こんなに浮かれていて、いいのかな。と思った。
「全ての原発が停止した!我々の勝利だ!」と皆が歓喜し、勝利祝賀集会だった。そして祝賀パレードだった。〈敵〉は手強いよ。闘いはむしろ、これからだ。と思った。
でも、そんなことを言う人はいない。「おめでとう!」「よかったね!」と皆が言う。5月6日(日)の「脱原発杉並デモ」の時だ。
まあ、気持ちは分かる。初めて「勝利」したんだし。
市民運動なんて(そして左翼も右翼も)、全て、敗北の歴史だ。負け続けだ。
その連敗の歴史の中で、初めて勝ったのだ。「ほらみろ、国民の8割は原発に反対している!」「次は全てを廃炉に!」と言っている。
5月6日(日)は午後2時集合。東高円寺の「蚕糸(さんし)の森公園」だ。昔、製糸工場があったのだろうか。
来て驚いた。少ない。
前の集会・デモの時は、人、人、人で公園が溢れていた。広い公園なのに、身動きが出来ない。6000人はいただろう。皆、怒りに燃えていた。原発を止めるんだ!放射能は危ない。子供を守ろう。日本を救え!…と。
このままでは日本は大変なことになる。そういう必死な気持ちがあった。危機感があった。
ところが今回は、その危機感がない。全くない。
「勝った!」「原発は全部止まった!」と無邪気に喜んでいる。そして、お祝いムードだ。
写真を見てほしい。作家の雨宮処凛さんは花嫁衣装だ。「素人の乱」の松本哉さんは紋付き・袴だ。花婿衣装だ。
別に2人で示し合わせたわけじゃない。「お祝いを表すためには何がいいか」と前日に考えて、ウェディングドレスにしたという。
(この後、2人はオープンカーに乗り込んで、沿道の人民に、にこやかに手を振った。やんごとなき人の結婚パレードのようだ)。
そうだ。どうせなら、本当に結婚したらいい。2人は独身なんだし。全ての原発が止まった。この記念すべき日に結婚する。
いいじゃないか。長く人々の記憶に残り、歴史に残る。子供が出来たら、「希望」と名付ける。「絆」君でもいいな。
女性の方がグンと年上だが、最近は、そういうのもハヤっている。いいじゃないか。
だから私は松本哉氏に、そう言った。全人民の要望を伝えた。「年の差はあるけど、ここは脱原発のためだ。我慢して…」と説得した。
そしたら、「いや、同じ年ですよ」と松本氏。松本氏は20代後半か、30になったばかりだと思っていた。ところが「30代後半なんです」。そして雨宮さんと同い年だという。
周りの人が言う。「そんなはずはない。彼女はもっと上だ。お前は騙されているんだ!」。
騙されているんだ、はないだろう。結婚話が本当に進んでいるわけではないし。
「名前も違う」と言う人もいる。雨宮処凛さんは、作家なんだから、そりゃ、ペンネームだろうよ。
でも、年や名前を偽っているわけではない。「それに性別も違う」と言う人もいたが、皆に黙殺されていた。いくら何でも、それはないだろう。
ともかく、「花嫁・花婿」は、カメラのフラッシュを浴びていた。
私も最新鋭デジカメで撮ってたら、「あっ、仲人さんが来た!鈴木さんも入って下さい!」と言われた。
ヤダよ。それに、私は、汚いズボンに汚いブレザーだ。礼服ではないから、仲人にはならんよ。
2時に集合し、2時半から集会はスタート。3時からデモに移る。
集会では、「花嫁」「花婿」の挨拶があり、市民運動の人たちも、皆、喜びの挨拶ばっか。
ただ、中学2年の女の子が登壇して、「これから大変なのは私たちです。それに私たちには選挙権もありません。大人の失敗を私たち子供に押しつけないで下さい」。
これはよかった。この日の挨拶で、最もよかった。
そうだ。いっそ、発言者は全部、子供だけにしたらいい。「大人は選挙権があるから、あなたたちは投票して政治家を選べ。あるいは政治家になれ!それで政治を変えてみせろ。私らは選挙権がないから、こうして集会をし、デモをするんだ!」
