街中が「新選組」であふれていた。
〈誠〉と大書きされた隊服を着た人々が闊歩している。
「新選組まつり」の幕やポスターがいたる所に貼られている。
女性の着物コンテストも行われている。
近藤勇、土方歳三の大きな写真が、貼られている。
「池田屋」では新選組グッズが売られている。
食堂、レストランでは、「土方歳三うどん」「歳三弁当」が売られている。
5月9日(土」、「ひの新選組まつり」に行ってきた。9日(土)、10日(日)の二日間、ここら辺一帯は新選組一色だ。
薩摩・長州が入る余地はない。「反長州」「反安倍」の反政府ムードがヒートアップしている。
高幡会場、日野宿会場、日野煉瓦ホールの3会場がメインだが、そこだけではない。
この3拠点から溢れ、高幡、日野地帯は、全てが「新選組まつり」に来た人々で、ごった返していた。大混雑だ。
日野宿の八坂神社では天然理心流や杖道などの演舞も行われるという。見たかったが、そこまでは行けなかった。9日(土)は、12時から、ずっと高幡会場とその近辺にいたからだ。
朝、新宿から京王線に乗って、午前不動で降りる。11時に着いた。
駅にはもう、新選組の隊服を着た若者や、刀を持ったおっさんたちがいる。洋装の土方歳三になり切っている若者たちもいる。着物姿の若いギャルも沢山いる。いきなり幕末だ。
12時から、高幡不動尊で「新選組隊士慰霊祭」が行われる。それに出ようと、来たのだ。
近藤、土方をはじめ、新選組の子孫の人たちが出る。それに新選組ファンの人たちも出る。
私も隊士に呼ばれたのだ。いや、隊士の子孫だ。「新選組・永倉新八のひ孫」の杉村和紀さんが誘ってくれたのだ。
杉村さんは前に一度会ったことがある。
来月・6月9日(火)の札幌時計台シンポジウムでは、この杉村さんと講演をする。
また、『新選組・永倉新八のひ孫がつくった本』(柏艪舎)を書いている。やはり、ひ孫の杉村悦郎さんと共著だ。
永倉や新選組について、実に詳しく書かれている。
「新選組ファン」の著名人たちにも話を聞き、原稿を書いてもらっている。浅田次郎、黒鉄ヒロシ、立川談志、夏八木勲なども登場している。
豪華な本だ。そして新選組の秘密も分かる。
杉村さんは、この慰霊祭に参加する。夕方の懇親会にも出る。
「鈴木さんも来ませんか」と誘われた。「母親が会津若松だし、私も反薩長だ」と言った。それで出ることになった。
高幡不動尊に行く道は、どこも人で一杯。着物コンテストも行われている。
さて、会場の高幡不動尊だ。広い。どこでやってるのか分からない。時間があるからと、広い広い境内を歩く。
慰霊祭と書かれてるとこがあるので、上がって座っていたら、どうも様子が違う。ネパール大地震の慰霊祭だった。慌てて出て、探す。
分からない。「あっ、鈴木さん」とおじさんに声を掛けられた。知らない人だ。「誰?」「ほら、漫画家の畑中純さんと3人で酒を飲んだじゃないですか」。
畑中さんは、有名な漫画家で、私もよく呼ばれて、一緒にトークをしたり、酒を飲んだりした。亡くなって数年経つ。
その友人に聞いた。「新選組まつりに来たんですか?」。「違います。家が近いので、時々寄ってるんです」と言う。
私は慰霊祭の場所が分からなくて探しているんだ。その人に聞いても分からない。さらに、アテもなく歩き回った。これじゃ分からない。
もう諦めて、もう帰ろうと思った時だった。「新選組隊士慰霊祭会場」と書かれた貼り紙が目についた。
貼り紙の下を降りる。広い。壇が組まれている。
12時、お坊さんが5人、入ってきて、法要は始まる。読経が始まり、子孫、関係者、一般の人々の焼香が続く。
