『オウムと連合赤軍』というテーマでやりましたよね。「朝生(朝まで生テレビ)」で。
その時、宮崎学さんと一緒に僕も出ました。よくあんな危ない企画が実現しましたね。…と私は言った。宮崎学さん、それに「朝生」司会の田原総一朗さんと3人で会った時だ。
「オウムが許せないのは殺人をやったからです」と元検事の評論家が発言すると、「何言ってんだ! 十字軍を見ろ! 宗教は皆、殺人をやってるんだ!」とパネラーから罵声が飛ぶ。
連合赤軍事件に参加し、8人の殺人にかかわった植垣康博さんは言う。
「我々はオウムとは根本的に違う。電車の中にサリンを撒いて、一般国民を殺すというのは許せない。残忍だ。関係のない一般人を殺すようなことは我々はしていない!」。
それに対して、オウムに同情する作家・評論家たちは、こう言う。
「何を言ってるんだ。オウムは連赤のような“仲間殺し”はしない! 連赤こそが最も残忍な集団だ」と。どっちがより悪いのか。「仲間殺し」か。「一般人を殺す」ことか。そんな激論を闘わせた。
それから何年か経ち、つい先週のことだ。「朝生」に出た宮崎学さん。司会をした田原総一朗さんと会った。9月1日(火)だ。その時、その話になったのだ。
「朝生」はオウム関係では随分と多く、討論をやっている。
一番有名なのは、「オウム対幸福の科学」だ。なんせ、麻原彰晃自らが出たのだ。そして幹部たちだ。
「幸福の科学」側は、教団幹部、それに作家の景山民夫さんが出た。あの頃は「朝生」は5時間あった。それを朝まで聞いていて、「オウムは言ってることが深い」「真剣な修行をしている」と思った。
それは、私だけでなく、見ていた多くの人がそう感じた。田原さんや、テレ朝のスタッフもそう感じたという。
さらに、「こんな人たちは坂本さん一家を殺してはいない」と思った。そう思った人も多い。
又、オウム幹部の村井さんなどは、「かもめのジョナサン」が好きだというし、「真面目な修行者」というイメージだった。
真面目であり、真剣であり、厳しい修行もしている。教義への理解も深い。「宗教家としてのステージ、レベル」は高いのだろう。
でも、彼らは実は、坂本弁護士一家を殺していた。又、後に、地下鉄サリン事件を起こす。
宗教として立派であっても、殺人をやる集団は、この世では許されない。(かつては許された時代はあったのかもしれないが)。
それに比べ、「幸福の科学」は、教義が、ずっと薄い感じだ。命がけの修行もないし。「霊言集」を沢山出し、「本当なのか?」と思われている。「これはもう宗教ではない」と批判する人もいる。
しかし、内容的にどうであれ、全てをオープンにし、選挙に出てるし、全て合法的な活動をし、安全だ。人に暴力をふるったりしない。ましてや殺したりはしない。
この世の中では、こちらの方が、「いい宗教」ではないのか。そんな気がする。
左翼、右翼、市民運動にしても同じことは言える。
どんなに優れた思想、世界観を持っていても、それを達成するために「殺人」が必要だと考えていては、もう、その団体はこの世で存在意義を失う。
過去の歴史の中では、殺人を含むイデオロギーを持った集団も必要だったろう。明治維新前夜の勤皇、佐幕、尊皇攘夷…などの思想だ。歴史上の価値は認めるが、今、同じことをやるのは、無理だ。ただの「テロリスト集団」になってしまう。
そのことを学校では教えるべきなのだ。宗教の素晴らしさと同時に、宗教の怖さも。
その点、「朝生」のオウムが出た回は、いい教材になる。いい教訓になる。宗教に対する免疫にもなる。
「教義の素晴らしさ」「修行」「信者の真面目さ」だけに目を奪われてはならない。そのことを教えてくれる。
ただ、避けて通り、見ないようにするだけではダメなのだ。
NHKのアーカイブスで、昔やった「NHKスペシャル」などを今、やっている。とてもいい。
それと同じように、「朝生」のアーカイブスもやったらいい。
