2011/02/07 鈴木邦男

『やっぱり全集だ! 全集を読まなきゃ始まらない!』

お待たせしました。今回は凄いです。渾身の力を込めた対談です。

高木尋士氏と三回目の『読書対談』です。一回目は、2008年に筑摩の日本思想大系について話しました。二回目は、2009年。日本思想大系から進むべき全集についての話をしました。僕が40年前に読破したたくさんの全集を今、高木尋士氏が挑んでいます。「昭和の読書王」と「平成の読書王」の対決です。本当はこういうことをやりたくて、このHPを立ち上げたのです。では、お楽しみください。そして、影響を受けたら、どんどん読んでください。

第三回目になるこの対談は、2011年1月4日に高田馬場カフェみやまの会議室で行われました。

①「読書に年末も年始もない!」

鈴木あけおめ。

高木「あけおめ」って・・・

鈴木あれ、知らないの? 「ことよろ」とか、「よろよろ」とか(笑)。あと、「あげぽよ」ね。

高木あげぽよ? 何ですか?

鈴木若者言葉ですよ。「ぽよ」はかわいいから、「あげあげー」の語尾に付ける強調の接尾語ですね。古文にも出てくるでしょ。「いとおかし」の「おかし」とか、「かわい」とか。平成が平安時代に戻ってるんですよ。さあ、新年の挨拶もしたし、『読書対談』を始めましょう。まず、昨年の読書結果から発表しましょう。高木さんは何冊でした?

高木490冊です。月平均は、40.83冊。

鈴木軽く負けたなあ。僕は、412冊。月平均は、今暗算したところ34.33冊。高木さんは、劇団の仕事をしながら、わがままな女優達をあやしながら、よく読んだね。

高木ただ、去年読んだ本を振り返ると軽い本が多かったですね。

鈴木それはね、ノルマ式読書の欠点なんですよ。そうなりがちですね。軽い本って、新書とか?

高木新書も読みましたが、現代の小説ですね。比較する訳ではありませんが、全集を読むとエクスタシーを感じるんですが、現代の小説にはそれがないんですよね。

 

②「日本思想の入門だ。『戦後日本思想大系』全16巻を読もう!」

鈴木全集にはエクスタシーか。なるほど。それでは、「全集読み」の本題に入りましょう。高木さんが取り組んだ筑摩の日本思想大系には三つあって、最初に「戦後日本思想大系」全16巻。次に「現代日本思想大系」全35巻、最後が「近代日本思想大系」全36巻。この順序で読んで良かったでしょう?

高木僕が「全集読み」を始めた時に

鈴木さんに教わった通りの順番です。「戦後日本思想大系」は読みやすく、次の「現代日本思想大系」もなんとかいけます。それが「近代日本思想大系」になるとほとんどが旧仮名遣いになってきて難しいんですよ。順番を違えると挫折します。

鈴木でも「戦後」「現代」と読んだ実績があって、自分にそれを読んだ自信があると難しくても頑張ってみようと思うんじゃない? 「戦後日本思想大系」の中ではどれが良かった?

高木やっぱり『ニヒリズム』。そして、『戦後文学の思想』。

鈴木文学が一つの思想全集に入るって、他に無いよね。編集者に能力があったから編集部で16巻を考えて、各巻のテーマを誰に割り振るかを決めたんだろうね。そして、割り振った人の責任で好きなものを集めてやってみようしたんだと思う。今はそこまでの編集者がいないと思う。

高木発売当時はどのくらい売れたんですか?

鈴木爆発的に売れたと思うよ。学生運動をやっている人は、右も左もこういうものに飢えていたから、みんな読んでいました。アルバイトをして思想書を買って読んだんです。出版の順番も良かったんだね。さっき高木さんが言ったように、「戦後」という読みやすいところから思想を掘り起こしているんですよ。『経済の思想』とか『科学技術の思想』とか、そういうのはそれまで思想にはならなかった。『美の思想』『現代人間論』『日常の思想』もそうですよ。「日常には思想なんてないだろう」という感じだったから、当時、これを読んで驚きましたよ。

高木そうですね。普通は日常の出来事を「思想」とは言わないですよね。でも、こうして一巻にまとめています。

鈴木「戦後日本思想大系」は、思想に対する偏見を解いた入門編みたいな感じだね。

 

劇団再生の舞台はいつも文学的だ。
劇団再生の舞台はいつも文学的だ。

『戦後日本思想大系』全16巻・筑摩書房

  1. 戦後思想の出発
  2. 人権の思想
  3. ニヒリズム
  4. 経済の思想
  5. 科学技術の思想
  6. 学問の思想
  7. 教育の思想
  8. 美の思想
  9. 戦後文学の思想
  10. 日常の思想
  11. 現代日本論
  12. 現代人間論
  13. 戦後文学の思想
  14. 日常の思想
  15. 現代日本論
  16. 現代人間論

 

③「テーマのはっきりした『現代日本思想大系』全35巻で思索の快楽」

鈴木そして次は「現代日本思想大系」全35巻ですね。

高木「戦後」よりも難解になってきますが、各巻のテーマがはっきりしていてどんどん読めました。

鈴木編集に読ませようという努力があるよね。

高木そうですね。『民主主義』『ナショナリズム』『福沢諭吉』が繋がっていたり、『内村鑑三』と『キリスト教』、『仏教』と『鈴木大拙』など、理解しやすくしようとした感じがありますね。

鈴木:当時は全共闘というか左翼が全盛の時代です。だから、『社会主義』や『アナーキズム』はわかるけれども、『ナショナリズム』や『アジア主義』『権力の思想』というテーマをよく入れたと思うよ。普通だったら入れない。『反近代の思想』『超国家主義』もそうだよね。超国家主義なんて、反動的な運動というだけで普通は思想に入らない。それをちゃんと思想全集に入れたっていうのは、筑摩の勇気です。高木さんは、この「現代日本思想大系」も読破したわけですが、どうでした?

