武術家の甲野善紀さんに会いました。
柔術・剣術などを究め、身体の動き、使い方を他のスポーツや格闘技にも応用し、野球、サッカーの選手たちにも教えています。
又、病院、介護の現場でも応用し、教えています。NHKを初め、多くのテレビ、雑誌でも大きく取り上げられています。
たとえば、入院患者や寝た切りの人を動かす時。患者が大きくて、看護・介護する人が小柄だと大変です。腰を痛めたりします。その職業病が多いのです。
甲野さんは、どうしたら大きい・重い人を起こし、移すことが出来るか。それを教えています。柔術の動き、理合いを使ってやるのです。
日本の武術を究め、その精神・神髄を伝え、スポーツ、武道だけでなく、介護、そして音楽、農業、仕事、生活一般に応用し、生かしている。
全国から講演依頼が殺到し、超多忙な人です。「時間との闘いです」と甲野さんは言ってます。
甲野さんの話は随分と聞いていた。内田樹さんなどから。そして、本は随分と読んだ。テレビでも紹介されてるのを見た。
DVDもいくつか持っている。今、手元に「甲野善紀・福岡にて=その横顔と実技の解説」というDVDがある。「現代人よ!失われた身体を取り戻せ!」と書かれている。そして、こう書かれている。
〈注目の武術家・甲野善紀。身体操法の解説とインタビュー〉
〈多岐にわたる専門家との交流が独自の術理を生み出し、そして、応用される〉
〈腕を使い易い状態で使うことに落とし穴がある〉
…と書かれている。我々が身体・武術について持っている「常識」を見事に覆してくれる。
このDVDは企画が株式会社セイントクロスになっている。あっ、そうだ。ここの会社の人が福岡で毎月、講演会をやっているのだ。
実は、そこで私も呼ばれて話したことがある。一昨年だ。出光興産の出光佐三さんの甥の方と対談した。そこでは内田樹さんや甲野善紀さんも来て講演しているという。
「これから内田さんと対談して本を作るんです」と言った。
又、「甲野さんには会ってみたい。福岡で講演する時、教えて下さい。聞きに来ます」と言った。
そしたら去年の春に、「東京で甲野さんと会う用事があるので来ませんか」と言う。そこで、長時間、お話を聞いた。
そして今回、2回目だ。3月28日(土)に会った。それも、ちょっと変わった集まりで会った。
私の所には、毎日、多数の郵便物が来る。市民運動の集会や、あるいは左右の運動の集会の案内が随分と来る。手紙、FAX、メールなども毎日のように来る。
その中に、この案内があった。危うく見過ごすところだった。
だって、「第一回かぼちゃ会議。公開シンポジウム」と書かれている。
差出人は「(株)母と子のセンター」だ。「『(社)母と子のセンター』とは、東日本大震災緊急支援市民会議が福島第一原発の放射能災害対策本部として法人化されたものです」と書かれている。
数多くのボランティア団体、市民運動の一つだろう。と思った。司会進行は長船青治と書かれている。知らない。どこかで会ったのかな。それで案内をくれたんだろう。
それに、これはちょっと行けないな。この日は、他の用事もあるし。と思っていた。テーマは「東日本大震災と死生観について」。
そして、「ゲスト」を見てビックリした。「甲野善紀(武術研究家)・松聲館主宰」と書かれていた。
これは何としても行かなくちゃ。と思った。編集者の椎野礼仁さんにもメールで知らせてやった。
3月28日(土)午後2時から開始だ。新橋の新虎ビル2F・イメージユニオン会議室。そこが会場だ。ちょっと分かりづらい。
着いた時は、もう甲野さんの話は始まっていた。椎野さんはもう来ていた。
会場に入って、又しても驚いた。小さい会議室だ。人も少ない。10人ちょっとだ。
えっ、こんな少人数でも講演するのか、と思った。
甲野さんは毎日のように講演がある。全国を飛び回っている。どこも満員だ。何百人、何千人と集まる。
当然だ。皆、甲野さんの話を聞きたい。実技を見てみたい。それに、参加者を前に呼んで、実際に指導する。
この日もそうだ。体の大きな人が、甲野さんの腕をつかみ、押さえようとしても、ダメだ。そこから突く。投げる。倒されてしまう。
椎野礼仁さんが、「私にもかけて下さい」と前に出て、倒されていた。私も出た。全力で押さえ、捕まえようとしたが、ダメだ。やられてしまう。
さらに、日本刀を持ち出し、居合いをやる。又、斬り合う時の理合いを説明してくれる。
「誰か棒を持って下さい。左右に斬り込みますから」と言うが、皆、尻込みする。
女性だけが進み出る。「やはり女性の方が勇気がありますね」と甲野さん。ウイリアムテルが子供の頭にリンゴを乗せ、そのリンゴを弓で射る。そんな感じだ。
