「そんなに政治犯は偉いのかね」と言われた。ショックだった。
そんなことは言ってない。でも、そう聞こえたのか。だったら私の言い方が悪かったのだ。いや、自分の心の中に、少しはあるのかもしれない。政治犯は、一般の犯罪者(強盗や殺人者など)とは全く違うと。
たとえ法律を破ったとはいえ、自分の為にやったのではない。金の為や、自分の快楽の為に強盗をしたり、人を殺したわけではない。「世の為、人の為」に、やったんだ。志がある。だから、政治犯は一般の刑事犯とは違う。と思っていたのだろう。
「でも、それは一般刑事犯を差別してることにならないのか。政治犯は偉い。だから特別に扱え、と言ってるように聞こえる」
「そう聞こえたら、私の言い方がマズかったのです。すみません。一般刑事犯、政治犯の区別なく、これは獄中者の人権の問題だと思います」。私はそう言いました。
むしろ、政治犯だからという理由で、特別に過酷に扱っている。人権が全く無視されている。その実状を説明した。
たとえば、一般の刑事犯ならば、病気の時は、刑務所の医者にかかる。刑務所では手に負えないとなると、外部の専門医が呼ばれる。それでもダメな時は、一時的に外の専門病院に移して手術し、治ったら又、刑務所に戻す。
「どこの刑務所でもそうやっている。真剣に対応している。一般の刑事犯だから、政治犯だからといって区別、差別はしていない」と、その人は言う。
「その努力は分かります」と言った。「刑務所、法務省、検察、国家が悪い!」とただ糾弾するだけではダメだ。そう思った。
「分かりました。一般の“獄中者の人権”の問題として、お願いします。考えて下さい」と言った。日本赤軍の丸岡修さんが、重篤だ。このままでは死にそうだ。何とか、外の専門病院で手術させてほしい。
そう思って、支援者が、政治家や関係役所、マスコミ、識者などに会って、訴えていた。私も、知ってる限りの国会議員に会ってお願いした。
その時、超保守的な政治家に、ピシャリと言われたのだ。「政治犯は、そんなに偉いのかね」と。考えてもみない対応だった。
けんもほろろじゃないか。左翼の活動家が嫌いなんだろう。偏見を持っているのだろう。こりゃ、ダメだなと思った。
しかし、話してるうちに、こっちが間違っていたのか、と考えた。その人は言う。
「革命の為に法を犯したから、偉いと思ってるかもしれない。しかし、食うに食えなくて、やむを得ず物を盗む人がいる。人を助けるために、他の人間をやむなく傷つける者もいるだろう。自分の身を守るため、他に手段がなく、結果的に人を殺める人間もいるだろう。
そんな人間は、愚かなのか? 救援はいらないのか? 政治犯だけが偉くて、救援の価値があるのか?」
ウッ!と思った。政治犯だから偉いのではない。等しく、「獄中者の人権問題」なのだ。この人の言う方が、筋が通っている。
その「獄中者の人権問題」として改めてお願いした。
私としては、ちょっと言い分がある。でも敢えて言わなかった。それは連合赤軍の永田洋子さんのことだ。病気が重く、死にそうだったのに、病院には移されずに、獄死した。
一般刑事犯だったら、人権上、病院に移しただろう。忌まわしい連合赤軍事件の死刑囚だから、という気持ちが、ほんの少しでもあったのではないか。
又、移す時に、「奪還されるのではないか」と恐れたのだ。政治犯だからこそ、放っておかれ、過酷な状況に落とされているのではないか。そんな疑問もある。国家への不信もある。
しかし、そんな事を言ってる場合ではない。
「普通一般の獄中者の問題」として、考えて下さい。とお願いした。
「別に政治的な理由ではないし、政治犯は偉いと思ってるのでもない。そんな気持ちが私にあるとしたら、謝ります」と言った。「分かった」と言った。「じゃ、出来たら、その関係者に話をして下さい」と言った。断られるのかと思った。
ところが、いきなり、電話した。驚いた。その問題に関係する役所の人間に直接、電話している。「そちらも頑張ってるし、手抜きはないと思う。ただ、重篤の場合で、そこで処理しきれず、外部の専門病院なら手術できるというのなら、法に従って検討してもらえないだろうか」。
驚いた。そこまでしてくれるとは思わなかった。心の中で号泣した。凄い人だと思った。
立場上、左翼は嫌いだろう。日本赤軍も嫌いだ。でも、一般の「獄中者の人権」として口を利き、行動してくれた。これは大きかった。関係省庁も動き、話し合いが持たれた。