高木勉強になりました、というのが一番の感想です。そして、『反近代の思想』『近代主義』『新保守主義』というテーマも1巻ずつまとめられていて興味深かったのですが、やっぱり全体に難しかったですね。例えば、「新保守」は、今でも使われる言葉ですが、74年当時の新保守っていうのはどこを指すんだろう、とか。考え始めたら収拾がつかなくなっていくんです。

鈴木そうか。それは研究してみたらいいね。74年の新保守と今の新保守。新保守主義といっても時代の変化とともに変わるだろう。体制によっても違うだろうし。この「現代日本思想大系」のように、各巻でテーマがはっきりしていると自分の弱点もよくわかるよね。高木さんが言うように「もっと勉強しよう」と思うね。

現代日本思想大系

『現代日本思想大系』全35巻・筑摩書房

  1. 近代思想の萌芽
  2. 福沢諭吉
  3. 民主主義
  4. ナショナリズム
  5. 内村鑑三
  6. キリスト教
  7. 仏教
  8. 鈴木大拙
  9. アジア主義
  10. 権力の思想
  11. 実業の思想
  12. ジャーナリズムの思想
  13. 文学の思想
  14. 芸術の思想
  15. 社会主義
  16. アナーキズム
  17. ヒューマニズム
  18. 自由主義
  19. 河上肇
  20. マルキシズム
  21. マルキシズム
  22. 西田幾太郎
  23. 田辺元
  24. 哲学思想
  25. 科学の思想
  26. 科学の思想
  27. 歴史の思想
  28. 和辻哲郎
  29. 柳田国男
  30. 民俗の思想
  31. 超国家主義
  32. 反近代の思想
  33. 三木清
  34. 近代主義
  35. 新保守主義

 

④「そびえ立つ高峰『近代日本思想大系』全36巻を読破だ!」

鈴木「戦後」「現代」と読み進めると、どんなに難しくても「近代日本思想大系」も読もうと思うでしょ。

高木そうなんですよ。入門的な「戦後」、各巻にテーマのある「現代」。最後の「近代」は、全巻が個人の思想です。

鈴木それこそが本当の思想じゃないですか。『折口信夫』『大川周明』『大杉栄』。右も左も入っている。我々右翼学生も『三宅雪嶺』が出版されて、「これは右翼の人だ。必ず読まなくちゃ」と思いました。『徳富蘇峰』もそうです。『丘浅次郎』は北一輝の原点になった人だから「俺も読んでみよう」と。そんな風に一冊ずつ読んでいるうちに10冊くらい読んでる。そしたら、「全巻を読んでみよう」という欲が出るわけです。そうすると自分には関係ないと思った人や、反対の思想だと思った人たちでも「似ているのかな」と思ったこともあるんですね。『幸徳秋水』とか『木下尚江』とか。そして、『明治思想集1~3』『大正思想集1・2』『昭和思想集1・2』には、いろんな人たちがいっぱい入っていて随分勉強になったのを覚えてますよ。

高木それが一番良かったです。入りやすかったんですよ。短い論文がたくさん入っていて、明治から大正、昭和、1970年代の半ばまでをまとめてあり、非常にわかりやすくて面白く読みました。

鈴木思想の歴史にもなっているよね。その他にはどれが良かったですか? 僕は今思い返すと『丘浅次郎』が面白かったな。「進化論」って、「ダーウィンの進化論を日本語に翻訳したんだろう」って思ってた。ところが、それだけで終わるんじゃなくて、「美しいものが残る」っていう思想は凄いじゃないですか。

高木北一輝もまさにそこですね。美しい人間が神に近づいていく。類神人ですね。他には、『大杉栄』『大川周明』『幸徳秋水』『内村鑑三』『中江兆民』が面白かったです。

鈴木中江兆民は、幸徳秋水の師匠ですね。

高木「兆民先生」ですね。中江兆民もそれまでに読んでいたのが、『三酔人経綸問答』だけでしたから、ここで初めて他の論文を読みました。あとは、『石川三四郎』も面白かったです。

鈴木あっ、そうだね。僕もそれは面白かったのを覚えてます。

高木それまで名前も知らなかったのですが(笑)。あと、『吉野作造』。全体を俯瞰するとなんとなくジャーナリスト系の人たちが多いなという感じがしました。当時の言論の場というのが新聞主流だったんだなと。主要新聞だけでなく、機関紙に書いていた人たちですよね。

鈴木徳富蘇峰とかね。

高木陸羯南もそうです。幸徳・山川・大杉もそうです。和辻哲郎も新聞ですよね。

鈴木大学の中で深く静かに研究をする人っていうのは少ないんだよ。そういう人たちはあんまり世間と接点がないから。だからこの全集に収められた人っていうのは、世間と接点があって、社会に影響を与えたような学者だよね。

