年末は31日まで原稿の直しや校正があった。大変だったけど、非日常の年末で、楽しかった。
その成果が1月、2月に誕生した。1月に1冊、2月に1冊の本が出た。2月はもう1冊が出る。年の始めから気合いが入る。
1冊目は、1月23日(水)に発売された、『秘めてこそ力=MY RESOLUTION』(柏艪舎・1400円)だ。
2冊目は、2月1日(金)発売の、対談集だ。西宮でやっている「鈴木ゼミ」の報告集第2弾だ。『思想の混迷、混迷の時代に』(鹿砦社・1200円)だ。
3冊目は、2月18日(月)発売の、本間龍さんとの対談本だ。『だれがタブーをつくるのか=原発広告・報道を通して日本人の良心を問う』(亜紀書房)だ。
本間さんは作家で、かつて博報堂に勤めていた。電通、博報堂などによる原発広告・報道の推進。又、広告業界が原発にどう係わってきたか。そうした問題について、本間さんの話を聞き、その後、2人で、じっくりと語り合った。
3月11日(月)には夜、阿佐ヶ谷ロフトで、本間龍さんとこの本の出版記念トークをやる。
では、この3冊について、もう少し詳しく紹介する。
まず、『秘めてこそ力』だ。柏艪舎(はくろしゃ)は札幌にある出版社だ。
いい本を随分と出している。鈴木亜繪美さん著の『火群のゆくへ』は特に素晴らしい。三島事件以降の「楯の会」の人たちの〈その後〉を追い、彼らの思い、生活を書いたものだ。
2009年には、私もここから『日本の品格』を出している。今回で2冊目だ。
斬新な本の作りをしている。編集者が優秀だからだ。
本の初めは、「みやま荘」だ。私の住んでいる木造アパートだ。そこから話は始まり、次第に、テーマは大きくなる。
「神は細部に宿る」というが、小さなところに、〈本質〉がある。考える原点がある。そこから、問題意識は拡がる。
「みやま荘の春秋」から始まって、こう続く。
第2章 秘めてこそ力
第3章 領土・外交・愛国
第4章 僕が一番伝えたいこと
あとがき
…だ。巻末には「鈴木邦男 著作リスト」が載っている。これもユニークだ。普通だったら、「著者のプロフィール」に何冊かを紹介して終わりだ。
ところが、この本では、私の出した本の「全て」を載せている。『遺魂』(無双舎)、『本と映画と「70年」を語ろう』(川本三郎さんとの対談。朝日新書)の時にお世話になった編集者に纏めてもらった。70冊以上がある。懐かしい本もあるし、「あっ、この時は大変だったな」「これは楽しかったな」と思い出す。
この「リスト」を見てるだけで、〈私の歴史〉になっている
私が初めて本を出したのは、1975年の『腹腹時計と〈狼〉』(三一新書)だ。38年前か。
じゃ、本を書き始めてから38年か。2年後には、「ライター生活40年」か。よし、ロフトでやろうかな。「生誕100年祭」は名前を変えて、『生誕40年祭』にしよう。一気に60才も若返っちゃう。アンチエイジングだ。
ところで、70冊の中で、思い出深いのは、まず、シリーズ化した本だ。『がんばれ新左翼』が3巻。『夕刻のコペルニクス』が3巻。物議もかもしたし、多くの人に迷惑をかけた。突っ張っていた。
他に、右翼もの、プロレス本、宗教…と、いろんなジャンルがある。『読書』についての本も5冊ほどある。
そうだ。今度は、「著作リスト」をジャンル別に分けてもいいな。「右翼」「読書」「プロレス」「犯罪」「左翼」…と。「対談」も何冊かある。「公安」本もあるな。北朝鮮本もある。
1冊の本について書いたものもある。『「蟹工船」を読み解く』(データハウス)。いや、これは、「小林多喜二」論だった。
じゃ、人物論だね。この小林多喜二の他に、『竹中労』(河出書房新社)、『ヤマトタケル』(現代書館)などがある。
人物論というのは、その人を論じながら、案外、自分を語っているとこもある。自分を最も生で語ったものに、『失敗の愛国心』(イーストプレス)がある。
上祐史浩さんも、自らの著書『オウム事件・17年目の告白』の「参考文献」に私のこの本を挙げている。ありがたい。
「もう1冊、書きましょうよ」とイーストプレスからは言われている。あの事件、この事件を含めて、〈真相〉を書けという。難しい。モロに、『失敗の鈴木邦男』になっちゃう。いつかは書くにしても、どう書くべきか、苦慮している。
2冊目の『思想の混迷、混迷の時代に』だ。2ヶ月に一遍、西宮に出かけて行って、いろんな人たちと対談している。鹿砦社の松岡社長が、この貴重な〈場〉を作ってくれた。それだから出来る。本当にありがたいです。
