年末年始にかけて「足かけ2年」、原稿を書いてました。3日からは新しい年の仕事が始動しました。
3日(月)は、鹿砦社の対談です。板坂剛氏との天皇論対談です。去年は2人で出した『三島由紀夫と1970年』(鹿砦社)がヒットし、『週刊朝日』ノンフィクション部門で「第9位」の売れ行きでした。書店はどこも売り切れ、今、増刷中です。対談も過激ですが、未発表資料や三島映画のDVDも付いていて売りに売れたようです。
その第2段の対談をやったわけですよ。さらに10年、時代を戻して、今度は「1960年」です。超激動の年でした。浅沼刺殺事件、「風流夢譚」事件、樺美智子殺害事件、三井三池での殺人事件…と、まさに、「革命前夜」の年でした。
その1960年について、革命的舞踏家(武闘家)の板坂剛氏と語り合ったのです。板坂氏はフラメンコ・ダンサーで、叔父さんは大学者の板坂元さんです。自らが主宰するフラメンコ学校の発表会では三島由紀夫になり切り、三島を演じ、三島を踊り、最後は切腹までやりました。生徒も驚き、会場はパニック状態になりました。
私はその現場を目撃しました。まるで、ベジャール振り付けのバレエ「MISHIMA」のようでした。あの時、自決したのだから、今の板坂氏は幽体です。生死を超越した革命的エーテル体と私は対論しました。
翌、4日(火)は、夜がオフ会でした。このホームページのオフ会です。久しぶりです。5年ぶりです。
「いや、10周年で集まりましたよ」と現管理人が言う。「えっ、10年も経つの?」と、思わず私は聞き返しました。ついこの前、始めたと思っていたのに。
「丸11年。今年で12年目に入りました」と管理人。そんなに長い間やってたのか。じゃ、2、3年前に「10周年」のオフ会をやつたのか。どこでやったのだろう。誰が来たのだろう。記憶にない。「オラもいたのかな?」「いましたよ」とピシャリ。
夜はオフ会だ。酒を飲むだけでは、生産的じゃない。じゃ、その前にHP用の対談をしよう、と思い立って、高木尋士氏(劇団再生代表)にメールしました。
高木氏とは何度も「読書対談」をやってます。ちくまの思想全集は全巻読んだというし、今は、「世界の名著」に挑戦している。
だから、「全集読みナウ」について高田馬場のミヤマで午後1時から4時まで、じっくりと話をした。4時半からはオフ会会場の新宿に移動した。居酒屋「逸品の蔵」だ。歴代の管理人も来たし、書き込み人も来ました。12年間のHPの歩みについて語り合い、飲みました。
3時間の飲み放題コースが終わり、エレベーターで下に降りると、ちょうど、「立呑み龍馬」の入口に出ました。こいつは春から縁起がいい、と皆、龍馬気分で写メールしました。
そして、5日(水)は文化放送でした。「夕やけ寺ちゃん活動中」です。いきなり、「あけおめ」「ことよろ」と言ったら、ウケました。「鈴木さんからそんな言葉を聞くとは思いませんでした」と寺ちゃんも女子アナも驚いてました。
放送では、今年の予測で、北朝鮮、中国、ロシアについて語りました。テレホン・ショッピングの時間は、何と、「カニ」でした。カニを試食しました。おいしかったです。茹でカニだけでなく、カニちらし丼もあって、満腹でした。
というわけで、「仕事始め」の様子を紹介しました。では、「HP12年の歴史」についてです。これは、管理人に今度、書いてもらおう。私は大局的なことは分からない。毎週、毎週、ただ、書き進めただけだ。楽しく、時には苦しく、あるいは、へたばりながら。冗談ぽい時もあるし、超真面目に読書の話、政治の話を書いたこともある。内向きの、自虐的なことが多いから、誰も読んでないだろうと思ってたが、結構、読んでる人がいるようだ。
その証拠に、このHPを基にして、本が出来た。それも3冊も。こちらから頼んだわけではない。「ここが面白い。これを纏めて本にしましょう」と出版社から声をかけてもらったのだ。ありがたいし、嬉しかった。それに、どれを入れるかのピックアップも出版社がやってくれた。
その3冊の本をザッと紹介しよう。表紙は写真欄に出しておいた。
まず第1冊目だ。『売国奴よ! 魂を売るべからず』(廣済堂出版・1400円)だ。2001年11月19日発売になっている。もう10年前か。その時、既にこのHPを見て、「本にしましょう」と言われたのだ。当時の管理人・赤坂さんに随分とお世話になって出来た本だ。ありがとうございました。
