7月13日(日)放映の「たかじんのそこまで言って委員会」に出た。北朝鮮問題で私は孤立し、全員に集中砲火を浴びた。北朝鮮と話し合いをすべきだと言ったら、「それでも日本人か!」「あんな国が信用できるか!」と。大変だった。その時の様子はレポートした。その時、ゲストで李英和さん(関西大学教授)が出た。この人は拉致問題、脱北者問題では命がけで闘っている人だ。これは誰もが認めることだろう。よく命があるものだと思う。
ところが、「経済制裁を解除しても、拉致された人々を取り返すことは出来る」と一言いっただけで、「裏切り者め!」「お前は二重スパイじゃないか!」と各方面から罵倒を浴びた。とにかく、いつまでも経済制裁しろ、断固として圧力を加えろ!…と、それだけなのだ。「話し合い」などもっての外だ。と言う。では、いつまでたっても解決はない。李さんは、北朝鮮を「交渉の場」に上げようと言っただけなのに、こんな言われようだ。
だったら文句を言う人々が北朝鮮に行って対決し、取り戻してきたらいい。しかし、そんなことはしない。「私のような人間はどうせ入れてくれない」と言い、はじめから交渉もしない。そして、「私こそが最も北朝鮮と闘っている」と言う。
でも、断わられても断わられてもビザを請求し、18回目にして、やっと行った人もいる。「どうせダメだから、日本にいて文句を言うんだ」では、〈逃げ〉だ。そこに安住して、大声を出してるだけじゃないのか。
少なくとも李英和さん以上に、生命がけで闘っている人は日本にいない。その人に対し、「二重スパイじゃないの」は酷いだろう。収録が終わってから李さんと話をした。久しぶりだ。「そういえば、在日参政権の集会の時も叩かれましたね」という話になった。李さんの主催するシンポジウムに僕も出た。李さんは心の広い人で、何と右派の人間を三人も呼んでくれ、4人で討論をやった。二人の右派は、「参政権などとんでもない」と言う。そして、李さんと私が「参政権賛成」だ。
右翼の人もかなり聞きにきていた。私は随分と野次られた。それだけでなく、右翼陣営で一番大きな新聞「国民新聞」に、「鈴木が売国発言」「反日だ」と大々的に糾弾された。「あの時は大変でしたね」と李さんも同情してくれた。「あれはいつでしたかね。5、6年前かな」と言ったら、「もっとずっと前ですよ。10年以上前です」と言う。
ウーン、いつだったんだろう。それで家中探してみた。だが分からない。六畳一間の木造アパートなのに、見つからない。家は本の山だ。資料の山だ。宝の山のようだが、探せなければ、ただの「ゴミの山」だ。本は人にあげたり、ブックオフに売ったりして、どんどん整理している。しかし、パンフ、切り抜き、新聞などは整理できない。ファイルしておくか、パソコンに入力しておけばいいのだろうが、その暇がない。「そのうち使うから」と思って、ためておくと、膨大な量になる。山になる。そうすると探せない。1年かかっても探せなくて諦めた資料も多い。「探せない資料」は「ない資料」だ。
まあ気長にやろう。古代遺産の発掘のように、少しずつ挑戦している。10年後位には見つかるかもしれない。その時にはこのHPで発表しよう。…と思っていたら、案外早く見つかった。8月25日(月)だ。だから1ヶ月ちょっとだ。スピード発掘だ。
「鈴木が売国発言」と書かれた「国民新聞」が出てきた。凄い発掘だ。世紀の発掘だ。「ハムナプトラ3」のようだ。だから今週は、その貴重な発掘品を紹介する。
まずパンフレットを見てほしい。「賛成vs反対。外国人参政権」と書かれている。その下に「どうする参政権問題! どうなる激突討論会」と書かれている。「朝生」のようだ。そして、賛成、反対の4人の名前。さらに「レフリー」として丹羽雅雄さん(弁護士)の名前が出ている。あれっ、じゃ、どっちが勝ったかをレフリーが決めたのかな。あるいは「試合」が公平に行なわれるように試合をさばいただけなのか。どうも覚えがない。