「丸岡さんは病院に移ることになりそうだ」という明るいニュースも流れた。しかし、ギリギリのところで検察、法務省が反対し、ダメだった。そして、丸岡さんは亡くなった。
もっとやらなくてはならなかった。自分の怠慢だと思った。申し訳ない。俺が丸岡さんを殺したんだ!と思った。それにしても、一時は、明るい光が見えてたのに。
あの議員だけでなく、他の人たちも、いろんな方面から働きかけ、それで、「病院へ移る」という事態になったのだろう。だが、ギリギリで、ダメだった。
あの議員には、本当に感謝している。心の底から感謝している。
あるいは、「距離感」かもしれないな、と思った。左翼的といわれる議員は、動きづらい。「左翼だから、左翼の政治犯の味方をするのだろう」と思われる。「そう思われるのではないか」というブレーキも働く。
ところが、右派、保守派の議員は、「考えは全く違う。だが、人権問題として言ってる」と言える。だから、ズバズバ言える。
北朝鮮の問題だって、動いているのは右派的・保守的議員ばかりではないか。
与党民主党にしろ社民党にしろ、拉致問題解決のために北朝鮮に乗り込もうという人はいない。行っただけで猛バッシングだ。
「効果がなかった」「何しに行ったのだ」と行って、叩かれ、次の選挙では落ちるかもしれない。だから、触れたがらない。「よど号」の問題などもそうだ。誰も触れたがらない。
「よど号」の人たちは、帰りたいと言う。ハイジャックの裁判を受け、10年でも15年でも刑務所に入ってもいい、と言ってる。
ただ、「ヨーロッパにおける日本人拉致」の疑惑をかけられ、仲間に逮捕状が出ている。自分たちは日本人拉致はやってない。そんな容疑で逮捕されるのなら帰れない。その令状を撤回してほしい。そう出来たら帰る。という。
しかし、無理だ。帰って、裁判でそのことを証明したらいいだろうと、私は何回も言っている。しかし、ダメだ。「日本の政府と交渉して」と言うが、政府は交渉しない。国会議員も皆、怖がってタッチしようとしない。
ある保守派の議員は、「何も言わず帰ってきたらいい。彼らが言うほど長い刑にはなりませんよ」と断言してくれた。「その前に、新聞社を呼んで、“帰る”ということをはっきりと言ったらいい」。
うん、これはいいと思った。保守・右派の議員の方が、「よど号」にも、積極的だ。
もう1つの問題だ。「政治犯」というだけで実は、刑罰が異常に重い。これは、「国家の復讐」だと思う。
ハイジャックをした人間は軒並み、「無期」だ。これは、おかしいだろうと思う。
犯罪で最も罰が重いのは殺人だ。人を殺したら生き返らない。だから最も重い。1人殺したら、10年位、刑務所に入る。2人以上だと、無期か。金を盗っていたら死刑になるかもしれない。ただ、殺人だけなら、10年前後だ。
ところが、日本赤軍の人たちは、ハイジャックしたり、大使館占拠をしたが、人は殺してないし、傷つけてない。
それなのに、日本赤軍の和光晴生さんは無期懲役、泉水博さんも無期懲役、丸岡修さんも無期懲役。そして重信房子さんは懲役20年だ。
これは刑のバランスから言ってもおかしい。殺人よりも重いのだ。変な話だ。「国家に逆らったから」という復讐の思いがあるのだろう。
いろんな議員に話をしたが、話に乗ってこない。「自分たちが信じてやったことだろう、刑罰は覚悟の上だろう」といって、あとは逃げる。
「これはおかしい」と、はっきり言ってくれたのは鈴木宗男さんだけだった。「やったことは許されないが、刑は重すぎますね。情状酌量の余地があります」と言っていた。これも「距離感」だろう。
日本赤軍とは全く違う。全く遠い立場にいる。だからこそ、「獄中者の人権」として、考えられるのだ。
3月18日(日)、「キャンパスプラザ京都」で、「厳罰化社会は何を生み出したのか。寛容な社会を考える」集会が開かれた。そこで発言を求められたので、丸岡さん救援にからめて、話をした。今書いてきたようなことの十分の一も言えなかったが…。
丸岡さんのことを考えると本当に残念だ。又、自分の無力さを痛感する。俺が殺したんだ、という罪悪感を感じている。
この集会は、前は、「反弾圧集会」と言った。毎年、京都で開かれている。いろんな学者、弁護士などが講師で来て、講演する。とても教えられる。
今年は安田好弘弁護士、辻恵衆議院議員、作家の高山文彦さんが講演し、その後、質疑応答があった。いろんな分野で活躍している人々のお話で、とても勉強になった。
2年ほど前の「反弾圧集会」の時だ。講師だったか、参加者だったか、誰かがこんな発言をしていた。