目次を見たら、こんなだった。
ウーン、真面目だ。文章は軟らかいが、内容は硬い。突っ張っている。日の丸、君が代の話が多い。HPは自分の「政治的主張をするものだ」という思い込みがあったのだろう。肩に力も入っている。
「あとがき」には、「これは僕の代表作になると思う」と言っている。果たしてそうなったかどうか。この人の予測はよく外れる。
最初に出版社から提案されたタイトルは『日の丸弁当・君が代行進曲』だったという。私は、「いいですよ」と答えた。よく覚えてないが、「本を出して頂けるだけで有難い。タイトルはお任せします」と言ったようだ。でも、出版社が、「むしろ、こっちが」ということで、『売国奴よ!』になったという。
硬派な本だ。手に取ろうとする人も、「売国奴よ!」と叱られてる気になるのか。書いてる私も叱られているようだ。『日の丸弁当・君が代行進曲』も、今考えると、面白い。いいタイトルだ。
じゃ、いつか、このタイトルで本を作るか。今、HPから3冊出てるから、4冊目にしてもいいな。当時の赤坂管理人に又、やってもらって。うん、これはいいな。
赤坂さんには週刊誌の取材で1月13日(木)に会うことになっている。これを見てたら、考えて下さいよ。その時、打ち合わせもしましょう。
そうだ。この『売国奴よ!』には、喜納昌吉さんが本のカバーに推薦文を書いてくれた。
「テロと報復、それは人類の無知によってもたらされた」
いい言葉ですね。ありがとうございました。
では、このHP出身の第2冊目だ。『売国奴よ!』から6年後だ。2007年12月25日発行だ。クリスマスだ。『愛国者の座標軸』(作品社・2600円)だ。値段はちょっと高いが、判が大きい。それに、340ページもある。厚い。それに、カラフルだし、ビジュアルだ。
表紙はドカンと私の写真だ。裏にもある。表紙を外すと本にもある。著者紹介では私の「授業風景」もある。ジャナ専(日本ジャーナリスト専門学校)で教えている時だ。
作品社の青木誠也さんは、ジャナ専で教えていた。私も、そこで「日本政治史」と「時事問題」を教えていた。HPを見ていた青木さんが、「ぜひ本にしましょう」と言う。ありがたかった。
でも、400回位ある。どれを取るのか。「それは岩崎孝正君にやらせましょう」と言う。岩崎君はジャナ専の生徒だ。とても優秀な生徒だ。彼が、「これはいい」というのをピックアップして、編集してくれた。
さらに、ジャナ専で教えているデザイナーやカメラマンが協力してくれた。ジャナ専のスタジオで写真を撮った。ジャナ専には本当にお世話になりました。
又、当時、「オーマイ・ニュース」で私は連載をしていた。実は、その時のタイトルが『愛国者の座標軸』だった。だから、そこに載った原稿をもらって入れた。タイトルも、もらって付けた。その時の担当者が青木理さんだった。今はフリーで大活躍をしている。
今、手に取ってみても厚いし、ズシリと重い。それに、「あの時は苦労したな」と思い出す。だって、岩崎君がまとめてくれ、「オーマイ・ニュース」を加え、それで自動的に本になると思っていたのに、作品社では注文をつける。一つ一つの原稿について小さな解説を書けという。
「エッ?50本の原稿の全てにですか?」「そうです」。「全体について書くからいいでしょう」「ダメです」。まいったなー。「じゃ、1年ごとにしましょう。そうすると、4、5本で済む。これで手を打ちましょう」「ダメです」。
それで、50本の一つ一つについて、当時のことを思い出しながら書いた。「単行本収録にあたってのコメント」というのがそれだ。1つについて、400字詰めの原稿用紙で1枚から2枚。長いのは3枚。これだけで100枚位だ。あと「前がき」「あとがき」がある。200枚位、全部で書いたのか。書き下ろし本じゃないか、これじゃ。いや、「書き下ろし」よりも苦労した。大変だったな。
今、目次を見たら、2003年から2007年になっている。書き手も力が入っている。ちょっと見てみる。
私の言う通りでした。「国賊征伐隊」の正体は。
週刊誌は怖い。封印していた「事件」が暴露された。
思想同一性障害。あるいは思想的進化論をめぐる哲学的考察。
これは革命だ。JR東労組の松崎明さんと対談してるぜよ。
日教組の委員長と対談した!