高木そうですね。常に発信をして反応を受けて、という人たちです。『戸坂潤』、『小林秀雄』も日々の新聞にやっぱり書いている人たちですね。

鈴木小林秀雄は、今でもいっぱい出ているもんね。小林秀雄で初めてドストエフスキーを知ったとか、小林秀雄を読んでいろんな哲学者の名前を知ったとか、音楽家を知ったとか。そういう意味では小林秀雄っていうのは基底になっている思想家なのかなと思います。大学の入試でも出たからね。こうして高木さんは、日本思想大系全巻を読破したわけですが、どんな感じがしましたか。

高木足もとが固まったという感じがします。この「日本思想大系」は入門的にもいいと思います。「全集を読みましょう。『世界の名著』から読みましょう」と始めると挫折してる可能性がありますね。

鈴木そうかもしれないね。「戦後」「現代」「近代」合わせて全86巻。それを頑張って読んだんだから『世界の名著』全81巻も読めると思うよね。そういう意味でも「日本思想大系」は『全集読み』の入門だろうね。

高木そう思います。でも、入門と言っても力がありますよ。一巻一巻の最初に責任編集者の解説があるのですが、それが新書の何冊分にもあたると感じました。それだけの内容です。まずその解説を読んで、原典を読んでいくという形ですね。それにしても難しかった。読み終えた今も理解できたと言えないものがたくさんあります。

鈴木それはそうでしょう。僕も当時全部読みましたが、わからないとこがいっぱいあったんです。でも読書に対する熱は凄かったと自分でも思います。昔は欲しい本は神田なんかで一週間探して、それでもないってことがある。今はネットですぐ探せる。だから昔と違って本はいくらでも手に入るわけだ。にもかかわらず本を読んでない。もったいない話だよね。

 

高木さんの書斎にも本が溢れている。ぼくもそうだ。
高木さんの書斎にも本が溢れている。ぼくもそうだ。

『近代日本思想大系』全35巻・筑摩書房

  1. 勝海舟)未発売
  2. 福沢諭吉集
  3. 中江兆民集
  4. 陸羯南集
  5. 三宅雪嶺集
  6. 内村鑑三集
  7. 岡倉天心集
  8. 徳富蘇峰集
  9. 丘浅次郎集
  10. 木下尚江集
  11. 西田幾太郎集
  12. 鈴木大拙集
  13. 幸徳秋水集
  14. 柳田国男集
  15. 長谷川如是閑集
  16. 石川三四郎集
  17. 吉野作造集
  18. 河上肇集
  19. 山川均集
  20. 大杉栄集
  21. 大川周明集
  22. 折口信夫集
  23. 田辺元集
  24. 柳宗悦集
  25. 和辻哲郎集
  26. 林達夫集
  27. 三木清集
  28. 戸坂潤集
  29. 小林秀雄集
  30. 明治思想集(1)
  31. 明治思想集(2)
  32. 明治思想集(3)
  33. 大正思想集(1)
  34. 大正思想集(2)
  35. 昭和思想集(1)
  36. 昭和思想集(2)

⑤『「日本思想大系」の次は何を読む?』

鈴木筑摩の「日本思想大系」全86巻を読んで、その次は、何に挑戦したんだっけ?

高木「世界教養全集」全38巻(平凡社)ですね。これは読みやすくて面白かったです。高校生向けぐらいの感覚で出版されたんじゃないかと思います。「5巻」の『幸福論』『友情論』『恋愛論』なんか特に高校生くらいで興味を持って読むと思います。

鈴木その通りだと思います。出版社もそのあたりを狙ったんだと思う。でも内容は、相当高いレベルだよ。例えば、「7巻」。『菊と刀』『東の国から』『秋の日本』。いろんな日本論が偏見無く入っている。今なら日本論だと『菊と刀』を入れておけばいいや、と思うじゃないですか。

高木「6巻」「7巻」の繋がりが面白いですよ。「6巻」が日本人が見た日本の性格です。長谷川如是閑、亀井勝一郎、小林秀雄。名作『茶の本』の岡倉覚三。

鈴木谷崎の『陰翳禮讃』も入ってるね。

高木そして「7巻」が外人の日本論。岩波あたりで読めるものもたくさんありますが、こうしてまとめて読むと充実感が違います。

鈴木そうだね。「8巻」だと、下村湖人の『論語物語』とルナンの『聖書物語』の両方が入ってるね。これって深いよね。そして、「11巻」の『芸術の歴史』は凄かったよね。学校だと単なる政治的な歴史しか習わないけど、こうして芸術だけの歴史を精緻にわからせてくれる。

高木全巻の中でもこの『芸術の歴史』は名作です。

鈴木こういうのは、全集に入っていないと読む機会がないんだよ。そういう意味でこれはありがたかった。書店で見つけようとしても芸術のコーナーってあんまり行かないし。こういう人も知らないし。

高木そうですね。興味の向かない分野や知らない人でも全集なら読まざるを得ない。「13巻」の『世界文学三十六講』、これも面白かったですね。文学史であり、一種の読書指南です。ヘッセの『世界文学をどう読むか』も読書に対するアプローチです。

鈴木『新文章読本』もあるね、「14巻」か。

高木川端ですね。作文講座っていうのを当時は、いろんな人が書いているんですね。三島由紀夫も谷崎も。

鈴木本格的なやつもあるよね。「15巻」の『空想から科学へ』『共産党宣言』『職業としての政治』。これ一巻で全部入っているわけだから充実してるよ。

高木『空想から科学へ』も『共産党宣言』も名文だし、『第二貧乏物語』『矛盾論』も入ってます。

鈴木さんは、石田幹之助の『長安の春』は覚えてますか? 

