7月4日(水)の文化放送「夕やけ寺ちゃん活動中」では、「ニュース・本音と建前」で、「オウム事件の余波」をやった。
特別手配犯だった菊地直子容疑者、高橋克也容疑者が逮捕されたことで、オウム真理教が再び注目を集めている。これでオウムの謎の全てが解明されるのか。
文化放送では、いきなり寺ちゃんに聞かれた。
「鈴木さんは、この2人の特別手配犯の逮捕以降、オウム真理教に振り回された方々に、お会いしたそうですね?」
そうか。〈振り回された方々〉なんだ。この人たちは。中沢新一さんも、野田成人さんも、徐裕行さんも、森達也さんも…。
いや、日本人全てが、「振り回された」のだ。そして、単に被害者になっただけではない。どこかの時点で、〈加害者〉にもなっている。
たとえば、マスコミに持てはやされていたオウムが、一転、被害妄想に駆り立てられ、暴走し、「殺人集団」になる。
その時、〈妄想〉を駆り立てることに(結果的にだが)手助けしたのではないか。警察も、マスコミも、我々も…。そんな気がする。
現「ひかりの輪」(上祐浩史さん代表)の副代表・広末晃敏さんに会った時、彼はこんなことを言っていた。
オウムが松本でもサリンを撒いたのだが、オウムは、「これは権力側が我々に攻撃を仕掛けたのだ」と言った。又、マスコミのヘリコプターを見て、「米軍の攻撃だと思った」。今となっては、〈妄想〉だ。
ただ、広末さんは、公安警察の「転び公妨」で捕まったことがある。「転び公妨」とは、公安(警察)が、相手の前で勝手に転び、「お前が突き倒した!」と因縁をつけて、逮捕することだ。
「そんなこと、あるのか?」と普通の人は思うだろう。
でも、公安はやるのだ。自分たちは〈正義〉だから、どんなことでも出来る、と思う。どんな理由をつけても逮捕し、調べる必要がある、と思う。
私だって、「公文書を破った!」と因縁をつけられ、逮捕され、23日間も勾留されたことがある。これも、「転び公妨」だ。右翼、左翼の人は、随分とされてきた。
森達也さんはオウムを追ったドキュメント「A」「A2」を撮り、その中で、広末さんの「転び公妨」も、たまたま撮った。
カメラが撮ってるのに、公安は、悪びれず、堂々と「演技」した。テレビ局のカメラだと思ったからだ。
テレビ局なら公表しないし、裁判に出すはずはない。なぜなら、警察から情報をもらわないと困るし、警察を敵にするはずはない。そう高をくくっていた。
ところが、森さんは違う。迷った挙げ句、「証拠」として提出し、広末氏は釈放された。
でも、「犯人」である公安は逮捕されない。むしろ、「演技」を認められて公安の中では出世している。
この事件は、たまたま反骨の監督、森さんが撮ってたからよかったのだ。そうではないと、全て、ひっかけられて逮捕されている。
オウムの場合は、近道をして、駐車場の中を通ったとか。宅急便を出しに行く時、カッターナイフを持ってたとか、そんなことでも逮捕されている。
それに対し、世間の人々は、「オウムだから、いいだろう」と許してしまう。「あいつらを捕まえる為なら、少々、荒っぽいことをしてもいい」と思ってしまう。
さて、松本で、サリン事件があった時、オウムは、「権力側がやったのだ」と言った。
今なら、「そんなバカな」と思う。ところが、広末さんは、思った。「公安はやってもいない人間を捕まえる。だったら、これも公安ではないか」と。
又、マスコミは、しょっちゅう、間違ったことを書く。「だから今回も」と思った。
つまり、公安やマスコミは、オウムの「妄想」にリアリティを与え、思いつめ、暴走する一因を作ったのではないか。そんな気がする。
又、オウムは初めから「殺人集団」だったのではない。
一時期、マスコミに大いに持てはやされ、麻原はテレビに出まくった。有名人と対談し、その人々は麻原を誉めまくった。
又、東大・京大では麻原の講演会が行われ、超満員だった。そこで、大学生もドッと入信した。
