8月2日(土)の「生誕祭」は大盛況でした。ありがとうございます。
多くの人たちが来てくれました。多くのスタッフが手伝ってくれました。多くのゲストの方が出てくれました。
いい年をしたオッサンの「お誕生日会」になんか、誰が来るもんか。と心配でしたが、何と100人以上の人か来てくれました。
感謝感激です。それも、遠方から来て下さった人も…。名古屋の岩井さん、姫路の飛松さん、長野の平田竜二君。北海道からは柏艪舎の可知さん。高橋夫妻。
それに何と、ドイツからは渡辺真也君が来てくれました。ドイツの大学で教えてますが、一時帰国するにあたって、この生誕祭に合わせて来てくれました。7月31日(木)の森村泰昌さんの美術展でも会いました。
当日、8月2日は阿佐ヶ谷は、七夕祭りでした。そのにぎやかな中を阿佐ヶ谷ロフトに向かいました。
午後1時開始なので、12時に行きました。スタッフの白井さん、レーニンさんたちはもう来ていました。
当日、阿佐ヶ谷ロフトの入口には、こう書かれてました。「第5回。鈴木邦男生誕100年祭」。あれっ、もう5回なのか。と、ビックリしました。
初め、阿佐ヶ谷ロフトでやって、そのあと、新宿のロフトプラスワンでやって、そして、今年が3回目かと思ってました。ところが5回目なんですね。
そうだ。若松孝二監督にも来てもらったことがあったな。「次は白虎隊を撮りたい」と言っていた。幕末の日本と今を重ね合わせて、時代を撃つ映画を撮ろうとしてたのだ。又、原発の映画も撮りたいと言っていた。
来年の生誕祭では5年分のハイライトシーンを上映しよう。
じゃ、今年の生誕祭の報告だ。ロフトで出している雑誌『Roof top』では、生誕祭をこう紹介していた。
〈「今年で5回目!
鈴木邦男生誕100周年祭!」〉
多彩なゲストとともに「時代の真実」を鈴木邦男先生に聞く! 憲法はどうなの? 集団的自衛権。もしも三島由紀夫が生きていたら? 右翼は民族差別にどう向き合うのか? 邦男先生は、本当に左翼になったのか?〉
ほう、面白いですね。これが生誕祭のコンセプトなんですね。うまい文章ですね。最後の「本当に左翼になったのか?」も、いいですね。
そして「出演者」が紹介される。(この人たちは皆、来てくれたので、そのまま当日の「報告」になりますね)。
〈【出演】
鈴木邦男
【口開け】
岡大介(歌手)
【ゲスト(予定)】
塩見孝也(元・赤軍派議長)。植垣康博(元・連合赤軍)金廣志(元・赤軍派)。飛松五男(元・兵庫県警)。徐裕行(元・オウム真理教事件関係者)。さかはらあつし(映画監督・作家。地下鉄サリン事件被害者)。篠田博之(月刊「創」編集長)山口祐二郎(憂国我道会。男組。しばき隊)。平野悠(ロフト席亭)。
【スペシャルゲスト(予定)】
上祐史浩(元・オウム真理教幹部。「ひかりの輪」代表)。
今井紀明(NPO法人D×P共同代表)〉。
この人達は全部、来てくれた。予定の人も含めて全員だ。
大きく2つのコーナーに分けた。第1部は「オウム真理教事件」。
第2部は「連合赤軍事件」。
そこに関係した当事者たちを壇上に上げ、生々しい証言、反省を聞く。そして、今なお残る謎について話す。
この2つの事件は、戦後日本が体験した最も残忍で、悲惨な事件だ。もっともっと語られ、教訓化されなければならない。
上祐さんは、あの事件を最も詳しく語れる人だ。
徐裕行さんは、「私はオウム関係者ではない!」と言っていた。「だから“事件関係者”だと書いてます」と主催者は弁明。
オウムに怒った徐さんは、オウム本部前で待ち構えていて、村井幹部を刺殺した。そして12年の刑を受け、今は出所している。「本当は上祐さんを殺したかった」と言っていた。
そして、徐さん、上祐さん、それに私も入れて、『終わらないオウム』(鹿砦社)という本を作った。
さかはらさんは、サリン事件の当日、被害に遭った。今、その映画を撮っている。又、上祐さんとも対談し、本を作ろうとしている。
そうだ。この8.2の前日、公安調査庁は「アレフ」と「ひかりの輪」の強制捜査をやった。
そのことがあって、「今日は、上祐さんは来れないでしょう」という噂が流れた。主催者もそう思った。
