『断捨離』を読んで部屋の中を整理し、片付けようとしているが、うまくいかない。本や資料の山だ。足の踏み場もない。本につまずいて転んだりしている。「あっ、ゴメン!」と本に謝ったりしている。
全部捨てちゃえばいいのかもしれないが、大事な本や資料もある。もう探せないのもある。ファイルにしたり、パソコンに取り込んで整理したり…。苦闘している。
そんな時、漫画のコピーが出てきた。「漫画ゴラク」だ。多分、関川夏央(原作)・谷口ジロー(絵)の『新事件屋稼業』だろう。20年前のものだ。
探偵と刑事が打ち合わせで会い、町を歩く。銀座だね。
そうすると、デモにぶつかる。世にも奇妙なデモだ。だって、「右翼と左翼とヤクザ」の三者が一緒になってデモをしている。20年前に施行された暴対法(暴力団対策法)に反対するデモだ。
それが漫画で取り上げられてる。これは実際の事件をモデルにした漫画だ。
「右翼と左翼とヤクザ」の三派連合で、「暴対法反対!」を叫んで、銀座をデモしたのだ。今から考えると漫画だ。だから漫画にも取り上げられた。
又、ヤクザの奥さんたちのデモもあった。「極道の妻たち」のデモだ、と言われた。この漫画にも出ている。「あっ、テレビのワイドショーで見たことがあるぞ」と思い出す人もいるだろう。
当時は、それだけ社会問題化していたのだ。暴対法は「朝まで生テレビ」でも、何度も取り上げられた。私も出た。現役のヤクザにも話を聞いていた。
ヤクザの取り締まりに名を借りて、右翼、左翼、労働組合、市民運動への弾圧を目指したものだ。言論の自由の危機だ!と、いろんな方面から反対運動が起こったのだ。
20年経ち、その暴対法がさらに強化、「改正」されようとしている。又、ヤクザだけでなく、付き合う人間も取り締まり逮捕しようと、「暴排条例」(暴力団排除条例)が作られた。
それに反対する記者会見が今年の1月24日(火)に行われた。その様子が翌、25日(水)の東京新聞に大きく載った。
又、文化放送では2月1日(水)に取り上げられた。
記者会見のことは先週のHPでも紹介したが、「東京新聞」を引用しながら、もう少し詳しく説明しよう。
1月24日(火)、参議院議員会館で共同声明を発表し、記者会見をした。暴排条例が「自由の死を意味する」と批判し、法規制で「表現の自由が脅かされている」と我々は言った。この記事は田原牧記者が書いている。
記者会見に出席したのは、詩人の辻井喬、評論家の西部邁、ジャーナリストの田原総一朗、評論家の佐高信、そして私だ。司会はジャーナリストの青木理さんだ。
なぜ反対するか。その主張と背景が「東京新聞」ではこう書かれている。これは分かりやすい。
〈警察庁主導の暴力団排除条例は、昨年十月に未制定だった東京都と沖縄県を含めて、全都道府県で施行されている。「暴力団と交際しない」が強調され、「警察対暴力団」から「社会対暴力団」への転換(警視庁)がポイントとされている。
一方、1992年に施行され、これまで四回の改正を重ねている暴対法について、警察庁は今月5日、「特定暴力団」規定の導入や罰則の重罰化を内容とする「改正」法骨子案を発表した。こうした法規制の強化に伴い、暴力団情報を扱う雑誌を発行する一部出版社には、取引先から廃刊を求められるケースも出ているという〉
記者会見は超満員だった。今、危機にある「実話系の雑誌」の発行人、記者も来ている。実情を語っていた。
かつて東映、日活でやっていた「ヤクザ映画」は、もう作れない。ヤクザに取材するのもいけない。「ヤクザに学ぶ…」といった本も出せない。こうなると、清水次郎長なども芝居でやれない。
少なくとも、そんな危惧があった時は、警察にお伺いを立てる。全ては警察の判断になる。
どこまでが暴力団かも判らない。ヤクザは勿論、右翼、左翼も含まれるだろう。実際、「極左暴力集団取締本部」という看板が、どこの警察でもかかっている。
「東京新聞」に戻る。
〈会見で、辻井喬氏は「かつて個人情報保護法に対し、言論や表現の自由が侵されると反対した。それが姿を変え、再び現れたと思う」と発言。さらに「私は暴力団には反対だが、解決には社会全体を健康にすることが先決。それを抜きに法が社会を従わせるという発想は敗戦前の国の考え方と同じだ」と話した〉