鈴木うん、読んだのは覚えてる(笑)。他にも『黄河の水』とか『史記の世界』とか覚えてるよ。武田泰淳は史記のことでいろいろ書いているからね。それを読んで、「じゃあ中国の古典を読んでみよう」と思ったね。「19巻」は有名だね。シュリーマンとかフレイザー『悪魔の弁護人』も入っているんだよね。

高木そうですね。全巻を通して読む順序が計算されていると思いました。読者の理解を促し、読書への興味が途切れないように計算されていると感じました。

鈴木それがプロの編集者です。読む順序と言えば、高木さんは、最初から読むの?

高木僕は、1ページ目から読みます。

鈴木僕はなんか面白そうなのから読んじゃう。買った時は、まず『悪魔の弁護人』を「何だこれは」と思って最初に読んだね。シュリーマンは、知ってるから後でゆっくり読もうと。

高木でも、順番に読んでいくとわかりやすくなってるんですよ。『悪魔の弁護人』を最初に読むと、何が言いたいのかわかりづらいと思います。

鈴木僕はフレイザーの『金枝篇』を読んでたからね。その人が書いた本だからきっと面白いだろうと思った。『金枝篇』は、王様は必ず奇跡を起こさないといけない、奇跡を起こさない王様は殺されるという「王殺し」の話だ。一方の『悪魔の弁護人』は、悪魔というのは迷信で、迷信っていうのは古代においては科学だった。だからそれで人々を守ったり、奇病から守ったり、あるいは近親相姦を防いだりといろんなことに作用した。なかなか面白かったね。世界観が変わった。

高木鈴木さんのように下地があるともちろんそんな読み方もできると思いますが、初めて取り組む時はそうもいきませんよ(笑)。この全集の順番通りに、『過去を掘る』、『発掘物語』、そして、シュリーマン『先史時代への情熱』と読んで、古代へ目が向いたところで『悪魔の弁護人』を読むと、当時の呪術、言い伝えっていうことの科学的な根拠がわかりやすいんです。そうじゃないと『悪魔の弁護人』は、いろんな例が出されていて混乱します。

鈴木やっぱり編集が工夫しているんだね。『悪魔の弁護人』だけが、ぽんと出てくると、ずらっと例が並んでいるので確かに初めて読む人は、「何だ?」と思っちゃうね。そうすると後の三つも捨てちゃうね(笑)。段々とわかるようにして、最後は『悪魔の弁護人』を理解させるか。なるほど。初めて知った。「20巻」の『魔法』も印象に残っている。普通「魔法」だけで一冊の本にならないよ。僕らがあまり読んでなかったようなことをいっぱい取り上げているから面白かったね。「21巻」の『山の人生』『猪・鹿・狸』とかね。

高木まさに柳田ですね。「22巻」は山の話です。登山だけで一巻です。そして、探検物語、冒険物語と続きます。この辺は小学生が読んでも面白いですよ。わくわくします。「よし、俺もいつか富士山に登ろう、エベレストに登ろう」と思いますよ。

鈴木「25巻」はルソー『孤独な散歩者の夢想』に、「26巻」はクロポトキン『ある革命家の思い出』、『アラビアのロレンス』。アラビアのロレンスは、映画があることはみんな知っているけど、実際小説を読んだ人ってほとんどいないんじゃない? それからこの「27巻」の『ジョゼフ・フーシェ』。

高木ツヴァイクですね。

鈴木フーシェってフランス革命を生き延びた人だよね。当時は、権謀術数でみんなどこかの党派についたり離れたりして、すぐ殺されたりしたんだけれども、それを生き延びたんだ。あの頃、右翼学生の中でも権力闘争を生き延びてたやつは「あいつはフーシェのようだ」なんて言っていたからね。今はそんなこと言わないでしょう? 昔はそういう知性があったんですよ。

高木フーシェなんて今は、すごくマイナーですよ。

鈴木僕は、これでツヴァイクを知って、ツヴァイク全集、全部買って読んだ。マリー・アントワネットやカルヴァンのことを詳しく知った。そうやって全集を読んで知らない人や時代や歴史を知ることが大きな契機になるんだよ。やっぱりこの全集は凄いね。僕は、「29巻」と「30巻」をかなり感動して読みましたよ。『百万人の科学概論』『科学と実験の歴史』『物とは何か』。そういう科学の問題を考えたことがなかったからね。それから「30巻」の『ろうそくの語る科学』。これも感動しましたね。それから『音の世界』。

高木その「29、30巻」っていうのは挿絵がいっぱい入っていてわかりやすいんですよね。

鈴木「32巻」の『微生物を追う人々』。これなんか全然知らない世界だし、普通だったら読もうともしないじゃない。それはやっぱり全集を読むことによって得られる幸福ですね。「34巻」の『ファーブル昆虫記』『シートン動物記』もあらためて読むとやっぱり面白い。

高木34巻で終わりで、後は別巻になります。僕は、この別巻の『文芸論集』『書簡集』『永遠の言葉』をとても面白く読みました。『世界教養全集』は全部で38巻あるのですが案外早く読めました。

鈴木高木さんは、これをどのくらいで読んだの?