と言ってやったらいい。演説するのは、小学生、中学生だけにする。藤波心ちゃんに司会をしてもらったらいい。脱原発の中学生アイドルだ。あっ、今年、高校生になったのか。
高校生でも、まだ選挙権はない。大人も集まってもいいが、ただ、黙って聞いている。そして、黙って、デモについていく。
あくまでも主役は子供だ。これはいい。「脱原発杉並こどもデモ」だ。画期的だ。
共産党や社民党や新左翼も、本人は聞いていて、子供を出す。子供がいなかったら、今から、作ればいい。
そんなことを思ってる間に3時だ。デモに移る。
前回よりは少ないが、その半分の3000人はいる。なかなか進まない。公園を出るまでに40分はかかった。
そして歩き始めたら、ポツン、ポツンと雨だ。ありゃ、まずいな。
家を出る時は暑かった。集合場所の公園に来ても、半袖やTシャツの人が多い。もう、「夏が来た」ムードだ。クールビズだ。
私だけかよ。冬物のブレザーを着ちょるのは。と思った。
ところが、デモが出発する頃、ポツリ、ポツリ。そして、間もなく、ザザザー、と雨が降り出す。
ゲッ、雨かよ。傘なんて持って来てる人は、ほとんどいない。鞄に折り畳み傘を入れてる人は慌てて取り出す。
私も入れてもらったが、横なぐりの雨だから、すぐにずぶ濡れ。体の芯まで雨が入り込んでくる。そんな感じだ。靴の中も、鞄の中も、ビショ濡れだ。
そのうち、何と雹(ひょう)まで降ってくる。大きい。それが顔や首や背中を直撃する。
「アイタタ!」「痛い!」と叫び声がする。
携帯でニュースを見てた人が、「栃木では竜巻が出てるそうですよ」と言う。
「チクショウ、卑怯な!ここまでやるのか!」と叫んでる人がいる。我々のデモを潰す為に、〈敵〉は大雨を降らせ、雹まで降らせている。許せない!と言うのだ。
でも、〈敵〉って誰だ。原発推進派か。政府か。原発おかかえの文化人どもか。
まあ、〈敵〉は分かるけど、彼らが大雨を降らせ、雹を降らせているわけではない。「いや、そこまでやる奴らだ」と言う。
ともかく、大変なデモだった。私は今まで500回近く、デモに出てる。デモが荒れて、機動隊と乱闘になり、捕まったことは何回もある。でも、それは覚悟の上の、過激デモだ。人災だ。
ところが、こんな形で、大雨と雹に襲われたデモは初めてだ。「天災デモ」だ。
シュプレヒコールも、「全ての原発を廃炉にしろ!」「再稼働反対!」「電力は足りてるぞ!」だったのが、段々と変わってきた。「大雨反対!」「雹をやめろ!」「天候をいじるな!」と。
大雨の余りの激しさに、商店に入り込む人も続出。軒先で雨を避けている。私もそうしようかと思った。
いや、「脱走」して家に帰ろうか。このままズブ濡れのデモが2時間も続いたら、カゼをひく。体のひ弱な私ならば、必ずカゼをひく。そして肺炎になる。そして、死んじゃう。
ヤベー!こんなところで命を落としたくないよ。帰ろう。家に帰ろう。と思った。
でも、脱北する勇気がなかった。「あっ、鈴木が脱走しました!」「卑怯な奴です!」とツイッターされるだろう。周りの人たちに。逃げ出すところを写メされて、全国民に流されるかもしれない。
そう思うと、脱走できないんですよ。そして、最後まで歩き通しました。
高円寺の駅前で解散。でも、駅前で、大演説会がある。車が2台、デンと止まっている。シートで隠しているが、社民党と共産党の車らしい。
「マイクが大きいから」という理由で社民党の車の上でやる。
福島みずほさんも来ていて、演説する。共産党の区議も演説する。元中核派だった新左翼の区議も挨拶する。それに、「みんなの党」の人たちも。こんなこと、ちょっとないよ。
そのうち私も指名されて挨拶した。お祭り騒ぎで盛り上がっていてはダメだ。これからが真の闘いだ…と。
