2008/08/04 鈴木邦男

青春と運動と読書
『失敗の愛国心』座談会

※出席者

 

鈴木邦男(昭和18年生)

成島健二(昭和33年生)

山口正之(昭和37年生)

関口和弘(昭和42年生)

はじめに

『失敗の愛国心』(理論社)

 「生きてるの?」「大丈夫か?」と電話やメールを沢山頂きました。すみませんでした。お騒がせしました。ご心配をおかけしました。なんとか生きております。そして無事、誕生日も迎えました。何才になったのかは忘れましたが。
 でも、それだけ必死の覚悟と決意をもって書いた本だということです。それだけは分かってもらえるかと思います。7月28日(月)に出した『愛国の昭和』(講談社・1500円)です。
 今週は、ご心配をおかけしたお詫びに、特大企画をお贈りしましょう。四人の若者による特大座談会です。まあ、若者でない人も何人かいますが。全部がそうかな。前に出した『失敗の愛国心』を叩き台にしながら、読書や運動や人生について、思う存分、語っています。関口和弘君がまとめてくれました。ありがとうございました。

(鈴木邦男)

①『腹腹時計と狼』から『失敗の愛国心』へ

関口よろしくお願いします。本日は『失敗の愛国心』に感激した、いまだに独身で、失敗と挫折を繰り返してきた中年三人による、あっ鈴木さんも入れて四人の…。

山口鈴木さんは成功者だろう?

鈴木失敗者だよ、今だって(笑)

一同(笑)

関口はい。それでは四人の座談会を始めたいと思います。まずは自己紹介も兼ねてほんの感想を。長男の成島さんから(笑)

山口兄弟なの俺らは?『だんご3兄弟』ってあったけど。

鈴木いいね。それで売り出せよ!面白いよ!

関口いやですよ。おっさん三人組なんて(笑)それに『だんご3兄弟』ってずいぶん前ですけど。いまは三人組といったら“パフューム”とか。

鈴木なにそれ?アイスクリーム?

関口女性シンガーですよ。キャンディーズみたいな。ポリリズムなんとかって流行ってますよ。

鈴木へぇ、そうなの(ノートにメモする)

山口いいから、成島さん感想を。

成島まず感じたのは“うしろめたさ”が鈴木さんの心にずっとあるんだなぁということですね。同じ年の山口二矢や早稲田でいっしょだった森田必勝。特に森田さんに対するうしろめたさが運動から離れられなかった理由なのかなって。

鈴木うーん、それはあるかもしれない。

成島全国学協を追い出されて、「四国の大学に入りなおして運動を続けよう」という箇所があります。自分探し、居場所探しというか、結局右翼運動が一番居心地がよかったのかなと。

鈴木どこ行っても追い出されるんです。無能だから…

成島政治運動に関わっているからいいけど、そうじゃなかったら、たんなるフリーターの中年ですからね(笑)

関口フリーターというかワーキングプアの元祖ですね、鈴木さんは(笑)成島さん、鈴木さんとの出会いは?

成島名前を知ったのは『腹腹時計と狼』です。衝撃でした。右翼が新左翼を紹介するなんて。

鈴木そうか、成島君は新左翼出身だもんね。それで紆余曲折があって、一水会に来たんだ?

関口たどり着いたのが一水会。運動の終着駅みたいな(笑)

山口俺も高校生の時に『腹腹時計と狼』を読んだのがきっかけ。古本屋で見つけたんだけど。

鈴木二人ともすごいね!『腹腹時計と狼』を読んで一水会に入ったのは、いまでは木村君ときみたちだけだよ。

関口おかしな高校生ですね。友達いました?

山口どういう意味よ(笑)

関口別に深い意味は。それより感想お願いします。

山口あっ本の感想ね。これは鈴木さんの自叙伝だよね。『腹腹時計と狼』から鈴木さんの本はほとんど読んでるけど

鈴木おーっ、すごい!

山口一番読みやすいし、右翼に興味がない人にも、共感を持って読まれるんじゃないかな。子供から大人まで幅広い層に受け入れられる気がする。

鈴木実はそういう気持ちで書いたんだよね。とにかく業界だけに通じる言葉は使わないようにしようと。中学生向けというふれこみだけど、だからってレベルを落とすとかそういう発想はまったくなくて。またそんなこと思ったら読む人は「手抜きじゃないか」って気づくだろうし。

山口マンガや写真も効果的に使われているし。

鈴木山口君はレコンキスタにマンガを連載してたよね。面白かったよ!また描いたら?