何で死んだんだ!天才作家・見沢知廉氏を惜しむ
やられた人でないと分からんよ。放火の恐怖は。
驚きました。「皇太子妃」反対運動がこんなに激しかったなんて…
「不敬芝居」と「天の声」
「まるで丸山真男ですね」と言われちゃいました=ニューヨークレポートその2=
偉大なる革命家への謝罪文
いやー、真面目に書いてますね。それに、面白くしようという意欲を感じますね。進化してます。努力してます。
「あとがき」を読んだら、「間違いなく私の代表作になるだろう」と言っている。いつも同じことを言ってるんだ、この男は。進歩はない。でも、次々と努力し、進化している証拠なのかもしれない。
今、思い出して書けといわれても書けない。〈事実〉は思い出せても、その時、何を感じ、何を迷ったか…。などは、「その時」でないと書けない。HPというジャンルがあってよかった。私が一番、その恩恵にあずかっているのかもしれない。これは感謝したい。
小さな事だが気がついた。2007年に出した『売国奴よ!』では、「今まで40冊本を出したが、これが代表作」と書いている。
2009年に出した『愛国者の座標軸』では、「今まで60冊出したが、間違いなくこれが代表作だ」と書いている。じゃ、2003〜2007年の間に20冊も書いたのか。それに今は何冊なんだろう。70冊位かな。管理人にでも教えてもらおう。
では、このHP出身の3冊目の本だ。2010年4月20日に出た本だ。『鈴木邦男の読書術』(彩流社・1800円)だ。〈言論派「右」翼の原点〉とサブタイトルが付いている。「右」と、カッコが付いてるとこがいいですね。これも進化です。
それに彩流社の編集がうまい。このHPの中で、読書について書いた文を、それも、かなり力を入れたものをピックアップして、まとめている。
それと、昔出した『行動派のための読書術』の最重要部分も入っている。「劇団再生」の高木氏との読書対談もあるし、何よりも〈全集〉を読もう!というテーマが貫かれている。自分で読み返してみても、勉強になる。目次だけ見ても、「おう!本を読まなくっちゃ!」という気になる。編集がうまいんですよ。
雨宮処凛さん、見沢知廉氏、中島らもさん。高野悦子さんの『二十歳の原点』、遠藤誠弁護士、植垣康博さんの『兵士たちの連合赤軍』、高橋和巳の『邪宗門』などについて書かれている。内容が濃いですね。
これは、この本のハイライトですね。『三島由紀夫全集』全44巻を読んだ。尾崎士郎の『人生劇場』全11巻を読んだ。五木寛之の『青春の門』、司馬遼太郎の『坂の上の雲』(全8巻)、『燃えよ剣』の話。中里介山の『大菩薩峠』全41巻を読んだ。
そして、
これが高木尋士氏との対談だ。この部分だけで1冊の本になるよ。この中の「小見出し」だけでも、思索的だし、独立した読書論になってる。
ですよ。ノルマを決めて読む。全集ものを読む。メシは食わなくても本は読む。金があったらともかく本を買う。そして、ラストは「無償の行為こそが実を結ぶ」。実に、ストイックな「読書道」です。もう、「道」というしかありません。
でも今は、「読書術」だ。精神的に余裕が生まれたのか。あるいは堕落したのか。反省しなくては。
つまり、10年ごとに、どんな本を読んだかを、書き出してみたんです。
本当はやりたくなかったんです。抵抗したんです。だって、全集を読んでる時ならいいですよ。あらかた全集を読み終わり、でも月30冊のノルマはある。そんで、下らない本や、どうでもいい本、すぐに読める本なども大量に読んだ。それを見た人は、「何だ、こんな本を読んでるのか」「いやらしい」と思われるだろう。
