今発売中の『週刊金曜日』(2月8日号)に出ています。
〈坂本龍一と鈴木邦男が語る
「左右を超えた脱原発。そして君が代」〉
です。リードには、こう書かれています。
〈音楽家の坂本龍一さんと「一水会」顧問の鈴木邦男さん。この二人の名前が並んでいるのを見て「接点があるの!?」と思う人も多いでしょう。しかも初顔合わせの対談で、二人が編み出すハーモニーとは〉
そうですね。そんな疑問を持つ人が多いでしょう。でも「共通点」は多いのです。
坂本さんのお父さんは元『文藝』編集長で、三島由紀夫、高橋和巳、小田実を育て、世に出した人です。坂本さんは子供の時から、この三人をよく知ってます。
中上健次とも親しかったし、若松孝二、足立正生の映画もずっと見ていた。
高校の時はストライキもやっている。
そして坂本さんは言います。
「だから鈴木さんと私は似ている。ずっと近いところにいたという感じがしていました」
嬉しいですね。感激しました。世界の坂本さんからそう言われるなんて。
それで舞い上がって、音楽の話や、ナショナリズムの問題、脱原発の話などを聞きました。とても楽しかったですし、とても勉強になりました。
坂本さんはNHKで「音楽の学校」をやってますし、私も、その〈個人授業〉をやってもらった感じでした。とても贅沢な時間でした。
坂本さんの本は今、かなり読んでます。又、書きましょう。又、お話し出来たらと思ってます。
今、出ている『紙の爆弾』(3月号)では、三島事件の時、三島に日本刀で斬られて重傷を負った(元自衛隊幹部の)寺尾克美さんに話を聞きました。〈歴史の証人〉です。いや、当事者です。
月刊『創』(3月号)では、その事件を含めて、連合赤軍事件などについても書きました。
寺尾さんは重傷でしたが、奇跡的に助かりました。
もし亡くなっていたら、あの事件は、「殺人事件」になっています。いわゆる〈三島事件〉として語られ、評価されることはなかったでしょう。寺尾さんこそ、事件の「陰の主役」です。
三島事件の直後、三島の奥さんが、寺尾さんたちを見舞いに来たそうです。そしてお詫びします。
重傷の寺尾さんは言いました。「こちらこそ申し訳ありません。三島さんのやろうとしたことを邪魔して」と。
その瞬間、奥さんが大粒の涙をポロポロとこぼされた、といいます。眼に見えるようです。
益田総監を助けようとして三島に四太刀も斬られたのです。命を落とすところでした。
でも、それを怨まず、「こっちこそ、邪魔をして…」と言った。
よく、そんな心境になったものだと思いました。凄い人だと思います。
あの事件で、三島由紀夫、森田必勝の2人は自決し、あとの3人は逮捕され、刑務所に送られます。
その3人は刑務所を出ると、すぐに寺尾さんたちを訪ね、謝罪しました。
志を持ってやったこととは言え、自衛隊の人々に迷惑をかけ、寺尾さんたちに大怪我を負わせたのです。それを真摯に謝罪しました。森田必勝氏のお兄さんが3人を連れて来たそうです。
『創』にも書きましたが、「あっ、ここが左翼との違いだな」と思いました。
去年は「連合赤軍事件40年」で、いろんなイベントがありました。
連赤を語る会、テレビ、新聞などに私も出ました。私は、連合赤軍の関係者ではないのですが、あの時代を共有した人間として。
又、今、連赤関係者とは随分と話してますし、書いているので。
40年前の連赤関係者。それに「敵対していた」右翼も出る。
じゃ、警察にも出てもらって、三者で、あの事件を考え直そう、という企画がありました。テレビで。
連赤関係者も、私も勿論、OK。ところが警察関係者は「拒否」。とっくの昔に警察を辞めてますが、それでも拒否です。
「仲間が殺されている」「それに、彼らは謝罪していない」。そう言います。
そこが三島事件と連赤事件の〈差〉でもあります。左翼は、たとえ個人的にでも謝罪したら、「自分たちの運動」が間違っていたと認めることになる。「自己批判」「転向」と思われる。そんなことを考えるから、素直に謝れないのです。
そう思っていたら、この問題は自分にも跳ね返って来ました。他人事ではなくなったのです。
今発売中の『週刊新潮』(2月14日号)に、私の写真が出ています。そして批判されてます。「ワイド特集・女たちの『夜間飛行』」の中の一つです。
〈イスラエル大使館が決して忘れない
日本赤軍「重信房子」への怒り〉
です。写真が出てます。私です。イスラエル大使館の写真でもなく、重信さんの写真でもなく、私です。