山口マンガはまた描きたいですけど…連載させてくれるなら。

鈴木この本でも最初からここはマンガ、ここは写真と決めてたわけじゃなくて、このテーマを伝えるにはどうすればわかりやすく伝えられるだろう、と考えた結果こうなったんだよね。

山口なるほど。その試みは成功してますね。

関口やっぱり失敗者じゃなくて、成功者ですよ。

山口関ちゃんはどんな感想?

関口僕ははじめ読む気がしなかったんです。

鈴木どうして?

関口成功者のくせに「失敗」を売り物にして。売国奴じゃなくて売本奴ですよ(笑)

鈴木なんだよそれ(笑)

関口税務署長の家庭に育って、早稲田の政経、生長の家幹部候補で産経新聞…どう考えたってエリートコースを歩んでいるのに、失敗だなんて。

鈴木失敗や挫折ばっかりだよ。

関口はい、本を読んでわかりました(笑)悲惨な青春時代ですよね。逆にかわいそうになっちゃいました。よく自殺しないで生きてこれたなって。傷だらけの人生ですよね。メチャクチャですよ。

鈴木そこまで言わなくてもいいだろ(笑)

関口でも、実は泣いてしまったんです。

一同えー(驚く)

関口174頁の言葉に。「今はきつくてたまらない・・・笑えるときが来る」この本もこの言葉にたどり着くまでのドラマ、小説や映画のように読みました。内容だけでなく構成というか展開にも感動しました。

山口作家志望の関ちゃんらしい感想だねぇ。

関口とくに挫折感、「こんなはずじゃなかった…」と落ち込んでいるときだったので励まされました。希望を持とうと。

鈴木ありがとうございます。

関口いえ、こちらこそ。

②親の背中と政治運動

『失敗の愛国心』掲載の鈴木の家族写真

山口感動といえば、鈴木さんの家族の写真が載ってるけど、いい写真ですね。

鈴木最初は恥ずかしいからいやだったんけど。両親を紹介するのに、文章だけじゃなくて写真のほうがいいかなって。

関口厳格さと優しさを感じます。“百聞は一見にしかず”で写真の力は大きい。

鈴木みんなの親はどんな人だったの?

山口うちの親父は他界したけど元軍人で厳しかった。母親は情報局のタイピストをやっていて公言できないような機密情報も知ってたみたいよ。戦後は首相官邸でタイピストとしてレッドパージの書類を作成してGHQに届けた話とかよく聞いた

鈴木それはすごい!お母さんは元気なの?

山口少し耄碌がはじまってしまって…

鈴木山口君がお母さんの一代記を書かなくちゃ!貴重な体験をしてるんだから、もったいないよ!

山口小さいときから東京大空襲の体験話とか。親父は「お国のために戦った方々に感謝しなければいけない」とよく言ってたし、毎年8月15日は親父に靖国神社へ連れられ一緒に参拝してた。今思うと仲間への哀悼が強かったのかもしれない。

鈴木「お前もいつかはここで祀られるんだよ」って教えられたんだ(笑)

関口それで右翼に?自衛隊じゃなくて?

山口小学生のときは右翼も自衛隊も同じ団体だと思ってたもんね。

一同(笑)

山口だって日の丸つけてたから。街宣車も、戦車もかなって(笑)近所によく駐車してたしね。

関口山口さんの実家は新宿で市ヶ谷の近くですもんね。三島・楯の会事件の時はどうだったんですか?

山口小学生だったけど、なんか大事件が起きたという空気は身近に感じてた。それと靖国通りに近かったから、よく左翼のアンポ反対のデモや新宿騒乱事件とか、大学生の印象というと長髪で、当時ヒッピーっていったかな、ああいう連中が不気味で怖かった。あと新宿の追分派出所のクリスマスツリー爆弾事件、あの辺は家族で買い物するとき通るから身近な恐怖感があったし左翼は平気で爆弾で人を殺すみたいな。浅間山荘事件とかもリアルタイムで見たし。

鈴木右翼はいい人だったんだ。

山口「天皇陛下を尊敬する人に悪い人はいない」と教えられてたからじゃないかねぇ。

関口右翼はいい人で、左翼は人殺し?(笑)

成島右翼も人は殺しますけど。戦後ではごく少数で、山口二矢や見沢知廉さんとか。

関口人を殺傷したという点では同じかもしれませんが。成島さんのご両親は?