「でも、そんな弱点を晒してこその読書術ですよ」と編集者は言う。「硬い全集だけなら、とても近づけないと思う。こんな下らない本も読み、それで準備運動をして山脈(全集)に向かったのか、と読者に勇気を与えますよ」と言う。そうかなー。その言葉に騙されて、ついつい書いてしまった。だから第5章は読まないで下さい。
では、終わりです。と思ったら、新年恒例の「読んだ冊数」紹介があったな。どれどれ、ビジネス・だいありーを開いてみる。2010年だ。
おっ、頑張りましたね。去年はかなり忙しかったのに、ちゃんと「月30冊」のノルマは果たしている。40冊以上読破の「優良月」が1つある。1月だ。全体を合計すると、412冊か。これを12で割ると34.33冊だ。これが〈2010年度〉の月平均読破数です。お疲れ様でした。おめでとうございました。
これで終わろうと思ったら、高木尋士氏は、去年、490冊読んだそうだ。1月4日の対談の時言ってた。「年間500冊、目標だったのに、悔しいです!」と言っていた。
悔しいのは私だ。「元祖ノルマ読み」の私が軽々とノルマを超えられた。高木氏は、月平均にして「40.83冊」。私の優良月も軽く超えている。それも、思想全集に挑戦しながらだ。頭が下がる。完敗です。その「完敗記」は、そのうち、このHPに発表されるでしょう。お楽しみに。
⑥12月29日(水)。一水会事務局の忘年会です。高田馬場の焼き肉屋です。中央が木村三浩氏(一水会代表)。右が四宮正貴氏(一水会顧問)、私の左は田村司氏(一水会相談役・元「楯の会」)です。写真に写ってませんが右側に若手活動家たちがおります。
⑨第3弾。『鈴木邦男の読書術』(彩流社)。2010年4月発売です。あれ、本の帯に「あとがき」が。この文句が。面白い。
〈40年間、右翼運動をやってきたというが、本当はただの「読書人」だったのではないか。本を読むように運動をやり、本を読むように人と付き合ってきたのではないか。いや、運動も、事件、友人も…全ては〈大きな本〉の一ページだったのかもしれない。ずーっと、その〈大きな本〉を読んできただけなのかもしれない。「本を読む」だけの人生だったのかもしれない〉
うーん、そうですね。実は、私も〈本〉だったんですよ。
⑬「アエラ」の書評は一番、読まれている。という話を先週しました。編集部や、カメラマンの力の入れ方が違います。勿論、書く人も。
これは、「アエラ」(10年12月13日号)です。私が取り上げた工藤美代子著『悪名の棺=笹川良一伝』(幻冬舎)です。本の下から、血がドクドクと流れ出しています。凄い!本が自己主張している、と思いました。他の書評では、ここまでやりません。
では他に、最近の「アエラ」を見ると…。
⑮これは「アエラ」(10年12月20日号)の星野博美さんの書評です。フェリベ・フェルナンデス=アルメスト著。関口篤訳の『1492 コロンブス・逆転の世界史』(青土社)です。卵の上に、コロンブスの本が載っております。「コロンブスの卵」なんですな。
⑯「アエラ」(2011年1月3日、10日号)です。森永卓郎さんが書いてます。グレゴリー・ザッカーマン著・山田美明訳『史上最大のボロ儲け』(阪急コミュニケーションズ)です。バブル(泡)で大儲けした様子ですね。バブルの中に本が浮いてます。うまいですよね。