驚きました。超満員でした。7月6日(水)の阿佐ヶ谷ロフトです。〈鈴木邦男『新・言論の覚悟』出版記念トーク〉です。「創」プレゼンツで、豪華ゲストが出演してくれました。ありがとうございました。阿佐ヶ谷ロフト始まって以来の盛況でした。
水曜日は文化放送に出てるので、この日も終わったのは6時20分。浜松町から阿佐ヶ谷まで行くのだ。ヤベー、間に合うかな。「遅れたら始めていて下さい」と司会の篠田さん(「創」編集長)に電話しておいた。これだけ豪華なゲストだ。皆、ゲストを見たくて来るのだ。別に私がいなくてもいいだろう、と思った。
タクシーに乗って、高速に入って、吹っ飛ばす。そしたら何と、7時ちょっと過ぎに着いた。ゆうゆう間に合った。客席を見たら、もう満員だ。どんどん入ってくる。ありがたいです。
控え室に行ったら、連合赤軍の植垣康博さんがいる。「お父さん大丈夫だったの?」とつい聞いてしまいました。先週書いたけど、お父さんは洗剤をゴクゴク飲んで倒れてしまった。その直後に、植垣さんと訪ね、〈現場〉に立ち会ったのだ。
「いや、大丈夫でしたよ。生きてますよ」と植垣さん。よかったですね。ちょっと説明するか。6月26日(日)、大阪で柴田泰弘さん(「よど号」メンバー)の告別式があった。その帰り、植垣さんが「これから兄貴の家に行くけど、一緒に行く?」と誘われたので、行った。ところが、そのお兄さんの家では大事件が起きていた。その日、鳥取の実家から1人で出てきたお父さん(96才)が、家にあった洗剤を飲んでしまい、倒れたのだ。
救急車を呼んだ方がいいんじゃないですか、と言ったが、「大丈夫でしょう。外に食事に出かけましょう」と、倒れたお父さんを置いて、八尾に食事に行ったのだ。ごちそうさまでした。それに、おみやげまでもらい、申し訳ありませんでした。
でも、倒れて寝たままのお父さんは大丈夫だったのか。心配でした。だから、ロフトでも会うなり聞いたのです。「大丈夫です。洗剤を飲んだくらいで死にませんよ。胃の中が掃除されて、かえってよかったでしょう」。そういうもんですかね。「青い洗剤で、きっと、おいしそうに見えたんでしょうね」。
ウーン、でも、それが食卓に置いてあった、というのも不自然ですね。あっ、いけない。「刑事の眼」になっちゃった。飛松五男さんの熱血事件簿じゃないんだから。
「それにしても、よく会いますね」と植垣さん。そうだよね。先週なんて、3回も会ったよ。「でも、今日は一番乗りですね。出番は最後なのに」「えっ、そうですか」とスケジュール表を見る。この日は盛り沢山だ。何と、4部まである。その4部が「連合赤軍」のコーナーだ。果たして、そこまでやれるのだろうか。心配になった。
この日のチラシを見たら、「注意事項」が。こう書かれていた。
〈※下記のごとく超豪華出演陣でかつ会場の定員が100人超なので満席が予想されます。確実に座席を確保したい方は、事前予約をお願いします〉
ほんと、超豪華ゲスト陣だ。いつも来る、「自殺サイト」のつがい(カップル)も、ネットで予約して、やっと席が取れました。と言っていた。4部構成という、欲張りな企画だ。1部が1時間もない。勿体ない。ザッと紹介してみよう。
〈第1部〉7時半〜。映画「靖国」、「ザ・コーブ」上映中止事件。
映画館前、そしてロフトで闘う私の姿がビデオで映し出される。私が殴られるシーンも。又、10年前に、日比谷野音での大騒動の時の映像も流れる。懐かしい。
それを見て、ゲストの森達也さん(作家)、綿井健陽さん(ジャーナリスト)と話をする。映画上映を巡る「抗議の自由」はある。又、上映し、見る権利もある。何よりも、「見せて」その上で討議するべきだろう。
