あれっ?「読書対談」はどうなったんだろう。と、今、気がついた。
正月早々にやったはずだ。「平成の読書王」高木尋士さんと「昭和の読書王」の私が対談した。
なぜ本を読むのか。ノルマを自分に課してまで読書する意味があるのか…と。読書の根源的な意味を問う対談だった。
さらに最近はどんな本を読んだか。どこで読んだか。の具体的、方法論的な話になった。
人類の生存をかけた〈最終戦争〉は、「ゲーム脳」と「読書脳」の対決ではないのか。というショッキングな話も出た。
眼前の表層的な現象に刺激されて瞬間的にボタンを押し続けている脳。これが「ゲーム脳」だ。
そのうち、現実の事すらもゲームのように思えてくる。不可解な犯罪が頻発するのは「ゲーム脳」のせいだ。とまで即断する気はないが、何らかの因果関係はあるようだ。
たとえば、NHKスペシャルでやっていたが、軍隊に入りたての若者は、すぐには人を殺せない。
アメリカの例だったが、多分、世界中の軍隊が抱えている「悩み」だろう。
いきなり殴りかかられて反撃する。いじめにあって復讐する。それは分かる。
でも、軍隊に入ったら、いつ、どこで、「こいつを殺せ」と言われるか分からない。急にやれと言われても、出来ない。それも、「怨みのない人間」だ。
大体、人に銃を向けることも出来ない。当然だろう。(だからこそ、人間なのだ)。
それまで学生で、普通の生活をしてきたのだ。酒の席で、喧嘩をしたことはあっても、「全く知らない人」「憎しみのない人」に対し殴りかかることはない。ましてや、銃を向けたことはない。
でも、軍隊に入ったら、それをやらなくてはならない。「憎しみのない人間」に対し平然と銃を向け、平然と引き金を引ける。そういう人間にしなくてはならない。
その時に使われるのが、「標的」に向けて撃つ練習だ。そして、射撃の「ゲーム」だ。
それで「慣れる」と、戦地に行っても、平然と「憎しみのない人間」に対し銃を向け、引き金を引けるようになる。「こうして立派な兵士を育てているのです」と米軍の教官は胸を張っていた。
最近、斉藤孝の『使える読書』(朝日新書)を読んだ。いろんな本を紹介しながら、現代人が直面する問題を取り上げている。
斉藤は、「退屈力」について言う。
今は、“刺激中毒”が起きている。刺激を求め、次々とゲームをやっている。電車の中でも、座席の一列全員がやっていることもある。時間がもったいない。
ボーッとしていてはダメだ。そう思って、ゲームをやる。より刺激の強いゲームを探す。これでいいのか。斉藤は、むしろ、「幸せを得るカギは退屈の技術だ」という。
そして、斉藤は「ゲーム」についてこう言う。
〈ゲームという仮想敵訓練によって、人の脳内に設定された禁忌プログラムの解除が行われているという米軍の話が出てきます〉
そうだ。斉藤孝は、本を紹介してたんだな。NHKスペシャルでやった、「米兵の訓練」の話を、この本でも書いていた。
この本とは、岡田尊司の『脳内汚染』(文春文庫)だ。まず、この本について、こう説明する。
〈少年犯罪の原因にはゲームなどの強烈な視覚刺激が関係有り? おおよそ見当がついていたことをクリアに解説〉
えっ、「おおよそ見当がついていた」ことなのか。私なんて全く知らなかった。
そこで、米軍の新兵訓練だ。岡田の本を引用している。
〈新兵の半数以上は実際に敵に遭遇しても、相手を殺戮することに本能的なブレーキがかかった。発砲して敵を殺すと、強い吐き気を覚えるなどの反応が起きたのである。ところが、シミュレーション・ゲームにより敵を殺戮することを訓練すると、九割以上の者が躊躇なく敵に向かって引き金を引き、しかも相手が倒れても動揺することがない〉
このように、岡田尊司の『脳内汚染』を引用し、そして斉藤孝は、こう言う。
「すごいでしょう。またゲームは中毒性を高める効果が詰め込まれているそうです」
そして、再び『脳内汚染』を引用する。
〈ゲーム開発者は、今にもやられそうな状況を、できるだけリアルに体験させるシチュエーションを作ることで、体にはアドレナリンを、脳内にはドーパミンを溢れさせる。そのために、日夜知恵を絞っているのだ〉
このあと、斉藤孝は驚くことを言う。こんな危ないゲームが何故、野放しにされているか。なぜ、莫大なCMが打たれているか。その秘密に迫る。