「はじめに」で書いたが、これは、「我が儘なゼミ」だ。そして、「お客さんを無視のゼミ」だ。それによって、こうやって活字になった時に、ズシリと重いものになっている。
自分の胸の中では、「対談革命」だと秘かに自負している。「革命の対談」かもしれない。勿論、革命運動を闘った人もゲストにいるし、今も革命を夢見ている人もいる。
でも、〈革命〉は、それだけではない。今までの「対談」「討論」の概念を超えた。と思っている。私も希望を出してるが、鹿砦社でゲストを探し、来てもらう。豪華だし、私も、話を聞きたい人ばかりだ。
今回は、「鈴木ゼミ報告集」第2弾だ。ゲストはこの6人だ。本山美彦、寺脇研、北村肇、重信メイ、田原総一朗、池田香代子…さんだ。
じっくりと話を聞いた。テレビでは出来ない〈対談〉になったと思う。テレビだと、「もうちょっと面白いものにしたい」「時には喧嘩も入れて、緊迫したものにしよう」「“笑い”もとらなくては…」と考える。
ところが、このゼミでは、そんな「声」は届かない。いや、一切無視している。
「もっと喧嘩して下さいよ」「激しく闘って下さいよ」とお客さんに言われることもある。「もうちょっと面白くしたらいいんじゃないですか」と提案されることもある。それも無視している。我が儘なゼミだ。
それが、この本になっている。それに、纏めている人がうまい。そのおかげで、こんな立派な対談集になった。ありがたい。
3冊目は、2月18日(月)に出る。これを書いてたら、出版社から、「今、校了しました。12日に見本が出来ます」とメールが届いた。
いよいよだ。作家で、元博報堂社員の本間龍さんとの対談だ。『だれがタブーをつくるのか=原発広告・報道を通して日本人の良心を問う』(亜紀書房・1500円)だ。
広告業界から、この原発問題を考える。電通、博報堂という巨大な広告代理店は、我々が考える以上に強力な力を持っている。いろんなところに入り込んでいる。そのことを痛感した。テレビ討論会や、政党の大会、総裁選なども、裏で仕切っている。
いわば、「国家内国家」かもしれない。そんなことは私らも知らなかった。
又、自民党は、次の選挙からネットを解禁しようとしている。大幅に選挙も変わる。18才以上に投票権を与えることも考えている。又、ネット投票も考えている。
それは、若い世代が、どんどん右傾化、保守化しているからだ。昔と違い、若い層は左翼、革命勢力には行かない。だから、安心して若者に投票のチャンスを与えようとしている。
どうもそうした戦略を考えているのが広告代理店だという。そう考えると、かなり怖い話だ。
本が出てから、ロフトやあるいは書店で、本間さんとはトークをしていくつもりだ。〈国家〉を裏から支える巨大広告代理店の実態について、もっともっと聞いてみたい。又、原発推進の力になった面についても。
さらに、本間さんと話していて思ったのだが、今、我々の生き方も(ある意味)、「広告的」だと思った。
自分が何をしようとしているか。何を考えているか。それを話し、訴えなくてはならない。自分を「広告」しているようなものだ。それをどう、スマートにやっていくか。それが、その人間の生き方になるのかもしれない。
宮台真司さんは「表現」と「表出」と言った。ただ、喚いていたり、飲み屋でオダをあげているのは「表出」だ。そんな事が今、余りにも多い。ネット、ツイッターという便利なツールによって、「表出」は至るところにある。怒号と喧噪の日本「表出」列島だ。
それに対し、「表現
は、努力し、キチンと訴えるものを持っている。カタチを持っている。だから説得力がある。
映画、音楽、小説…といった〈形〉をとることもある。それに、自分をどう〈広告〉するかという問題でもある。
昔は、物書きという人は、家にいて、1人で、孤独に書いていた。書きまくっていた。この人の周りには、それを作る出版社の人がいる。又、宣伝してくれる人がいる。それを読んで、「いいね」と言ってくれる人がいる。それが増えていって、本が売れる。
今でも(基本的には)、そういう〈分業〉はある。しかし、今は事情が変わった。作者は書くだけでなく、自分で出版社を探し、自分で宣伝し、書評して下さいと頼み、買って下さいと訴える。ネットやツイッターなども駆使して訴える。
1人で何役もやらなくてはならない。大変だ。テレビで討論会の司会をする人も、「今度、出た本ですが」と自分の本を宣伝している。自分で「宣伝」しなくてはならない。
これは大変だ。一人一人が自分を「宣伝」し、「広告」する。皆が、(小さいながら)広告代理店なんだ。