成島二人とも他界してます。僕の父も軍人でした。自称、特攻隊の生き残り(笑)あとでどうも違うみたいだということがわかって。

鈴木でもそういう話はあるよね。自分を一番過酷な状況におきたい願望みたいなものがあるんだよ。学生運動だっていっぱいいるよ。

成島あーなるほど。最前列で機動隊と戦ったみたいな。

関口でも成島さんは、父が軍人でも右翼の道は進まなかった(笑)

成島母が炭鉱に勤めていたんです。事務員でしたけど。

鈴木『青春の門』みたいだね。五木寛之の。あれに憧れて早稲田に入った学生多いんだよ。

関口父が軍人、母が炭鉱の労働争議…成島さんの中に右翼と左翼が同居してたのかな。でもお二人の話を聞くと、生まれた土地柄や両親の体験というのは思想形成に大きく影響してるんですね。

鈴木関口君は?お母さんは元気?

関口はい。なんとか。

鈴木勉強会にも来てくれたんだよね。珍しいよ、お母さん連れてくるなんて。

関口誘う友人がいないもので(笑)鈴木さんの『宗教なんてこわくない』や『愛国者は信用できるか』も愛読してますよ。

鈴木それでお母さんは軍人だったの?

関口残念ながら(笑)長崎の佐世保出身でして、原爆の“きのこ雲”見たといってました。昭和13年だから終戦は7歳ですが、米兵(一部)の蛮行はしょっちゅうあって、姉と一緒に怖い目にあったという話は聞きました。

鈴木こんど山口君と関口君のお母さんで対談やったら?

成島“右翼の母”対談(笑)

関口なんか“よど号の妻”みたいな響きだな(笑)“右翼の妻”はどうですか?

山口妻帯者は逆に珍しい世界だから(笑)

関口早く結婚してくださいよ!

山口関ちゃんこそどうなのよ?

③メディアの影響と一水会

関口そういえば成島さんも山口さんも『腹腹時計と狼』で鈴木さんを知ったんですよね?
僕は本ではなくテレビでした。文章ではなく映像が出会いです。今だったらインターネットで知ったという人が増えてるのかもしれない。

山口最初は本だったけど、俺の場合文芸座の「左右激突討論会」で見た鈴木さんの印象が強烈だったんよ。

鈴木あれ見てたの?すごいね。田原さんが司会で、『朝まで生テレビ』の原点だよ。

関口山口さんリアルタイムで見たんですか?やっぱり深夜だったんですか?

山口たしか深夜だった気がする。中上健次が頑張ってた。右は鈴木さんだけだったんじゃないかな。

関口それが好評で『朝まで生テレビ』につながったんですか。僕は“日本の右翼”で鈴木さんと木村さんを知った。野村秋介さんは前から知っていた。

鈴木へー、野村さんはどうして知ったの?

関口高校の時、三島を知り、野村さんを知りました。『諸君』の文章で。三島は死んでしまったけど、野村さんは生きている。絶対野村さんに弟子入りしようと思ってた。

山口関ちゃんの高校時代もかなり変わってたんじゃないの?

関口お互い様ですね(笑)それで四谷公会堂の一水会現代講座に行き、野村さんが講師だったんですけど、付き人の方が怖くて(笑)僕には無理だなと。

成島第一志望に落ちて、一水会(笑)

関口いや、すんなり入れたわけじゃなくて。伝説のI川さんに…

山口あー、そういえばからまれてたね(笑)

関口なんで助けてくれなかったんですか?

山口飲むと誰にでもからむのよ。だけど俺は一度もからまれかったねぇ。仲良かった(笑)

鈴木何があったの?

