久しぶりに「朝まで生テレビ」に出ました。
「10年ぶりですね。いや、15年ぶりかな」と、打ち合わせの時、プロデューサーと話しました。
「そんな昔ですか。テレ朝が新しい建物に移って8年ですよ」
「新しい建物で初めてですよ。だから10年か15年前に出たんですよ。もしかしたら、昭和かもしれませんね」
「そんなことはないでしょう」
…と言ってるうちに、本番が始まりました。
パネリストの打ち合わせは、ほとんどないんです。いくら打ち合わせをしても、どんどん論議が外れて行くから、打ち合わせをやっても意味がないんです。
(注:あとで調べたら、「朝生」は実は7年ぶりでした。そして今回で10回目の出演でした。すみません)
5月31日(金)の「朝生」は第314弾。「激論!大丈夫か?!日本の防衛」。
自衛隊の元幕僚長が2人出る。そして前防衛大臣も。この3人の話・問題提起を聞いて、皆で「日本の防衛」を話し合う。
だったら、かなり具体的で建設的な話し合いが出来るのではないか。議論が噛み合い、さらに将来への展望が生まれるのではないか、と思った。
昔のように、ただ怒鳴ったり、他人の話に割り込んだり…。そういう騒々しいものは、「卒業」してるのだろう。
そう思いましたが、でも昔ながらの〈激論!〉でした。大変でした。日本一過酷な討論番組ですよ。
5月31日(金)の深夜12時、みやま荘にテレビ局の車が迎えに来る。
12時半、到着。それからメークをする。
そして、全員のメークが終わったところで、打ち合わせ。それが15分位。
打ち合わせと言うか、自己紹介。でもないな。司会の田原さんがパネリストを紹介。
「今日はこんな話をしたいけど、どうせ話は他の方に外れるだろうし…」と〈討論案〉を渡す。そこには、こう書かれていた。
討論1. “尖閣問題”と自衛隊
討論2. “北朝鮮問題”と自衛隊
討論3. “これでいいのか。日本の安全保障
確かに「討論1」から始まったが、あとは、この通りにはいかない。
大体、「北朝鮮問題」なんて全く、スルーだ。「朝生」は、いつもは田原さんを囲んでの円卓会議だが、この日は、円卓と少し離して、3人だけ別に座っている。メインゲストのような感じだ。
火箱芳文さん(第32代陸上幕僚長)、古庄幸一さん(第26代海上幕僚長)、そして森本敏さん(前防衛大臣)だ。
この3人の現場トップの報告を聞いて、皆で激論し合う。ということだろう。
他のパネリストは8人だ。
田岡俊次さん(軍事ジャーナリスト)
伊波洋一さん(元沖縄・宜野湾市長)
山口二郎さん(北海道大学教授)
小沢遼子さん(評論家)
ケビン・メアさん(元米国務省日本部長・元沖縄総領事)
山際澄夫さん(ジャーナリスト)
香山リカさん(立教大学教授・精神科医)
鈴木邦男(新右翼「一水会」顧問)
そして司会は田原総一朗さん。番組進行は渡辺宣嗣さん(テレビ朝日アナウンサー)、村上祐子さん(テレビ朝日アナウンサー)
本番前に、初対面の人は名刺交換している。私は、お二人の幕僚長、伊波さん、ケビンさんとは初対面だ。
元陸上幕僚長の「火箱(ひばこ)芳文」さんは珍しい苗字だ。「出身はどこですか?」と聞いたら九州だという。
そこに、小沢遼子さんが来て、言った。「火箱でよかったわよね。火種(ひだね)じゃ大変だったわよね」。
戦争の火種になっては大変だ。でも、苗字は自分で選ぶことが出来ないし。
討論時間は3時間だ。5月31日(金)の夕方からスタッフやギャラリーは集結している。その流れで台本には時間が書かれている。31日(金)の25時25分から28時24分。と書かれている。
28時なんて、こんな時間はない。テレビ局時間だ。正確には、6月1日(土)の午前1時25分から4時24分だ。