〈佐高信氏は「無菌状態に近い社会はひじょうに弱い社会だ」と疑問を呈した。加えて「法は行為を罰すべきだが、この条例は身分を罰している」と異議をとなえた〉
西部邁さんは、暴力団員になった中学時代の友人との45年にわたる物語を数年前に出版した。「これはとんでもない条例だ。彼らを『人間性に劣る』とみなしており、『いじめの構造』だ」と言う。
次は私の発言の番だ。私は、何を言ったのかな。20年前の「暴対法」の時は、暴力団を潰すということだったが、今度は、「人民を盾にして暴力団対策をしている」と言った。
又、20年前は、暴対法反対で、あれだけ運動が盛り上がったが、今は、「警察を刺激したくない」と思い、皆、自制・自粛している。それも問題だ。と言った。
田原総一朗さんは、FBI長官だったフーバーの例を出して言う。「正義なら何をやってもいいという『過剰な正義』くらい危ないものはない」と。
「こうした法律がまかり通ってしまう一因にマスコミの弱さがある。批判されないゆえ、警察や検察はいい気になり、過剰な正義に走っている」
東京新聞では宮崎学さんの言葉を締めに紹介している。今回の問題の本質がよく分かる。
〈宮崎氏はこの条例や暴対法「改正」法案の背後には、警察官僚の利権確保の狙いがあると指摘した。「1970年前後に大量に確保した警察官が退職時期を迎えている。こうした警官を企業に天下りさせるために、暴力団排除の標語が利用されている。いわば「コンプライアンス利権」だ。
暴力団を擁護するつもりはない。しかし、被害者の人権とともに加害者の防御権も考えて、バランスをとることが望ましい社会のあり方だ」と話し、「息苦しい社会」への転換を許してはならない」と訴えた〉
この日の記者会見には、佐藤優さんや村上正邦さんも聞きに来ていた。
佐藤さんは発言を求められて、こんなことを言っていた。
「今、世界も日本も大変な時期にある。警察も大忙しだ。そんな時に、こんなことで、警察を使っては申し訳ない。こんなことまでやらされるとは警察もかわいそうだ」
なるほどと思った。暴力団事務所に知らないでピザを届けたら、どうなる。葬式、法要もお寺で断るしかないのか。
…そんなことを全て、警察にやらせる。大変な話だ。犯罪が起きたら、いくらでも刑法で罰することができる。それなのに…。
宮崎さんが言うように、「天下り」警察官のための仕事つくりか。
話を戻す。20年前だ。私は暴対法について、余り分からなかったし、そんな雰囲気も分からなかった。暴力団を取り締まるのなら、いいだろうと思っていた。
ところが、野村秋介さんや遠藤誠弁護士に、叱られた。「これは必ず左右の運動家に来る。集会、結社、表現の自由が侵される。だから、反対運動に立て!」と言われた。
まあ、それは分かるが、「各々」で反対運動をやったらいいだろう。と、私は二人に言いました。つまり、右翼は右翼で勉強会をやって、社会に主張し、デモもやったらいい。左翼は左翼で。ヤクザはヤクザで各々やればいい。と言った。
そしたら、「ダメだ!三者が一緒にやるから社会へのインパクトがあるんだ」と、お二人に言われました。
でも「左・右・ヤクザ」といっても、各々の“業界”の全ての人が出てくれるわけではない。そこは野村さん、遠藤さん二人の知り合いの人々に声をかけて、集まってもらった。
つまり、「右翼」は私たち新右翼。「左翼」は、お二人が交流していた「日本共産党行動派」という人たち。あの日共とは全く関係ない。「自分たちこそが本当の共産党だ」と思ってる人たちだ。それに、「スターリンは正しかった」なんて言っている。
今どき、そんな左翼がいたのかと思った。「ヤクザ」は、これもお二人の人脈で声を掛けた。いくつかの組の人たちが出た。そして、「任侠市民連合」という名にした。
この「三派」でデモをやり、集会をやった。集会ではかなり、激論もあった。
ヤクザの人たちは、「自分たちは暴力団ではない。任侠道を生きる者である」と言う。