高木一年かかっていないと思います。

鈴木読みやすいから、他の読書と並行しながらでもどんどん読めるんだよね。まさに『全集を読もう!』だ。

 

『世界教養全集』
『世界教養全集』

『世界教養全集』全38巻・平凡社

  1. 「哲学物語」
  2. 「随想録」「箴言と省察」「パンセ」「覚書と随想」
  3. 「愛と認識の出発」「無心ということ」「侏儒の言葉」「人生論ノート」「愛の無常について」
  4. 「三太郎日記 第一」「生活の発見」「若き人々のために」「愛、愛よりも豊かなるもの」
  5. 「幸福論」「友情論」「恋愛論」「現代人のための結婚論」
  6. 「日本的性格」「大和古寺風物誌」「陰翳禮讃」「無常といふ事」「茶の本」
  7. 「秋の日本」「東の国から」「日本その日その日」「ニッポン」「菊と刀」
  8. 「論語物語」「聖書物語」
  9. 「基督教の起源」「キリストの生涯」「キリスト者の自由」「信仰への苦悶」「後世への最大遺物」
  10. 「釈尊の生涯」「般若心経講義」「歎異抄講話」「禅の第一義」「生活と一枚の宗教」
  11. 「芸術の歴史」
  12. 「美の本体」「芸術に関する101章」「ロダンの言葉」「ゴッホの手紙」「回想のセザンヌ」「ベートーヴェンの生涯」
  13. 「世界文学三十六講」「文学とは何か」「文学―その味わい方」「世界文学をどう読むか」「詩をよむ若き人々のために」
  14. 「新文章読本」「日本文芸入門」「世々の歌びと」「俳句読本」「現代詩概観」
  15. 「空想から科学へ」「共産党宣言」「職業としての政治」「矛盾論」「第二貧乏物語」
  16. 「人間の歴史」「世界文化小史」「歴史とは何か」
  17. 「日本文化史研究」「黒船前後」「蘭学事始」「おらんだ正月」
  18. 「黄河の水」「史記の世界」「敦煌物語」「長安の春」
  19. 「過去を掘る」「発掘物語」「先史時代への情熱」「悪魔の弁護人」
  20. 「魔法―その歴史と正体」
  21. 「海南小記」「山の人生」「北の人」「東奥異聞」「猪・鹿・狸」
  22. 「山行」「エヴェレストへの長い道」「山と渓谷」「アルプス登攀記」
  23. 「シルク・ロード」「ベーリングの大探検」「暗黒大陸」
  24. 「アムンゼン探検誌」「人間の土地」「たった一人の海」
  25. 「孤独な散歩者の夢想」「一粒の麦もし死なずば」「水と原生林のあいだで」
  26. 「ある革命家の思い出」「アラビアのロレンス」
  27. 「エリザベスとエセックス」「ディズレーリの生涯」「ジョゼフ・フーシェ」
  28. 「福翁自伝」「ある心の自叙伝」「わが精神の遍歴」
  29. 「百万人の科学概論「科学と実験の歴史」「物とは何か」「自然現象と奇跡」
  30. 「数と数学」「ろうそくの語る科学」「燈火の歴史」「音の世界」「自然と人間の闘い」
  31. 「神秘な宇宙」「地球の起源」「百万人の原子学」
  32. 「微生物を追う人々」「技術のあけぼの」
  33. 「生と死」「性の心理学」「精神分析入門」「からだの知恵」
  34. 「ファーブル昆虫記」「ラ・プラタの博物学者」「ビーグル号航海記」「シートン動物記」
高木さんの恋人「コトバ」という名前のフクロウ。
高木さんの恋人「コトバ」という名前のフクロウ。
  1. 別巻1「日本随筆・随想集」
  2. 別巻2「東西 文芸論集」
  3. 別巻3「東西 日記・書簡集」
  4. 別巻4「語録 永遠の言葉」

 

⑥「全集を読もう!」

鈴木「日本思想大系」を読んで、「世界教養全集」を読んで、次は何に挑戦したんだっけ?

高木「世界思想教養全集」全24巻(河出書房)です。

鈴木それも全部読んだの? どうでした?

高木読破しました。独特の編集だなと思いました。「14巻」で『プラグマティズム』を取り上げ、『アメリカの建国思想』や『現代アメリカの思想』という巻もあり、アメリカの思想を取り上げているのは珍しいと思いました。

鈴木編集者の中でアメリカに傾倒していた人がいたんでしょう。65年というとプラグマティズムの流れなんじゃないかな。この頃、プラグマティズムってよく言われていたし。その後、実存主義とかね。

高木『フランス実存主義』『実存の哲学』と実存は二つ入っています。当時、実存って言っていました?

鈴木言ってましたよ。学生運動の流れです。「我々の実存を賭けて」とか、「自分達一人一人は何で生きていくのか」とか、「実存を懸けて殴る」とか(笑)。一巻目は『近代思想の目覚め』でしょう? 筑摩でも一巻目はそんな感じがあったじゃないですか、「目覚め」みたいな。 

高木『近代思想の萌芽』『戦後日本の出発』ですね。

鈴木それが流行りだったんです。この頃が「目覚め」だとか、この頃が「萌芽だ」って時代の切り方を今だったらしないよ。そして、日本の思想と世界の思想の両方を読み比べると、「日本には思想がないな」と思ったよ。世界の思想のほうがすごく体系的だし、目次を見ても、第一章、第二章、第三章って区分けされて、その中でも細かく分かれてる。日本の思想ってあんまりそういうのがなくて、流れている感じするよね。高木さんは、『全集を読もう』と目標を立てて、「日本思想大系」「世界教養全集」「世界思想教養全集」と全部読破してきて、今は何に取り組んでますか?