私としては、いろいろ言いたいことがあった。2人の幕僚長に聞いてみたいことも沢山あったが、なんせ、喋れない。大声で激論してる中に飛び込んで喋るのは至難の業だ。
だから、喋れなかった。たまに、ちょっと喋っても、すぐに遮られる。だから、断片的なことしか言ってない。
それでなくても、私は誤解されやすいことばかり言ってる。さらに「断片的」だから、もっと酷くなる。
「こいつは、もう左翼だ!」「裏切り者だ!」「これでは右翼が誤解される!」と、右の人は皆、思ったようだ。総スカンだ。「何言ってんだ、こいつは!」「こんなのはもう出すな!」と言われた。
見た人に、「これで日本の全右翼を敵に回しましたね」と言われた。そうかもしれない。
私は45年間、右翼運動をやってきた。憲法改正を訴えてきた。今でも、憲法を見直すべきだと思っている。
しかし今、自民党がやろうとしている、性急で姑息な改憲には反対だ。
96条の改憲条件をまず変えて、「3分の2」から「半分」にするという、いわば「ルール変更」も卑劣だと思う。
又、今の勢いで改憲したら、アメリカの戦争に追随して自衛隊は外に出る。アメリカの侵略戦争に協力させられる。これはマズイ。そう言ってきた。
これは改憲派の小林節さんや小林よしのりさんも言っている。さらに第13条などをいじり、基本的人権を制限し、国民の自由、権利を抑圧しようとしている。
それで「強い国家」を作るという。自衛隊は「国防軍」にするという。
アニメ世代の若者たちも、〈「国防軍」いいじゃん!〉という感じだ。昔を懐かしがる老人たちにも受けている。
この「動き」に対し、アメリカはどう思っているのか。自衛隊はどう思っているのか、聞いてみたかった。
いくら理想的な憲法でも、日本の自主性のない時に、アメリカはこの憲法を押しつけた。
それを今、変えようとしている。アメリカは「嫌」じゃないのか。
あるいは、(結果的には)、国防軍を創り、外に打って出る。アメリカの戦争に協力する軍になる。そう思って歓迎しているのか。
まず、これをケビンさんに聞いた。どうも、改憲の動きを歓迎しているようだ。やはり、そうなのかと思った。
では自衛隊はどうか。自衛隊は東日本大震災の時も命懸けで救援活動をした。「日本に自衛隊がいてよかった」と国民のほとんどは思っている。
昔は「憲法違反だ!」とか「税金ドロボー」とか言う人もいたが、今はそんなことを言う人はいない。「非武装中立」や「有事駐留」を言う人もいない。
「理想」「夢」を誰も語らない。「現実」論だけだ。
自衛隊は必死で頑張っているが、自民党や右派の人たちは、「国防軍」にしようとしている。自衛隊は、激務に耐え頑張っているのに、自民党は不満だ。
そして、他国の軍隊のように、戦争に行く「普通の軍隊」にしようとしている。
「世界の軍隊は皆、アメリカに協力して世界の秩序・平和を守ろうとしている。それなのに、日本は「一国平和主義」でいいのか。と文句を言う。
「戦争をしない」「人を殺さない」「国家は徹底的に守る」…この自衛隊に対して、自民党はコンプレックスを持っているのではないか。
「一国平和」「専守防衛」で国が守れるか!と言う。いつでも戦争出来る国にしなくては…。
それでこそ、「強い日本」になれると言う。自民党の改憲草案を見て、そう思った。
それに対し、自衛隊はどう思うのか。「国防軍」になりたいのか。
私は、そうは思わない。自衛隊員であることに誇りを持っているのではないか。
これだけ国民に信頼され、期待されているのだ。国を守り、外国には出ない。人は殺さない。
これは誇るべきことだ。自衛隊も「自衛隊員であること」に誇りを持っているのだと思う。
そう思った。そう思って、2人の元幕僚長に聞いた。意外にも、2人とも「国防軍」になりたいと言う。
