「年の瀬」という感じがしない。立ち止まって、この1年を振り返る、という余裕がない。激動の日本、激動の世界だ。
そんな時、12月末で、〈流れ〉を断ち切って、整理し、この1年を考えるなんて意味があるのだろうか。とも思う。
北朝鮮では№2の張成沢さんが逮捕され、即、処刑された。怖い話だ。こんな形で国内を引き締め、強い国家を示そうとしている。
これほど強硬ではないが、国内の不安、「外国の脅威」を理由に国内をまとめようとするのは、他の国も同じだ。
中国、韓国は日本を批判し、「反日」教育をし、日本の悪口を世界中に言いふらしている。という。
だから、日本は「倍返し」「10倍返し」をするんだ!とばかりの日本だ。ヘイトスピーチ以上に酷い月刊誌、週刊誌、そして単行本だ。理性を失っている。
「中国、韓国はもう相手にするな!」「国交断絶しろ!」「戦争も辞さずの覚悟を!」…と絶叫している。日本中がヘイトスピーチをやっている。日本中が「黒い街宣車」になっている。
それを見て、「いいね」「いいね」と思う国民。ただの絶叫を聞いて、「その通りだ」と思い、「満足」し、気分がすっきりする国民。明らかに劣化しているのだ。
日本を取り巻く情勢が厳しいのは事実だ。産経新聞(12月21日・土)の「産経抄」では言う。
〈代替わりした中国と韓国のトップがいろいろとやってくれた一年でもあった。中国の習近平国家主席が防空識別圏をつくれば、韓国の朴槿惠大統領は、安倍晋三首相と会おうともせず、行く先々で日本の悪口を言い募った〉
問題なのはこの次だ。こう言う。
〈御両人とも「嫌日家」ぶりを遺憾なく発揮してくれたが、おかげで中国や韓国に幻想を抱いていた日本人をめざめさせてくれた。一昔前なら国会に提出できたかどうかも怪しい特定秘密保護法が、大した抵抗もなく成立したのも御両人と北朝鮮の3代目のおかげである〉
ウーン、と唸りましたね。「大した抵抗もなく」と言われちゃったよ。あれだけ反対運動があったと私は思ったのに。
国会前では連日、デモがあったし、私も行った。又、いろんな新聞でも反対の声は大きく出てた。「朝日」では私も発言した。テレビ、ネットでも反対意見は多かった。
それなのに、「大した抵抗もなく」成立した。「こんなに反対デモに人が集まっているのに法案は通るんですよね」とデモに来た人たちは言っていた。
そうなんだ。それは、中国、韓国、北朝鮮のリーダーの「おかげ」なのか。
じゃ、日本の保守派の政治家・マスコミは、この3人に感謝しなくてはならない。何なら、3人を讃え、「国際栄誉賞」をあげたらいい。
北朝鮮は大国アメリカを向こうに回し、一歩も引かない。妥協もしない。
でも日本向けの「発信」は下手だ。過激なことばかりを言い、挑発する。
拉致問題を含め、北朝鮮と話し合おうとしてる人々もこれでは言いづらい。北朝鮮と仲良くしようとする人々をも「葬り去ろう」としているかのようだ。
〈喧嘩腰一辺倒では、ますます孤立する〉。北朝鮮を理解し、仲良くしようと言っている人々をも切り捨てることになる。宮崎学氏と対談した時、このことを聞いた。
宮崎氏は、「かえって外国から批判されることを敢えてやってるんです」と言う。
つまり、北朝鮮は外国の「融和論者」を切り捨て、わざと孤立化している。自分で〈外圧〉を作り、その〈外圧〉があるから、国はまとまる。皮肉な話だ。
日本に対しても、わざと挑発する言動をする。
それに日本が乗っかって、「北朝鮮は許さん!」「戦争だってするんだ」と、勇ましい声が日本中で溢れている。北朝鮮では、それを見て言う。「ほら見ろ、日本は我々の国を潰そうとしている」と。
周りの国も皆そうだ。「北朝鮮がまとまり、団結し、存続する」ことに日本は最大限に協力しているのだ。韓国、中国にもおなじことが言える。
「産経抄」の言うことは意味深い。一昔前なら、とても国会に提出出来ないような、いいかげんな法案が「大した抵抗もなく」通ってしまった。中国、韓国、北朝鮮のリーダーのおかげだ。
声高に、口汚く「反日」を言う。
だから、国民は「危ない」「もっと日本は強くならなくては!」と思う。
「個人にだって暴かれたくない秘密がある。国家だってある。だから特定秘密保護法は必要だ」…と思ってしまう。韓国、中国が日本に攻め込もうとしている。守るために強力な軍備が必要だ。憲法も改正しなくては…と思う。
「国民の個人的な不安を煽り、それを対外的な憎しみに転化させる」。そのことによって、自国の政権の維持・強化をはかる。
皆、同じなんだ。中国も、韓国も、北朝鮮も、そして日本も…。
出かけて行って、話し合い、喧嘩し、一致点を探す気がない。そんな勇気がない。
中国、韓国、北朝鮮に出かけても、すぐには「解決」出来ない。そうすると、「何だ、丸め込まれて!」「売国奴!」と非難される。
それよりは、国内にいて、「中国、韓国は許せん!」「戦争も辞さずの覚悟を持て!」と絶叫してる方がいい。「安全圏」で吠えているだけだ。
それが「愛国者」だと思われるから空しい。
今、『通販生活』(2014年春号)が届いた。1月中旬に店頭に出るらしい。
巻頭は菅原文太さんだ。「山椒言」で、こう書いている。
〈日本人はアジア人。
アジアの隣国同士が融和して、EU(欧州連合)ならぬAU(アジア連合)をつくる方向へ進むべきだよ〉
凄いね。こんなことを言えんのは文太さんだけだ。こんな提言を載せられるのは『通販生活』だけだ。勇気がある。
いいね、今、アジアの国々はそれこそ「憎しみ合い」の中にある。それをエスカレートさせることで、自国をまとめようとしている。アジア中が「連合赤軍化」している。
そんな中で、これだけズバリと、「理想」を語れるのは凄い!