私も焼香した。前世では私も会津武士として、薩長と闘ったんだろう。そんなことを思っていたら、不意に目頭が熱くなった。
法要が終わり、和尚さんが挨拶。「新選組ほど天皇様を思い、京都では天皇様をお守りするために働いた。それなのに“朝敵”と言われた。こんなに悔しいことはない」。つい昨日のことのように悔しがる。
代表の人も挨拶する。先日、高知からこのお寺にお参りに来た人がいた。
「土佐なら竜馬でしょう」と聞いたら、「竜馬より土方歳三の方が好きです」と言う。
全国に、新選組を思い、慕ってくれる人が大勢いるんだ。これからも頑張りましょう。と言う。
そうだね。間違った歴史を正さなくては…と思いましたね。
キョロキョロ見渡したが、いない。私を呼んでくれた、「永倉新八のひ孫」の杉村和紀さんがいない。一度しか会ってないから、よく顔を知らない。でも、いないようだ。
慰霊祭が終わり、休憩し、そのあと「新選組隊士コンテスト」があるという。何をするんだろう。
一旦、外に出て、街を散歩する。「池田屋」に入って、土方グッズを買う。大きな写真も買った。
そして食堂で「土方歳三弁当」を食べた。
そして、さっきの慰霊祭会場に戻ったら、大変な騒ぎになっていた。
超満員。道にまで人が溢れている。凄い。皆、これが目当てで来てるのか。
「新選組隊士コンテスト」だ。「土方歳三でーす」「斉藤一です!」と、皆、なり切って、パフォーマンスをする。
居合い、剣道の型、主張、歌…と。自分の得意分野で、隊士になり切り、アピールする。次から次、何十人と出演者が出てくる。
そして、結果発表。その前に、岩崎愛子さん、「さくら・ゆき」さんの歌がある。自分たちで作った「新選組のうた」「土方歳三のうた」も披露する。
そして一次審査、二次審査と続いて、結果発表。
明日、新選組パレードがある。その先頭に立つ人が選ばれる。近藤、土方、原田、斉藤…と、その当選者が選ばれ、賞状、賞品が渡される。
そこまで、たっぷり3時間近くあった。懇親会の方も申し込んでいた。
そしたら、係の人が来て、「永倉新八のひ孫さんの紹介でしたよね」「はい、そうです」
「札幌から電話があって、大幅に遅れるそうです。7時からの懇親会には出るそうです。5時からの講演会にも間に合ったら出ます」という伝言だった。
ホッとする。よかった。
その時、あれっと思った。「どうして、ここに?」と、2人は同時に同じ質問をした。
ミサオ・レッドウルフさんだ。脱原発デモのリーダーだ。
「私は土方が好きで…」と話したら、ウルフさんは、この近くらしい。
それに、新選組は好きだという。「だから、長州の安倍政権に反対ですか」という話になった。
「反長州・反政府」で共闘出来るじゃないか。「じゃ、又」と言って別れた。
それから又、街を歩いて、5時に講演会に行く。
7時から懇親会が行われるが、その前に、同じ会場で、講演会があるのだ。高幡不動の駅前の坊ホールだ。
テーマは、〈「甲鉄を奪還せよ!」=宮古港海戦と東日本大震災〉。
講師は宮古で雑誌「みやこわが町」を発行している橋本久夫さんだ。
宮古港海戦のことは余り知らなかったので、勉強になった。
岩手県宮古だ。函館戦争の直前の戦いだ。榎本武揚、大鳥圭介、そして土方たち新選組は函館の五稜郭に立て籠もって戦う。
その前に、自分たちを討伐のために来る「甲鉄」を宮古まで行って、奪還しようというのだ。
3隻で出かけ、奪還する。そして左右、前方を挟み撃ちにしたまま函館に連れて来て、今度は、自分たちの軍艦として使おうという計画だ。土方が考えついた作戦だろう。こんなことを考える人は他にいない。
しかし、奪還は失敗する。土方たちは命からがら函館に逃げ帰る。