なぜなのか。私が重信さんの本を書評した「アエラ」を読んで、イスラエル大使館が激怒して、抗議して来たのです。その顛末を『週刊新潮』は報じてます。
〈「自分の書評でAERAにもイスラエル大使館にも迷惑をかけてしまい、申し訳ないと思っています」とは、当の鈴木氏〉
本当にそう思っています。私がイスラエル大使館に行ってお詫びします。書評の連載をクビになっても仕方ありません。覚悟してますと言いました。
又、イスラエル大使館も、「AERAを回収しろ。廃刊しろ。鈴木はクビにしろ!」と言ってくると思いました。ところが、極めて冷静に話し合いは行われたそうです。
そして、今発売中の「アエラ」に大使館の抗議文が載ってます。
「もっとキツイことを言われるかなと思ってたので、その温情には涙が出ます」
という、(事件の責任者)鈴木のコメントも載ってます。全ては私の責任です。亡くなった方々への配慮が足りなかったのです。
イスラエルとアラブ諸国。そして日本赤軍。その中で、「一つの立場」を擁護して、結果的に「テロを擁護した」。と思われてしまったのです。
私が未熟でした。ライターとして失格でした。
元々は、「アエラ」(1月28日号)で、重信房子さんの『革命の季節 パレスチナの戦場から』(幻冬舎)を私が書評しました。1972年の「テルアビブ事件」についても、重信さんの本を引用して書きました。
ところが、それが、日本赤軍の言い分をそのまま書いている。テロリストを支持していると思われたのです。
又、今、NHK大河ドラマでは『八重の桜』をやってます。八重は、かつては『賊軍の娘』でしたが、今は大河ドラマの主人公です。重信さんは今は刑務所に入ってます。しかし、いつか、その闘いが評価され、「大河ドラマ」になるかもしれない。と私は書きました。
重信さんには何回も会ってるし。かつてはお父さんにも会ってます。そのシンパシーもあって、「いつかは」と思い、書いたのです。
ところが、イスラエル大使館にしたら、そこも許せないのです。こう書かれています。
〈鈴木邦男氏の書評を読み、大変残念に思いました。テロリスト集団、日本赤軍の創立者であり指導者である重信房子受刑者が、大河ドラマ「八重の桜」の主人公に重ね合わせられ、英雄のように扱われているからです〉
確かに、私の文章が未熟だったし、軽はずみだったと思います。前にも、「連合赤軍事件は50年後、大河ドラマになる」と言って、皆に批判されたこともあります。
ただ、歴史の評価は変わります。たとえば、私らが子供の頃は新撰組は、〈悪〉でした。ただの人殺し集団でした。誰も評価しません。
ところが、小説になり、映画になり、NHKの「大河ドラマ」になりました。
特に土方、沖田は大人気です。土方歳三の死んだ場所を見ようと函館の五稜郭に行く人も大勢います。そこで、土方の格好をして写真を撮ってブログに載せてる人もいました。(あっ、私だった)。
だから、「悪の象徴」の連合赤軍事件だって、「新撰組と同じだ。同じ仲間殺しだ」となって、別の見方をされるかもしれません。
「その時は僕は沖田総司かな」と植垣さんは言います。「塩見孝也はきっと芹沢鴨だね」と私は言いました。「ダラ幹め!」と、最初に殺されるのです。
ジョークで言ったのに、その時は塩見さんに怒鳴り込まれました。「ふざけるな!俺を芹沢だなんて二度と言うな。言ったら承知しないぞ!」と。
だから私は二度と言いません。皆さんも、だから、言わないように。
話を戻します。こんな「大河ドラマ」の話ではなく、おそらく、「テルアビブ事件」をめぐる私の「理解不足」「一方的な見方」にイスラエル大使館は激怒したのでしょう。重信さんの本から引用して書いたのですが、それが間違いだと言います。
重信さんの本を紹介しながら、この事件のことを私は、こう書きました。
〈日本赤軍の3人(中略)が無差別テロで一般市民24人を殺害した、と日本のメディアでは報じられた(中略)。空港で3人は警備兵を撃ち、「慌てた警備兵が旅行者に向かって無差別に撃ち返した」。その結果、一般人に多くの死者が出た〉
これが許せなかったのでしょう。「一般旅行者を殺したのはどっちだ。日本赤軍のテロリストだ」と言うのです。こう言います。
〈重信受刑者がリーダーであった日本赤軍の3人が1972年5月30日にロッド空港(テルアビブ)で起こした乱射事件(24人の民間人を殺害)は、憎むべきテロ行為そのものです。アルジェリアの人質殺害事件の犯人が大河ドラマになることを想像してみてください。丸腰の人を殺害することは英雄的行為などではなく、臆病者のすることです。テロ行為はいかなる場所でも起きてはならない。メディアの影響力はテロリストを励ますことではなく、テロを阻止することに使われるべきなのです〉