大講堂を貸したのだし、東大・京大も責任がある。いや、「東大・京大」も認めた、と人々は思った。東大・京大のお墨付きだ。これは大丈夫だ。本物だと思った。
又、「朝まで生テレビ」でも麻原は出た。「幸福の科学」と激突した。私も5時間、見ていた。
「オウムは厳しい修行をしている。彼らは本物だ」と思った。私も、そう思った。人殺しなどしてない、と思った。騙された私が愚かなのか。
でも、あれを見た人は大部分がそう思ったはずだ。
オウムの「光と闇」と言うならば、そういう「光」の時期があった。それを今、言わなければ、「オウムの解明」にはならない。
その「光」は、マスコミも、大学当局も、警察も作ったのだ。我々だって責任がある。
「これだけ、皆が持ち上げているのだ。選挙に出たら当選するだろう」と麻原は思った。周りの者たちも、「そうです」「そうです」と言った。妄想をさらに膨らませた。
こんな「注進」をした人間たちの罪も重い。上祐さん1人が選挙に反対した。これは勇気がある。
ところが選挙は惨敗。「これはおかしい。陰謀だ」と、言う人間もいる。麻原も、気に入った「注進」だけを受け入れる。
そしてそれが、麻原の口から出ると、皆、信じた。でも、麻原が1人でやったのではない。周りの人間たちとの「共同作業」だ。
森達也さんは、そのことを何度も言っている。「いや、でも最後に決定したのは麻原1人です」と元幹部の野田成人氏は言う。
ちょっと、先走った。7月6日(金)に、月刊「創」と「週刊金曜日」が発売され、両方で、私は出ている。オウム真理教について話し合っている。
「創」では、中沢新一さんと対談している。オウムの「光と闇」について、かなり、突っ込んだ話をした。「オウム真理教と脱原発」だ。
「週刊金曜日」では、4人の座談会だ。「関係者が一堂に会し、話し合った」と書かれている。
元オウム幹部で元「アーレフ」代表の野田成人さん。オウムの最高幹部、村井秀夫氏を刺殺し、12年服役して出所した徐裕行氏。「A」「A2」を撮った森達也氏。そして私だ。
ちょっとない顔ぶれだと思う。そして、皆、本音で語り合った。ぜひ、読んでみて下さい。
月刊「創」では、中沢新一さんと対談している。先月号に載るはずだったが、何故か遅れた。
タイトルは初め、「オウム真理教と脱原発」だったが、「右でも左でもないものを」になっている。こっちの方が、現状を踏まえて、さらに前に進もうという意欲が感じられる。
中沢さんは現在、明治大学野性の科学研究所所長だ。何か奇妙な名前の研究所だ。ライオンやトラや過激派を飼育して研究してるんだろうか。
いや、違います、と言う。資本主義社会の中で飼い慣らされた人間の〈野性〉を目覚めさせるのです。と言う。
革命的だ。話を聞いてると、アナーキーでもある。それで、ぜひ「創」で対談を、とお願いしたのだ。
中沢さんは最近、「グリーン・アクティブ」を立ち上げて、反原発に取り組んでいる。その集まりで私は、よく会う。
「でも、一度、じっくり、〈野性の復活〉の話をして下さい」とお願いしたのだ。
それで対談が実現した。その時、オウム真理教の話も聞きたくなった。中沢さんは、麻原とは何度も会い、麻原に影響を与えている。その辺のことを聞いてみたい。
なぜ、暴走したのか。中沢さんは前から、チベット仏教を研究していた。
私も昔、ダライ・ラマさんに会いにチベット亡命政権のあるダラムサラ(インド北部)に行ったことがある。皆、穏やかな人々だった。
その人々と違い、なぜオウムは、チベット仏教を学びながら、暴走し、〈殺人〉にまで走ったのか。その辺のことを聞いてみたいと思った。
それで、恐る恐る聞いた。あのー、オウム真理教のことは聞いちゃダメですか?と。「その話はやめましょう」と言われると思った。
今まで中沢さんは、徹底的にバッシングされてきたし、言いたくないのかと思った。タブーになってるんだと思った。
ところが、「いいですよ」と言って、語ってくれた。多分、初めてだろう。驚いた。あの事件の〈真相〉に迫った気がした。