「オウム対幸福の科学」「オウムと連合赤軍」を流し、今、何を感じるか、どう教訓化するべきか、をやったらいい。宗教を考えるいい番組になると思う。と、田原さんに提言した。
宮崎学さんと田原さんと私。この3人は初めから予定して会ったのではない。
9月1日(月)午後1時にANAコンチネンタルホテルで宮崎学氏に会った。「鈴木さんの本を読んで、会いたいという人がいる」ということで、出かけて行ったのだ。
岡山から来た人に紹介され、皆で、食事しながら、今の政治や学生運動の話などをした。
岡山の人は3時頃帰り、そのあと宮崎さんと2Fの喫茶店でコーヒーを飲んでいた。
そしたら、田原総一朗さんにバッタリ会ったのだ。それで、オウムの話になったのだ。
つい3日前、8月29日(土)。オウムの話をしてたので、その余韻が頭の中に残っていて、宮崎、田原さんに会った時も、とっさにオウムの話になってしまったのだ。
8月29日(土)は、劇団「再生」の芝居「天皇ごっこ~母と息子の囚人狂時代」を見た。
その前に、「再生」代表の高木尋士さん、それにアーチャリー、私の3人でプレトークをした。
アーチャリーは「再生」の芝居は初めて見る。このために見沢作品を4冊読んでいる。皆、感動したという。
特に獄中で人間はどう変わるのか。出てきて、どうなるのか。それがリアルに描かれていたので心を打たれたという。
芝居を見ながらも、何度も涙ぐみ、ハンカチで涙を拭っていた。お父さんのこと、教団の仲間たちのことを思い出したのだろう。
そうだ。この芝居の5日前、8月24日(月)には、河合塾コスモで、吉田剛先生と「特別授業」(宗教について)をやった。
この時もオウムの話が中心になった。そして、「生長の家」の話、キリスト教の話をした。この時も、アーチャリーの話をした。
又、8月22日(土)は、「オウムと死刑」のシンポジウムに出て、河野さん、有田さん、アーチャリーの話を聞いた。さらに、8月2日(日)の「生誕祭」にもアーチャリーは来てくれたし、8月はオウムを考える1ヶ月だったような気がする。
8月29日、「再生」の舞台が終わって、代表の高木尋士さんと話をした。
「今は芝居のことだけで忙しいでしょうが、終わって一段落したら、例の対談をしましょう」と私は言いました。
〈宗教〉についての対談だ。それに読書対談でもある。
本を沢山読み、その中で〈宗教〉について読んだ本について語る。これはキチンとやっておかなくては、と思った。
「その時、アーチャリーにも聞いてもらったらいいんじゃないのかな」と私。時々、アドバイスしてもらうのもいい。
「最近読んだもので、この3つをテキストにしてやりましょう」と高木氏。
いいですね。「3つ」といっても3冊ではない。1冊とあとの2つはシリーズだ。40巻と18巻のシリーズだ。長い。
だから、「59冊を読んだ上での宗教対談」なのだ。
2人は、それを読破した。そして感じること、考えることが多かったので、対談しようと思ったのだ。
では、その「3つ」だ。
①高橋和己『邪宗門』(河出文庫)
②芹沢光治良『人間の運命』(全18巻)
③谷口雅春『生命の実相』(全40巻)
この59冊だ。『邪宗門』は、大本教をモデルにしている。巨大な宗教だったが、「不敬」な言動があったとして国家に弾圧された。それをモデルにしている。
最後は国家権力に抵抗し、闘い、そして最後は、断食して自決する。
この本は文庫でかなり厚い。又、今のエンタメ小説と違い、スラスラ読めるものでもない。
でも、高木あさ子さんは、この本を買って一気に読んだ。オウムなども想起されるし、ついつい惹き込まれて、最後まで読んでしまったという。
8月29日にも、あさ子さんが来てたので、私は表彰をした。
かなり難解な小説だと思うが、この文庫に挑戦し、読破した。これは文句なしに偉い。そう思って、表彰したのだ。
そして、山本直樹の『RED』(講談社)を賞品として渡しました。アーチャリーも今、『邪宗門』は読んでると言ってました。