〈これによって刺激的な依存性を導くことは、公然の秘密。ゲームをやり続けると覚醒剤を打った人間の身体反応と同じようなことが起きるというから驚く。ゲームのやり過ぎはやっぱり危なかったのだ。
この問題がメディアに取り上げられないわけは、メディアはゲーム業界から莫大な広告宣伝費の恩恵を受けているから…〉
えっ! これじゃ、原発広告と同じじゃないか。と思った。
危ないからこそ、メディアに莫大なCM料を出している。時には「ゲームの危険性」を言う人がいても、「そんなものは科学的根拠がない!」「情緒的な反撥だ!」と言って葬る。
これは、元博報堂の本間龍さんに聞いてみなくっちゃ。阿佐ヶ谷ロフトと書店で、3月、トークをする。その時に聞いてみよう。
勿論、ゲームが全て悪いわけではない。学習用のゲームもあるし、ほのぼのとしたゲームもある。私もよくやっている。
しかし、一部、危ないものもある。よかれと思って親は子供に「麻薬」を与えているのだ。
怖い話だ。そこで、私は、岡田尊司『脳内汚染』(文春文庫)をアマゾンで注文して読んだ。2005年12月に単行本として出、今は文庫化されている。売れている。
と同時に、「ウソだ」「科学的根拠がない!」という批判がドッと出た。
やはりそうだったのか。本を読むと、実に説得力がある。子供が1日に何時間ゲームをするか。それによって、どんな影響があるか。細かく書いている。
「公然の秘密」の項には、ゲーム開発者は、リアルなゲームで脳内にドーパミンを溢れさせるために日夜知恵を絞っている。と書いている。
次にゲーム開発者について、こう書いている。
〈さらに、彼は商売の秘訣として、「瞬目率」なるものに注目するという。これは、昔からある広告代理店業界の秘伝で、広告が目を惹くものであれば、人は瞬きしなくなる。同じことで、ゲームに入り込むと、アドレナリンが放出され、瞳孔が開いて瞬目率が下がるのだ〉
これは是非、元広告代理店にいた本間さんに聞いてみたいことだ。岡田はさらにこう言う。
〈ご存じのように、覚醒剤のような中枢刺激性の薬物をやると、瞳孔が開き、驚いたような顔つきになる。ゲームに熱中しているゲーマーに起きることも、薬物中毒でラリっている状況に、この点も似ている。
アドレナリンが溢れるゲームを作ることは、必然的に、ゲームの麻薬性を高めることにほかならない。本来は、人生の特別な瞬間にだけ、報酬として許される快感やカタルシスを、絶え間なく経験できるようにすることに心血を注いでいるのである〉
やはり、恐ろしい話である。又、これも本間さんに聞いてみたいことだが、岡田はこうも言う。
〈マスコミ関係者の多くからは、ゲームについて否定的な記事を載せることは躊躇(ためら)われるとの話をよく聞く。そんなことをすれば、重要な広告主を失うことになりかねないという。危険に誰もが気づいていても、それを表だって言うわけにはいかないという構造があるのだ〉
〈研究者たちも、ゲームを否定する研究を出すことは、日本では、非常に勇気がいるという。義理の上でも、そういうことはできないと語る研究者もいる。「お金をもらっているから」と苦笑混じりに語る人もいる。脳科学などの分野の研究者に、ゲーム業界が急接近をはかり、研究資金提供などの形で、物心両面の結びつきが深まっているのである。
そうした状況で、もっとも客観的に意見を述べるべき研究者たちも沈黙するか、逆に「御用研究者」として、うまく利用されている〉
これが本当なら、ますます「原発」と似ている。
原発では、お金をもらった「御用研究者」が、「安全だ」「安全だ」と言ってきた。
ところがあの大惨事だ。それなのに何ら責任も取らない。
文庫本『脳内汚染』には斉藤孝が「解説」を書いている。
「2005年に読んだ中で、最も感銘を受けた一冊、世の中、志を持った書き手がいるじゃないかと興奮した」と書いている。そして、こう書く。
〈現代人は、死とともに退屈を極端に恐れている。とにかくいつでも何か刺激を受けていたい。たえず情報という刺激を浴びていないと我慢ができない。そこで携帯やインターネットで、更新された情報を常に得ていないと落ちつかなくなる。そうなると、目の前に人がいても、きちんと対話しなくなったり、あるいは一人きりの充実した学びの時間がなくなってしまったりする〉