そして函館戦争が始まる。もしも、宮古で甲鉄を奪還していれば、函館戦争では勝っていただろう。それほど威力のある軍艦だ。
それに、「この船は元々は我々の船なんだ」という思いがある。幕府がアメリカに金を払って造ってもらった船だ。
ところがアメリカは日本の政局を睨み、「幕府は負けるな」と思った。
そして、何と、新政府軍に売った。
これは、アメリカが悪い。「元々は俺たちのものだ」と榎本や土方が思ったのも当然だ。でも奪還には失敗した。
宮古にはいろんな慰霊碑や記念館がある。ぜひ来て下さい、という。
今年の9月には、宮古で「新選組サミット」をやるという。いいね。行きたい。
周りを見渡してみたら、あれっ、ミサオ・レッドウルフさんがいる。「又、会いましたね」。
すると前にいた人が振り向いて、「あ、鈴木さん、遅れてすみません」。永倉新八のひ孫・杉村和紀さんだ。
そこで、2人を紹介してやった。「私も反薩長です。永倉新八も好きです」とウルフさん。そのまま、懇親会の方にも出ました。
この会をやっている代表は日野市議会議員・みねぎし弘行さん。「一水会代表の木村三浩氏も日野です。一水会は皆、反薩長です。新選組が好きです」と言いました。
木村氏は知っていた。杉村さんは、土方愛さんにも紹介してくれました。土方歳三のご子孫だ。今、「土方歳三資料館」の館長をしている。
いやー、感動しました。土方歳三のご子孫と会えるなんて…。
他にも、地方で「新選組まつり」をやってる人。同好会を持ってる人。準備会を作ってる人などを紹介してもらいました。
歴女タレントの小日向えりさんも挨拶してました。横浜国大卒の秀才だ。そして歴史好き、新選組好きのタレントだ。
「テレビで私の本も紹介してくれたんです。それで、ドッと注文がありました」と杉村さん。
「今の人たちに新選組の志を教えてあげたい。志とは、武士の心と書きます」。
そうか「士」の「心」が志なんだ。まず、武士の魂を持たなくては。そうでないと、志なんて持てないだろう。
この人とも、いろいろと話しました。
「では、永倉新八さんのひ孫の杉村さん。ご挨拶を」と司会者に言われて、杉村さんが挨拶。
私はビールを飲みながら聞いていたら、「じゃ、一緒に来ました鈴木邦男さんにも一言、ご挨拶をお願いしましょう」」と言う。
エッ!とビックリしました。だから、言いましたよ。
〈大学の時は、日本の革命を阻止しなくてはと思い、右翼学生運動をやってました。右翼学生は、坂本竜馬が好きで、“今は幕末だ。俺は竜馬だ”と思ってる人が多かった。司馬遼太郎の『竜馬はゆく』を皆、読んでいた。ところが一人、「いや、俺は土方歳三の方が好きだ」と言う男がいた。森田必勝だ。1970年に三島由紀夫と共に自決した青年だ。
ひねくれた事を言う奴だと、皆、森田を批判した。「我々の尊敬する維新の志士たちを殺しまくっていたのが新選組だ。許せない」と皆は言う〉
〈ところが森田は言う。「違います。新選組は天皇を守るために闘ったのです。そして土方は最後の最後まで戦って死んだ。武士の鑑です」。
これには驚いた。司馬遼太郎の『燃えよ剣』を読んで下さいと森田に言われ、読んだ。感動した。そして、森田の言う通りだと思った。右翼学生の間には、急に、「土方ブーム」が起こった。正確に言うと、右翼学生の間には、「竜馬派」と「土方派」が生まれたのだ〉
と、当時の右翼学生の話をした。森田はこの後、三島由紀夫と共に、市ヶ谷自衛隊で自決する。
「土方歳三の生き方がいい」と断言していた森田は、その時、もう市ヶ谷での自決を考えていたのだろう。