又、「緊急特集」では、こう言う。
〈「憲法九条」を解釈で破壊してしまう安倍内閣の「集団的自衛権の行使容認」って、あまりに横紙やぶりじゃないですか〉
これも勇気ある特集だ。枝野幸男さん、半田滋さん、孫崎享さんが書いている。
枝野幸男さん(民主党)は言う。「安倍内閣による解釈改憲は『立憲主義』の破壊。憲法が政権の暴走を止められない状況です」。
半田滋さん(東京新聞論説・編集委員)は言う。「集団的自衛権の行使が容認されれば、自衛隊が戦闘部隊として「アメリカの戦争」に参加することになるのです」。
孫崎享さん(外交評論家)は言う。「アメリカ一辺倒の安全保障政策から、アジア各国と連携した『戦争をしないための仕組み』づくりへの転換を」
いいですね。3人とも。そして、その理由を詳しく説明している。
これは『通販生活』だからこそ出来たことだ。もし、テレビだったら、こうした冷静な話は出来ない。
「何言ってんだ。中国、韓国が攻めてくるぞ!」「北がミサイルを撃ってくるぞ。どうするんだ!」「そうだ、やり返せ! 10倍返しだ!」「戦うのが怖いのかよ、腰抜けめ!」…と「激論」になる。
わざと、議論が荒れ、メチャクチャになるようにする。
そして、「面白くする」。『通販生活』のような冷静な議論は、多分、週刊誌、月刊誌でも出来ない。新聞でも難しい。
『通販生活』は、売れている。100万部も出てる。
だから、いろんなことを気にしないで、思い切った特集を出来る。これは凄いですよ。
そうか、何で、私のところには早く届いたかだ。実は、私も書いているからだ。
「集団的自衛権」について、じゃなかったな。別の特集だ。「大変だけど…愉快な明るい入院生活」だ。
宍戸錠、ヤマザキマリ、スギちゃん、柴田理恵、松崎菊也、そして私が書いている。
「えっ、お前、入院したことあんの?」と思われるかもしれない。
大人になってからはない。右翼運動や柔道、合気道という「格闘技」をやってたから。
でも、子供の時、小学生の時に1ヶ月以上、入院してたんですよ。それも盲腸で。
普通なら、3日位で退院なのに、何故?「1日遅れたら、もうダメでしたね」と医者には言われた。
なぜ、そんなギリギリまで病院に行けなかったんだろう。その謎に迫ります。この時の〈体験〉が、今の私を作ったんです。〈思想〉を作ったんです。
あっ、孫崎さんの提言についてだ。戦争をしない仕組みはいいですね。
じゃ、来週、孫崎さんと対談する時に、その話を中心にしよう。
孫崎さんとは何回か話をしている。じっくりと話している。同じ年だし。
だから、2人とも鳥肉を食べられない。アメリカに対しても同じだ。子供時代の「憧れ」と「反撥」がある。そういったアンビバレントな対米観を中心に話をしている。
どこかに発表されるんだろう。「ニコ生」では、すでに3回ほど放送したけど、次は、12月27日だったかな、28日かな。
もう年末も何もないね。
クリスマスの24日は、亡くなった人に取材して原稿を書けと言われた。そして1月の5日にメールで送れという。でも、亡くなった人だから対談出来んよ。だったら、お墓に行って、質問して来い。という。すげー企画だな。
他に、単行本のゲラが明日来る。26日までに見て、送り返せという。
あと、1月4日〆切の原稿もある。単行本も何冊か、抱えてやっている。能力以上のことを引き受けてしまうから、苦労している。年末にラジオとテレビの仕事もある。
「でも2013年から2014年にかけて足かけ2年もあるから大丈夫でしょう」と言われた。
「足かけ2年」か。そんな言い方もあったな。今じゃ死語だよ。
去年も、年末・年始は忙しかった。家に閉じこもって原稿を書き、校正をやっていた。今年はさらに多い。
でも、ありがたいですよね。こうして仕事があるということは。と思って頑張りましょう。
ではいいお年を。あれっ、もう一週あったかな。
そうだ。猪瀬さんは残念でしたね。史上最高の得票を得て都知事になったのに。オリンピックだって誘致したのに。本当にご苦労さまでした。
それと、脱原発首長会議の話を書こうと思ったんだ。又、森ビル株式会社の特別顧問の渡邊五郎さんに会った話。又、阿佐ヶ谷ロフトで「黒子のバスケ」の話をして、「逮捕は時間の問題だよ」と『創』の篠田編集長が言ったら、その直後、「犯人逮捕!」の速報が。