甲野さんは、目にも止まらない速さで、右に左に斬り分けていく。
他に体の動かし方、攻撃をどうかわすか。あるいは、束縛された中で、どうやって反撃するのか。そんなことも教えてくれる。
4時過ぎに講演は終わる。私は改めて挨拶をした。「この前はありがとうございました。それにご本まで送って頂きまして」とお礼を言った。
去年、会ったあと、甲野さんは、新刊書を送ってくれたのだ。『武術を語る=身体を通しての「学び」の原点』(徳間文庫)だ。とてもいい本で、教えられた。
「とても勉強になりました。わざわざ送って頂き、ありがとうございます」と言ったら、「あの時、鈴木さんにもらった本がよかったね。一気に読みました」と言う。『終わらないオウム』(鹿砦社)だった。
そうか、会った時に、渡したんだ。上祐史浩さん、徐裕行さん、私の3人で話し合っている。刺激的な本だ。「あれは面白かった。生命がけの話し合いですね」と言う。
そこで、持っていた(内田樹さんとの対談本)『慨世の遠吠え』(鹿砦社)を差し上げました。
「内田さんともお知り合いですよね」と言ったら、「来週、会います」と言う。親しいのだ。
それに、前に俳優の榎木孝明さんと会った時、私は投げ飛ばされた。いくら捕まえようとしてもダメだった。
その場にいた一色さんも向かったが、かわされ、投げ飛ばされた。一色さんは、前に尖閣で、中国船がぶつかって来た時のビデオを公開した人だ。海上保安庁の人だったが、その事件で、やめた。体のデカイ人だ。
でも、榎木さんには、全く歯が立たない。その話を甲野さんにした。
「榎木さんも甲野さんに教えてもらったんでしょう」と聞いた。
「榎木さんは元々薩摩の示現流をやってましたから」と言う。
でも、甲野さんが教えたのだろう。プロレスラー、空手家、柔道家などでも甲野さんに教えてもらった人は多い。
今、手元に『武術を語る=身体を通しての「学び」の原点=』(徳間文庫)がある。
甲野さんは、「武道」ではなく、「武術」という言葉を使う。
普通、我々はこう思っている。「術」から「道」になる。これが進歩・進化だと。
柔術、剣術、弓術…の時は、ただ殺伐とした殺しの技術だったが、その牙を取り、誰もが練習出来るものにした。そして、柔道、剣道、弓道となった。
「術」から「道」への進歩こそが、人間の進化の証しでもある。僕らは、そう習ってきた。
しかし、甲野さんは、その見方に真っ向から反対する。「道」になった途端に、忘れられ、切り捨てられたものが余りに多いという。
確か、『武道から武術へ』という本も書いていた。昔、竹中労さんが言っていた、「今こそ、“科学から空想へ”だ」と。
「空想から科学へ」はマルクスが言った。空想的社会主義から科学的社会主義になるのだと。それは逆だろうと竹中さんは言う。
革命の夢や希望を忘れてはならない。今こそ、夢や希望を持った社会主義を目指すべきだと言う。甲野さんの本は、それを思い出させる。
甲野さんの、『武術を語る』の紹介には、こう書かれている。
〈身心自在を極意とする武術—その本質は、生死を一体と見なす人間把握と開拓にあり、画一的な人間形成はもちろん、陳套(ちんとう)な精神主義化や安直な競技化をも激しく拒絶する。著者の原点ともいえる武術技法と独自の思想がここ、本書にある〉
実際、その通りだ。「人間把握と開拓」が出来るという。
この本の紹介とまとめも実にうまい。的確だ。甲野さんのところに通い、武術の真髄に触れた人が書いたのだろう。文章にも新しい命が生まれてくる。そんな感じがした。
ついでに、甲野さんの「著者紹介」を見てみよう。甲野さんの「歴史」「人となり」を知ることが出来る。
〈甲野善紀(こうの・よしのり) 1949年、東京生まれ。78年、武術稽古研究会松聲館を設立。流儀・分野の枠を越えて、剣術・抜刀術・杖術・体術などを通して、古の武術を探求しながら、「人間にとっての自然」を考え続ける。92年、固定的な支点を排した「井桁崩しの原理」に気づき、体を割って捻らず、うねらない体の運用技を提唱し、その後、術理と技法は現在も進展している。そこから生まれた動きは、さまざまな近代スポーツの常識を覆す成果を挙げ、最近、各スポーツ界や教育界からも注目を集めている〉
これも、実に要点を衝いた紹介だ。甲野さんの本をますます読み、話を聞きたい。
そうだ。タイトルに書いたように武術家・甲野さんのことと、〈4月1日(水)の姫路大花見〉について書こうと思った。
さらに、3月31日に、本が送られてきた。柏艪舎の最新刊『日本の分について考える②』だ。