今日、ひの新選組まつりに来て、こんなにも新選組の人気があるのかと驚きました。全国から来ている。
全国で、「新選組まつり」「新選組サミット」が開かれるという。私も好きだ。
さっき岡山の準備会の人とも話をした。全国で新選組の同好会があるが、岡山が西の限度だという。それ以降は薩長が強いので、ダメだという。
そうか。山口県、鹿児島県、高知県などは、出来ないという。
でも、そこでも新選組ファンはいるはずだ。だから、私は言った。
「次はぜひ、敵の拠点である薩摩(鹿児島県)、長州(山口県)でやりましょう。鹿児島、萩で、「新選組まつり」「新選組サミット」をやるんですよ! 当然、反対運動も起こるでしょう。でも、闘いましょう。やりましょう。第二次戊辰戦争です! 及ばずながら、私も参戦します!」
「そうだ!」「薩長をやっつけろ!」という歓声が上がりました。そして、「新選組まつり」の夜は更けてゆきました。
この続きは6月9日(火)の札幌時計台でやろう。永倉新八のひ孫=杉村さんと対談をするのだ。楽しみだ。
夜7時半。下北沢のシアター711に行く。芝居「ベランジュ」を見る。
かなり難しいテーマの芝居だった。緊張して見た。考えさせられた芝居だ。
「再生」のあべ・あゆみさんも出ていた。よかった。終わって会ったので、お菓子をプレゼントしました。
「再生」の高木尋士さん、椎野礼仁さんたちも見に来ていた。
終わって、礼仁さんたちと飲みました。礼仁さんは、ソウルの「安重根記念館」で買ったTシャツを着てました。
〈「史上最悪の愚作」を解き明かす!〉と表紙には書いてます。今の安倍政権、保守派に対し、宣戦を布告してます。
それから、犬養木堂記念館に行く。今日が命日で、人が大勢いた。「5.15事件」で殺された首相だ。5時、岡山市民会館に。番家誠さん(一水会副代表)と打ち合わせをして、午後6時半、開始。岡山一水会主催の「レコンキスタ読者の集い」。
沢山の人が集まってました。番家氏の報告のあと、まず私が話す。
〈戦後70年・新右翼運動・ソウル大学の講演報告〉
そのあと、一水会代表・木村三浩氏の講演。
〈ヨルダン、クリミア、ロシア帰国報告(鳩山氏との同行について)〉
そのあと質疑応答。
終わってからも遅くまで話し合いました。この日は岡山泊。
先生や同級生たちに会う。ミッションスクールだったので、讃美歌もうたう。久しぶりに、いいもんだ。食事の前には、お祈りもある。
終わって、同級生たちと仙台の夜の町へ。かなり飲みました。酔いました。仙台泊。
㉕何と、私も出てました。格闘技雑誌に出るなんて、10年ぶりです。20年ぶりかな。〈特集・君は富木謙治を知っているのか〉の第2章です。
〈思想・言論・愛国運動。
“反骨”の基にある武道の心得とは?〉
と題し、私が語ってます。
〈師匠・大庭英雄と「人生の受け身」〉。
㉙これは前回の「デモクラTV」に出た時です。司会は、中央の升味佐江子さん(弁護士)です。
升味(ますみ)という苗字は珍しいですね。僕が学生の時は政治学者に「升味準之輔」という学者がいましたよ。私は政治学科だから、随分と読みました。と言ったら、「父です」。エッ!本当ですか!と、ビックリしました。
升味準之輔さんは、2010年8月13日に亡くなられました。東大卒で、長年にわたって、東京都立大学法学部で教鞭をとりました。著書は多数。戦後日本の政党政治を「55年体制」と名付けたことで知られてます。
㉟あべ・あゆみさんの芝居を見に行きました。5月13日(水)です。
後ろに椎野礼仁さん、「再生」の高木尋士さんがいますが、暗くて写ってませんね。写真を撮った人の責任です。誰でしょうか。あっ、私が「自撮り棒」で撮ったのかな。