いや、生きるということが、〈広告代理店〉的なものかもしれない。その中で、より自己主張が強く、ボリュームの高い人間が目立つ。つまり、〈広告〉の勝負になっているのかもしれない。
勿論、それでいいわけではない。自由主義社会やグローバル化が行き着くところは、「自己」の売り出し、宣伝、広告の社会になるのかもしれない。
そんな時だからこそ、その風潮に逆行して、『秘めてこそ力』というタイトルにしたのかもしれない。
このタイトルは柏艪舎の山本社長が考えてくれた。初めは、「恥ずかしいな」と思ったが、今では、「なかなかいい」と思うようにになった。「鈴木さんにピッタリだよ」と言われると嬉しい。
もう2冊の本も、〈討論〉〈論争〉のルール作りを考えたものだ。論争の過激化の中で、どうやったら、「実のある討論」が出来るのか。どうしたら、対話による化学変化を起こして、歯車が噛み合うような議論が出来るのか。それを考えたつもりである。
皆も一緒に考えてほしい。
ところが何と、今年は1月から私だ。「私でいいの?」と聞きました。「いつもよりかえって多いですよ。怖いもの見たさでしょう」と司会者。この日、配られた〈講演者紹介〉には、学生時代、若い時は、かなり過激な運動をし、〈70年、産経新聞社に入社。72年、一水会創設、代表に就任。73年防衛庁に乱入する事件を起こし逮捕、新聞社を解雇〉…と出ている。自慢じゃないが、このあとも何度も捕まっている。そんな「前科者」を講師にしていいのだろうか。真面目な経営者を前にして私ごときが喋っていいのだろうか。迷いました。だから、初めに断りました。「私の話を聞いても経営には一切役立ちません。それを覚悟で聞いて下さい」と。
この日は、160人。大宅映子さん、ライフの会長、角川の社長など、錚々たる人がいる。私がその人たちのお話を聞きたい位だ。そして、私の話が終わると、まず第一に質問した人が参議院議員の丸山和也さん。皆、大物ばかりですよ。緊張しましたが、楽しく話し出来ました。終わって、立食パーティ。
それから、夜、高田馬場へ。ちょうど「早稲田松竹」で若松孝二監督の追悼上映会をやってたので見る。「エンドレス・ワルツ」と「われに撃つ用意あり」。前者は、鈴木いづみとジャズトランペッターの物語だ。全く知らなかった。もう1本は、元全共闘の活動家の「その後」だ。デモや機動隊との乱闘シーンも出てくる。その活動家が、市民社会を送りながらも、昔のことを思い出して、大事な人の為に命を賭けるんですよ。「元全共闘は皆見ろ!命を賭けろ!」と皆にメールを送りました。劇場には、昔、殴り合いをした全共闘の人もいました。
〈女子柔道。トップ15人がJOCに告発状〉
柔道をやってる者としては、何とも心が痛い。次、
〈資産家殺人、被害者セレブ夫婦、有名人との華麗な人脈〉
「ニュース、本音と建前」は、
〈生活保護削減と生活困窮者の支援を考える〉
昨年10月時点で、受給者数が過去最多の214万人に達した。又、「不正受給」の問題が騒がれている。それを受けて政府は、 2013年度予算案に、生活保護費の削減を盛り込んだ。
しかし、おかしい。敗戦直後よりも今の方が受給者数が多い。といっても、当時と今では人口が全く違う。「割合」で言えば敗戦直後の方がずっと高い。又、不正受給をしたとされるケースは全体の2%。金額では0.4%だ。それなのに、こればかりを言い立てている。本当は、「受けるべき人」までもが受けられない。又、自民党の政治家は、「受ける人に恥の感覚はないのか!」などと言っている。これはおかしい。
又、不必要な分野を削って、「国のため」に闘う部隊に使うという。つまり、「国防費」だ。
しかし、この国に住んでいる人々を守ることが、まず「国防」だ。
次は、
「編集長は見た!」。今週は月刊『クーリエ・ジャポン』編集長の富倉由樹夫さん。まずは、
〈チリのイースター島が独立! 先住民が怒りの抗議〉
イースター島には、1年に6万人の観光客が訪れる。モアイ像で知られている。「島が荒らされる!」と、座り込みや、デモなどが活発になっている。
それから、最近、日本人はに外国から、かなり見直されているという特集。まず、
〈スバルがつかんだアメリカ人の心。光り輝くその「個性」〉
そして、
〈フランスで日本人シェフが頑張っている〉
日本人シェフは今、高く評価されている。「日本人はフランス人に比べて、労働意欲が高く、仕事も早くて丁寧。この国から日本人の料理人を閉め出すような法律が出来たら、パリにあるレストランの半分以上は潰れてしまう」という評価もある。これは日本人として誇れる話だ。