あとは、「創」を読んで下さい。なんせ、16ページの対談だ。凄いです。
中沢さんとは、実は、かなり前から知り合っている。
初めは、いつ会ったんだろう。と、考えていて、あっそうだ。康芳夫さんだ、と思い出した。
今回、写真も出ている。6月30日(土)に、「ひっくりかえる展」を見に行った時、庚芳夫さんと秋山祐徳太子さんのトークを聞いた。そして、夜遅くまで話し合った。
康さんから、かなり前に、紹介されたのだ。中沢さんの他、島田雅彦さん、福田和也さんなども紹介してくれた。
6月30日に康さんに会った時、「中沢さんと対談しましたよ」と言った。そして、オウム真理教の話をした。
康さんは、アリvs猪木戦をプロモートした。又、人間か、猿か、といわれた「オリバー君」を連れて来た。「ネッシー」を探しに行った。…と、いろんなことをやった〈怪人〉だ。
でも、三島由紀夫とも親交があったし、森田必勝氏も知っていた。そのあたりのことを、ちゃんと聞いて、私も書いておこう。
それと、秋山祐徳太子さんからは、赤尾敏さんの話を聞いた。
都知事選に出た時の話も面白いし。又、日の丸の鉢巻を締めて、「グリコ」の格好をして銀座を走っていたら、演説してた赤尾さんが見て、「皆さん、見て下さい。日の丸をして、青年が走ってます。何と素晴らしい青年でしょうか!」と絶讃してくれたそうだ。いい話だ。
そうだ。大川興業の大川豊さんに聞いたが、シャレで、赤尾さんの前で、「フレー!フレー!赤尾!」とやった。学生服を着て。
赤尾さんは大感激。「皆さん見て下さい!日本には、こんな立派な学生さんが、まだいたんです!」とマイクで言ってたそうな。真面目な人なんだ。赤尾さんは。
6月30日は、chim↑pomさんたちとも会った。渋谷駅の岡本太郎の絵に自分たちの絵を付け加えて、問題を起こした人々だ。岡本太郎も、きっと喜んでると思うけどな。
他にも、ビルの中で火をつけて、それをアートにしたり。やたらと過激だし、面白い。「初めまして」と挨拶をして、いろんな話をした。
ところが、ツイッターで、「お前は初めてじゃないぞ。阿佐ヶ谷ロフトで一緒に出たじゃないか」と言われた。何かの映画祭だったらしい。
カラスの剥製を持ってバイクで走り、本物のカラスを呼んで、大空を埋める。という奇抜な映画があった。そうか。あれがchim↑pomだったか。忘れてた。
でも、向こうだって、「初めまして」と言ってたんだ。両方とも忘れてたんだ。
「ひっくりかえる展」は、他にも、「ニューヨーク・タイムス」と同じものを作り、街頭で撒くパフォーマンスとか、やっていた。
アメリカの人だが、戦争中なのに、「イラク戦争終結!」とか書いて、もめた。
しかし、ニューヨーク・タイムスは訴えなかったという。〈アート〉として認めたのか。日本なら確実に訴えられる。
それと、日本ではオウム逃亡犯の似顔を交番前でずっと描き、それをアートにして発表した人もいた。警察からは訊問されるし、大変だったようだ。
そんな、「命がけのアート」が展示されていた。そして、そういった「命がけのアート」の先駆けともいうべき庚芳夫、秋山祐徳太子のお二人の話を聞いたわけだ。
今、私らの運動は果たして、〈アート〉になり得るのか。考え込んでしまった。
夜7時から、銀座の博品館劇場。「ザ・ニュース・ペーパー」の公演を見る。面白かったです。「大飯原発再稼働」を取り上げていた。「オーイ!原発君!」と歌っていた。先月、湯沢中学校の同窓会で、「オーイ!中村君」を歌ってた人がいた。大昔の歌を、2回も聞いちゃった。
「創」では中沢新一さんと。「金曜日」では徐裕行さん、野田成人さん、森達也さんと。オウム事件と深く関わり合いのある人々だ。オウム事件とは何だったのか。なぜオウムは暴走したのか。そのことについて話し合っている。そこから見えてきたことについて話をした。
「編集長は見た!」は、「クーリエ・ジャポン」編集長の冨倉由樹夫さん。特集は、
〈9つの“新常識”で読み解く
こんなに不思議な「世界の宗教」〉