だって、連日のように新聞、テレビを含めて、「このままでは日本は危ない」「電力が足りない」「夏が乗り切れないぞ」と言っている。「せっかくの原発技術をこのまま、凍結するのか。勿体ない」「このままでは大企業は皆、海外に逃げてゆくぞ!」「日本の経済が持たない」「だから原発再稼働だ!」と。
あらゆるメディアを動員して、〈思想戦争〉を仕掛けてきている。そして国民も不安になってきている。
「やっぱり、原発を再稼働した方がいいんじゃないの」「絶対に安全だと分かったところだけでも動かしましょうよ」…と。
私などは産経新聞を取っているから、そうした〈敵〉の思想戦、洗脳をひしひしと感じる。
喉元過ぎれば熱さを忘れるだ。国民は忘れっぽい。「原発事故で死者は出なかったじゃないの。福島はダメだけど、津波のないとこは大丈夫よ」「厳重なストレステストをして、安全を確認されたところから再稼働してもらおう」…と、なる。
だから、闘いはこれからだ。むしろ、本当の闘いはこれからなんだよ。浮かれている時か!と私は絶叫しました。
「浮かれるな!」「油断するな!」という警告を込めた大雨だったんだ!雹だったんだ!と私は言いました。
終わって、社民党の福島党首と、がっちりと握手。共産党の区議団とも握手。新左翼の区議団とも握手。全ての党派を超えて、脱原発ですよ。
福島さんには言いました。「この前、4月24日(火)、宮城県の社民党主催で、佐高信さんと対談をしてきました。お世話になりました」と。
社民党には、いつもお世話になっています。共産党の原田さんとはロフトでトークしたし、お世話になってます。新左翼の人にもお世話になってます。
この後、ロフトの平野店長や雨宮さん、小熊英二さんなどを含め、近くの店で打ち上げ。
行ったら、1階も2階も全て、デモ帰りの人たちでした。やあ、やあと皆、挨拶をしている。
1階の客に、「おい鈴木、我々アナキストも頑張ってるんだ。馬鹿にするなよ」と言われた。「すみません」とすぐに謝った。でも、馬鹿にしてないよな。「私だって、アナキストだ!」といつも言ってるんだし。
まあ、右も左も、アナキストも、みんなごった煮で、飲みまくりました。大雨で全身、ビショ濡れ。体は冷え切っていましたが、心は熱く燃えちょりました。そして、高円寺の夜は更けて行ったのであります。
家に帰って、すぐ風呂に入って、寝ました。カゼ薬も飲んで。もしかして、夜中に熱が出て、肺炎になったら、どうしよう、と思ってましたが、グッスリ寝てました。朝はスッキリ目覚めました。
今年は4月に北朝鮮に行くという大きなミッションがあったので、体を鍛えておいたのがよかったんですね。行く前に、骨法整体で腰痛を治してもらいましたし。
又、春スキーに行くのも我慢して、スポーツ会館でトレーニングしました。それで無事、ミッションを果たせたんですわ。
そして5月末には又、新たなミッションがあるようです。体調を整えておかなくっちゃ。
中学校の家庭科の元教諭。日の丸、君が代、従軍慰安婦、ジェンダー・フリー教育などで東京都教育委員会と対立し、10回以上の懲戒処分を受けている。減給、停職処分を何度も受け、停職3ヶ月、停職6ヶ月もある。不屈の闘士だ。
しかし、「君が代不起立」だけで停職6ヶ月は酷すぎる。その闘志はどこから来るのか。じつくりと聞きました。とても私には出来ないです。闘いの経歴だけを聞くと、とても強くて、恐いひとのようですが、実際は、とても穏やかな、優しい人でした。子供に間違ったことを教えてはならない。そのためには、どんな処分を受けても…と、教育に燃える先生でした。
根津さんは、仕事があって6時に帰られましたが、そのあと、「土風炉」でスタッフの皆で飲みました。