テロやメディアの役目については、その通りだと思います。又、初めにこう言ってます。
〈はじめに、イスラエル国の代表として、アルジェリアで横暴なテロの犠牲となった10人の日本国民に対し、心より哀悼の意を表します〉
日本国民に対し、心配りのある大使だ。抗議文なのに、まず哀悼から始まっている。
そして、「アエラを回収しろ!」「鈴木をクビにしろ!」と言うのではなく、「私たちの話を聞いて下さい」と静かに語り始める。
実に冷静な抗議文で、心打たれました。イスラエル大使と比べ、何と私には心配りがなかったことかと反省しました。
私は書評しただけだ。ロッド(テルアビブ)空港事件については、自分の「独断」ではなく、本で書かれたことを引用し、紹介しただけだ。
しかし、無関係の人が殺されたことに対し、心配りがなかった。それはライターとして失格なんだろう。と思いました。申し訳ありません。
実は、15年前に、この事件をめぐって、別な方向(日本赤軍関係者)から抗議を受けたことがあるのです。
それで、今回も、「正確に書こう」と思って、かえって犠牲者への哀悼、配慮のない文章になったのかもしれません。反省します。
1972年にロッド空港(テルアビブ空港)事件が起こった時、「なぜ、日本赤軍は関係のない旅行者を無差別に24人も殺したんだろう」と思いました。
そのことを、当時連載していた「SPA!」の「夕刻のコペルニクス」に書きました。
その直後、関係者から抗議が来ました。「無差別テロではない!」と。「一般旅行者を殺したのは警備兵だ!」と。
そんな馬鹿なことはないと思いました。しかし、「3人は警備兵と撃ち合いになった。警備兵の弾が一般旅行者にあたったのだ」と言います。
ウーン、そうかなと思いました。
「大体、3人は乗客側にいたのだ。だから、撃ったのは警備兵だ」「でも、そうなるかもしれないと分かっていて、撃ち合いになった。その責任はあるでしょう」と私は喰いさがりました。
「いや、違う。訂正文を載せろ!」と言われました。それで、話を聞いて、〈反論〉を載せました。
その「痛い体験」があったので、あの事件の本質は何だろう、とずっと思ってました。
又、知り合いに日本赤軍関係の人が多かったので、その方面の情報が多かったのは事実です。重信さんの本を読んでも、その論理でした。
ただ自分としては、主観を抑えて、本を「引用」し、「紹介」した。「ライターとして、きちんと調べろ!」と叱られたら、その通りです。
佐々淳行氏は、「週刊新潮」で、「イスラエル兵が旅行客に発砲したという事実はない!」と断言しています。
出来たら、佐々さんにも会って話を聞きたいと思います。又、イスラエル大使にも会って、話を聞いてみたいと思います。私自身の〈情報〉が片寄っていたのかもしれません。また犠牲者に対し、哀悼、配慮がなかった点は深く反省します。
その上で、この事件についても、もっともっと調べてみたいと思います。
今日の「ニュース、本音と建前」は、
〈生活保護制度の見直しと貧困問題を考える〉
生活保護の受給者は戦後最大で、不正受給者がいる。という話題ばかりをテレビで流す。それを見て、「これは許せない」と煽る。これは一方的だ。終戦直後と今では人口が全く違う。占める割合は終戦直後の方が圧倒的に多い。
政府は2013年度から、生活保護予算を削減する。これでは、今まで以上に「餓死」「孤独死」を多発させ、国民生活全体の引き下げにつながる。と宇都宮さんは言う。
「生活保護」を支給する時、ある政治家が言ってたが、「恥を知れ」と。しかし、これはおかしい。「健康で文化的な最低限度の生活」を国が保障すると言っているのだ。国民の権利だ。恥ずかしいことはない。日本の憲法の中では、この条項は素晴らしいものだと思う。誇りに思っていい。しかし、なぜ、これを無視し、生活保護の引き下げを図る動きがあるのか。
政府、マスコミなどの危険な動きを宇都宮さんに聞いた。
「編集長は見た!」のコーナーは、引き続き宇都宮さん。第2次安倍内閣の掲げる「日本国憲法の改正」問題について語ってもらった。