世界思想教養全集

『世界思想教養全集』全24巻・河出書房

  1. 近代思想のめざめ
  2. フランス啓蒙思想
  3. カントの思想
  4. ヘーゲルの思想
  5. イギリスの近代経済思想
  6. イギリスの近代政治思想
  7. アメリカの建国思想
  8. 悲劇の思想
  9. 近代の文芸思想
  10. 実証の思想
  11. マルクスの政治思想
  12. マルクスの経済思想
  13. ロシア革命の思想
  14. プラグマティズム
  15. 現代アメリカの思想
  16. 現代科学思想
  17. イギリスの社会主義思想
  18. ウェーバーの思想
  19. ドイツの社会思想
  20. フロイトの思想
  21. 現代キリスト教の思想
  22. 実存の哲学
  23. 現代フランスの思想
  24. フランス実存主義
世界の名著

『世界の名著』全81巻・中央公論社

  1. バラモン教典 原始仏典
  2. 大乗仏典
  3. 孔子 孟子
  4. 老子 荘子
  5. ヘロドトス トゥキュディデス
  6. プラトン I
  7. プラトン II
  8. アリストテレス
  9. ギリシアの科学
  10. 諸子百家
  11. 司馬遷
  12. 聖書
  13. キケロ エピクテトス マルクス・アウレリウス
  14. アウグスティヌス
  15. コーラン
  16. マキアヴェリ
  17. エラスムス トマス・モア
  18. ルター
  19. モンテーニュ
  20. ベーコン
  21. ガリレオ ホイヘンス
  22. デカルト
  23. ホッブス
  24. パスカル
  25. スピノザ ライプニッツ
  26. ニュートン
  27. ロック ヒューム
  28. モンテスキュー
  29. ヴォルテール ディドロ ダランベール
  30. ルソー
  31. アダム・スミス
  32. カント
  33. フランクリン ジェファソン マディソン他 トグヴィル
  34. パーク マルサス
  35. ヘーゲル
  36. コント スペンサー
  37. ミシュレ
  38. ベンサム ジョン・スチュアート・ミル
  39. ダーウィン
  40. キルケゴール
  41. ラスキン モリス
  42. プルードン バクーニン クロポトキン
  43. マルクス エンゲルス I
  44. マルクス エンゲルス II
  45. ブルクハルト
  46. ニーチェ
  47. デュルケーム ジンメル
  48. パース ジェイムズ デューイ
  49. フロイト
  50. ウェーバー
  51. ブレンターノ フッサール
  52. レーニン
  53. ベルクソン
  54. マイネッケ
  55. ホイジンガ
  56. オルテガ・イ・ガセー マンハイム
  57. ケインズ ハロッド
  58. ホワイトヘッド ラッセル ウィトゲンシュタイン
  59. マリノフスキー レヴィ=ストロース
  60. バジョット ラスキ マッキーヴァー
  61. トインビー
  62. ハイデガー
  63. ガンジー ネルー
  64. 孫文 毛沢東
  65. 現代の科学 I
  66. 現代の科学 II
「コトバ」はこうして夜ごと思索するそうだ。
「コトバ」はこうして夜ごと思索するそうだ。
    続1 中国の科学
  1. 続2 プロティノス
  2. 続3 禅語録
  3. 続4 朱子・王陽明
  4. 続5 トマス・アクィナス
  5. 続6 ヴィーコ
  6. 続7 ヘルダー・ゲーテ
  7. 続8 オウエン サン・シモン
  8. 続9 フィヒテ・シェリング
  9. 続10 ショーペンハウアー
  10. 続11 ランケ
  11. 続12 アラン・ヴェレリー
  12. 続13 ヤスパース
  13. 続14 ユング
  14. 続15 近代の芸術論

⑦「世界にはまだまだ高い山がある」

高木『世界の名著』全81巻(中央公論社)です。

鈴木それは大仕事ですよ。

高木大仕事ですね。でも、これまでいろんな全集を読破してきた自信がありますから、この『世界の名著』も読破できると思います。それはそうとそれらの全集を置く場所が大変なんですよ。とりあえず部屋に積んでありますが・・・。一冊読んだら次に何を読むかは運任せで、積んである山から手に取ったものを読むという進め方です。

鈴木それはいい方法だよ。

高木何を読もう、どれを読もうというのはなくて、手に取ったものから崩していく方法で現在30巻くらい読みました。

鈴木『世界の名著』は当時、翻訳革命と言われたんです。同じ作品でもそれまでの翻訳と全然違う。わかりやすい。

高木それに最初の解説がとてもいいですね。一巻につき、50ページから100ページを解説にとってあります。解説だけで現在の新書以上はありますね。

鈴木内容的に新書の100倍だ(笑)

高木この解説だけ読んでいっても相当な知的満足を得られます。

鈴木『世界の名著』を学生が部屋に並べていたら「勉強しているんだなあ」と思ったね。電車の中で読んだりね。今電車の中で『世界の名著』を読んでいる人はいないよ(笑)。高木さんは、30巻くらい読み進めてるんだよね。どれが良かったですか?

高木:2巻の『大乗仏教』ですね。他に3巻4巻の『孔子』『老子』とか、『諸子百家』とか、続3巻の『禅語録』なんかも面白く読みました。あとは『ガンジー・ネルー』。59巻の『マリノフスキー・レヴィ=ストロース』。42巻の『プルードン・バクーニン・クロポトキン』も一気に読みましたよ。

鈴木『ニーチェ』とか、『フロイト』なんかも読みやすいよね。他に印象に残っているのは?

高木『ルター』が面白かったです。宗教改革。扉に書きつけた訴え(笑)

鈴木僕は『トインビー』は面白かったな。『ホワイトヘッド』もね。読むまで名前も知らなかったけど(笑)。そんな知らない人もいっぱいいるわけだから、当時苦労して読んだなあ。他には?

