この本のタイトルが気に入って、自分でも、『猫と愛国心』を書こうと思った。そして最近、こんなことを思った。
「オピニオン・愛国」(朝日新聞・9月19日・金)に出ていた岩井志麻子さん。「痴話げんかで止めておけ」を読んで感動した。
ぜひ岩井さんには、1冊の本として、『犬と愛国心』を書いてもらいたいと思った。
『猫と愛国心』から始めよう。
2006年5月、『愛国者は信用できるか』(講談社現代新書)を書いた時、アマゾンやネットの古本屋で調べて、手に入る限りの「愛国書」を買い、読みまくった。
私は、「愛国運動」40年の実績はある。つまり、〈実技〉ではOKだし、日本人として、愛国者としてのノルマは軽く、クリアーしている。
ただ、この本では、実技編だけを書いても仕方ない。〈理論編〉を書く必要がある。
それで、学者、作家、外交官、政治家などが「愛国心」について書いた本を探し、買いまくり、読みまくった。そして考えた。
たとえばサミュエル・ジョンソンの「愛国心はならず者の最後の避難場所である」という言葉がある。余りに有名な言葉だが、いつ、どこで、どんな状況で言われた言葉なのか分からない。それも調べた。
今は、「ならず者」というより、「落ち目の政治家」の最後の避難場所のようになっている。どっちにしろ、「逃げ場」であり、「逃げ言葉」だ。
又、三島由紀夫は、「愛国心という言葉は嫌いだ」と言った。40年以上前に言っている。深い言葉だ。この本で紹介して以来、いろんな人がこの言葉を使っている。
又、清水幾太郎の『愛国心』も読んだ。古典的名著だ。谷口雅春先生(生長の家初代総裁)の本も、まとめて読み返した。
『限りなく日本を愛す』『我ら日本人として』などだ。
タイトルもいい。ネットの古本屋で探している時、たまたま、『猫と愛国心』という本を見つけた。書いた人は知らない人だ。パラパラと見る検索機能はついてない。内容の紹介もない。値段も高い。3万近かった。
悩んだ。これは読む必要があるのだろうか。もしかして、もの凄い本かもしれない。迷った。
でも、〈愛国心について書かれた本は全て読まなくては〉と、思っていた。だから、思い切って買った。
きっと、猫の眼から見た文明論だと思った。
猫は自由で、気ままだ。呼んでも来ない。そんな〈自由人〉、いや、〈自由動物〉から見て、人間の「愛国心論争」を笑っているのだろう。
下らないことで喧嘩してるな。領土なんかどうでもいいだろう。皆、自由に出入りし、自由に使ったらいいだろう。…と、そんなことを言ってるのかと思った。
猫には「愛国心」なんて偏狭な考え方はない。「憲法」もない。
でも個人の自衛権はある。エサをめぐって闘う。
そうか。「縄張り」はあるのかな。あったら、それを守るのが「愛国心」なんだろうか。今度、聞いてみよう。猫に。
最近、猫の友達が多い。100円ショップで買った「またたび」をあげると、近所の猫がついてくる。それで、いろいろ会話している。
北海道に行った時、大きな「またたび」が売っていた。猫用の超デラックスなものだ。と思ったら、「人間も食べられます」と書いてある。
そして、「またたび」の語源・由来も書いている。
昔、旅人が、旅に疲れ果てて、道端にしゃがみこんだ。道端ジェシカだ。その時、そばに生えていた木の実を何気なく取って、口に入れた。
そしたら、元気もりもりになり、又、旅をする元気が出た。
「又、旅をする元気」→「又、旅」から「またたび」になったそうな。
エッ?本当なの。と思わず叫んだ。てっきり、猫の食べ物と思っていたからだ。何だ、猫のものじゃないのか。
すぐに買った。疲れ果てた時に一粒、食べると元気になる。このところ忙しくて、バテているので、今も、「またたび」を食べて、パソコンに向かい、この原稿を打っている。
パソコンにも、「食べるか?」と聞いたが、答えない。嫌いなようだ。
話が横道に外れたな。ともかく、3万円で、『猫と愛国心』を買ったんですよ。
ところが、読んでみると、「猫」と「愛国心」を結びつけた本ではない。可愛がってる猫がいて、その猫の話を全体の3分の2くらいに書いてる。全く政治性なんかない猫だ。
そして残りの3分の1は、何を思ったか、突然、時局問題について書いている。そこで「愛国心」の話も出てくる。