又、左右を含め、市民運動はどうあるべきか。「表現の自由」は。「表現者の覚悟」は?などについて討議すべき、いい素材だったはずだ。それが余りやられずに、「反日映画だ」「見せたら、洗脳される」といった次元での騒動になった。これは残念だった。そんな話をした。
〈第2部〉は、「冤罪事件を考える」。
森、綿井さんには残ってもらい、新たに、「布川事件」の杉山卓男さんが登場だ。杉山さんとは、このところ何度か会っている。何故、冤罪が起こるか。当時の報道はどうだったのか。取り調べは…などについて詳しく聞いた。
警察は、「早く犯人を捕まえろ!」という国民の声、マスコミに押されて、怪しそうな人間、悪そうな人間を次々と捕まえた。証拠があって、捕まえたのではない。「こいつならやりそうだ」と思われる人間を捕まえて、そして、刑事の頭の中で〈物語〉をつくる。それに従って取り調べ、「自供」させる。
捕まった時は、手錠姿の写真が新聞にデカデカと載せられた。新聞も、「こいつが犯人だ」と決めつけていた。しかし、長い眼で見ると、新聞が事件に対し疑問を書いてくれ、そのおかげで冤罪が晴れた。「だから、今は感謝してます」と杉山さんは言う。
〈第3部〉は「畏友・見沢知廉とその映画」。
見沢知廉の映画がやっと完成した。大浦信行監督の「天皇ごっこ。たった一人の革命」だ。今年の10月、新宿のk’cinemaで封切られる。
その大浦監督が登場。又、見沢知廉の芝居をずっとやってきた「劇団再生」の代表・高木尋士さんも登場。さらに劇団員で、映画にも出演した、あべ・あゆみさんも登場。「見沢柄」(アザミの花)の浴衣を着て登場だ。素晴らしい。
見沢事件について私がまず説明する。「右翼の連赤事件だ!」とよく言われた。(次のコーナーは、本物の連赤だ)。
あの時は大変だった。思い出したくもない。と言いながら、週刊「SPA!」には随分と書いたような気がするな。
ともかく、10月の上映が待ち遠しい。その前に、9月に、劇団再生の見沢芝居がある。そこで高木さんと私もトークする。又、見沢氏の未発表の原稿が発見され、近々、単行本化されるという。凄いね。死してなお、成長し続ける見沢文学ですよ。
〈第4部〉は、もう10時過ぎていた。「連赤・よど号事件を振り返る」。
連合赤軍事件の4人が登場する。おなじみ、植垣さん。獄中27年の猛者だ。それに、指名手配になり、15年間逃げて、無事時効を迎えて、社会復帰した、「奇跡の人」金廣志さん。この2人は赤軍関係だ。
さらに革左の人が2人。一般的には連合赤軍は赤軍派と京浜安保の合体といわれるが、本当は「京浜安保」の上部団体の「革命左派」なんだ。だから「赤軍派と革命左派の合体」が連合赤軍なんだ。この革命左派、略称して「革左」というらしい。
革左の2人が登場、前沢虎義さんと雪野建作さんだ。この第4部は、急遽、椎野礼仁さんが司会をやる。連赤では、その記録を残す会をやっているし、詳しい。
私をはさんで、観客から右が赤軍派の2人。左が革左の2人。「赤軍派の人は、よくテレビや週刊誌にも出るし、ロフトにも出ている。でも革左の人は余り出ない。どうしてですか」と椎野さん。「呼ばれなかったからです」と言うが、すかさず、「革左は謙虚なんです」「赤軍派のように1のことを10に言うようなことはない」。
すかさず、「それはどういうことか!」と赤軍派は激怒する。ヤダな、もう内ゲバが始まっているよ。
私も、赤軍派の人は結構話を聞いてたけど、革左の人は余り聞いてない。これから、じっくり聞いてみたい。