場所は大阪市立中央青年センター。右翼の街宣車も随分来たようだ。「参政権反対」の仲間を応援する為にだ。「10時半より」と書かれている。朝から夕方までやったんだろう。それで、いつやったのか。「5月15日」と書かれている。何年前か分からない。
でも、「国民新聞」を見て分かった。この1ヶ月後に出ている。「平成6年6月25日(土曜日)」と新聞の日付は書かれている。えっ、14年も前なのか。懐かしくて、読んでみた。驚いた。「売国奴」鈴木の糾弾も凄いが、この鈴木君、かなり酷い発言をしている。これじゃ右翼が激怒するのも無理はない。そう思ってしまった。どっちにしろ、これは歴史に残るね。
「鈴木邦男(一水会代表)が売国発言」と大きく出ている。まず、見出しだが、こう書かれている。
〈定住外国人に参政権を与えるべきか否かをめぐって討論会が行われた。席上、新右翼の鈴木邦男一水会代表は全面的に参政権付与に賛同するなど「反日」姿勢をあらわにした。良識ある民族派・愛国陣営では「鈴木が民族主義者を名乗ることは許さない。なぜならば我々までも誤解されてしまうからだ」の非難が挙り始めた。
鈴木は島根大の天皇論を問う偏向入試問題事件についても「あのような問題が解けるわけがない右翼が、寄ってたかって大学を叩くのはおかしい。天皇の戦争責任を論じることは悪くない」と言い放つなど、民族派の言動とは思われない態度をとっている〉
凄いことを言ってるね、鈴木君は。確かに、この頃、そんな大学入試問題があり大問題になった。私も取材された。歴史の問題なんだから、天皇が出てくるのは当然だし、どう思うか聞いてもいいだろう、と答えたようだ。しかし、「大学入試問題など解けっこない右翼が」なんて言ったんだろうか。言ってないと思うけどな。しかし、何を言うか分からんからな、こいつは。そのうち又、資料の山の中から〈新事実〉が発掘されるかもしれない。その時は、報告しよう。「国民新聞」では、参加した4人の発言も、公平にキチンと紹介している。会場には200人が集まったという。パネラーは、参政権を支持する李英和氏、鈴木邦男。反対の「一日会」の中山嶺雄氏と「日朝韓自由人の会」の志野忠司氏。その発言をこう紹介している。
〈はじめに李英和は「参政権を全定住外国人に与える。納税している以上、参政権を要求できる。参政権は基本的人権の一つ」、さらに「日本人の支持が得られるのなら外国人が首相になっても良いではないか」と述べると、志野氏は「在日外国人は母国でも参政権を持っている人がいる。国家間の取決めで相互に参政権を与え合うというのならいいが、そうでないなら二重の権利になってしまう」と特権を得ることに反撥。
中山氏も「外国人が公権力を取得し行政にかかわれば、日本の国家と国民に対する主権侵害になる」と正論を主張〉
このように全員の発言を公平に紹介している。あれっ、もう一人いたか。問題の「反日」「売国」の鈴木君だ。これが又、凄いことを言っている。「国民新聞」から続けて引用する。
〈これに対し鈴木邦男は「李氏の方に全面的に賛成。在日外国人に参政権を与えても40万人程度で大した問題ではない。参政権反対は社共両党の得票増加を恐れる自民党の発想だ。李氏が首相でゴルバチョフが外相でも良い。みんな自由に仲良く日本人も世界の人々も仲良くすればいい」と述べ、討論を聴いていた民族派の顰蹙(ひんしゅく)を買った〉
こりゃ、顰蹙も買うだろう。この時、ゴルバチョフはソ連の大統領をやめて、ひまだった。日本にはロクな政治家がいないから、日本に呼んで外相になってもらったらいい。そう言ったんだね、鈴木君は。「サッチャーも呼んだらいい」とも言ったらしい。又、「これからは女性の時代になる。辛淑玉(しん・すご)を首相にしてもいい」とも言ったようだ。辛淑玉は、断固として帰化を拒否している。「その姿勢もいい。そんなジャンヌ・ダルクこそ首相にふさわしい。その時は私は秘書になってもいい」とも言ったらしい。酷い奴だ。「売国」「反日」というよりも、その場の「思いつき」をすぐ口に出してしまっただけじゃないのか、こいつは軽率な奴だ。
