あれは4年前なんですね。私が、「中学生向け」の本を出したんです。『失敗の愛国心』(理論社)です。
写真、カラーイラスト、漫画が沢山入っていて、とても楽しい本です。「よりみちパン!セ」シリーズの1冊で出しました。
そして今度、『増補・失敗の愛国心』が出ました。増補にあったって、17ページも巻頭に書き足しました。〈「東北製」の誇り〉です。私も東北製です。出版社も変わって、イースト・プレスです。いろいろと事情があって、出版社は変わったようです。
でも、「よりみちパン!セ」シリーズは全て、このイースト・プレスに移り、続々と「復刊」しております。私の本も復刊してくれました。ありがたいです。
「でも4年も経って、東北出身の鈴木さんとしては3.11東日本大震災に触れないわけにはいかないでしょう」と編集者に言われ、大幅に書き足しました。12月の慌ただしい時に、慌ただしく書きました。
そして、1月19日に発売です。嬉しいです。
本の表紙は、私ですね。背景は海です。大きな太陽が昇っています。
あっ、今、気が付いたけど、これは「日の丸」を表しているのかな。私は胸に「S」のマークを付けたセーターを着ています。スーパーマンでしょう。
いや、ただ、鈴木の略かな。裏の表紙は、クニオ少年が亀に乗って、天を駆けています。ETのようです。
亀は普通、海に潜り、竜宮城に案内するはずです。でも、この亀は天上を目指しています。
そして、海には、クジラやイルカもいます。一見したところは、見えませんが、じっと見たら、段々と見えてきます。4年前に出た時もこの表紙です。
これは予言です。後に私が、クジラやイルカの為に闘うというミッションを知っていたんでょうね、亀は。
(4年前の表紙も同じですが)私は呟いています。ツイッターしています。後の「ツイッター・ブーム」を予言しているんです。こんなことを呟いています。
〈ぼくが著者の鈴木邦男です。日本のためによかれと思い、40年間〈右翼〉をやってきました〉
このツイートが、下の帯に続きます。凄いです。勝手に連動しています。3Dです。(ちがうか)。
では、どう続いているかです。
「そしてこの本は、ぼくの宝だ!」と続きます。その下は、「編集者の声」ですね。いや、読者の「中学生の声」なのかな。こう書かれています。
〈愛国心にこだわり続けたがゆえの失敗の連続、その全てを赤裸々に語る。そしていま、右翼も左翼も超え、どんなに自分と異質な人間とも、どこまでもとことん話し合う、邦男さん。だから、教えて下さい。いま私たちが愛すべき国、愛すべき故郷は、いったいどこにあるのでしょうか〉
それに答えたのがこの本ですね。特に「増補版」の為に書いた〈「東北製」の誇り〉ですね。小見出しはこんなです。
いやー、かなり思い切ったことを言ってますね。そうだ。写真、イラストが多いと言ったけど、忘れちゃいけない。「パラパラ漫画」がついているのだ。ページの左下に。
パラパラとめくると、クニオ少年が動きます。日の丸の鉢巻をして、「S」のマークの付いたシャツで走ります。
パン食い競争に挑戦したり、木登りに挑戦したり、イルカと泳いだり、ドバイの超高層ビルによじ登ったり。そこまではないかな。
でも、挑戦です。ミッションです。時には、月光仮面の格好をして走ります。ヤバイな。昔の非合法闘争のことを表しているのかな。うーん、見抜かれてるな。
それから、スッテン転んでしまうとこもあります。逮捕された時のことでしょうか。でも、元気に立ち上がって、バタバタとホコリを払います。凄いです。
パラパラとめくっているだけで、私の一生が全て、出てきます。
ともかく、こんな楽しくて、エキサイティングな本はありません。本当に嬉しいですね。
だから、「この本は僕の宝だ」と呟いてしまったのです。目次も紹介しましょう。
これは、「失敗学」かもしれませんね。失敗したからこそ、その悔しさをバネにして、頑張れる。
そういうことか、と思うでしょうが、私の場合は、ちょっと違います。全然、バネにしてません。ずっと、クヨクヨしてます。嘆いてます。
何てドジなんだろう。何で俺だけが不幸なんだろうと暗くなります。
ただ、ずっと後になってから、あっ、あの時、失敗し、追放されてよかったな、と思うのです。