高木『オウエン サン・シモン』ですね。社会実験的に町を作っていく。ニューハーモニーですね。町を作って学校を作って幼稚園を作って全部無料でやってという実験ですけれど、読んでいるとうまくいきそうな気がするんですよね。

鈴木武者小路実篤の新しい村運動とかね。日本の右翼だって、例えば赤尾敏さんだって初めは新しい村に入ってやろうとした。変革運動をやる人は、皆、理想主義者だからスタートは似ている。やり始めてから、右とか左とか無政府主義とかに別れていく。52巻の『レーニン』も53巻の『ベルクソン』も記憶に残っているね。

高木23巻『ホッブス』の「リヴァイアサン」も面白いですね。というか、どれもこれも面白いですよ! 翻訳革命と言われたのもわかります。今、エッセンスだけを抜き出して解説したり、漫画で読む名著というのも出てますが、例えば、『聖書』にしても『司馬遷』にしても『諸子百家』にしても全文を読むということはあまりないじゃないですか。エッセンスや概略は知っていても、最初から最後まで読むっていうのは意義あることだと感じています。

鈴木そうだよね。概略は聞いたことはあるけど、じゃあ実際読んだことがあるかっていうと、読んでない。

高木『世界の名著』は、66巻と続15巻、全81巻。それを読破したらどんな感じを受けるのか楽しみです。

鈴木世界を征服した感じがしますよ。

高木今年一年で残り四十何巻は読めると思います。年内に読破します。世界征服です。

鈴木そしたら人生観が変わります。人間も変わります。それが『全集読み』の醍醐味です。『世界の名著』を読破したら、次は『人類の知的遺産』全80巻(講談社)に挑戦ですね!これも楽しいし、刺激的ですよ。読み始めたら、やめられなくなる。

 

⑧「世界は広い。読書が人間を作る。読書が明日を作る。読書が自分を作る」

高木こうしていろんな本を読んでいるのですが、その中でいろいろな先人が「読書」について書いていますね。それをその都度抜き出しているのですが、その発言がなかなか面白いんですよ。例えば、大川周明の「書物は私の心の案内者たるべきもので、決して私の心の専制者であつてはならない」。これは『安楽の門』の中にあります。石川啄木も本に対して切実に歌っています。「本を書ひたし、本を書ひたし、と、あてつけのつもりではなけれど、妻に言ひてみる」。本が欲しかったんでしょうね。

鈴木そういう後世に残る言葉を考えたいね。「西洋には軍事の技術はあっても学問はない。学問は中国の古典にあり、古典を学ぶものが読書人である。」って、孫文も凄いこと言っているね。確かに、日本の武士も中国の古典を読んで、生き死にを考えたりしていますからね。だからやっぱり中国をなめちゃいかんですよ。「『生長の家』は本を読むことが大事な契機になっている」っていうのもあるね。

高木戸坂潤の発言です。

鈴木確かに生長の家の人はみんな読書家ですよ。僕の母は、「生長の家」の信者で、よく本を読んでいた。小学生の時、そんな母の姿を見て、僕も読書家になった。生長の家は、「言葉の力」を強調します。だから、本を読んで病気が治るとか、そういうことを言っていますね。

高木影山正治も読書について書いています。「無味乾燥な講義を聴くより、よい小説を読むことの方がどれほどましかわからない」

鈴木影山さんの『一つの戰史』はいいね。学生の時に読んだ。他にも、みんな本を読んでた。授業中でも内職して本を読むんだ。先生の話と読書と二倍勉強していた。みんな、読書について書いているね。「人間一人一人が一巻の書物である。もし君がその正しい読み方を知っているならば」か。ということは、一巻の書物にならない人もいるということだ。「古典とは、誰も読んでおこうと思いながら誰も読もうとしない本のことである」。マーク・トウェインか。そういえば、そういう古典っていっぱいありますね。辻潤も書いているよ。「中毒するのが恐ろしければ初めから小説や詩などは読まない方がよかろう」か。長谷川如是閑の「私は出来るだけ、私の立場と反対のものを先ず読むことにしている」はいいですね!

高木鈴木さんもそうですよね。反対のものを読んで、反対の人と会って、ということが多いですよね。

鈴木山口瞳もいいよ。「むしろ、一見、仕事に関係のないように思われる書物を乱読することをおすすめする。そうやって社会を知り、人間を知り、人生を知ることのほうが、はるかに仕事にとって有益なのである」

高木中野正剛もオウエンも林達夫も読書について書いています。他にチェーホフ、徳川家康、荀子、ヘッセ、ソクラテス、デカルト、ニーチェ、福沢諭吉、高山樗牛、パスカル、カフカ、ナボコフも。もっとたくさんの東西の先人が読書から何かを得たのでしょう。コーランにも読書について出てきます。本を読むことで自分の仕事や人生に大きな影響を受けたのだと思います。

鈴木そうでしょうね。ぼくたちももっと本を読みましょう。ノルマ読書法を実践しながら頑張りましょう。この『全集読み』の対談の他に、何か一冊に決めて、それを語り明かすのもいいね。「丘浅次郎」についてだけとか。あと、当時の全集の編集者にも会って聞いてみたい。どんどんやりたいことが膨らむね。又、やりましょう!