では、②の『人間の運命』だ。今まで、いろんな出版社から出ているが、2年前に、勉誠出版から「完全版・人間の運命』が出版されている。
沼津にある「芹沢光治良記念館」にも行ってきた。勉誠出版の完全版の案内にはこう書かれている。
〈明治・大正・昭和の激動の世紀を、日本人はいかに苦難と苦悩の道を歩み、希望をつないできたのか。時代の証言として拓く近代史〉。
芹沢を思わせる主人公・森次郎が生きた時代を活写し、膨大な日本の歴史になっている。それと同時に、〈宗教〉を考える小説だ。大長編だ。完全版「刊行の辞」ではこう書かれている。
〈フランス文学の精華に、大河小説を逸することはできない。よく知られたロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』全10巻。マルタン・デュ・ガールの『チボー家の人々』全8部11巻などがある。日本の近代文学はヨーロッパ文学の影響を受けて発展したが、これらに追随できる作品を、長く持つことはなかった。宿願ともいえるそれを果たしたのが、芹沢光治良の『人間の運命』全3部14巻である〉
さらに後に、続編を書き、手を入れ、16巻にし、別巻2を加えて完全版・全18巻にしたのだ。
これだけ長い小説はあまりなかった。日本の長編小説としては、中里介山の『大菩薩峠』。尾崎士郎の『人生劇場』。五木寛之の『青春の門』。北杜夫の『楡家の人々』などが思いつく。(私はその全てを読破した。得たものは大きい)。
しかし、これらの長大小説と違うところは、『人間の運命』には宗教者としての物語があるからだ。いわば、日本における「聖書」物語のようだ。
お父さんは天理教の伝道師だ。信仰のために家の財産を全て献金してしまう。
そして極貧生活を送る。大正14年に森次郎は農商務省を28才で退職し、フランス留学のために旅立つ。
加賀乙彦(作家)は、これは「日本の代表的大河小説」だと言う。フランスに渡り、森次郎の内面の苦悩が時代との関係でより詳細に表現されている。と言う。
〈ロシア革命がおこり、第一次大戦がドイツの敗北で終わる世相などが、その時代を生きていた人でないと描けない細密描写で再現されている。これは大正末期から始まって、日中戦争、紀元二千六百年の東京、右翼の台頭、米英との戦争、空襲、敗戦という時代に翻弄される、主人公次郎の苦悩する姿が見事に表現されている大河小説の傑作である〉
そして、物語の底流としては、〈宗教〉がある。宗教とは何か。人間と神との関係。どこまで献身的に生きるべきか。が問われている。
教団はいつも、信者に献金を求める。信じているだけではダメだ。献金し、布教し、そのことで信仰に触れた「感謝」を形にしなければならない。そう説く。
でも貧しい人間はどうするか。中には、娘を売って、その金を教団に献金する者もいる。その人は、よくやったと褒められる。
しかし、神様はどう思うのだろうか。これは信仰の逸脱ではないのか。そんなことも考えさせられた。
さらに、③の『生命の実相』だ。私は高校時代に読んで以来、ずっと読んでいた。
大学に入り、「生長の家学生道場」に入った時、先輩に言われた。「まず『生命の実相』を読みなさい」と。そして、夏休みの1ヵ月で読破した。多くのことを得た。
それから、10年に1度は、全集を読破してる。最近では、2010年に読破した。新しく買い、読破した。
その時に読んだ40巻を「再生」の高木氏にあげた。それを高木氏は、半年で読破したという。
これも「現代の聖書」だ。谷口先生の自伝があるし、信者との座談もあるし。心の持ち方などの話もある。「病気はない」「人間は神の子だ」と書かれている。
又、「自伝篇」「戯曲篇」「霊界篇」など、独立した書としても興味深いものがあります。日本教文社から発行されています。いろんな版がありますが、「頭注版」(40巻)は一番読みやすいです。1巻が1000円ですから、全部で4万円です。