これは14年前か。これ以降も、次々と「問題発言」をし、良識ある民族派・右翼の反撥を買っている。これでは右翼全体が誤解される。こんな売国発言をする奴は、右翼全体から「除名」すべきだね。「永久追放」にすべきだよ。「右翼」とか「民族派」とか名乗らせない。マスコミも鈴木を「右翼」「民族派」と呼ぶな!呼んだら許さん!と言うべきだね。
そうしたら、鈴木はどうするんだろう。マスコミはどうするんだろう。「元右翼の鈴木です」「右翼を永久追放された鈴木です」とか言うのかな。これもいいやね。「右翼・民族派と呼ばれないんだから、かえっていいや」と居直るかもしれないね、鈴木は。腹黒い男だから。かえって喜ぶかもしれん。それにしても、これだけ言いたいことを言ってきて、よく命があったもんだね、鈴木も。よく生き延びたものだ。したたかな奴だよ。
この「国民新聞」には「外国人の参政権要求問題」という資料も紹介されている。又、パネラーとして出席した中山嶺雄氏の「主権侵害を許すな」という原稿も載っている。
さらに、「参政権の付与は暴論である」と題し、三浦重周氏が書いている。「集会を傍聴して」と書いてあるから、当時、わざわざ東京から聞きにきたのだろう。三浦氏とは昔から知っている。日学同の活動家で、委員長をやった。その後、「三島由紀夫研究会」の代表をやり、「憂国忌」の世話人でもあった。しかし、3年前に、郷里の新潟で憂国の自決をした。彼を偲ぶ会は毎年12月に行われている。
その三浦氏だが、「参政権は間違っている」と言い、「反対派」の中山、志野氏の発言を評価している。そして、問題児の鈴木発言に対しては厳しく批判する。
(これに対して、賛成の立場の「一水会」の鈴木氏の発言は極めて非論理的かつ情緒的なもので、とても同じ土俵で真剣に議論しているものとは思われなかった。「日本に来たい外国人は入れたらよい」と言うのは我が国でも秘かに社会問題化している不法入国・不法就労問題に全く無自覚だし、根拠も明らかにしないで「外国人の参政権は無条件に認めるべき」と言うのは「在日党」の李氏をも上回る暴論だし、「右翼や左翼の少数派の人たちには優先的に議席を与えるべきだ」と言うに至っては「新右翼」を自称する自らの政治的思想的立場をも滅却するものであって、これも暴論以外の何ものでもないであろう」)
確かに「暴論」ですね。しかし、こいつは何を思っているのだろう。思い切りがよいというか。右翼が怖くないのだろうか。よく、生きていたもんだ。あきれるばかりだ。でも、「右翼や左翼の少数派の人たちには優先的に議席を与えるべきだ」というのは面白いんじゃないのか。「少数派保護」というか、いいことだ。今のように、国会が同じ考えの人間ばかりになっちゃうと、どんどん暴走する。そのために「チェック機関」としての反対党、少数派は意図的にでも作っておくべきだ。
たとえば自民、民主が連立し、公明も入ったら、いわば「翼賛体制」だ。社民、日共もひとたまりもない。つぶされる。「反対党」「批判党」がいなかったら、日本は暴走する。危ない。
そのために、たとえ、誰も投票しなくても、「反対党」を残すようにする。たとえば社民党や共産党は10議席か5議席を与える。出来たら、右翼や新左翼過激派にも2議席くらい与える。「そのかわり、非合法闘争はやめろ」と言える。いい方法だと思うんだがな。
今、思いついたけど、『鈴木邦男トンデモ本』とか、『鈴木邦男、売国発言集』なんて出したら売れるかもしれないな。〈愛国〉シリーズは、4冊も書いたから、もういい。これからは〈売国〉シリーズですよ。「日の丸・君が代法制化反対」といってたし、「国民投票で決めろ。それで国旗が赤旗になり、国歌がインターナショナルになったら、それを尊重する」なんて言っていた。「ノルマを果たしたから、もう君が代は歌わない」とも言ってたし。これは面白い。売れるだろう。
