ソウルから帰ってきたら又、1冊、本が出来ていた。3月だけで3冊目だ。これは驚きだ。鈴木史の中でも、こんなことは初めてだ。
1冊目は、3月16日(月)に出た。内田樹さんとの対談本『慨世の遠吠え=強い国になりたい症候群=』(鹿砦社。1400円)だ。売れている。内田さんと鹿砦社のおかげだ。
第2冊目は、フォア・ビギナーズの『吉田松陰』(現代書館)だ。3月23日(月)発売だ。
あっ、これは、「私の本」ではないな。私は「解説」を書いただけだ。でも、本を出版することに「参加」している。
書いた人は三浦実さん。イラストは貝原浩さん。2人とも10年前に亡くなっている。それに、この本は、30年前に出た本だ。何度も増刷を重ねた。
でも、最近は絶版だった。今年、NHKのドラマもあり、「松陰ブーム」になった。関連書が何十冊と出ている。私も新書を15冊読んだ。
しかし、この現代書館の『吉田松陰』には及ばない。「ぜひ、復刊を!」という声があって、今月、出したのだ。
その時、私は「解説」を頼まれ、急遽、30枚を書いた。前に読んだ時には分からなかった「発見」が沢山あった。そのことを中心にしながら、書いた。
吉田松陰については今まで100冊以上、本が出ている。しかし、この三浦さんの『吉田松陰』は群を抜いている。これだけ読めばいいだろう。
あとは司馬遼太郎の『世に棲む日々』だ。松陰や門下の人々のことが生き生きと描かれている。
この現代書館の『吉田松陰』は、表紙にこう書かれている。
〈右も左もなく、ただ回天の志があった〉。
いいですね。さらにこう書いている。
〈至誠にして動かざるものは、いまだこれあらざるなり。動乱の兆しの今、伝説の松下村塾と一人の松陰が欲しい〉
ウーン、いいですね。そうだ。岩波だったと思うが、『吉田松陰全集』が出ている。これは読まなくちゃ。今年は挑戦してみよう。
40年以上前、私が産経新聞に入った時、まだアパートを探してなくて、阿部勉氏のところに居候していた。
阿部氏は「楯の会」一期生で、後に一水会を一緒に創ることになる。
その阿部氏だが、よく本を読んでいた。又、彼のアパートは「楯の会」の溜まり場になっていて、『吉田松陰全集』をテキストにしして、皆で読んでいた。
当時の学生は凄い。その頃の思い出も含めて、『吉田松陰』の「解説」を書いた。
最近は、忙しくて、私は新書ばっかり読んでいる。いけないな。「月30冊」ノルマを達成する為に安易な読書に堕している。ちゃんとした本を読まなくちゃ。
又、いろんな〈全集〉にも挑戦しなくっちゃ。「吉田松陰全集」、それに「大杉栄全集」にも挑戦したい。
さて、今月出した3冊目だ。3月27日(金)発売だ。3月24日(火)に、見本誌を白井さんが持って来てくれた。いい。なかなかいい。
実はこれは、40年前に出した本の「復刊」だ。
鈴木邦男編著『BEKIRAの淵から 証言・昭和維新運動』(皓星社)だ。
皓星社は、「こうせいしゃ」と読む。ちょっと難しい。いい本を沢山出している。竹中労(文)、かわぐちかいじ(画)の『黒旗水滸伝』。それに連合赤軍の証言をまとめた『証言』。
又、最近では、『放射線像』。小林節さんの『タカ派改憲論者はなぜ自説を変えたのか』。さらに、小林節さんと山中光茂さん(松阪市長)の『たかが一内閣の閣議決定ごときで=
亡国の解釈改憲と集団的自衛権』…などだ。話題作、衝撃作を次々と出版している。
この皓星社のことは前から知っていたが、直接の付き合いはなかった。
元「週刊金曜日」の敏腕記者だった白井基夫さんが、数年前に、ヘッドハンティングされて、この皓星社に移った。
それから連合赤軍の『証言』を出したり、いろんな企画を出している。
40年近く前に私が出した本で、『証言・昭和維新運動』(島津書房)という本がある。「これはいい本です。このまま埋もれさせるのは惜しい。ぜひ復刊しましょう」と熱心に言ってくれた。
島津書房から40年前に出し、かなり評判になり、版を重ねた。
しかし、数十年にわたり、絶版だった。白井さんは、いろんな折衝をやってくれ、今年、増補改訂版として出したのだ。
私にとっても、「貴重な本」であるし、嬉しい。それに、歴史的資料としての価値がある。どんな内容か、皓星社の案内では、こう書かれている。
〈昭和初期、政治家や資本家などの特権階級が権力をほしいままにする一方、庶民の生活は窮乏を極めていた。そうしたなか、国家の変革・改造を目指し、命を懸けて立ち上がった決起者たちがいた。本書は、血盟団事件、五・一五事件、神兵隊事件、士官学校事件、二・二六事件に関わった当事者たちの貴重な証言を収録。
第1部 当事者が鈴木邦男に語った「私の昭和維新」
第2部 鼎談・対談で検証する昭和維新運動
『証言・昭和維新運動』(島津書房)の約40年ぶりの増補・改訂版〉