ウーン、そうなのか。でも、幹部クラスではなく、一般の自衛隊員はどうなのか。「自衛隊に誇りを持っているのではないか」。そう聞いた。
「いや、一般の隊員も同じです」と言う。
「キチンと軍隊として認められたい」「外国に行った時も、今のままでは不十分だ」と言う。
しかし、今の憲法下でも、自衛隊はイラクに行った。イラクは「大量破壊兵器を隠し持っている」という理由で、アメリカ(と同盟国)はイラクを攻め、滅ぼした。
しかし、大量破壊兵器はなかった。アメリカの完全な侵略戦争だった。
これからも日本は(国防軍になったら、なおのこと)、アメリカに追随して、侵略戦争に軍を出す。人も殺すだろう。それでいいのか。
三島由紀夫は43年前、「憲法改正」を訴えて自決した。「自衛隊を国軍にしろ!」「自衛隊員よ立ち上がれ!」と叫んで自決した。
しかし、今の自民党のような改憲なら、喜ばないだろう。
三島の「檄文」には、「このままでは自衛隊は魂のない巨大な武器庫になる」という文がある。又、「このままではアメリカの傭兵になる」という一文もある。
自民の改憲では、三島の憂えた「アメリカの傭兵」になるのではないか。そんな気がする。
「朝生」では、そんな話をしたかったが、私の舌足らずで出来なかった。又、怒鳴り散らし、それで「発言権」を確保することも(気が弱くて)出来なかった。
田原さんは、今の憲法では自衛隊を認めてないと言う。
だったら、9条で自衛隊を認めたらいい。
そして「自衛」にだけ、厳密に限定する。海外には出さない。核は持たない。徴兵制はしかない。と、憲法に明記して、〈縛り〉をかけたらいい。あるいは、それを「前提」にして、改憲論議をしたらいい。
それがないと、今の「勢い」のままに改定したら、どこまでもエスカレートする。
「今の若者はだらしがないから、2、3年軍隊に入れろ!」「国民は等しく国を守る義務があるのだから、徴兵制にしろ!」「経済的にも核を持つ方が、安くつく。これさえあれば、どこも攻めて来る国はない」…と、どんどんエスカレートする。「歯止め」がないのだ。
声の大きい人間だけが怒鳴り、又、街では民族差別のデモが闊歩している。
「あれは下品だ」と顔をしかめながら、「でも、中国、韓国は酷いから、あの位のことをやってもいいよな」と納得してしまう。
そして、中国・韓国と闘え!「戦争も辞さず」に闘え!と絶叫する。
しかし、本当に戦争になってもいいのか。
まさかとは思うが、中には、そう思っている人もいる。
又、「そんなことにはならない」と高を括って、「売れさえすればいいから」と、排外主義的な本を出す。量産している。中国、韓国なんか相手にするな!こんな国とは戦争する覚悟で立ち向かえ!と。
愚かな風潮だ。愚かな世論だ。
しかし、そんな思いは「朝生」では残念ながら、伝えられなかった。喋れなかった。私が無力だったからだ。
その点は、いくら批判され、叩かれても仕方ない。
疲れ果て、「朝生」から帰った翌日だった。1冊の本が届いた。6月10日(月)に発売される本だ。その見本誌が届いた。
いやー、驚いた。それに凄い。今の、軽薄な、ただ戦争を煽る本が多い中で、「覚悟」の本だ。「やっちまえ!」「戦争を恐れるな!」と言ってる本は、読んでスカッとする。だから売れる。
しかし、売れさえすればいいのか。出版社の良心はないのか。そういう義憤があったのだろう。
これは出版社の良心・良識を懸けて出した本だと思う。『内心、「日本は戦争をしたらいい」と思っているあなたへ』(角川oneテーマ21)だ。781円だ。
本の帯には、こう書かれている。
〈是か非か!?国防軍、改憲、武力衝突〉
〈各界の識者が緊急提言!日本が今すべきこととは!〉
〈相次ぐ領土問題、外交問題に日本人はどのように対処するべきか。国防軍創設を標榜し、改憲へ舵を取る政治のあり方は是か非か。長期的視野に立ち、各界の第一人者が緊急提言する!〉