関口「おまえなんかが来るところじゃない」とか「警察と戦う勇気もないのに三十年早い」と怒られまして…

鈴木そんな事言われたの。I川はもともとアナーキストで牧田吉明さんと一緒にやってたんだよ。

関口いい加減なやつと思われたんでしょうね。

山口でも関ちゃんみたいな会員がいてもいいんじゃない、似たような人間ばかりよりも。

鈴木成島君だってもともとは新左翼だし。いろいろな経験をした人たちが自由に集える場にしたかった。それは創ったときから変わらない。だから三人とももっと頑張らなくちゃ。

山口運動という面では、鈴木さんや木村さんがマスコミで活躍してくれていたからやりやすいというのはあったんよ。

成島それは世間の認知度みたいな。

山口それもあるし、うちの両親なんかテレビで鈴木さんや木村さんをみて、「まじめにやってる団体なんだね」と評価してたし。

鈴木それはありがたい。

関口テレビやマスコミに出ることが目的ではないでしょうけど、出ることによってまた見識が広がるし、勉強しなくちゃならないし。僕もNHKの討論会に出て勉強になったし。

山口俺なんか会社員の頃フジテレビのスーパータイムでインタビューされて顔も名前もばっちり出ちゃって。それを親会社の人達が食堂で見てたようでビックリしたらしいよ(笑)

鈴木あの頃は、取り上げる番組がいっぱいあったよね。ドキュメンタリー番組も多かった。

成島なにか事件があると取り上げていた。狙撃未遂事件とか。

関口そうですね。生テレビの“日本の右翼”も長崎市長の事件があったからです。

山口ユーチューブでは見れるらしいね、昔の番組。

成島オウムの一連の騒動から、右も左もテレビが取り上げなくなった気がするんですけど。政治、思想集団には触れるのよそうみたいな。

④一水会ロートル会員の逆襲

関口それがいいのか悪いのかはわからないけど、当の組織なり集団が陰にこもるのだけは駄目ですよね。

山口そういう面では一水会はオープンな組織だよ。

成島僕なんかしばらく離れてたけど、いつでもまた顔出せるし。前にいた組織だったら考えられないし。

関口成島さんは最近逃走してたらしいですね。

山口えっ何の闘争してたの?

関口闘うトウソウじゃなくて、逃げるトウソウですよね

山口あーそっちの方。事務所の金を持ち逃げしたとか(笑)

鈴木そんな金ないだろ(笑)

成島いえ、仕事に集中してただけです。

山口そうだよね。仕事しなきゃ食えないからね。それでみんな苦労してるんよ。

関口本の中で専従について鈴木さんのお父さんの意見がありますが、すごく感銘を受けました。

鈴木うん、そういう人だったんだよ。

山口それが今でも鈴木さんや一水会に受け継がれてるんだよね。

関口そろそろ時間となりまして、鈴木さんから一言。

鈴木はい、今日はどうも。今度レコンキスタが350号を迎えるけど

山口350!?すげーじゃん!

鈴木みんなもマンガだったり文章で連載してたけど、いまはインターネットやブログもあって表現する媒体は広がってるし、三人ともいろんな経験をしてるんだから、僕が『失敗の愛国心』を書いたように、成島君も山口君も関口君もどんどん書いて発表しなくっちゃ。お母さんの話も貴重な題材だし。すぐにでも聞き取りしなくちゃ。僕も木村君もいつでも力になるし、がんばってください!

一同はい、ありがとうございます。

【だいありー】
講談社の打ち上げパーティで。左から岡部さん、斎藤さん、林さん、鈴木、潮さん(7/23)
  1. 7月28日(月)『愛国の昭和』(講談社・1500円)が発売。書店に並ぶ。嬉しい。これが最後の本か、と愛着もわく。デザインもいいし、目立つ。講談社も力を入れてくれた。
     この日、『週刊朝日』(8月8日号)も発売。「週刊図書館」の中の「あの本、あのとき、あの場所の一冊」のコーナーに書いている。タイトルは「兆民に叱られ救われた」。命をかけてやっていた学生運動から追放され、仙台の実家に帰っていた。38年前だ。鬱々として、投げやりになっていた。「もう人生は終わった」と絶望していた。その時、中江兆民の『一年有半』に出会い、衝撃を受けた。その時の話を書いた。
     中江兆民の弟子に幸徳秋水がいる。大逆事件に巻き込まれ死刑になった人だ。しかし、明治天皇はこの時、「罪あらば我をとがめよ天つ神 民は我が身の生みし子なれば」という歌をよんだ。自分を殺そうとした者をも許してやれと言ったのだ。凄い話だ。でも幸徳らは殺された。それも、ほとんどは冤罪で。
    その話は、『愛国の昭和』で詳しく書いたので、読んでほしい。