〈一読して人間の無限価値がわかり、人生一切の苦悩を滅尽して光明生活を実現する生長の家の聖典〉
と書かれています。 以上あげた「3つ」をテキストにして、宗教について高木氏と話し合ってみようと思ってます。
又、それが終わったら、次は、遠藤周作、三浦綾子の作品の話もしてみたい。
『聖書』についても。宗教ではないが、『古事記』『日本書紀』などの神話についても話してみたい。
ここでお知らせです。福島みずほさんと、ずっと対談をしてきましたが、それがまとまって本になります。今週、見本が出来る予定です。福島みずほ、鈴木邦男対談『戦争を通すな!』(七つ森書館。1500円)です。詳しくは、来週に。
長い間、撮りためていた写真のうち、舞台関係だけを展示した。素晴らしいし、迫力がある。写真を見て、さらに平早さん本人に解説をしてもらいました。贅沢な写真展鑑賞でした。
そのあと新宿で取材。
夜は柔道。
①8月29日(土)劇団「再生」が見沢知廉原作の『天皇ごっこ~母と息子の囚人狂時代』を上演しました。その前に「再生」代表・高木尋士氏、アーチャリー、私でプレトークを行いました。その直前です。見沢知廉氏の写真の前で。私、アーチャリー、高木氏です。
⑦「では皆で写真を」と言ったのに、あづささん、平田君とも無視してメールしてます。左の人も、ソッポを向いてます。面白いTシャツですね。「EAT ME」だって。「私を食べて!」というんでしょうか。フォークも用意されてます。挑発しています。
⑧高橋和巳の『邪宗門』(河出文庫)を読んだ、あさ子さん。偉いです。ありがとうございましたと(高橋和巳にかわって)礼を言いました。そして、皆の前で表彰しました。記念品として山本直樹の『レッド②』(講談社)をあげました。これからも頑張って下さい。
⑨見沢知廉氏の本を、5冊も買った人がいました。偉いですね。頑張って読んで下さい。空手をやってたといいますから、根性はありそうです。見沢氏の本は全巻読破したいと言ってます。「電車の中で痴漢に遭いたい。空手の腕を試したい」と物騒なことを言ってます。
⑳8月28日(金)午後5時半。講道館で行われた「武道懇談会」に参加しました。村田直樹先生がお話してました。先頃、上村館長らと共に、ブラジルに柔道指導で行ってこられました。「日伯修好120周年。講道館柔道講習会」です。その報告をしてくれました。興味ある話が聞けました。終わって、午後7時より「串八珍」で飲みました。
㉑一水会機関紙「レコンキスタ」第436号(9月1日号)の一面に私が出てました。8月10日に一水会フォーラムで講演した内容です。レコン1面に載るなんて、久しぶりです。「レコン」創刊号(1975年)に1面に原稿を書いたので、それ以来かな。
㉒「再生」の高木尋士氏と今度、宗教対談をやります。高木氏は『生命の実相』全40巻を読んだといいますし。又、芹沢光治良の『人間の運命』(全18巻)も読んだといいます。これらを通して、人生観。世界観。政治…などについて語り合いたいです。
㉓8月22日から始まってます。9月27日までです。「百年の愚行展」です。「Arts Chiyoda」です。この展示会を記念して、9月25日(金)午後7時より、小崎哲哉さんと私のトークがあります。「愛国心とは何か?」です。
㉔現在新宿駅地下の「ベルク」で平早さんの写真展が行われています。それを記念して代官山の「山羊に聞く?」で、平早さんのトークを行います。9月11日(金)午後7時か。「平早勉写真展開催記念=映像の影を言葉に」です。大久保鷹さん。榊芽久美さん…など演劇陣の他に、私も出ます。
㉕10月3日(土)。〈世界死刑廃止デー企画。響かせあおう 死刑廃止の声 2015〉が開かれます。午後1時半より。渋谷区文化総合センター大和田6F伝承ホールです。元法務大臣が2人出席し、「2人の選択=法務大臣にできたこと。できないこと」です。これは貴重です。