これに尽きてますね。血盟団事件に参加した小沼正(その後、改名して広晃)。2.26事件に参加した末松太平。など、当の「実行者」に話を聞いたのだ。「やまと新聞」で毎日、連載し、それを島津書房がまとめてくれた。
あの時、事件の当事者たちに会っておいて本当によかったと思う。少しでも遅れたら、出来なかっただろう。当時、取材した人は皆、亡くなっている。
では、目次を少し紹介しよう。
『BEKIRAの淵から=証言・昭和維新運動』(皓星社)
はじめに
〈第1部〉 当事者が鈴邦男に語った「私の昭和維新」
1.老壮会・嶋野三郎氏に聞く
2.三月事件・清水行之助氏に聞く
3.血盟団事件・小沼広晃氏に聞く
4.五・一五事件・川崎長光氏に聞く
5.神兵隊事件・片岡駿氏に聞く
6.士官学校事件・次木一氏に聞く
7.二・二六事件・末松太平氏に聞く
8.元血盟団・重信末夫氏に聞く
9.三上卓の門下生・青木哲氏に聞く
〈第2部〉鼎談・対談で検証する昭和維新運動
1.「維新運動」を語る—赤尾敏・津久井龍雄・猪野健治(司会)
2.維新運動の本流をさぐる—影山正治・三上卓・毛呂清輝
3.反共右翼からの脱却—野村秋介・鈴木邦男
〈発言者略歴〉
〈解説・鈴木邦男〉
懐かしい。40年前の本だから、そうだが、それだけではない。熱い本だ。
命を懸けて昭和維新運動をやった人々だ。その人々に話を聞いた。考えた。だから、熱くなる。
今、読んでも、その時の思い、雰囲気は伝わってくる。〈これが原点だったんだ〉と思う。
ものを書く上では、『腹腹時計と〈狼〉』(三一新書)がスタートになった。そう言われる。
しかし、人の話を聞き、じっくりと取材し、考えて、書く。その意味では、この本が私の〈原点〉になっている。その後の、運動の原点にもなっている。
この人たちに衝撃を受け、少しでも近づきたい、負けられない、そう思ったのだ。
この本の帯にはこう書かれている。
〈「俺は愛国者だ」と叫ぶ人間に、本当の愛国者はいない。それが、五十年間「愛国運動」をやってきた僕の結論だ。かつては本当の愛国者がいた。国を思って闘い、弾圧に負けず、貧乏に負けず、志を貫いた人たちだ。闘いの中で殺され、あるいは自決し、あるいは長く獄中に在りながら一筋の道を生きた。昭和維新運動の当事者たちこそそうと言える〉
つまり、「愛国者」というなら、この人たちだ。それ以外にいない。そんな感じがした。
40年前、本物の愛国者たちに会えて幸せだったと思う。それが私の〈宝〉になっている。
人を殺したり、長期間獄にあったり、それで語ってくれた。闘いの記録だ。衝撃を受け、感動した。
ただ、それだけではない。「え、そうかな」「ちょっと言い過ぎじゃないのかな」と思うところもあった。
又、自分の無知をたしなめられたこともあった。その一つ一つが、貴重な思い出だ。ぜひ読んでほしいと思う。
この『証言・昭和維新運動』については、まだまだ書き足りないことがある。書店のトークなどでも、話してみたい。今月出た3冊の本については以上だ。
では、あとは「ソウル・レポート(その2)を書く。その予定だったが、実をいうと、HP以外にも随分と「ソウル・レポート」は書いた。
「レコンキスタ」、「マガ9」、「創」、「月刊タイムス」…と。他にも、取材されて喋ったこともある。だから、もういいか。という気分だ。
ただ、補足しておくが、先週のHPを見て、「韓国観が変わりました」と言ったくれた人が多かった。それは嬉しかった。
韓国は「日本叩き」ばかりをしていて、それだけが生き甲斐で、どうしようもない国だ。こんな国とは断交しろ!というマスコミ報道が多い。
本屋に行けば、「韓国はすぐに亡びる」「なぜ韓国人には心がないのか」といった嫌韓本ばかりが並んでいる。
それを真に受けている人、多少誇張はあるが、基本的には本当だろうと思っている人。そんな人に言いたい。「これは嘘だ!」と。
こんなものを信じて、「敵はやっつけろ!」なんて叫んでいたらダメだ。自分の頭で考えろ、自分の足で行ってみろ、と言いたい。
実際、行ってみて、話し、議論したらいい。喧嘩してもいい。
それで分かり合えることもある。すぐには分かり合えないこともある。
でも、〈戦争〉にはならないし、してはならない。あらゆる手を尽くして、交流友好すべきだろう。
その点では、先週書いたように、韓国の人の方が、〈大人〉だと思った。
カッカして、「戦争も辞さずに」なんて口走る人はいない。日本人だけだよ、そんなのは…。
ソウル大学には接点が出来たんだし、いろんなことをやってみたらいい。
ロフトプラスワンが出張したり、マガ9学校inソウルをやったり…。「週刊金曜日」の読者会をやったり。読者もいるんでしょう。ぜひやりましょうよ。
「創」プレゼンツの集会をやってもいいし。椎野礼仁さんに頼んで、いろんなことを考えている。