今日の「寺ちゃん」は、宗教のお話特集ですね。
「キリスト教の『天国』は“死後の場所”ではなくなった」
「“自分だけの神様”を作る人が増えている」
なかなか、興味深い特集だった。他の特集では、
「スペイン領で“強行出産”するモロッコ人妊婦急増の理由」
「スポンサー企業の“宣伝費”がイタリアの『世界遺産』を救う」
そのあと、Wコロンの謎かけ。Ust延長戦。
終わって、新宿へ。取材。
午後3時、河合塾コスモ。現代文要約。午後5時、読書ゼミ。今日は『日本の聖域。偽装の国』(新潮社)を読みました。
今日は第1期の最後。これから夏休みだ。それで、コスモのOB、OGも来てくれて、食事に行きました。子供の頃、ある「共同体」で暮らしていて、今は女子大生になってる人がいた。「まるで、フカエリみたいだね。ぜひ、リトル・ピープルの話を書いたらいい!」と私は勧めました。村上春樹の「1Q84」のようなものを書けるでしょう。私が手助けしてもいい。そして、いろんな事件が起こるんですよね。
泉麻人さん、御厨貴さんと私で座談会。泉さんは初対面。御厨さんは東大教授を辞めてから初めて会いました。今は放送大学教授だ。「1972年問題」について語り合った。この年から何が変わったか。戦後政治、文化、経済、カルチャーなどについて語り合った。とても勉強になった。
夜は、新宿で、雑誌の取材。
①『週刊金曜日』(7月6日号)です。「いまだに残るオウム真理教の謎」。元オウム幹部、元「アーレフ」代表の野田成人氏。オウム最高幹部・村井秀夫氏を刺殺した徐裕行氏。オウム真理教を追ったドキュメント「A」「A2」を撮った森達也監督。そして私の4人の座談会です。初めての顔合わせです。
②月刊『創』(8月号)。中沢新一さんと私の対談です。何と、16ページに及ぶ、長時間対談です。テーマは「右でも左でもないものを」。最近立ち上げた「グリーンアクティブ」のこと。そして、「野性の科学研究所」のこと。アナーキズムのこと。今までの思想的系譜を中沢さんは語ってくれました。
その中で、オウム真理教と、どう関わったのか。なぜ、オウムは暴走したのか。そのことを初めて語ってくれました。
③7月1日(日)午後2時より、札幌教育文化会館で、講演しました。テーマは、〈「右」も脱原発!〉。右翼の人たちは「原発」をどう考えていたか。最近の「反原発」の動き。その思想的根拠などについて語りました。満員でした。
⑧札幌に行く前の日、6月30日(土)、青山のワタリウム美術館に行きました。「ひっくりかえる展」をやっていて、この日は、午後8時から、トーク。それを聞きに行きました。秋山祐徳太子さんと、庚芳夫さんでした。終わって、久しぶりに飲みました。
⑨chim↑pom(チムポム)さんたちも一緒に打ち上げです。宇川直宏さん、五所純子さんもおります。楽しくて、つい、夜中の1時頃まで飲みました。それから家に帰って、ちょっと寝て、7時前に羽田へ。札幌へ向かいました。
⑩6月28日(木)夜6時から、渋谷アップリンクで、映画「孤独なツバメたち=デカセギの子どもに生まれて」が上映。その後、8時から、中村真夕監督と、正津勉さん(詩人)。そして私でトーク。正津さんは、実は、中村さんのお父さんです。そして、ジャーナリスト専門学校の先生でした。私も、そこにいたので、とてもお世話になりました。
「こんな大きな娘さんがいたんですね。知りませんでした」と言ったら、「実は、俺も知らなかったんだよ」。エッ? 正津さんは実の娘なのに、「監督!」と呼んで、トークをしてました。いいですよね。こういう父子って。久しぶりに正津さんにも会えたし、楽しかったです。
⑮終わって、近くの居酒屋に行ったら、バッタリ会いました。左が、浜田太一さん、山本天心さん。右は、この日、見に来た声優の大御所、神谷明さんです。神谷さんとは昔、一緒に出たことがあります。「ザ・ニュース・ペーパー」の舞台に。
今は、文化放送で、時々、お会いします。