     午後3時、私の本の読者の方、二人と会う。ちょうど上京したとのことで。教育関係の仕事だそうで。私の方がむしろ教えられ、勉強になりました。
     夜、7時半から新宿のロフトプラスワン。「よど号ハイジャックから連合赤軍への道程」
     5月に訪朝し、よど号グループに映画「実録・連合赤軍」を見せてきた若松孝二監督と、4月に訪朝した私。それに、この日、『レッド2』(講談社・952円)が出た漫画家の山本直樹氏。三人の熱いトークが展開された。「これが遺書だと言うんで、ロフトには来れないかと心配してました」と梅造さんに言われた。申し訳ありません。
     『レッド』は連合赤軍を真っ正面から取り上げた迫真のドキュメントだ。年に1巻ずつ出ている。「あさま山荘までには5、6年かかるかもしれません」という。ずっと続けてほしい。
     「ハイジャックがなければ連赤事件は起こらなかった」と若松監督。指導グループが北朝鮮やアラブに行ってしまい、残されたグループだけで山に登った。そこに原因があったという。
     その他、お二人から驚くべき話を聞かされた。
ロフト。「雨宮処凛が読みとく『蟹工船』で。(7/25)
  1. 7月29日(火)昼、雑誌の取材。5時の新幹線で静岡へ。7時からスナック「バロン」で連合赤軍事件についてのトーク。このスナックのオーナーは植垣康博さん。元連合赤軍兵士で、獄中27年の闘士だ。『兵士たちの連合赤軍』(彩流社)は名著だ。山本直樹氏の『レッド』も、この本を下敷きにしている。
     店には、映画「実録・連合赤軍」と「靖国」のポスターが貼られている。実は、植垣さんが中心になり、「靖国」の自主上映会を静岡市でやった。何と二日間で二千人が見た。凄い。「じゃ静岡市民の1割が見たんですね」と言ったら、「静岡の人口はもっとあるよ」と訂正された。でも、凄い話だ。新聞が大きく報道してくれ、それで人が集まったという。宣伝費はゼロだ。「右翼が騒いでくれたんで、それが宣伝になった。右翼のおかげだ」と感謝された。でも、私は騒いでない。騒ぎをしずめようとしたんだ。申し訳ない。
     この日は、沢山の人が来てくれた。元警察官(公安)の真田左近さんも来てくれた。『公安化するニッポン』(WAVE出版・1400円)で私とも対談している。「最近こんな本を出したんです」ともらった。『蒼空の雫・ソロモン征空戦』(学研・900円)だ。彼は警察の前は航空自衛隊にいた。だから戦記には詳しい。面白そうな本だ。
     植垣さんは、出所して10年になる。「バロン」をやって8年目だ。そんなになるのか。「今年10月に、出所10周年パーティをやろうかと思ってる」と言う。「出所…」じゃ、ホテルはどこも貸してくれないよ。「再生記念」とか、「人間復帰記念パーティ」にしたら、と言った。
(左から)鈴木、内田雅敏さん、前田朗さん(7/26)
  1. 7月30日(水)3時半、歯医者。夜、座談会。
  2. 7月31日(木)原稿が進まない。午後、河合塾コスモ。授業はないが、自習室で勉強。静かだから、はかどる。『愛国の昭和』を先生や職員の人にあげる。「玉砕」については漢文の武内先生に個人授業してもらって書いた。私も一人のコスモ生として勉強して書いたのだ。新しい境地を開いた本になったと思う。「バロン」の植垣さんも、「これは久しぶりに鈴木さんが真面目に書いた本です」と推薦していた。他の本だって皆、真面目に書いてるんだけどな。
  3. 8月1日(金)昼、取材。それから図書館。対談。
  4. 8月2日(土)明治大学の学生5人が本を読んで話を聞きたいというので、喫茶店で話す。よく勉強している学生だ。偉い。私も久しぶりに学生気分になった。知的刺激を受けた。感謝。
     夜、田中義三さん宅にお邪魔する。義三さんは「よど号」ハイジャックをした人だ。カンボジアでニセ米ドル容疑で逮捕され、タイで裁判になった。その時、私は5回タイに行き話をし、意気投合した。ニセ米ドル事件では無罪になったが、「よど号」事件で日本に送られ、12年の刑を受ける。熊本刑務所に収監されたが、去年1月に病死した。何とも残念だ。娘さんが3人いる。「娘たちにお父さんの話をしてほしい」と頼まれた。田中さんの裁判の時は私も「証言」した。右翼の事件だって「証言」したことはないのに、「出てきたら二人で新しい運動を起こそう」と田中さんは言っていた。それを楽しみにしていたのに…。