〈泊原発停止。原発再稼働を改めて考える〉
5月6日(日)の大雨デモの話などをしました。又、政府の需給検証委員会の予測、さらに滋賀県の嘉田由紀子知事の「関電が踏ん張ればもっと下げられる」との主張。などを紹介し関西電力の話もした。関西電力は実は休眠中の火力発電施設を持っている。電力不足が言われながら、なぜ動かさないのか。「足りないから原発再稼働しかない」という世論を作るためではないのか。
又、東京電力は、次期社長に広瀬直己常務(59)を昇格させる人事を正式に内定した。原発再稼働には、「福島の検証に正面から取り組み、理解を得たい」と言っている。理解を得て、再稼働したいと積極的だ。
「編集長は見た!」のコーナーは、久しぶりに月刊『ムー』の三上丈晴編集長。今月の特集は、
〈推定身長16メートル!!巨人の指が見つかった?〉
〈「古事記」大予言2012〉
〈人口が激減し、巨大地震も発生か? 緊急警告!東京スカイツリーの風水〉
〈人体冷凍保存の最前線〉
「そのあと、Wコロンの謎かけ。Ust延長戦。来週の打ち合わせ。今日は大雨が来るというので、急いで家に帰りました。
〈いまから70年ほど前、日本はまるで違う国だった。街では「売春」が大っぴらに行われ、薬局では「モルヒネ」や「覚醒剤」まで手に入る。公立の中学から入試があって、大卒サラリーマンは独身女性の羨望の的。すでに電気も通っており、家電製品は夢の商品だった。不思議で新しく、でも懐かしい。そんな戦前の日本を覗いてみませんか〉
「読書ゼミ」の後は生徒と食事会だが、私は中座して高田馬場へ。一水会フォーラムに、ちょっと遅れて出席。ホテルサンルート高田馬場。映画「11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち」の監督・若松孝二さんが講師。「なぜ三島由紀夫をテーマにしたのか?」。超満員で、入れない人が廊下で聞いていた。撮影現場のメーキングビデオを流し、そのあと若松さんの話。第65回カンヌ国際映画祭に正式招待されて、5月末に監督はカンヌに行く。そして6月2日から日本で上映。大反響を呼ぶだろう。
又、この日、映画についての本が出来た。映画パンフレットというには豪華すぎるし、厚すぎる。凄い本だ。128ページあって、千円だ。安い。菅孝行、田原総一朗、佐藤信、森達也、松本健一さんなどが書き、若松監督の長時間インタビューもある。森達也さんと私の対談も入っている。資料も凄いし、これは歴史に残る本だ。映画と共に、この本も残るだろう。活発な質問も出ました。
そのあと、近くの居酒屋で二次会。若松さんは最後まで付き合ってくれました。ありがとうございました。
⑮ピョンヤン市内のジェットコースターです。市内には5つほど、大きな遊園地があります。ジェットコースターや、上から落下傘のように降りてくるものとか、いろんな「絶叫マシーン」があります。あんなにスリリングな国で、さらにスリルを求めるのかと思いましたが、いつも満員です。「スリリングな国」だとは思ってないのでしょう。実際、治安は世界一いいですし。
金正恩第一書記は遊園地を視察し、地面に亀裂が入っていたり、雑草が生えていたのを見つけて、叱責したそうです。人民が楽しく遊ぶところが荒れているのに心を痛めないのは活動家の資格がないと。そして兵隊を投入して、直させたそうです。
遊園地はそれだけ大事な所なんです。
⑰「笑の内閣」の第15回公演です。「ツレがウヨになりまして」。いいチラシですね。5月26日(土)13時の回を見て、そのあと、私は監督とトークをします。
(本物の右翼もアフタートークにやってくる!)と下に書かれています。
京都大学吉田寮食堂です。5月26日(土)から28日(月)まで上演。私は、初日に行きます。