世論調査は、やるたびに、改正「賛成派」が多くなってゆく。又、政府はまず、憲法96条を改正しようとしている。もっと簡単に改正出来るように、いわば「ルール」を変えようとしている。又、自衛隊を国防軍にし、集団的自衛権を堂々と行使出来るようにしようとしている。これは危ないだろう。「政府は国防軍を創り、その中に、昔の裁判所まで考えている。これでは、2.26事件の頃と同じになる。密室裁判になる、と宇都宮さんは反対する。
文化放送が終わってから、急いで高田馬場へ。ホテルサンルートで午後7時から一水会フォーラム。講師は東郷和彦さん(元外務省欧亜局長)で、「北方領土の取り戻し方の秘訣」。とても感動的な話だった。竹島、尖閣問題についても触れる。又、アメリカではなぜに、日本の慰安婦問題にこだわるのか。それも詳しく話してくれた。知らなかった話も多く、驚いた。とても勉強になりました。
〈日本の情報収集機関・公安警察とは何か?〉
かなり濃い話になりました。「過激ですね」と私のことを言うが、青木さんも過激だ。いいんでしょうか。こんなことを言って。と思う位のことを言いました。11時半、終了し、帰った。
中入り後、三浦さんと私が「漫才」をやる。生まれて初めてだ。アガってしまいました。そのあと、「おしどり」も加わって、トークでした。愛国心、日の丸、君が代をネタにして、危ない話をしてました。
会場は超満員でした。早い段階でチケットは完売。「何とかならないか」「当日券はないのか」と問い合わせが殺到した。ご迷惑をおかけし、すみませんでした。「ライト師匠、又、お願いします」というアンケートが多くありました。「ニカラグア・ライト」「ニカラグア・レフト」という名前で漫才をやったのです。三浦さん、おしどりさん、恩田さん、本当にお世話になりました。無事終わり、ホッとしてます。終わって、終電まで飲みました。
⑧日本、中国、韓国の高校生が公開シンポジウムをやったそうです。その報告をしてました。これを聞いて私も一言。「年をとれば学び、賢くなるというのは嘘です。アホな大人たちが沢山いて、排外主義を煽ってます。高校生が、共生を考え接点を持とうと努力している。偉いです。「全てのアホな大人」を代表し、謝罪します。明日は君たちのものです。頑張って下さい」。
⑩そのあと、夜は、「市民社会フォーラム」へ。7時から、伊藤塾大阪梅田校401号教室。
〈鈴木邦男と愛国問答
=市民的不服従、君が代不起立を考える〉
君が代不起立で処分され、闘っている6人のサムライと私が激論しました。
⑭美佐子さんからメールがあって、「小学校6年生」の同窓会に出ました。2月5日(火)です。60年前の小6は45人。この日集まったのは9人。それも東京にいる人だけ。凄い結束です。小6の時は、田舎だし、昔だし、林間学校では、男女共に雑魚寝。身体検査は男女共、上は裸。パンツ一丁で並びました。「すんません、あの時、裸を見て」と女性たちに謝りました。謝罪人生です。出席した9人のうちの女性陣と。
⑱2月4日(月)テレビ朝日のCS「ニュースの深層」で。この日は収録。放送は2月7日(木)の午後8時からでした。憲法、愛国心について話しました。1月30日(水)に「みやま荘」で取材された映像も出ました。家で本を読んだり、原稿を書いたりの映像です。
写真は(左から)、武内絵美アナ。キャスターの小田嶋隆さん。小田嶋さんに「初めまして」と言ったら、「15年前に一緒に対談してますよ」。すみません。謝りました。
⑲2月6日(水)一水会フォーラム。東郷和彦さん(元外務省欧亜局長)が来て講演してくれました。「朝日新聞の鈴木さんの発言、よかったね」と言われ、恐縮しました。こちらこそ、東郷さんの本は随分読んでますし、教えられてます。
㉑2月7日(木)TBSラジオに出ました。夜10時から「ニュース探究ラジオ・Dig」。(左から)江藤愛さん、ジャーナリストの青木理さんです。この日のテーマは、
〈日本の情報収集機関・公安警察とは何か?〉
かなりシビア-な話しになりました。途中、電話で原田宏二さんも出演。原田さんは元・北海道警察釧路方面本部長。私も久しぶりに話しました。
㉔その「鈴木ゼミ」の対談を収めた「報告集」第2弾です。売れてます。『思想の混迷、混迷の時代に』(鹿砦社・1200円)。内容が濃いです。編集もうまいです。インパクトの強い本になってます。もし、買ってみて、「つまらなかった」という人がいたら、私がお金を返します。2倍返しで。そのくらい自信をもってお薦めできます。
対談した人は6人です。
本山美彦、寺脇研、北村肇、重信メイ、田原総一朗、池田香代子。
それぞれに、独立して、1冊にしてもいい内容です。ぜひ読んでみて下さい。