今、よくよく、「国民新聞」を見ていたら、「入試問題で島根大反論」と出ていた。私は、てっきり「日本史」の問題と思ってたら、「小論文」の問題だったのだ。こう出ていた。
〈昭和天皇の戦争責任問題を今春入試の小論文のテーマに取り上げて本紙や右翼団体に抗議され、文部省の注意を受けた島根大学文学部は5月27日までに入試問題などの正統性を訴えるアピール文を教職員、学生に配り、全国の憲法学者約20人に郵送した〉
〈アピールは、右翼団体による街頭宣伝などの抗議運動を「学外の団体が小論文に対する批判を今回のようなやり方で行うことは認められない」と非難。また「入試の出題は学問の自由、大学の自治に基づく。入試にかかわる事柄は大学が自主的に解決すべきものとし、指導した文部省にも反論している。
また、「出題は基本的に適切」「来春以降の小論文出題の改善策をまとめたが、学外の圧力に屈したものではないとしている〉
島根大の言い分の方が正しいと思いますよ、私は。日本史や世界史で「歴史」の事実を問うものではない。戦争責任について、どう思うか、を聞く。その解答が一つの「○×式」ではない。どう考えてもいい。「責任がある」と考えてもいいし、「責任がない」と考えてもいい。大体、「小論文」というのは、議論がまっ二つに分かれている問題について出すものだ。「結論」を問うのではない。その「結論」に至る〈経過〉を問うのだ。どう論理的にものを考え、それをどう表現できるかを問うのだ。決して〈思想〉を問うているのではない。だから私は、小論文に出してもいいと思う。大体、「この問題は聞くな」とタブーを設けること自体がおかしいと思う。
それにしても、島根大では、右翼の抗議には、さんざん悩み、困ったのだろう。「来春以降は…」と書いてるが、もうこの手の問題は出さない、と言ってるのだろう。「学外の圧力に屈したものではない」と断わっているが、面倒なことに巻き込まれるのはゴメンだ。ということだ。残念ながら、結果的には圧力に屈したことになる。
これじゃ、「学問の独立」もないじゃないか。だったら、島根大学でこの問題をめぐって大討論集会をやればよかった。「天皇の戦争責任」をめぐって、右翼も左翼も集めてやる。何なら、「朝まで生テレビ」を島根大でやる(もうこの時、「朝生」は始まっていたし)。テレビが入り、全国民が見てるのだから、左も右も変なことは出来ない。いきなり殴りつけたりしたら、「やっぱりこいつらはダメだ」と国民に思われる。
そうそう。「右翼なんか、入試問題なんか解けるはずがない。それなのにガタガタ騒ぐな」と暴論を吐いた「売国」元右翼も出したらいい。正統右翼の人々はそこで、この「ニセ右翼」を糾弾し、その正体を暴いてくれるだろう。正義の鉄槌は下されるであろう。
そうだ。さらに新聞記事が見つかった。このシンポジウムの翌日の新聞だ。「外国人参政権をめぐって激論」と、朝、毎、産経が大きく報じている。毎日なんて、一週間前にも「これからあるよ」と報じている。見出しが凄い。「在日外国人参政権。新右翼の鈴木一水会会長、集会で支持論陣」。まだ喋ってないのに「こう言うはずだ」と載っている。それを見て、右翼もドッと来たんだよ。きっと。新聞ではこう出ていた。
〈72年に一水会を結成以来、反原発など既成の右翼運動にとらわれない活動を続けてきた鈴木さんは「納税など住民としての義務を果たしている定住外国人にとって参政権は当然の権利。それを認めることが、日本人の民族意識を希薄にするとは思わない」とする。一水会の内部では、これに批判もあるが、「必要なのは右翼や左翼という看板でなく、個人の判断。組織は勉強する場として残ればいい」と鈴木さんは話している〉
ウーン、一水会の大勢に逆らってまで、論陣を張ったんですな。そして玉砕した。それはそれで、清々しいのかもしれないが。