「自分たちは政治犯なのに重罰を科せられている。許せないと言う。しかし、政治犯が次々と重い犯罪を犯すから、一般の犯罪者の刑罰も重くなっているのではないか。自分のことだけを考えていてはダメだ」と。
これには驚いたが、同時に、「あり得る」と思った。この集会には、そうした「自省」があるし、批判する自由がある。「自浄努力」がある。だからいいと思う。
18日の集会も、実に意義深かったと思う。「どうせなら、ニコ生かUstを入れて、全国の人民に公開したらいい!」と私は言った。
そうしたら、「怖そうだから入れない」と言う、一般の人々も見れる。そして、ここで提起された問題も、共に考えてくれるだろう。もっとも、「書き込み」は多いだろうが、覚悟の上だろう。
「人殺しのくせに、偉そうなことを言うな」「お前らは終わった人間だ」「自分でやったことだ」。「重罰は覚悟の上だろう」といった「書き込み」がワンサカ来る。
でも、自分たちがどう見られているのかが分かる。その上で、多くの人民に通じる言葉を見つけ、語れるだろうと思う。
小渕首相が、新人代議士だった時、よく合気道の稽古をつけてもらった話をした。模擬刀を私に寄越して、「さあ、どこからでも突いて来い!」と言う。いくら突いても、かわされ、ぶん投げられた。チクショー、と思って、ムキになって、やってもダメだった。合気道は強かった。もしかしたら、いつか首相になる。その時、右翼テロリストに襲われたら、こうやって撃退しようと練習してたのかもしれない。写真を撮っておけばよかった。そんな話も披露した。
3時からは、「夕やけ寺ちゃん活動中」の打ち合わせ。3時40分から本番。今日はスペシャルゲストが孫崎享さん(元外交官)。私と同じ年なんですね。今日のテーマは、「沖縄問題。そして領土問題」。目からウロコの話が一杯だった。
私らが考えていることは現実とは違う。「領土問題」の考え方が違う。〈現実〉を教えてくれた。その上で、どうやって、交渉するかを具体的に話してくれる。とても勉強になりました。
孫崎さんの『日本の国境問題』(ちくま新書)に、この点は詳しく書かれている。又、最近出した『不愉快な現実』(講談社現代新書)もとてもいい本です。
孫崎さんの話は、具体的で分かりやすい。それに、ユーモアを交えて話すので、聞いていて楽しい。終わってからも、「Wコロンをみていきませんか?」と言ったらいてくれた。ねづっちの謎かけに手を打って喜んでいた。「“炎の体育会”凄いね。マジで闘ってますね」とねづっちに言っていた。テレビは結構見てるようだ。
さらに、「Ust延長戦」にも付き合ってくれた。中国、北朝鮮問題についても、分かりやすく解説してくれました。
①早稲田大学の校友会です。出席したら、紙の帽子をくれました。写真を撮ってもらいました。このあと、比較憲法論の「大西ゼミ」の同窓会にも出ました。校友会、同窓会には、出来る限り出てます。「日本一の愛校者」ですから。
②3月18日(日)、清水三年坂美術館に行きました。高瀬好山の「自在置物」を見に行ったのです。「美の巨人たち」で見たもので…。とてもよかったです。すぐ隣りに、大正の美人絵葉書を売ってたので買いました。旭日旗を持って、凛々しいですね。
⑤タクシーに乗ったら、向こう側に、奇妙な看板を見つけました。「幽霊子育て飴」という看板が。お菓子屋さんです。吉本さんが言うには、子供を産んですぐに亡くなったお母さんが、幽霊になって、子供に乳を、いや、飴を与えたんだそうです。今度、買って食べてみよう。
⑫集会が終わって二次会で。連合赤軍は赤軍派と革命左派が合体して出来たものです。でも、「赤軍派は集まれ!」と塩見孝也議長が叫ぶと、皆、集まってきます。そして、ピース!
いいのかな。「追悼する会」でピースなんて…。「総括」「査問」に参加した人もいるでしょうに。さすがに植垣さんはピースを拒否しています。
でも、もう「査問」はされません。
⑭これで連合赤軍は終わりなんですが、「ついでだから、ブントは集まれ!」と。左は戦旗派の椎野礼仁さん。右は叛旗派の親分・三上治さん。中央は関係ないけど、「お前もブントみたいなもんだから」と入れられました。光栄です。
⑯雪のあさま山荘です。いや、みやま山荘です。いや、東中野です。東中野は駅ビルが出来、近くにどんどんビルが建っています。まるでピョンヤンのようです。「北朝鮮化する東中野」です。 そして、「連合赤軍化する日本」です。