ところが、無理を押して、上祐さんは来てくれた。上祐さんと私はこれから又、大阪ロフト、札幌時計台でトークをやる。又、別の角度から質問をし、話し合ってみたい。
「8.2」の第1部は、オウム。第2部は「連合赤軍事件」についてだった。
塩見孝也さんは、20年の獄中生活を送って出獄し、今は駐車場の管理人だ。闘う労働者だ。その闘いをまとめた本を今度出す。
植垣康博さんは、『兵士たちの連合赤軍』(彩流社)で、事件のことを詳しく書いている。
又、連合する前は赤軍派にいて、「資金調達」を担当していた。つまり、「マネー作戦」だ。全国の銀行、郵便局を狙って、襲撃し、金を奪ったのだ。
連合赤軍に参加してからも、「総括」に積極的に参加。9人の「殺害」に参加している。そして何と26年間も刑務所で過ごした。
今は静岡市でスナックをやっている。美人の奥さんと、小学生の息子さんがいる。
今井紀明さんは、10年前、イラクで「人質」になった人だ。あの時の3人の人質の1人だ。
目がパッチリしていて特徴があるので、今でも町を歩いていて、いきなり、「あっ!人質!」と言われることがあるという。
今井さんは「オウム関係者」ではないし、「連赤関係者」でもない。でも、宗教を信じるあまりに人質にされた。「宗教による被害者」だから、「オウム」の方に入って下さいよ、と言われていた。
篠田さん、山口氏は、両方を見て来たので、両方に出てもらった。
上祐さんは、第2部にも居てもらった。元赤軍派議長の塩見さんが、「上祐さんは凄い。鈴木君とは違う。ぜひ、話をしたい」と言うので、残ってもらったのだ。
『終わらないオウム』を読んで、「上祐さんは偉い。大日本帝国の闘い、崩壊とオウムの闇、闘い、自滅を比較して、述べている。歴史的、科学的分析が鋭い。鈴木君にはそうした視点がない。『連合赤軍は新選組だ!』などと浅薄なことしか言ってない」…と、上祐さんを絶賛。それを受けて、塩見vs上祐対談が第2部の中心になった。
又、第2部では同じ「連赤関係者」の中でも、激しい内ゲバがあった。
塩見さんの話に対し、植垣、金さんが猛然と反論したのだ。会場も緊張した。
でも、いいことだろう。連合赤軍事件は〈全て〉が終わった。継承している運動体はいない。だからこそ、40年前の〈歴史〉として激論出来るのだ。
オウムの場合は出来ない。事件は終わったが、そのあと「アレフ」と「ひかりの輪」が出来た。両者がここに一緒に出席し、激論することは出来ないだろう。
サリン事件は〈歴史〉にはなってないし、まだまだ尾を引いている。
この日も、地下鉄サリン事件の被害者のさかはらさんが来てくれた。あの日の生々しい体験を話してくれた。
歴史から学ぶ前に、まだまだ今の体験から学ぶことがあるのだ。
私も、体験してないこと、やれなかったことが沢山ある。それらの体験を聞くことは、本を読む以上に、学ぶことだ。そして追体験出来る。
オウムと連合赤軍。極限状況だ。実際に見てみたかったと思う。人間の集団が暴走し、狂気が支配する世界。戦争の時もそうだったのだろう。
戦争も70年経った。体験者がどんどんいなくなる。そうすると〈体験〉抜きの、きれいな、透明な〈歴史〉になる。
悲惨だ、残忍だ、大変だ…と言われても、その言葉がイメージの喚起力がない。
それどころか、そこに〈物語〉や〈まとめ〉〈教訓〉を付け加える。そして映画、テレビ、小説になる。
「あんな悲惨な時にも、〈愛〉があった」「あんな地獄の中でも、男の勇気が試された」…と。つまり、〈愛〉や〈勇気〉や〈誠実〉の物語を際立たせるために、その背骨として、戦争が使われているのだ。
だから、〈戦争〉は伝わらない。反省されない。
「戦争の悲劇を二度と繰り返してはならない」という言葉も、何やら虚ろに響く。
逆に、中国、韓国に対して、「戦争も辞さずの覚悟で交渉しろ!」などと言う人が増えている。無責任な連中だ。
戦争の〈体験〉がないから、こんなことが言える。韓国、中国と闘うために、「強調の言葉」として〈戦争〉は利用されている。
「もはや戦後ではない」と言う。では今は、「戦前」なのか。〈戦争直前〉であることを欲しているのか。
生誕祭の4日後、8月6日(水)には、「軍歌・戦時歌謡について考える」集会に出た。