今の言論界に警鐘を乱打する企画です。勇気のある新書です。書いてる人は8人です。何故か私も頼まれて書いてます。
こうした企画に参加出来、光栄だと思っています。誇りです。では、8人のタイトルを紹介して、終わりにしましょう。
○はじめに
○軍事衝突が現実化すればどうなるか 保坂正康
○中国の領海侵犯には、「責任ある平和主義」で対処せよ 東郷和彦
○中国共産党の現実と、そのアキレス腱 宮坂聰
○これからの世代が考える「あたらしい国」 宇野常寛
○安倍政権の外交面、軍事面の課題 江田憲司
○エセ愛国はなぜはびこるのか? 鈴木邦男
○メディアに生まれている奇妙な潮流 金平茂紀
○危うい主権喪失国家、民主主義の成熟度問う沖縄 松元剛
⑬6月1日(土)午後6時、調布で、「畑中純を偲ぶ会」。この日の早朝、4時25分に「朝生」は終わって、控え室で、打ち上げ。ビールを3杯飲みました。
伊波さんは昼の飛行機で沖縄に帰り、仕事だと言ってました。山口二郎さんも昼の飛行機で札幌に帰り、仕事だそうです。つまり、一睡もしてないのです。凄いです。
私は局の車で送ってもらい、6時頃、みやま荘に着いて、すぐ、寝ました。昼から打ち合わせがあって、出かけて。
6時、調布です。漫画家の畑中純さんが亡くなって1年です。62才でした。若いです。残念です。最後に会った時、「三島由紀夫を描きたい」と言ってました。楽しみにしてたのに。夫人の畑中真由美さんが初めに挨拶しました。
ちばてつやさんを初め、漫画家の挨拶がありました。私も挨拶しました。
⑰山口昌男さんの奥さん(右)と。山口さんは先頃亡くなられました。葬儀に行きました。元武蔵野美大の立花先生が言ってました。「山口さんが鈴木さんと対談したいと言ってた」。
光栄です。お話を聞きたかったです。残念です。山口さんは多方面に関心があり、いろんな人と会っていた。「いつ原稿を書いてたんですか」と奥さんに聞いたら、「ともかく少しでも時間があると書いてた」と言います。「電車の中でも書いてた」。
エッ?と思ったら、「写生用の画板を首から下げて、その上で原稿を書いてた」と言います。凄いですね。
⑱「偲ぶ会」の会場には、畑中純さんの赤ん坊の頃からの写真が並べられてました。これは、17年前、横浜の個展の時らしいです。
右が畑中純さん。隣りが呉智英さん。そして私。その横は、畑中さんのご両親。貴重な写真なので、私のデジカメで撮りました。
⑳6月2日(日)橋本明さん、松平恒忠さん、光永勇さんの「合同祝賀会」に出ました。午後4時、赤坂の「カラカラ」です。
喜寿を祝う松平恒忠さんと。松平さんは日本航空出身。フィンランド政府からコマンドール獅子十字勲章を贈られた。日本フィンランド文化交流協会会長。会津正流。母君が徳川宗家のご出身。次弟の常孝氏が徳川第18代。松平恒忠さんは会津の殿様です。
「この前、会津若松に行ってきました」と話をしました。「母親は会津坂下です」と言ったら、「バンゲですか!じゃ、我々は同じ会津人ですね!」と握手されました。会津の殿様から声をかけられたんだ。薩長と闘わなくっちゃ。会津に助っ人に行った新選組の土方歳三の気分ですね。
㉓橋本大二郎さんと。元高知県知事。今は、早稲田と慶応で教えてます。「今度、ゆっくり対談しましょう」と言ってました。元首相・橋本龍太郎さんの弟さんです。又、この日出席している橋本明さんとは従兄弟になります。
㉔「iPS細胞」騒動の森口尚史さんと。6月4日(火)午後8時から、ニコ生で対談しました。でもこの日はサッカーです。「じゃ、サッカーを見て、日本を応援して下さい。このニコ生は予約して、あとでゆっくり見て下さい」と森口さん。親切だ。愛国者だ。