 

【だいありー】
見沢知廉の『天皇ごっこ』を劇団再生が舞台化。
見沢知廉の『天皇ごっこ』を劇団再生が舞台化。
  1. 1月31日(月)昼、対談。5時、打ち合わせ。7時半、市民運動の集会。
     「アエラ」(2月7日号)発売。原稿を書いた。菅沼光弘・須田慎一郎両氏の『日本最後のスパイからの遺言』(扶桑社)の書評。頁が大きくなった。それに、写真もいい。「スパイ」らしい人間が顔を隠して、この本を読んでいる。写真も、大胆に主張している。いいね。
  2. 2月1日(火)図書館。夜、柔道。
  3. 2月2日(水)午前中、家で原稿。午後3時から、文化放送。今日は、メインテーマが「日本の就職氷河期を考える」。次に、大相撲の「八百長」問題。メールで八百長が発覚なんて…。子供の頃から相撲は好きなので、ショックだ。「編集長は見た!」は「クーリエ・ジャポン」編集長の富倉由樹央さん。〈天才という神話に科学が挑む『才能とは何か』〉。面白い話が聞けました。
  4. 2月3日(木)午後3時、河合塾コスモ。現代文要約。5時、基礎教養ゼミ。今週は牧野先生の選んだ本を読む。中津燎子さんの『英語と運命=つきあい続けて日が暮れて』(三五館)を読む。400頁以上いる。ぶ厚い本だ。とても勉強になった。終わって、生徒と食事会。
  5. 2月4日(金)、朝まで原稿を書いていた。眠い。午後、新橋。夜、芝居を見る。
  6. 2月5日(土)急ぎの原稿があったので、河合塾コスモに行って、自習室で、ずっと書いていた。
  7. 2月6日(日)図書館。夕方から、次の仕事の打ち合わせ。
【写真説明】

①高木さんの所有する『現代日本思想大系』全35巻だ。ネットで買ったという。昔は一冊ずつ買い集めたが、今はネットで簡単に手に入る。それに安い。ただみたいなもんだ。

②『世界思想全集』全38巻。劇団再生の舞台では、本が舞台美術として使われることも多い。そういえば、舞台『天皇ごっこ』の時にも大きな本棚にたくさんの本が並べられていた。見沢知廉もたくさんの本を所有していたな。

③『世界思想教養全集』全24巻だ。読書家の部屋には,こうして本が積みあがっていくんです。昔はぼくもそうでした。本に埋もれていた青春時代でしたよ。本の重さで床が抜けそうになったり、本が崩れてきて窒息しそうになったもんです。

④これが『世界の名著』全81巻! 凄いですね。圧倒されます。これを読んで世界征服するんです! こうして見るとなつかしいなあ。当時は、一冊ずつ読んでいった。読むたびに目が開かれていくのを感じたものです。今の高木さんがそうでしょう。

⑤高木さん率いる「劇団再生」。その舞台にはいつも驚かされます。文学的だし、哲学的だ。「難解だ」という感想もあるようだが、それでいいのです!

⑥高木さんは自宅で本を読むといいます。「集中できないのでは?」と聞いてみたら、「眠くなったら、太ももにペンを突き刺して読むんです」とのこと・・・。『ニヒリズム』が好きなはずですね。

⑦フクロウです。「コトバ」という名前だそうです。高木さんの唯一の友人でしたが、先日、卵を産んで「女性」だとわかり、彼の恋人になりました。

⑧これも「コトバ」です。かわいいですね。目を閉じてます。眠いんでしょうか。それとも何かを考えてるんでしょうか。

⑨高木さんは、「見沢知廉」を舞台化し続けています。彼の全作品を舞台化しようとしています。今年は、見沢知廉七回忌ですね。記念公演が開催されます。「蒼白の馬上」だそうです。あの事件をどう舞台化するのか楽しみです。

【お知らせ】
  1. 2月4日(金)。山平重樹氏の力作『連合赤軍物語・紅炎(プロミネンス)』(徳間文庫・686円)が発売になりました。数ある「連赤」本の中でも決定打です。よくここまで調べ、取材したものだと驚きます。一気に読みました。僕らの知らないことも多く、書かれています。ぜひ、読んでみて下さい。
  2. 月刊『創』(3月号)発売中です。私の連載では森村泰昌さん、若松孝二監督の「表現者の覚悟」について書きました。
  3. 『紙の爆弾』(3月号・鹿砦社)が発売中です。『流出「公安テロ情報」全データ』を出版し、衝撃を与えている第三書館代表の北川明さんに私が話を聞いてます。「ニッポン越境問答」です。
  4. 2月9日(水)午後7時。一水会フォーラムサンルートホテル高田馬場
     講師は三井環氏です。元大阪高検公安部長です。腐敗する検察問題について語って頂きます。
  5. 2月11日(金)、午後1時〜6時。カタログハウス本社のセミナーハウスで。「第6回・マガ9学校」。テーマは、「平和と軍事のシミュレーション。あなたが決める尖閣問題」。東京外大の伊勢崎賢治さん、マエキタミヤコさんと私。参加費8000円。参加申し込み希望者はメルマガの「マガジン9」まで。
  6. 2月27日(日)午後2時、第4回「鈴木邦男ゼミin西宮」。今回は、「受刑者のアイドル」と呼ばれ、刑務所でPrisonコンサートの活動を最多で繰り広げる女性歌手デュオ「Paix2(ペペ)」が登場します。ManamiさんとMegumiさんです。1時間のライブのあと、鈴木とトークです。
    場所は、西宮駅前のカフェィンティ・ライミ(喫茶店)です。お問い合わせ、お申し込みは、岩井正和まで。080(5702)8405です。