日本では何と千曲以上の軍歌が作られた。そして、戦争を煽った。名曲もあったが、下らない曲も多かった。
今の日本を見ると、「下らない曲」が流れている。政治家や、好戦的な保守派、ネトウヨ。そして、書店にあふれる反中・反韓の下らない本。
これらは、まさに、「戦争を煽る曲」ではないか。そんなことを感じた。このことは又、ゆっくりと考えてみよう。
8月2日の生誕祭の話に戻す。
当日は、極限状況を体験し、生き延びた人たちから貴重な話を聞いた。
上祐さんとは、これからも、大阪ロフト、札幌時計台…とトークをする。
又、本も作りたい。植垣さんとも本を作りたい。連合赤軍事件のことだけでなく、その後の生活、そして、日常に潜む危険、対処法、生き方などについても聞いてみたい。
これだけの体験をした人だ。人間国宝にしてもいいし、世界遺産にしてもいい。静岡のスナックの店主として、酔っ払いの相手をさせておくなんて惜しい。国家の損失だ。
当日、植垣さんが言っていた。「鈴木さん、僕のところにも民生委員が来ましたよ」。
えっ、70才以上の人に来るんじゃないの。「いや、静岡は65以上らしいよ。独居老人が、ちゃんと生活してるかどうかを調査に来たんですよ」。
でも、植垣さんは、中国の美人の奥さんと結婚している。かわいい小学生の男の子もいる。(いい男で、同級生の女の子にもてるらしい。ラブレターももらっている)。だから、「独居老人」ではない。
それを聞いて、周りの連赤仲間が冷やかす。「結婚を届けてないんじゃないの」「籍を入れてないんだろう。国家権力になんか届けるか!と言って」。
でも、子供は学校に行ってるし、ちゃんと届けているはずだ。「じゃ、奥さんが籍を抜いたんだよ」。
そんなはずはない。単なるミスだ。ともかく、「独居老人が、ちゃんと生きているかどうか」を調べに来た。
そして、「1人で買い物に行けますか?」「お話をする友達はいますか?」「この2週間に、電話した友達がいますか?」と聞いたという。
舐めた話だ。「言ってやれよ。俺を誰だと思ってんだ!と」。「爆弾を作ったり、銀行強盗をしたり。又、山の中では、9人の殺害に参加している。“殺しの植垣”を知らないのか!と言ってやれよ」と。昔の連赤仲間は言う。
しかし、民生委員も勉強不足だ。こんな有名な植垣さんを知らないのか。調査するんなら、せめて、こう聞けよ。
「1人で爆弾投げられますか?」「1人で銀行強盗出来ますか?」「昔の悪い仲間から誘いがありませんか?」…と。
民生委員にしたら、たとえ、どんな人でも、一律に、平等に聞き込みをしてるのかもしれない。
昔は、人間や家畜を襲っていた「人喰い虎」が、村の人々を恐怖のどん底に叩き落としていた。でも今は、その虎も老い、そして、「絶滅危惧種」にされている。それで、今度は、人々は何とか〈保護〉しようとしている。そんなことかもしれない。
だったら、連合赤軍の残党や、オウムの残党は、「絶滅危惧種」に指定したらいい。昔は危なかったけど、今は、反省し、謙虚に生きている。再びあの悲劇が起きないように語り、訴えている。「人間国宝」「世界遺産」にすべきだろう。
そうか。来年の「生誕祭」は、それをスローガンにしてやってみるか。
これで「8.2生誕祭」の報告は終わりだ。来て下さった100人以上の皆さん、本当にありがとうございました。
名古屋、札幌、大阪、ドイツ…と遠い所から来てくれた人がいました。又、花束、お菓子など、沢山頂きました。ありがとうございました。
それに今、「Roof top」を見ていたら気付いたけど、結構高いんですね。入場料が。チャージっていうんでしょうね。
ローソンなどで申し込むと前売りで2100円。当日だと2300円だ。それに、「共に飲食代別」と書いている。じゃ、当日、ビールやジュースを飲み、枝豆をとり、そして、チャーハンなどを食べたら、5千円近くなる。
それだけのお金を使っても見たいと思って来てくれたんだ。本当に申し訳ないです。ありがたくて涙がこぼれます。
さらに、二次会、三次会にも付き合ってくれた人が沢山いた。随分、お金を使っただろう。札幌から来た人なんて、さらに一泊する。