カミュは、人間には直に見つめられないものがある。太陽と死だ。と言っていた。
今は、「死と退屈」なのか。
退屈しないように、電車の中でも、人と話してる時でも、携帯で〈情報〉を得ている。ゲームをしている。
しかし、本当に「情報」か。どこぞの「広告」でしかない。元博報堂の本間さんとはこの辺の話も、じっくりしてみたい。
本間さんには、この『脳内汚染』も読んでほしいとメールした。読んでるようだ。そのうえで、この話をしたい。
阿佐ヶ谷ロフトと、さらに書店で2度、計3回、本間さんとはトークをする。
自民党は選挙でのネット運動を解禁するようだ。ネットをやる人間は自分たちの味方だ、という確信があるからだ。
又、それをもって、〈憲法改正〉へとつなげようとしている。
それにしても不思議だ。20年、30年前は、「自分たちには言論の場がない」と思った人たちによって、〈直接行動〉が行われた。
それによって、マスコミは〈事件〉として報道する。じゃ、何のためにやったのだと人々は関心を持ってくれる。
そんな形で、人々に「自分の考え」を訴えようとした。
それが今日、皆が、「言論の場」を持った。どんな「無名の個人」も、一億二千万人に向かって、〈主張〉を訴えることが出来る。自由な〈言論の場〉が出来た。
それなのに、全体として、どんどん保守化している。
我々の使うツールは、どんどん進化し、革命的に進化しているのに、それを使う人々の脳は、どんどん後戻りし、退化し、「保守化」している。
イデオロギーを持った「右傾化」ではない。そんな〈思想〉なんてない。ただ、劣化し、退化し、汚染されているだけだ。そんな気がしてならない。
だから、「情報ダイエット」をして脳を守り、人間を守る必要があるのだろう。そっちの方の〈自衛〉が最も大切なのかもしれない。と思う。
国民戦線は右だ。さらに、欧州議会でもそうだという。ルペンさん、ゴルニッシュさんは今は、欧州議会の議員だ。
2時半、ゴルニッシュさんと別れて、文化放送へ。文化放送、「寺ちゃん」の「ニュース。本音と建前」は、
〈小池真理子さんが『沈黙のひと』で伝えたかったこと〉
今日のスペシャルゲストは、直木賞作家の小池真理子さんだ。小池さんは26才の時、エッセイ集『知的悪女のすすめ』でデビュー。これは大評判になり、「社会的現象」になった。私も読んだ。それ以来、私はかなり小池作品は読んでいる。
小池さんは、『恋』で直木賞を受賞。『欲望』で島清恋愛文学賞、『虹の彼方』で柴田錬三郎賞を受賞。又、父親の転勤で、高校1年の時、仙台に移り住んだ。ヘルメットをかぶって街頭デモに参加した。又、三女高で制服反対を訴えて、ストライキをやっている。
日に何時間も書店で過ごし、仲間と難しい議論を戦わせ、デモに参加し、高校で制服廃止闘争委員会を結成して闘った。
一方、詩や散文を書き、多感な想いを味わったのも仙台だ。1969年頃というから、私も仙台にいた。右派学生運動から追放され、失意の中で、仙台に帰り、書店のバイトをしていた。どこかですれ違ったかもしれない。…と、仙台の話で盛り上がりました。
小池さんの『無伴奏』や『望みは何と訊かれたら』には、当時の学生運動の様子が書かれている。私もこれは興味深く読んだ。
文化放送では、次に、今日のメイン『沈黙のひと』について。お父さんの看護から話は始まる。小池さんは、「何か不思議な力が書かせた作品で、私にとっての生涯の勝負作だと思う」と言う。私も一気に読んだ。〈父と子〉をめぐる、永遠のテーマであるし、「勝負作」だと言う気持ちも分かった。小説のあらすじは、
〈幼い頃に家を出て、新しい家庭を持った父は晩年パーキンソン病を患い、最期は口を利くこともできなくなった。遺された手紙や短歌から見えてくる、後妻家族との相剋。秘めたる恋、娘である「私」への想い。父の赤裸々な「生」を振り返ることで、生きる意味、死ぬ意味、そして家族という形のありようが見え、物語世界に光が差し込んでくる〉