     そうだ。この日は私の誕生日でもある。お祝いをしてもらった。申し訳ない。とてもおいしかったです。ごちそうさまでした。田中さんは今年7月に還暦だったはずだ。私だけ生き残ってすみません。
八王子平和力フォーラム(7/26)
  1. 8月3日(日)午前10時半から午後5時まで、ぴっちりと「古事記」の勉強会。毎月参加している。とても勉強になる。
【お知らせ】
(左から)鈴木、若松孝二さん、山本直樹さん(7/28)
  1. 8月4日(月)この日、秋葉原に行きます。暴れてやります。気分がムシャクシャしてるからです。発散させてやります。これは予告です。ゲーセンで思い切りゲームをやります。ゲーセンのライフルを思い切り射ちまくります。メイド喫茶だってハシゴしてやります。一生一度の大冒険です。決起です。
  2. 8月6日(水)シンポジウム「憲法9条と戦後日本・戦後美術」に出ます。太田昌国さん、中原佑介さんと。午後6時半より。代官山ヒルサイド・フォーラムで。
  3. 8月7日(木)7:00p.m.から高田馬場のサンルートホテル。一水会フォーラムです。何と、田原総一朗さんが講師で来ます!演題は「民族派への期待と疑問」です。お楽しみに。お早めにおいで下さい。
  4. 8月9日(土)「アートで表現するYASUKUNI」に出ます。日本教育会館901号室。第1部「ヤスクニと表現をめぐって」に出ます。
  5. 8月9日(土)、8月10日(日)午後8時半から阿佐ケ谷ロフトで劇団再生のお芝居「罪と罰」が上演されます。それに先だって7時半からトークライブ「罪と罰?表現の自由?」があります。私も2日間出ます。
  6. 8月12日(火)6:30p.m.、渋谷のアップリンクファクトリー。ガンダーラ映画祭。私もトークで出ます。
(左から)真田左近さん、植垣康博さん、鈴木(「バロン」で7/29)
  1. 8月20日(水)阿佐ヶ谷ロフト。落語家の快楽亭ブラックさんと出ます。(7月と8月の2ヶ月間で何と8回もロフトに出る。凄い。ちょっと出過ぎだ。申し訳ありません。
  2. 8月27日(水)午後9時より、新宿二丁目のゲイバー「Fmf(メゾフォルテ)で、伏見憲明さんとトークをします。「右翼と語る恋愛、結婚、同性愛、差別、国家、天皇。鈴木邦男とオカマが飲み明かすナイト!」。凄いテーマですね。がんばります。どうなることやら。楽しみです。チャージ500円+ドリンク1000円からだそうです。ぜひ、聞きにいらして下さいな。
  3. 8月29日(木)午後6時、樋口篤三さんの『社会運動の仁義・道徳』(同時代社)の出版記念会。この本では私も、巻末で樋口さんと対談しております。
  4. 9月5日(金)帝銀事件の平沢貞通さんの絵画の展示会が行われます。それを記念して、「国家に殺された画家・平沢貞通」のシンポジウムが行われます。午後3時から。平沢武彦氏、針生一郎氏、そして私です。私も、平沢さんの絵については少し勉強したし、書いているのです。お楽しみに。特に、戦時中に平沢さんが描いた〈戦争画〉については、いろいろと調べて勉強しました。
     実は『愛国者の昭和』に書いたのです。平沢さんの戦争画について、かなり詳しく書いてますので、読んでみて下さい。
「週刊朝日」(8/8号)より
  1. 9月18日(木)午後4時50分より、河合塾コスモ(新宿)で雨宮処凛さんの講演会。「生き地獄天国=生きにくい現代社会を楽しく生きる方法=」です。一般の人も参加できますので、いらして下さい。牧野剛、鈴木邦男も含めて、鼎談形式でやります。
  2. 9月24日(水)午後6時。日本国体学会で講演します。里見岸雄について話します。里見は『天皇とプロレタリア』『国体に対する疑惑』という衝撃的な本を書き、天皇論に革命を起こした人です。三島由紀夫や竹中労など影響を受けた人は多いです。私もそうです。そんな話をします。
     午後6時から、中野サンプラザ8階一号室です。演題は「現今の天皇論をめぐって−里見国体学との出会い」です。
  3. 10月12日(日)憲法についての集会で呼ばれて話します。