そうすると、昔、喧嘩して私を追放した人が神様に見えてくるのです。これは本当です。
たとえば、この本にも書いてますが、私の人生は失敗の連続です。いつも、追い出されています。
高校を退学になり、大学では全共闘にいじめられ。右派学生運動では、必死に頑張って、全国組織のトップに立ったら、1ヶ月後に、「無能」だからと解任・追放され。
故郷の仙台で本の配達のバイトをしていて、産経新聞に拾われて上京。でも4年後、クビ。それからも、クビ、連載の打ち切り…と切られまくってます。
「これこそ自分のやりたい仕事だ」と思ってたのに、「無能」だからと切られた時は、本当にショックでした。ずーっと暗く暗く考え込みました。もう死のうかと思いました。
段々、自分の行動がおかしくなるし、言ってることも変なんです。眠れないし、夜中に暴れたりしました。
「あっ、こうして人間は狂っていくのか」と実感しました。
でも、10年以上経ち、「あっ、クビになってよかったな」と思います。
だって、クビにならなかったら、ずっとそこで、しがみついてやっていたでしょう。学生運動を年取ってやってたり。
実際、左翼の人にはいるんですよ。40、50になっても大学に入り直して、運動をしてる人が。
又、そのままいったら、「生長の家」の本部に入ったでしょう。あるいは、産経新聞でずーっとやってたり…と。私は「東北製」だから、よく言えば、東北人の粘りでしょう。悪く言えば、方向転換がきかない。
だから、神様が、「おいおい、もういいだろう。ここは卒業して、次にチャレンジしてみろよ」と言ってくれたんでしょう。
そう考えると、「失敗」はありがたいです。「失敗」があったから転機があるのです。
そうだ。予備校で、「僕は大学に落ちてよかった」と言ってた生徒がいました。
「SPA!」に「夕コペ」を書いてた時です。小林よしのりさんの「ゴー宣」にも漫画で私は出てました。
その「漫画の鈴木先生」に予備校で会えて感動した。そして教えてもらっている。もし大学に受かっていたら、こんなチャンスはなかった。だから僕は大学に落ちてよかった。と言うのです。
凄い予備校生ですよね。私は心の中で号泣しました。俺は未熟だな。「この生徒に教えられた」と思いました。
だから、サラリーマンでクビになったことなど大したことではない。いや、クビになってよかったんです。こんなに広い世界に押し出してもらえた。
世の中には、同じように、会社をクビになったり、転勤させられたりして、悔しい思いをしてる人がいるでしょう。自分の力が正しく評価されないと、嘆いている人もいるでしょう。
でも、それが次のチャンスにつながっているのです。嘘だと思ったら、『失敗の愛国心』を読んで下さい。
そうだ。今年は、連合赤軍40年だ。じゃ、誰かに『失敗の連合赤軍』を書いてもらったらいい。植垣康博さんなんかがいいでしょう。
「中学生向け」に書くとなると、難しいですよ。でも、「死の総括」をくぐり抜けた彼なら大丈夫でしょう。
他にも、オウムで最近出頭した平田信さんなんかにも書いてもらったらいい。もう1年か2年で出てくるでしょうし、『失敗のオウム真理教』ですね。
ともかく、この本は、私の最も好きな本です。今、パラパラと、パラパラ漫画を見ていたら、最後まで見ちゃった。
そして、「著者プロフィール」を見た。うまい。編集者が書いたんでしょうが、実にいいですね。こんな感じです。
〈1943年、福島県生まれ。67年早稲田大学政治経済学部卒業、70年同大学院中退。70〜74年産経新聞に在籍。72年に、三島由紀夫の「楯の会」の事件に大きな影響を受けた仲間とともに「一水会」を設立する。99年まで代表をつとめるも、その発言がつねに「一水会代表」としての意味を持つことに危惧を感じ、発言の「個人責任」をとるべく、現在は顧問の位置にある。また、河合塾コスモ、日本ジャーナリスト専門学校で講師をしている。みずからの著作活動についてどのような反応・反響へも言葉でもって応えることを「覚悟」とし、著作のすべてに自宅の住所と電話番号を記しつつ、講演や対談をはじめ、求めがあれば思想や立場をこえて旺盛な発言をつづけている。言論の場が容易に奪われ、その自由がないがしろにされる現代の状況に厳しく警鐘を鳴らしながら、思想書からサブカルチャーまでジャンルを問わず、好奇心の赴くままに本をひもとき、さまざまな価値観と出会うべく広く対談を行う日々〉