つまり、「猫」「愛国心」の間には何の関係もない。いいのかな、これで。
「と」を入れると、関係あると思い、迷う。私のように大金を投じて衝動買いする人も出る。
この人は、別にそれを意図したわけではない。
でも、これだと、確信犯的にやる方法もある。「愛国心」で釣ることも出来る。
たとえば、『AKBと愛国心』(これなら売れそうだ)。『ミッション高校と愛国心』『六畳一間と愛国心』『玉葱と愛国心』…と。
今、思いついたが、『枝豆と愛国心』もあるな。これはありそうだ。枝豆が好きな人に悪い人はいない。枝豆が好きな人は皆、愛国者だ。
キュウリやリンゴのように、いきなりかぶりつくわけにはいかない。枝豆は、一つ一つ取って、豆を出してから食べる。手続きがあるし、プロセスを踏む。「全体」ではなく、一つ一つの「個」に対応する。その中で、食べる人も、寛容になる。優しくなる。愛国心も芽生える。
去年の11月に、『愛国と憂国と売国』(集英社新書)を出した。
実は、初め、タイトルを『猫と愛国心』にしようと思った。
だって、そういう内容の原稿も沢山あったからだ。「猫型人間から見た日本」とか、「猫型人間、犬型人間の愛国心」とか。
そうだ。初め、去年の4月に出す予定で、原稿をまとめていた。
ウェブマガジン「マガジン9」に私が連載しているものをまとめて、本にするつもりだったからだ。猫の話は多いし、猫から見た日本論だ。
ところが3・11の大地震で、「これじゃマズイ」と本の出版が延期になった。
そして、11月に、震災の話も書き加え、大幅に書き直して出版した。猫の話は全部落とした。それで、タイトルも変えた。
さて、当初の計画の、『猫と愛国心』だ。『吾輩は猫である』の〈愛国版〉だ。
猫は、行動も思想も自由だ。犬のように忠実ではない。だから、権力に使われることはない。
「麻薬犬」「軍用犬」はいても、「麻薬猫」「軍用猫」はいない。国家や権力になんか利用されてたまるか、という反抗心がある。猫は皆、アナーキストだ。
国家や企業は、だから「犬型人間」を好む。忠実に、言われたことをやるタイプだ。
でも、これからは違う。そんな硬直した考え、行動しか出来ない人間では、企業の発展はない。
国家もそうだ。一見、反抗的で、組織のルールに束縛されない、自由でアナーキーな発想・行動こそが、(大きな目で)、企業にも国家にも大切なんだ。
そんなことを書いてた本があったし、私もこれには同感だった。
だから、「ネコ型人間のすすめ」であるし、『猫と愛国心』なのだ
これは本として出せなかったが、今度、挑戦してみたい。それで、岩井志麻子さんだ。ぜひ、『犬と愛国心』を書いてほしいと思った。
ネコは自由で、アナーキーで、自主自尊で、権力に屈服しない。いいイメージだ。
ところが、犬は、体制的・服従的に見られる。又、「悪い意味」で使われることが多い。
無駄な死は「犬死」だし、ダメな侍は「犬侍」だ。デモを取り締まる警察は「権力の犬」だし。かわいそうに。そこまで犬を罵倒することはないと思うけど。
作家・岩井志麻子さんは、64年生まれだ。じゃ、今は48才か。夫は韓国人で、29才だという。
凄い。20才も年下なのか。岩井さんは日本に、夫は韓国に住んでいる。どちらの家でも犬を飼っている。
ソウルの犬を岩井さんは「竹島」と呼び、夫は「独島(ドクト)」と呼んでいる。犬も困るだろう。2つの名前を付けられて、別々に呼ばれている。
ところで、この犬の「領有権」はどちらにあるか、時々喧嘩する。
夫は、自分が拾ってきた犬だし、面倒を見てるのは自分だから僕のだ、と言う。そこで岩井さんは言う。
〈でも私にしてみれば、ソウルの家賃を払って餌代を出してるのは誰だって話しですよ。東京の家も私の名義だし、光熱費から何もかも私が払ってる。なのに家の中ではチャンネル権から何から優先権はすべて夫にあるんです。
だいたいね、私が本気で怒ってライフライン止めたら、あやつは路頭に迷いますから。トッポギだって食えなくなるんです。それを犬も家も実効支配、いや、不法占拠しとるんです〉
凄いですね。20才も年下の、かわいい夫だから、全てを許してるんでしょうね。
私が全てお金を出してるのに、夫は犬も家も「実効支配」しとる!許せん!