あっ、このお父さんがいたんで、小池さんという作家が生まれたんだと分かった。ほとんどがフィクションかと思ったが、かなりの部分(それも、きわどい所が)事実だと言う。驚いた。娘を大作家にするために、いい材料を提供し続けたのだ。作家にとっては理想的な父親だ。
じゃ、私も、こうやって書いてくれる娘が欲しい。と言ったら、「今からつくったらいいじゃないですか」と言われた。ミッション・インポシブルだ。
そうだ。小池さんは、三島由紀夫が好きで、一番影響を受けてるという。最も好きな作品は『春の雪』だという。又、高橋和巳も好きだという。その話をもっと聞きたいと思ったが、時間がなかった。残念だ。又、お話ししたいです。
小池さんのお父さんは、朝日歌壇の常連だった。この『沈黙のひと』で、お父さんの歌を載せている。私は、これが好きだ。
プーシキンを隠し持ちたる学徒兵を見逃せし 中尉の瞳を忘れず
これは軍隊でのお父さんの実際の体験だ。この学徒兵がお父さんだったという。実は、小池さんが仙台で高校闘争をやったことは、知らなかった。
去年、「アエラ」で、小林哲夫さんの『高校紛争1969—1970 「闘争」の歴史と証言』(中公新書)を書評した。そこに小池さんのことが出ていた。そして、『無伴奏』を買って読んだのだ。一気に読んだ。
『無伴奏』という喫茶店を溜まり場にして、議論に明け暮れた。実存主義の話を30分出来ると、英雄だった。本を読み、議論をし、デモをし…。熱い時代だった。もっともっと小池さんには話を聞きたかった。
このあとは、「隣りの芸人さん」で、古賀シュウさんとテルさんが登場。シュウさんは、鈴木宗男さんや神取忍さんのもの真似が得意だ。宗男さんの前でやったこともある。「俺より似てる」と言われた。又、テルさんは顔も声も菅直人さん、そっくりだ。写真を見てほしい。ホントに似ている。
文化放送が終わって、新宿で雑誌の取材。
〈歴史(ヒストリー)は物語(ストーリー)である〉の熱い想いが貫かれている。明治維新については、〈武士の「自死」としての革命〉と言う。そして、「幕府は進歩的だったために潰れた」と言う。とても勉強になった。
粕谷さんは『中央公論』の編集長を務め、その後、『東京人』を創刊。現在は評論家。私は、数年前にお会いしたことがある。「風流夢譚」事件について詳しく話を聞いた。その時の話も生徒にした。
「読書会」のあとは、生徒と食事会。だったのだが、私は、車でニューオータニへ。「恵観塾」に出る。池口恵観さんの講話を聞く。恵観さんには去年の4月、北朝鮮に連れて行ってもらった。現在の日朝関係をどう打開するか。について聞いた。
①フランス国民戦線顧問のゴルニッシュさんと2月20日(水)のお昼に会いました。パークホテルです。「欧州議員団」の一員として来日し、日本の国会議員と会い、東北の被災地を回りました。かつて留学していた京都大学も訪ねたそうです。昨年まで、リヨン大学で日本文学を教えていました。
② 木村三浩氏(一水会代表)と3人で。木村氏に連れられて私は、2003年に「フランス国民戦線結成30周年大会」に参加しました。ニースです。又、3年前の「世界愛国者平和会議」には、ゴルニッシュさんは、ルペンさんたちと共に来日し、靖国神社も参拝しました。
③このあと、文化放送に行きました。この日の特別ゲストは直木賞作家の小池真理子さんでした。小池さんは仙台にいたことがあり、三女高で制服反対のストライキをやり、デモにも出てました。その頃の話も、詳しく聞きました。
⑩「会田誠展=天才でごめんなさい」(森美術館)にも行きました。本当に天才です。戦争、玉砕…などをテーマにした政治的アートもありました。「ここだけは撮影OK」と書かれてました。「考える人」かな。「考えない人」だったかな。
⑰おっ!日本赤軍だ。と思いました。だって「JAPAN RED」だ。でも秋田新幹線のポスターでした。紛らわしい。そういえば、日本競馬の人が「JRA」(日本中央競馬会)と書かれた紙袋を持っていて、飛行場で訊問されたそうです。Japan Red Armyに間違われたんですな。
⑱学校に行ったら、こんな派手なポスターが貼られていました。漫才をやった時、土方歳三になり切った時の写真もありますね。吉田剛先生と私の「合同ゼミ」の案内です。でも、「鈴木邦男をぶった切る!」と言ってます。怖いです。どうなることやら…。