さらに、スウェーデンの小さな村で生まれた人気家具ブランド「イケア」が紹介される。これも凄い。
文化放送が終わってから、急いで、ホテルオークラへ。6時半から9時まで食事会。元警察庁長官の國松孝次さん。衆議院議員の亀井静香さん。元内閣官房副長官の石原信雄さん。全生庵住職の平井正修さん。月に1回、全生庵で勉強会をやっている。その主催者の北野謙治さんが声をかけてくれたのだ。皆、全生庵勉強会の講師で来てくれた人だ。私も呼ばれた。それで、こんな凄い食事会にも呼ばれた。ありがたいです。皆さんから政界にまつわる貴重な話が聞けました。
〈鈴木邦男と愛国問答
=市民的不服従、君が代不起立を考える=〉
午後7時から9時まで。会場は伊藤塾大阪梅田校401教室。ゲストは、卒業式で君が代不起立で大阪府人事委員会による処分を不服として争っている現役教員、元教員の人たち6人だ。「君が代」「日の丸」について、かなり、スリリングな話し合いが行われました。教育現場のことについては、私は分からない事も多いので、とにかく勉強になりました。
私も「強制」には反対です。歌いたい人だけが歌うだけでもいいと思う。嫌な人は、「その時」は別の仕事をさせてもらうとか。出張とか。いわば、「良心的懲役拒否」のような形も出来るのではないか。「いや、それではダメだ」という人もおり、かなり熱い論議になりました。
終わって、居酒屋で打ち上げ。大阪で泊まりました。
「〈決めたい〉のか、〈決めてほしい〉のか?
格差・貧困と民主主義を大阪から考える」
と、本の帯には書かれている。今の民主主義は、「私たちは言いたいことを言う。それをよく聞いて下さい。私たちを裏切らないと思います」という「お上に上申」型民主主義だという。その通りだ。それをどう、我々の手に取り戻すか、考えました。とても勉強になりました。
終わって、打ち上げ。そして、最終の新幹線で帰京しました。
④「朝鮮大学校で講演して下さい」と頼まれました。「そうだ。1月25日(金)に孫崎享さんの講演をやるので、まずそれを見に来て下さい」と言われて、「下見」に行きました。朝鮮大学校の校門の前で、孫崎さんと。
⑥凄い人たちの食事会に呼ばれました。谷中の全生庵で毎月、勉強会が行われています。錚々たる人々が講師で出ています。そこの講師になった人たちとの食事会です。(私も一度、講師で出たのです)。1月30日(水)、6時半より。
(左から)、全生庵の住職・平井正修さん。元警察庁長官の國松孝次さん。衆議院議員の亀井静香さん。元内閣官房副長官の石原信雄さん。鈴木。全生庵勉強会の主催者・北野謙治さん。
⑨「東京都現代美術館」の外には、アートの井戸が作られてました。ビートたけし+ヤノベケンジの作品です。「アンガー・フロム・ザ・ボトム」です。井戸の中からは巨大なおばけが出現します。これも、現代アートです。
⑰杉本延博さん(御所市議会議員)と。「鈴木さんの本は全部読んでます」と言ってます。嬉しいですね。そんな人、日本で1人だけですよ。それに、20才の時に、私の『行動派のための読書術』を読み、「月30冊」のノルマを決意し、実行してるそうです。それから21年。毎月、キチンと実行してるそうです。
又、『日本の名著』『世界の名著」 も全巻読破したそうです。筑摩の日本思想大系も全部読破したと言います。偉いです。感動しました。今度、「年間500冊読破」の高木尋士さん(劇団「再生」代表)と〈読書対談〉をしてもらおう。
⑲1月27日(日)、映画「鈴木先生」を見に、新宿の映画館に行ったら、「あっ、鈴木先生!」と声をかけられたんですね。「鈴木先生」の原作者・武富健治さんでした。映画館で写真を撮りました。それで、バレて、「あっ、武富先生だ!」とファンに囲まれてしまいました。
「鈴木先生」は、漫画、テレビ、映画のどれもがいいです。面白いです。教育への夢があり、〈思想〉があります。今度又、ロフトで話しましょう。
⑳1月25日(金)、ニコ生で、ウォルフレンさんと会いました。孫崎享さんとウォルフレンさんの対談が夜9時からニコ生であると聞いて、孫崎さんに付いて来たのです。ウォルフレンさんはオランダの人で、日本にもよく来てます。
以前、『人間を幸福にしない日本というシステム』『日本権力構造の謎』がベストセラーになりました。その時、私は『サンデー毎日』で対談しました。「あの時は楽しかったです。お久しぶりです」と言いました。年末に、『いまだ日本を幸福にしない日本というシステム』(角川ソフィア文庫)を出して、売れている。