「今は防犯カメラがどこにでもあるし、性能もいい。だからグリコ森永事件や赤報隊事件は、今だったら完全に捕まっていましたね」と篠田さん。
そうか。赤報隊では私は犯人と疑われたし、大変だった。
「でも、捕まってたら容疑が晴れて、かえってよかったんじゃないの?」と言う人もいる。
ウーン、難しい。そうも言えないとこがある。これもいつか書いてみよう。とりあえず、来年のテーマだね。
1月の中旬には、『通販生活』が出るし、1月末には坂本龍一さんとの対談本も出る。「金曜日」から。あと、西宮ゼミの報告集(vol.3)。札幌時計台シンポジウムの報告集も出る。
そして、2月に出る本もある。今、必死でやっている。
そうだ。「黒子のバスケ」の脅迫犯人だけど、逮捕され、手錠を掛けられ、でも笑っている。
新聞には、「ニタニタと不敵に笑っていた」と書いてたけど、テレビで見ると、心から笑っている。「ニコニコと笑っている」。
でも犯人だから、「ニコニコ」とは書けないのか。不思議だ。「捕まったけど、やるだけやった」。という満足感なのか。ゲームか、格闘技をやって、力の限り闘い、負けた。「参りました」と言った表情だ。
又、最近、人を殺して捕まった人でも、「やるだけやった! 思い残すことはない」といった、「満足感」を顔に浮かべている人がいる。これも不思議だ。
中島岳志さんは、血盟団、朝日平吾というテロリストのことを書いている。秋葉原事件の青年のことも書いている。皆、「煩悶青年」として書いている。
じゃ、今の不思議な笑いを浮かべている犯人たちのことも書いてほしい。私も書いてみたい。
来年は又、不思議な年になりそうだ。不思議大好き、というコピーがあったな。
夜は、打ち合わせ。
そのあと、鈴木寛さん、堀潤さんたちのシンポジウムがあるが、次の予定があったので私は中座する。
午後7時からザ・リュクス銀座で、「週刊アエラ」の忘年会。山田厚史さん、グッチーさん、田岡俊次さんなどに会いました。例年のようにビンゴ大会。ロボット掃除機を当てようと祈ったが、当たらなかった。悔しい。
③第1部は河野太郎さん(衆議院議員)の講演でした。「原発事故の政府の最新状況—汚染水問題等」。冒頭、「保守派の脱原発です!」と挨拶。
久しぶりにお会いしました。「僕も保守派の脱原発です」と言いました。「僕も…」「私も…」と皆が言ってました。
④阿部知子さん。三上元さんと。「浜名湖西岸の都・湖西市市長」と三上さんの名刺に書かれてます。
名刺の裏には、「東海道五十三次 白須賀汐見坂」の絵が。そして、こんな解説が。
〈明治天皇が初めて太平洋をご覧になったところ。しかし、この時代、太平洋はさまざまな呼称で呼ばれており、随行した木戸孝允は「尊大洋」と呼んでいます〉
これは知りませんでした。この話を、あとでじっくり聞きました。
⑭私は昔、小学生の時、秋田にいたんです。その時、「なまはげ」に襲われ、とても恐い思いをしました。それがPTSDになって、右翼になったんです。60年ぶりにその「なまはげ」に会ったんです。子供の時の恐怖が甦り、思い切り泣き叫んでしまいました。
そばの箸で突き刺そうと思いました。「正当防衛」です。でも、一緒に行った皆は笑ってました。「集団的自衛権」を行使してくれません。
⑱イルカと泳いでる映像が紹介されました。私も利島に行って、イルカと一緒に泳いだんですよね。ロクに泳げないのに、ダイビングの特訓を受けて。
海は怖かったけど、きれいでした。感動しました。イルカとも出会えて幸せでした。
㉒12月18日(水)。午後7時より芳林堂で「杉山卓男さんのトーク」があったんですね。「布川事件冤罪被告人が語る冤罪のカラクリ」。
その後、9時から、「土風炉」で打ち上げ会。私は、打ち上げ会だけに呼ばれました。左から2人目が杉山さんです。
㉔山田厚史さん、グッチーさんと。グッチーさんは前の本が30万部。そのあと出したのは、「たった5万部しか売れない」と言ってました。今度出すのが30万部売れたら、皆にボーナスを出す!という。「オラもボーナスほしい!」とすり寄りました。