いえいえ、「許せん!」とはならんですな。夫婦だし、愛があるから…。
そこで「竹島」「独島」と2つの名を持つ犬の「実効支配」について岩井さんは言います。
〈でもそこで、本気でけんかして「竹島」ちゃんの領有権を争ってどうする、って話なんです。わんぱく相撲で力士が子どもを投げ飛ばしたって、あいつは強いなんて誰も言わない。力が上の者がうまく負けてあげることが大切だし、その方が格好いい。「愛国じゃ、愛国じゃ」って言って、本気でけんかして、戦争なんてことになっても誰が得するんですか〉
なるほど。犬、夫婦。それに領土問題をからめて言ってます。うまいですね。
「日韓関係は、夫婦みたいなもんです」とも言ってます。
「嫌いだ」と叫んでも、叫ばずにいられない。それは「愛」だ、といいます。全く関係のない国なら、「嫌い」ということもない。
〈なめんなよ、と言うけど、すぐにカチ込みはしない。夫婦関係も隣国関係も、そういう約束の上で成立しているものでしょう〉
ウーン、これも説得力がある。じゃ、日韓で国際結婚している夫婦だけを集めて、領土問題の討論会をやったらいい。夫婦、家族、国家が一体となった、より身近かな討論会になるだろう。
ところで、岩井さんはこう結論づける。これにも、私は全く賛成です。
〈そもそも、よその国をおとしめて自国を愛するという愛国心は、ようないと思いますよ。あなたの国は良い国ですね、うちの国も良いですよ、と言った方が、国の良さとか、相手に届くでしょう。それこそ真の愛国じゃないですか。よその国を尊重する気持ちがない人は、愛国者を名乗っちゃいけんのじゃないですかね〉
大賛成ですね。これをさらに、まとめて1冊の本にしてもらいたいですね。『犬と愛国心』として…。
何なら私が聞き手になってもいい。ロフトで何度か、お会いしてますし。
又、お会いしたいですね。そして、もっと話を聞きたいです。
岩井志麻子さんの出た朝日新聞のコメントのタイトルは、「痴話げんかで止めておけ」です。
この「オピニオン・愛国」のページには、他に2人出てます。
亀井静香さんの「政治家よ、軽々しく使うな」。
そして私の「心の痛みがない愛は偽り」です。
岩井さんのコメントは感動しましたね。亀井さんのコメントもよかったですね。
「短絡的に愛国を振りかざして極端な対応をとらないように、現実的・具体的な解決案を地道に探る努力をすべきでしょう」と言う。
〈仲良くすることに勝る防衛はないんだから〉
ウーン、凄いですね。その通りです。
でも、こういうことを言うと、「弱腰だ!」「戦う気がないのか!」と罵倒される。私なども、よく罵倒されている。
でも違う、と亀井さんは言う。仲良くするように、地道に努力しろと言う。
でも言い放しで終わってばかりだ。政治家は結果をださなくてはならない。責任をもって行動しろ…と。
最後に、こう言います。
〈しかし、そんな政治家はすっかりいなくなったね。簡単な言葉で酔っていく時代ですから。威勢のいいことを言っていれば国民が拍手してくれるし、マスコミも取り上げてくれる。それで一時の人気を得て、ダメになったらまた別の人間が同じようなことを繰り返す。まったく、賽(さい)の河原みたいなもんですよ〉
これも凄いことを言ってる。マスコミと、選挙民批判だ。
我々国民も、そんな「口だけの」「威勢のいい」政治家に投票し、軽薄な時代を作っている。反省しなくては。
では、終わり。
と思っていたら、9月28日(金)の朝、「お前のことが出てるよ。池上彰さんも見たんだね」とメール。
まさか、あの池上さんが私の文なんか読んでるはずはない、と思ったが、朝日新聞を見ると、アッと思った。出てる。
「オピニオン」欄で、〈池上彰の新聞ななめ読み〉だ。
