨な異議申し立て」も起こらない。私らは昔、全共闘と毎日、殴り合いをしていた。殴り合いをしていたからこそ、殺人はなかったのだ。

    〈だから権力者の側こそ、「不満があるのだったら、自分たちに向かってこい」と隙を見せるくらいにしなくちゃいけない。そういう度量の大きさが必要です。もし、私が首相だったら「こんな社会をつくった責任は自分たちにあるんだから、文句があるんだったら自分たちに向かってこい。そのかわり弱者同士で殺し合うな」と言いますよ〉

     おう!何とも過激なことを言ってるもんだ。この人は。普段、鬱屈したものがあるのかもしれない。それとも人間関係でいやなことがあったのか。あるいは暴動を自分でもやってみたいと思ってるんだろう。危ないですね。100才の誕生日を前にして。
  2. 7月18日(金)昼、取材。7時から阿佐ケ谷ロフト。秋葉原事件についてのトーク。井上トシユキ、赤木智弘、古澤克大、ウェルダン穂積、スパルタ教育、中沢健、そして私。かなり盛り上がった。うるさい客がからんできたので水をかけてやった。ロフトでは許されるのだ。この位は。
  3. 7月19日(土)昼、打ち合わせ。夜7時から三軒茶屋に行く。ニューヨークから渡辺真也氏が来日したので、彼を歓迎する会。美術家、建築家が多い。石原都知事の息子さん・延啓(のぶひろ)さんも来ていたので驚いた。嬉しかった。夜遅くまで話し合った。渡辺氏は、去年の4月ニューヨークに私を呼んでくれた人だ。ベアテさんと共に「憲法シンポジウム」をやってくれたんだ。今度は8月12日まで9条をめぐるイベントをやる。その準備で来ている。元気だった。又、お世話になります。
  4. 7月20日(日)朝一番の新幹線で新大阪へ。そこから乗り換えて和歌山へ。林眞須美さん支援集会。和歌山市民会館で。和歌山カレー事件を考える人びとの集い(第3弾)。「私は無実!カレー事件から十年」。私も、面会報告をした。眞須美さんの旦那さん、娘さんに会った。又、安田弁護士、浅野健一さんにも会った。7月22日(火)は又大阪だし、この2週間で5回も東京−大阪間を往復している。凄いね。
【お知らせ】
  1. 『論座』(朝日新聞社)が休刊と決まった。9月1日発売の10月号をもって休刊となる。残念だ。悔やしいね。日教組委員長との対談をやってもらった。他に、宮崎学、岡留安則さんらとも対談した。原稿もかなり書いた。「自由な言論の場」だったのに。いろんな立場の人に「言論の場」を与えてきた。もう自由な言論の場は「創」しかないよ。その「創」の連載も田代さんに譲ると明言しちゃったし。もう、私にはどこにも書く場はない。「俺達は言論の場がないからテロをやるんだ」と右翼の人は言う。私もそうなるかもしれない。「崖っぷちのクニョ」だ。
  2. 7月26日(土)午後1時半から6時。「平和力フォーラム」。八王子・子安市民センター3F。内田雅敏さん(弁護士)と私の「左右対決」です。テーマは「言論の自由と責任」。井上ともやすさんの歌もあります。
  3. 7月28日(月)7時、ロフトプラスワン(新宿ですよ)。若松孝二さん(映画監督)と私のトーク。二人の北朝鮮報告です。若松さんは5月に訪朝し、「よど号」グループに映画「実録・連合赤軍」を見せて、語り合ってきました。その時の話を聞かせてくれます。
     又、漫画家の山本直樹さんも出てくれることになりました。連赤事件を描いたマンガ『レッド』の第2巻がこの日、出ます。
  4. 7月29日(火)午後7時、静岡市のスナック「バロン」でトーク。植垣康博さん(元連合赤軍兵士)と私。映画「実録・連合赤軍」を中心にして話します。一般の方でも自由に入れますのでどうぞ。問合せは「バロン」に。tel:054(221)5233です。
  5. 8月6日(水)シンポジウム「憲法9条と戦後日本・戦後美術」に出ます。太田昌国さん、中原佑介さんと。午後6時半より。代官山ヒルサイド・フォーラムで。
  6. 8月7日(木)7:00p.m.から高田馬場のサンルートホテル。一水会フォーラムです。何と、田原総一朗さんが講師で来ます!演題は「民族派への期待と疑問」です。お楽しみに。
  7. 8月9日(土)「アートで表現するYASUKUNI」に出ます。日本教育会館901号室。第1部「ヤスクニと表現をめぐって」に出ます。
  8. 8月9日(土)、8月10日(日)午後8時半から阿佐ケ谷ロフトで劇団再生のお芝居「罪と罰」が上演されます。それに先だって7時半からトークライブ「罪と罰?表現の自由?」があります。私も2日間出ます。
  9. 8月20日(水)阿佐ヶ谷ロフト。落語家の快楽亭ブラックさんと出ます。(7月と8月の2ヶ月間で何と6回もロフトに出る。凄い。ちょっと出過ぎだ。申し訳ありません。
  10. 8月27日(水)夜9時より、新宿二丁目のゲイバーで伏見憲明さんとトークイベントをやります。
  11. 9月5日(金)帝銀事件の平沢貞通さんの絵画の展示会が行われます。それを記念して、「国家に殺された画家・平沢貞通」のシンポジウムが行われます。午後3時から。平沢武彦氏、針生一郎氏、そして私です。私も、平沢さんの絵については少し勉強したし、書いているのです。お楽しみに。特に、戦時中に平沢さんが描いた〈戦争画〉については、いろいろと調べて勉強しました。
  12. 9月18日(木)午後4時50分より、河合塾コスモ(新宿)で雨宮処凛さんの講演会。「生き地獄天国=生きにくい現代社会を楽しく生きる方法=」です。一般の人も参加できますので、いらして下さい。牧野剛、鈴木邦男も含めて、鼎談形式でやります。
  13. 9月24日(水)午後6時。日本国体学会で講演します。里見岸雄について話します。里見は『天皇とプロレタリア』『国体に対する疑惑』という衝撃的な本を書き、天皇論に革命を起こした人です。三島由紀夫や竹中労など影響を受けた人は多いです。私もそうです。そんな話をします。
     午後6時から、中野サンプラザ8階一号室です。演題は「現今の天皇論をめぐって−里見国体学との出会い」です。
  14. 10月12日(日)憲法についての集会で呼ばれて話します。
【お知らせ・2】

 いつまでも、ダラダラと生きていると思われちゃ困る。やはり、やる時はやらなくちゃ。生きてる証(あかし)を見せてやる!来週は、世間をアッと驚かせてやる!