高木尋士さんの「再生」の芝居を持って行ってもいい。
高間響さんの「ツレがウヨになりまして」もいい。韓国に対する反撥と、コンプレックスがよく出ている芝居だ。ぜひ、上演したらいい。
韓国の人々と討論し、それをニコ生で流すというのもいいな。やってみよう。
そうだ。今、思い出したが、昔、辛淑玉さんと対談したことがあった。
タイトルが凄い。『こんな日本、大嫌い!』だった。反日的、自虐的な本だよな。
これが出たあと韓国でも出しませんかという話があった。韓国語に翻訳して出そうという話だ。私は大賛成だし、辛さんもやる気だった。
ところが、中に入った人が厳しい条件を付けて、それで、まとまらなかった。
向こう側に翻訳してもらったら、正しく訳されているかどうか分からない。だから、日本の権威のある翻訳会社を通すべきだ、と言う。
えー、そんな難しいことを言わなくていいんじゃないの。と思った。でも、その人は、それを貫いた。
結果、翻訳本はダメになった。本当に惜しかった。
そうだ。今なら出来るだろう。もうその出版社はないし。皓星社の白井さん、どうでしょうかね。考えてみて下さい。
その前に、白井さんには他にも1冊、頼まれていたな。何だっけ? ともかく、頑張ってやりましょう。
①ソウルから帰って2日後です。3月21日(土)、静岡市のスナック「バロン」に行きました。元連合赤軍兵士の植垣康博さんが経営するスナックです。時々、講師を呼んで講演会をやってます。
この日は、映画監督の足立正生さんが講師で「イスラム国」について話してました。左は足立さん。右は植垣さん。
⑤「バロン」に行く前に、静岡市役所に寄りました。実は、若松孝二監督の映画「11.25自決の日=三島由紀夫と若者たち」に、この建物が使われたのです。このバルコニーで、(井浦新さん演じる)三島由紀夫が演説するのです。市ヶ谷の自衛隊に見立てて撮ったのです。
⑧私が解説を書いてます。『FOR BEGINNERS 吉田松陰』(現代書館)です。三浦実(文)、貝原浩(イラスト)です。
松陰ブームの中、これは絶対にお薦めの1冊です。あとは、司馬遼太郎の『世に棲む日々』を読めばいいでしょう。
⑪北一輝、そして、昭和維新運動の思想家、活動家の話をしてました。嶋野三郎さんも出てきたので驚きました。ロシア革命の現場を見た人です。そして北一輝のお弟子さんでもありました。
私は、この人に会って取材しているのです。『BEKIRAの淵から=証言・昭和維新運動』(皓星社)に出ています。
⑯河合塾コスモの阿木幸男さんと。『FOR BEGINNERS 吉田松陰』(現代書館)を差し上げました。阿木さんは、このシリーズで『非暴力』を書いてます。『吉田松陰』を書いた三浦さん、イラストの貝原さんとも知り合いだったそうです。懐かしがってました。
阿木さんは、今年で河合塾を辞めて、世界放浪の旅に出るそうです。若いですね。じゃ、それもぜひ本にして下さいよ、と言いました。
阿木さんは河合塾に来る前から知ってました。若い学生たちの集まり、「アップル・シード」で、学生たちのアドバイザーをしてました。そこに私は呼ばれて話しました。牧野剛先生も、河合塾に来る前から知っていて、テレビ討論会に一緒に出てました。
⑰阿木さんの送別会です。3月25日(金)の夜です。新宿です。店の名前が何と、「よいよい」です。ヤダなー。よいよいの老人を馬鹿にしてるよな。と思ったら、漢字が出てました。「宵酔」です。宵からイキに酔うんですね。じゃ、いいか。
㉑ここからは、ソウルの話です。第2弾です。3月17日(火)〜19日(木)です。これは、3月18日(水)朝です。安重根記念館に行きました。
外に出たら、山が見えます。その頂上にタワーがありました。驚きです。日本では絶対に造れません。でも、韓国は地震がないから造れるんです。
山の頂上までは歩いて1時間。でもロープウェイがあったので、それで登りました。さらに、このソウルタワーを登ったのです。多分、世界一の高さでしょう。山頂で、椎野礼仁さんと。
㉗刑務所の外に出ると、遠くに山があります。その頂上に白い建物が見えます。あれは岩かなとも思いましたが、建物です。まさかソウルタワーの2号塔じゃあるまいし。
ここの人に聞いたら、軍隊の監視の砦だそうです。山の下は大統領官邸(青瓦台)です。そこにゲリラが襲撃をかけるのを防ぐために、こんな山の上から見張ってるんです。そして、ここから攻撃するのでしょう。
㉛こんなコーナーもありました。竹島です。ここに上がって、韓国の小旗を持って、写真を撮るんですね。そうすると、「愛国者」になれます。
そこにいたおじさんに言われました。「おい、日本人。君らも撮りなさい!」と。これだけはマズイよ。ジョークでは済まされないよ。断りました。