前沢さんは、連赤事件の時、雪山から脱走する。植垣さんは、実はそれを目撃していた。でも追わないし、上に報告もしない。見逃してやったのだ。
うーん、この点は植垣さんは偉いね。「逃げる人間は、逃がしたらいい」というのが植垣さんのポリシーだった。死ぬ覚悟をして一緒に闘った人間だ。たとえ脱走しても権力にたれ込むことはない。と信じていたのだ。凄いね。
脱走した後、前沢さんは、どんな気持ちだったのか。「仲間からの追っ手。警察」両方から追われている。「いや、組織は解体してたから、仲間の追っ手は考えなかった。警察にはすぐに捕まると思っていた」という。ところが、なかなか発見されない。隠れ方がうまかったのだ。その話は又ゆっくり紹介しよう。
雪野建作さんは、名前からして連赤向きだ。「雪の山中」「雪の行進」「雪の総括」を連想させる。雪の中で、作戦を練り、軍を建て直す。それで、「雪野建作」なんだろうか。
この人は、連赤に合体する前は、栃木県真岡の銃砲店を襲って銃を大量に奪った人だ。凄いですね。その時の話を、楽しそうにする。
4人とも、楽しそうに話すな。陰惨な事件だ。でも、あれだけの「極限状況」を体験したんだ。そして今、語っているのだ。ロフトにいる人々も、歴史の「生き証人」の話に感動してました。これは、ぜひ、日本史の教科書に載せてほしいものだ。
ともかく、スリリングで、盛り沢山なイベントでした。
連赤の4人には、又、個別に話を聞いてみたい。布川事件の杉山さんにも。そう言ったら植垣さんに、「鈴木さんも隠していることを全部喋って下さいよ」と言われた。
そういえば最近、又、「赤報隊」が登場している。小沢や菅さんに脅迫状を送っている。でも、これはニセ者です。文章を読んで分かった。もし、本物なら、もう一つ「デモンストレーション」をやる。銃を撃つとか、弾を送りつけるとか。それがないということは、持ってないのだ。
そうだ。革左は奪った銃が多すぎて、いろんな所に埋めて隠した、という。でも、捕まったし、その隠し場所も忘れた。徳川の埋蔵金のような話だ。
雪野さん達から、その場所を聞いて、銃を手に入れたらいいだろう。「赤報隊」も。
ともかく、この日は、盛り沢山で、とても書ききれない。又、書きましょう。
又、日本には、「歴女」が多い。「三国志」なんて、メチャ詳しい女の子が多い。中国にはいないよ。中国以上に、日本人は中国の歴史が好きだ。こうした民間同士の交流は必要だ。政府やマスコミだけだと、お互い、〈対立〉を煽る。これだけに、煽られていてはマズイだろう。
「編集長は見た!」は『クーリエ・ジャポン』の富倉由樹夫編集長。今週の特集は、
「ソチオリンピックは血塗られている…。ロシアを脅かす大虐殺の過去」
「なぜ日本でオペラ歌手が育たないのか」
「分離不可能のモンスター。レディ・ガガに魅せられて」
そのあと、Wコロンの謎かけ。そして、今日の「鈴木邦男の三島講座」は、三島の死について語った。三島の『仮面の告白』『豊饒の海』『金閣寺』『サド侯爵夫人』を取り上げて、一応、三島は終わり。次回からは〈太宰治講座〉になる。
終わったのが6時20分です。あわててタクシーで阿佐ヶ谷ロフトへ。あとは「主張」に続きます。1〜4部の盛り沢山な企画でした。楽しかったです。スリリングでした。12時過ぎに帰りました。
①『新・言論の覚悟』出版記念トークです。7月6日(水)夜7時半から11時です。阿佐ヶ谷ロフトです。これは〈第4部〉の「連赤・よど号事件を振り返る」です。左から、司会の椎野礼仁さん、雪野建作さん、前沢虎義さん、鈴木、金廣志さん、植垣康博さん。