申し訳ないですね。感謝感激です。これから、私で出来ることは何かの形でご恩返しさせて頂きたいと思います。本当にありがとうございました。
生誕祭は、終わってからも、二次会、三次会と続き、楽しかったです。
急いで付け加えると、翌、8月3日(日)、練馬区立美術館に行って来ました。〈「あしたのジョー」とその時代展〉です。
44年前、「あしたのジョー」と力石徹が闘って死に、その葬式を寺山修司が行いました。それを「再現」するといいます。これはぜひ見なくてはと思ったのです。
44年前に弔辞を読んだ昭和精吾さんが再び、弔辞を読みました。
「よど号」をハイジャックした赤軍派の人は、「われわれは、あしたのジョーである!」と言って飛び立ちました。
そのハイジャックを見て、三島由紀夫は感動します。「あの日本刀による決起がいい」と言いました。そして、半年後、三島事件が起きます。
これに衝撃を受けて、一水会を初めとした新右翼が生まれます。
そう考えると、「全て」の原点は「あしたのジョー」です。そんなことを痛切に感じました。
三島も「あしたのジョー」は毎週欠かさず読んでたといいます。そんな話も出てました。
〈「あしたのジョー」とその時代展〉は、9月初めまで、やってますので、ぜひ見たらいいでしょう。
600人入る館内が満員。私が行った時は、「立ち見も全て、売り切れです。入れません」と言われた。「主催者の御手洗さんの招待です」と言って、やっと入れた。
シンポジウムの最後に、パンタさんと私も登壇させられ、挨拶した。おしどりさんや、レーニンさんたちも来てたので、
終わって、近くで食事。
私は夕方から「軍歌の集い」がある。「じゃ、僕も連れてってよ」とパンタさん。又、フランス問題に詳しい及川健二氏も一緒に行く。
午後6時半より、池袋の自由学園明日館講堂。とてもいい場所だ。札幌の時計台ホールと似た趣きがある。
そこで6時半から、「音楽寺子屋」。今年のテーマは「軍歌・戦時歌謡とその時代」。
出演は、白井伸幸さん(元ビクターレコードディレクター)。『鶴田浩二・同期の桜』、『軍歌戦時歌謡大全集』を作った人だ。
戸ノ下達也さん(近代日本音楽史研究家)。『音楽を動員せよ』『総力戦と音楽文化』などの著書がある。そして私の3人だ。司会進行は坂元勇仁さん。
始まる前、パンタさんを白井さんに紹介したら、「あの時はお世話になりました」。昔、白井さんがパンタさんの歌をレコーディングしてくれたんだそうな。
歌詞に「ブル新」(ブルジョア新聞)とあって、社の人は、「こんな新左翼用語はダメだ」と言った時、白井さんが庇ってくれたという。「いや、これは、ブルーバードの新車の意味です」。これで企画が通ったという。そんな感動的な話もありました。
白井さん、戸ノ下さんは軍歌のことは全て知っている。とても勉強になりました。終わって、打ち上げ。
①「第5回。 鈴木邦男生誕100年祭」が8月2日(土)午後1時より、阿佐ヶ谷ロフトで行われました。100人以上の人が駆け付けてくれ大盛況でした。
トップは岡大介さんの演歌です。朝日新聞でも大きく取り上げられた。社会批判性の高い演歌です。素晴らしかったです。
②第1部は「オウム事件」です。関係者が集まりました。(左から)司会の白井基夫さん。鈴木。上祐史浩さん(元・オウム真理教幹部。現・「ひかりの輪」代表)。元「人質」の今井紀明さん。オウムの幹部を刺殺した徐裕行さん。地下鉄サリン事件の被害者のさかはらあつしさん。
⑦第2部は「連合赤軍」ですね。「これはよかった! 上祐さんは凄い! わかってる」と塩見孝也さん。『終わらないオウム』を手に取って絶賛してました。
右・金廣志さん、飛松さん。塩見さんの左は上祐さん、鈴木、植垣さん。
㉘羽仁もと子さんの造った自由学園の講堂なんです。自由学園は他に移転しましたが、この趣きある講堂はここに残ってます。札幌時計台ホールに似ています。窓だって、木の桟が入り、とてもお洒落です。そこで、お洒落な美女と撮りました。お洒落な窓の下で。
それから、みんなの党に移って、都議に当選するわけです。
今回の事件は大変な災難でした。でも、冷静に対応していたし、政治家として、グンと大きく成長したと思います。これからの活躍に期待します。頑張って下さい。