だったら、それを実践したらいい。「どんな時にも暴力には訴えない」と宣言したらいい。
でも、それは出来ないという。「右翼だって、イザという時にはテロをやる。だからこそ右翼ではないか」と反論された。
私は「違う」と言ってヤクザと激論になった。
又、「私はヤクザは嫌いです」と言ったら、「バカな。昔からある日本文化だ!」と言われた。
「そんな日本文化なら、なくなっていい」と言ったら、怒鳴られた。
ヤクザと議論したなんて、私だけだろう。ホント、怖かった。
左翼とも激論になった。でも、「三派」ともに、「暴対法」には反対だ。
だから、ともかく、デモをやった。プラカード、横断幕をつくり、歩いた。
結構人はいた。銀座をデモする。沿道の人々は物珍しそうに見る。マスコミはやたらと集まる、外国のカメラマンもいた。
野村、遠藤さんの目論見は当たった。「なんでこの三者がデモするんだ!」と、皆、ビックリしている。
あとは「漫画ゴラク」にある漫画のようだ。その当時の銀座の大ニュースだった。だから、漫画にも取り上げられている。
先頭の悌団は左翼だ。次がヤクザ(任侠市民連合)。そして右翼だ。
「暴対法反対!」「基本的人権を守れ!」「結社の自由を守れ!」と叫んだ。プラカードには、「ヤクザにも人権はある」「ヤクザは死ねというのか!」。
漫画では「暴力団にも人権を」とあるが、実際は、「ヤクザにも人権を」だ。
だって、自分のことを「暴力団」とは認めない。あくまで「任侠道」を貫くヤクザだと思っているからだ。
「暴対法反対!」「基本的人権を守れ!」とシュプレヒコールをした。
でも長い間、デモをしている。同じことだけ叫んでいたら面白くない。政府批判をしたりマスコミ批判をしたりする。
でも、時々、勝手なことを言う人がいる。
左翼がこんなことを叫んだ。「日本は侵略戦争を反省しろ!」。当時、従軍慰安婦の問題かなんかがあったんだろう。
でも、これは右翼の側は見解が違う。すぐさま、デモの後ろの方から、「日本は侵略戦争をしてないぞ!」というシュプレヒコール。
まっ、まずいよ。と私は思った。同じデモの中で、「議論」してどうするんだ。沿道の人々も、呆気にとられている。
そりゃそうだ。一つのデモの中で、バラバラなことを言い、喧嘩している。こんなデモなんて前代未聞だ。
私はあわててデモの先頭に行き、「見解の分かれることはやめましょう」「“暴対法反対”だけでやりましょう」と言った。
デモが終わって、反省会でも、そのことを話し合った。次のデモからは、シュプレヒコールで叫ぶことを決めて、それだけを言うことにした。
「漫画ゴラク」では、そこまでのことは描いてない。でも、異様な三派連合の雰囲気はよく出ている。
刑事が深町探偵に言う。「ほらみろよ、鈴木明夫がいるぜ」。勿論、私のことだ。顔も似ている。
「ありゃ善人だぜ」と刑事は言う。ところが、続いて、「頭は悪いけどな」と言う。
まあ、その通りだから仕方ない。笑い飛ばすしかない。抗議も出来ないよな。
「本当は俺は頭はいいのに、頭は悪いと書かれた、名誉毀損だ」と訴えたら、裁判所だって困る。知能検査をされ、最高裁まで行って、「やっぱり、頭は悪い」と判決が出るかもしれない。
まあ、そんなことはいい。「左翼の広瀬」も出てくる。勿論仮名だ。似た人はいたな。「頭はいいんだが」「暗い」と言う。
左翼は一般的にそうだよね。頭はいいけど暗い、そんな人が左翼になる。「三派」デモを見て、二人の会話は続く。
「右翼に左翼にヤクザ」「それから探偵」
「どうだ、世も末だろう」「まあね」
世も末のデモをやったんですよ、私らは。そして、「極道の妻たちのデモ」も描いている。これも、ニュースになったよな。
結論。あの時、ヤクザの人とは随分と会い議論した。その中で、この人は、と思った人がいる。京都で会った会津小鉄の高山登久太郎会長だった。
「私らは暴力団ではない。任侠だ」と言う。弱きを助け、強きを挫く。世の不正と闘う。と。ここまでは言う人がいる。凄いのは、このあとだ。