このあとは、沢山の著書が紹介されている。今、読み返してみて驚きましたね。素晴らしいプロフィールですね。私だって書けません。ありがたいですね。
普通なら、どこの学校を出て、どこに勤め、著書は…と現実的、表面的な物事を追うが、これは違う。その本人の悩み、苦しみ、孤立感、覚悟などを中心にして書いている。
なかなかないですよ。ありがたいと思いました。
そして、あっ、「竹中労に影響されてるんだな」と思いましたね。
竹中労は言ってます。「人は弱いから群れるのではない。群れるから弱いのだ」と。1人でも闘う覚悟を言ってます。
ということは、このプロフィールが書かれた4年前から、もうすぐに「竹中労」を書こうと思ってたのでしょう。そんな気がします。
編集者の〈予言〉というか、予知能力を感じます。
「よりみちパン!セ」を出しているイースト・プレスは、多分、皆も聞いたことがあると思います。文庫本の漫画を沢山出してます。それも日本と世界の古典文学です。
「あっ、そうか」と思い出した人も多いでしょう。私も随分と読んでます。ドストエフスキーや漱石などです。
昔、読んでいて、筋を忘れてしまい、確認するために読んだり。又は、漫画だと、どう描かれるのかな、と思って買ったり。
『資本論』や『君主論』なんかそうですね。それと超長い小説なので、まず漫画で要点をつかんでおき、いつかは挑戦してみようという小説もあります。
『失われた時を求めて』です。これは世界で一番長い小説と言われています。あっ、こういう話かと分かったので、次は小説に挑戦しますよ。
日本で一番長い小説と言われているのは『大菩薩峠』です。私は、これは読みました。かなり苦労して読みました。
その体験談は『鈴木邦男の読書術』(彩流社)に書いてます。〈日本〉を制覇したので、次は〈世界〉ですよ。
というわけで、今週は終わりです。
あららら、ここで終わっちゃいけないんだ。
イースト・プレスは漫画で文学書や思想書を沢山出している。だから、ぜひ「よりみちパン!セ」シリーズも漫画にして下さいよ、と言ったんだ。「それは面白いですね」と編集者は言っていました。
ぜひ、実現してほしいですね。漫画『失敗の愛国心』なんて、いいじゃないですか。
人間も人生も考え方も、全てが漫画的なんだし、ピッタリだと思います。スミダ。
〈今そこにあるタブー。業界の潜伏リスクを暴く!2012年 日本のエックスデー〉
〈金日成生誕100周年という節目の日、金正恩、4月15日に軍事挑発か〉
〈政権交代で法務大臣に死刑推進派。平田逮捕でも迫る麻原死刑執行の日〉
このあと、Wコロンの謎かけ。Ust延長戦。来週の打ち合わせをして、タクシーで新宿へ。
7時からロフトプラスワンで、「男たちの国防論」。右から考える脱原発集会&デモについて語り合った。針谷大輔氏の他、長谷川光良氏、ノイエホイエ氏、外山恒一氏、群青氏…など。夜11時過ぎまでやった。
⑤1月22日(日)午前9時半に、大阪長居にある障害者スポーツセンターを訪ねました。『障害者とスポーツ』(岩波書店)という感動的な本を書かれた高橋明さんが案内してくれました。この本については、このHPの2010年11月1日号に詳しく書いてますので読んでみて下さい。
障害者が自由に入れてスポーツが出来る、立派なスポーツセンターです。卓球、バスケットボール、ボーリングなどがやられてます。私も車椅子で体験させてもらいました。隣りが高橋明さんです。本当にお世話になりました。
⑥余りにも有名ですよね。オリンピックはどこにでも行きますし、相撲やテニス、あらゆる大会に出て応援しています。「五輪おじさん」山田直稔さんと。1月24日(火)の「恵観大阿闍梨新年のお祓いと集まり」で会いました。前にも何度か会ってます。
⑩翌、1月22日(日)は午前中に障害者スポーツセンターに行き、午後2時から、西宮で「鈴木ゼミ」でした。北村肇さん(「週刊金曜日」発行人)(右)と対談しました。「Paix2(ペペ)」さん(手前)のミニコンサートもありました。