「中国の反日デモ。多面的に知ることが大切」。
いろんな新聞を取り上げている。そして、最後の10行がこうだ。
〈今回の一連の記事の中で最も読ませたのは、朝日新聞9月19日付の耕論「愛国」でした。鈴木邦男氏が、こう語っています。
「外国人が母国に抱く愛国心を理解し、その上で国を愛する。自分の国がすべて。日本だけが素晴らしいという考えは、思い上がった自国愛にすぎません。ただの排外主義です。愛国とは最も遠いものです」〉
ウワー!私のコメントが「結論」がわりに使われてます。何か、申し訳ないですね。
しかし、自分で写してみても分かりましたが、この男(私ですよ)には思想がないですね。ただの「当然」のことを言ってるだけで…。「常識」的なことを言ってるだけだ。でも、それが、「腰抜けめ!」「非国民!」と叩かれる。変な話だ。
今日のテーマは、「自民党総裁選」。第1回投票は石破さん。ところが決戦投票で、安倍さんが逆転勝利。この問題を、皆で考えた。選挙のやり方、党員票の問題。なぜ、今の時局で、安倍さんになったのか…などと。
「編集長は見た!」は、「クーリエ・ジャポン」の富倉由樹夫編集長。
特集は、「こうすれば〈社会〉は変えられる」。
これは面白い特集だった。世界のデモ、現況も詳しくレポートされています。次は、
〈『ハリー・ポッター』の記録を超えて社会現象に!過激すぎる小説「フィフティ・シェイズ」の正体〉
世界ではすでに3000万部超を売り上げている。果たして日本でも出版できるのか。
夜6時、終わってから、ホテルニューオータニへ行く。「鈴木宗男を叱咤激励する会」に行く。凄い人だった。2000人以上だ。人徳だろう。人気がある。去年の9月の「激励する会」は本人が刑務所に入っていて不在。それも、台風の嵐の日。
それでも多くの人たちが集まった。そして、11月に出所。今回は出てきて初の「叱咤激励する会」だ。本人の挨拶も気合いが入っていた。政界再編をしますよ。この人は。石川ともひろさん、ムルアカさん…たちに会いました。
②森村誠一さんと。第2部で佐高信さんと森村誠一さんの対談がありました。徳間康快について2人で語り、さらに森村さんはホテルマンだった頃の苦労話を披露してました。そこでの体験が作家になる上でとても役に立ったといいます。私は昔からの森村ファンで200冊以上は読んでます。「森村さんの本は500冊以上あるでしょう」と聞いたら、「370冊ほどですね」と。 じゃ、半分以上は読んでる。全巻読破しよう!
③(左から)松元ヒロさん。この日も素晴らしい芸を披露してくれました。佐高信さんの奥さま。(右)は、福島みずほさん。「最近の鈴木さんの発言を見てると、もう、ほとんど社民党よね」と福島さん。ありがたいお言葉です。私も、急激に進歩しています。
私も「福島です」(生まれたのが)。「みずほです」(銀行が)。だから、福島みずほです。
⑤照屋寬徳さん(衆議院議員)と。いろんな集会でお会いしてますが、この日、ゆっくり話しました。沖縄について書かれた本も送って頂きました。『沖縄から国策の欺瞞を撃つ』(琉球新報社)です。今、読んでます。とても教えられます。
⑧9月26日(水)午後6時より。ホテルニューオータニ。「鈴木宗男を叱咤激励する会」。大きな部屋が満員でした。2000人だそうです。政治家のパーティで、これだけ集まるのは、他にありません。宗男さんの人徳です。党派を超えて、多くの議員、支援者が集まってました。
⑭新生東京駅です。「東京ステーション・ビジョン」です。新生・東京駅にコンピュータで、東京駅の歴史が映し出されます。とても、きれいでした。これだけ派手な仕掛を見ると、どうしても北朝鮮を思い出してしまいます。