「だから、業界に苦情処理センターをつくりたい」という。我々は、一般の人に迷惑をかけない。だから、迷惑をかけられた人は、そこに電話をしてくれ。我々が必ず解決する、と。
タクシーでは、「近代化センター」がある。ボラれたとか、わざと、遠回りされた、とか。接客態度が悪かったとか。その場で文句を言えないだろうから、あとで、近代化センターに言ってくれ、というのだ。
同じものをヤクザでも作ったらいい。と。
これはいいと思った。ヤクザの中で「自浄作用」が出来たら素晴らしい。その時の話は、どっかに活字になったはずだ。見つかったら紹介しよう。
高山さんはテレビにも出て堂々と話していた。つまり一般の人々と「共通の言葉」を持っていた。
この人たちを入れて、オープンな審議会を作ったらよかった。しかし、そんな時間も手間もかけないで、強権的に、暴対法は施行されてしまった。
20年前は「暴力団を取り締まる」という名目の法律だが、反対運動は起きた。中には漫画的なものもあったが、それだけ広範囲に反対、異議申し立てがあった。
今、暴力団だけでなく、付き合った人間のことも罰しようとしている。もっとひどい。
しかし、反対運動は余りない。朝生が1回。記者会見が1回だけだ。
「ヤクザを認めてると思われたくない」「警察に目を付けられたくない」と皆、消極的だ。勝手に自粛している。「言論の自由」はかえってなくなっている。時代は退歩している。
〈アメリカ。名だたる企業がこぞって「脳科学」に夢中になる理由〉
〈なぜダイエットは難しいのか? その秘密は脳の「決断疲れ」にあった〉
脳は、ずーっと「決断」をしている。疲れる。時にはボーッとし、リラックスこそが必要だ。脳にとっては、ダイエットはとりわけ「厳しい試練」だという。
そのあとWコロンの謎かけ。Ustの延長戦。終わって、高田馬場へ。編集者の椎野レーニンさんと、そのグループに会う。仕事の打ち合わせを兼ねて、食事をしました。
③新左翼の広瀬寅蔵さんです。仮名です。頭はいいが暗いです。実際、本人もそうです。
明るくて、海が好きで、それなりに善人なのは、「右翼」になります。暗くて、山が好きで、頭がよくて、人が悪い…のは「左翼」になります。これは、ある学者が書いていた法則です。
真理です。
④世も末ですよね。こんなポリシーのない野合、共闘をやってちゃ。私も本当はやりたくなかったんだけど…。「こりゃ、まるで漫画だよ」と思ったら、本当に漫画にされた。
それ以来、ずっと漫画ですよ。私の人生は。
⑦石川夏生(まお)さんの写真集『日の丸を視る目』(未来社)です。左右を問わず100人以上の人が出ています。私にとって「日の丸」とは何か。を各人が表現しています。凄い本です。
2月は東京で写真展をやるそうです。ネットで確認して見に行って下さい。
⑩1月30日(月)午後7時から、「山羊に聞く?で羊に聞く」。私の『竹中労』(河出書房新社)を取り上げて、話しました。
(左から)桃江メロンさん、鈴木、鈴木義昭さん、白井基夫さん(司会)。鈴木義昭さんは、ずっと、竹中さんの側近で、一番詳しい人です。『風のアナキスト 竹中労』(現代書館)という著書もあります。いろいろ教えてもらいました。
⑭西宮ゼミで。吉本千穂さんのきれいな着物姿に感動しました。とりわけ帯がお美しかったです。
それで、誉めようとして、(でも、さっきまで携帯で大好きな大相撲をみていたので)。「おう!これはきれいなマワシですね!」と言っちゃいました。
「何ば、いうとるねん!」と怒鳴られました。
⑮新大阪の駅の売店で売ってました。今、話題の「面白い恋人」です。札幌の「白い恋人」のパクリだ、と訴えられ、もうすぐ姿を消すでしょう。
買ってきて、学校でも生徒に配りました。でも、札幌では「黒い恋人」もあるぞ。これは訴えられてない。ビートたけしは、「そんなら、“白い黒人”って、作れ」と言ってました。
⑰読書家の高木尋士さんです。『世界の名著』(全81巻)読破記念で1月19日(木)、対談をしました。
近いうち、このHPに載ります。「ベーコン」や「孔子」を読んでます。
私は、ベーコン・ハンバーグを食べながら聞いてました。