3月には何と、4冊も出版した。ありがたい。では、城と本について、大急ぎで紹介しよう。
姫路城は長い間、修理中だったが、それも終わって、3月27日から一般公開が始まった。桜もきれいだし、「ぜひ、来ませんか」と飛松さんに言われた。それで行ったのだ。
とても大きく、とてもきれいな城だった。そして、きれいな桜だった。天守閣にも登った。それらは写真で見てほしい。
そしてもう一つ。新刊本だ。3月31日(火)に送られてきた。
これで3月に出た本は4冊だ。何も3月にまとめて書いたわけじゃない。去年1年間の闘いの成果であり、記録だ。
私は今、2ヶ月に1回、札幌に行っている。「鈴木邦男シンポジウムin札幌時計台」をやっている。
ゲストの人の話は濃いし、さらに私も話をする。今まで全く知らなかったことに気付くことが多い。
時計台に集まった人だけでなく、さらに多くの人に聞いてもらいたい。読んでもらいたいと思い、その内容を本にしている。もう2巻目だ。
『「日本の分」について考える』①は、去年刊行されている。「鈴木宗男さんと語る北方領土問題」。それに、「中島岳志さんと語る愛国・革新・アジア」だ。
〈鈴木宗男が語る「北方領土問題」と中島岳志か語る「右翼の系譜」。鈴木邦男だからこそ聞きだせる話がここにある〉
さらに、私の「あとがき」が紹介されている。
〈「時計台シンポジウム」をまとめた本の第一弾として、この二人は最もふさわしい。こんなに刺激的で、魅力的な話はなかなか聞けない。その会場の熱い興奮が、そのまま詰まった本になった〉
そして、3月31日に、『「日本の分」について考える』②が送られてきた。4月4日(土)には全国の書店に並ぶ。
柏艪舎がうまい。作り方がうまい。写真もふんだんに使っている。講演中の写真だけでない。ゲストからも貴重な写真を提供してもらう。
又、ここで語られている事件の関係写真を探す。あの時、聞いた話なのに、本で読むと、さらに刺激的に感じる。初めてのように感じる。これは凄い。
登場するゲストは2人だ。山口二郎さん(現・法政大学教授)と藤野彰さん(北海道大学教授)だ。
山口さんのテーマは、「民主主義の危機を乗り越える」。
藤野彰さんのテーマは、「異質な隣人・中国といかに向きあうか」。
どちらも、現在の緊急な問題だ。お二人の話を聞き、そして、話し合った。会場の人たちの質問も受けて、かなり熱い討論会になった。
本の帯には、こう書かれている。
〈政治学者・山口二郎(現・法政大学教授)が、敗戦により日本人の思想はどう変わったか、なぜ自分たちで憲法を作れなかったのか、民主党政権の功罪とは、第二次大戦後の日本の政治地図を解説する。
中国問題を専門とする藤野彰(北海道大学教授)が、ジャーナリストとしての冷静な視点で中国とはどういう国なのか、なぜ反日政策に固執するのか、そして日中関係再構築への道筋を提言する〉
〈今、日本が直面している最も大きな問題について、鈴木邦男が真正面から二人に切り込む。札幌時計台ホールで繰り広げられた熱い対談2本を収録〉
この本の内容をうまく伝えてます。読んでみたいと思うでしょう。ぜひ読んでみて下さい。
⑪これは私が提供した写真です。2008年11月。木村三浩氏と中国に行った時、フラリと入った食堂に、中国の偉い人たちの写真が飾ってありました。林彪の写真(左)があったので、ビックリしました。
林彪は、クーデターを企て、失敗し、飛行機で逃げる途中、死亡した。と我々は教わってます。その「反逆者」を店に飾っていいの?と聞いたら、「最後は、よくありません。でも、新生中国を作ることに貢献したことは事実です」と言います。凄いですね。
⑫4月1日(水)飛松五男さんのお誘いで、姫路に行ってきました。桜は咲いてるし、修理中の姫路城が3月27日から一般公開です。全国から多くの人が駆け付けました。桜の後ろのお城をバックに。岩井さん、下中さんもいますね。
⑳ご当地タレントで有名なカナルちゃん(中学3年)と愛ちゃん。藤波心ちゃんと同じ事務所です。
カナルちゃんは4年前、小学校5年生の時から私は知ってます。心ちゃんが東京に連れて来たのです。今は、NHKに出ています。愛ちゃんも頑張ってます。岩上安身さんのIWJのリポーターや、ネットテレビのレギュラーをやってます。
㉞これは東中野駅前です。満開の桜です。菜の花も咲いてます。この白と黄色がいいですね。この季節になると、カメラを持った人が並んで写真を撮ってます。
JRの「東中野—中野」間は、この時期、徐行します。ゆっくり桜を見て下さいという、イキな計らいです。私は駅ビル(atre-vie)の3階から撮りました。