福島みずほさんとの対談本が書店に並んでいる。9月15日(火)、全国発売になった。『戦争を通すな!』(七つ森書館。1500円)だ。
又、格闘技コーナーには、月刊『秘伝』(10月号)が並んでいる。表紙は俳優の榎木孝明さんだ。
特集は〈心法〉だ。〈「マインドフルネス」で気づく“強い自分”〉。
その特集の中に私が出ている。
〈「不食の心得」榎木孝明に鈴木邦男が直撃!〉
いいですね。このタイトルも。「1ヶ月の不食」を完遂したばかりの榎木さんに私が聞く。
「1ヶ月、たべない」。どうしてこんなことが出来たのか。命の危険もあるのに…。そして、得られたものは何なのかを聞いた。
6ページの対談だ。いや、私が榎木さんにインタビューしたのだ。
榎木さんは画家でもあり、全国にアトリエを持っている。それに榎木さんは武道の達人でもある。柔道3段、合気道3段の私が挑戦し、ポンポンと投げ飛ばされた。何度やってもダメだった。
その様子も連続写真で載っている。さすが武道雑誌だ。これは驚きの体験だったし、いい記念になった。
では、福島さんとの対談本について。
今年5月の連休をはさんで4回ほど対談した。議員会館の部屋で。会議室で。街の喫茶店の会議室で…と。
初めて会った時、大きな日の丸を持って現れた。あれっ、どうしたのかなと思ったら、何と、お父さんが戦争に行った時、持って行った日の丸だ。
「武運長久」「米英撃滅」と大きく書かれている。そして多くの学友たちの寄せ書きが。
戦地で米軍の手に渡り、そして戦後、福島さんのもとに帰ってきた。この衝撃的な話から対談は始まっている。
福島さんと2人でこの日の丸を持っている。これが初めのページに掲げられている。ここに福島さんが書いている。
〈特攻だった父は戦後、「人に死ねと教えて、自分が生き残ったのはなぜだ?」と、教官だか先生を問い詰めたと聞いてます。父はアメリカから還ってきたこの旗を見ていないんです。その半年前に亡くなってしまったから〉
この「還ってきた日の丸」から話は始まった。まるで「愛国対談」だ。今は、あまりにも「愛国心」が軽々しく語られ、「にわか愛国者」が量産されている風潮を2人とも苦々しく思っていた。本当は、「自分こそが愛国者だ」という思いがある。その思いを語った。福島さんは言う。
〈「愛国心」という言葉は劇薬で、アンタッチャブルのようなところがあって、水戸黄門の印籠のようなものかもしれない。「これが目に入らぬか!」といわれると、中身を確認するわけでもなく、ハハア〜って土下座しなくてはいけないような〉
そうなんですよね。「愛国心」は「心」だ。心の中に大事にしまっておけばいい。そして行動で示せばいい。
それなのに、「俺は愛国者だが、あいつは違う!」「中国、韓国をやっつけろ!」と叫ぶ。「排外主義」を「愛国」と勘違いしている人が多い。
そんなものは愛国心ではない。愛国心からは最も遠いものだ。日本の精神は「大和」だ。和の心だ。
福島さんのお父さんは、日本復興の願いを込めて、娘に「みずほ」と名付けた。「瑞穂の国」とは日本の美称だ。豊かに稲穂が実り、波うっている。それが、「瑞穂」だ。日本だ。
生まれながらにして「愛国者」だ。そのことも正直に語ってくれた。
この本は、大きく2つの章から成り立っている。「chapter1」は「愛国有理」。こんな見出しが並んでいる。
「アメリカ移民のファミリーヒストリー」
「父の戦後は、余生だったのかもしれない」
「愛国心は自己申告」
「幻想・錯覚の国家」
「ヘイトスピーチは警察の別動隊」
「脱右翼宣言」
「chapter2」は「NO PASARAN!」だ。この言葉は、表紙にも書かれている。「奴らを通すな!」と訳も入っている。
なぜ、この言葉を選んだのか。「あとがき」で福島さんは、こう書いている。
〈スペインで、フランコ政権に反対した人々は、「NO PASARAN! 奴らを通すな」と反ファシズム統一戦線で、闘いました。自由や民主主義を制限し、破壊しようとする者達に対抗し、闘うために、さまざまな人たちと手をつなぎたいと心から思ってます。その一人が間違いなく鈴木邦男さんです。頭ごなしに抑圧される社会、理屈が通らない社会、一部の為政者が勝手に決める社会はごめんだと手をつないでいきます〉
ありがたいお言葉です。福島さんは愛国者です。そして勇気があります。例の「戦争法案」発言についても、こう言ってます。
〈私が、参議院の予算委員会で発言をした「戦争法案」という言葉は、自民党から不適切であるとして削除要求を受けました。私が削除要求を拒否をし、結局、平行線のまま議事録がアップされました。これは、国会議員の言葉狩りです。本当に戦争をするようになったら、「戦争反対」と国会で質問したら、不適切と言われるのではないでしょうか〉
その通りですね。自衛隊を海外に出し、米軍と一緒になって戦争をしようとしている。まさに「戦争法案」だ。それなのに、こんな言葉の問題にピリピリして文句を言う自民党もだらしがない。
では、この本の「chapter2」だ。こんな見出しが並んでいる。
「戦争は平和」
「言葉を奪われるな」
「日本の男に憲法24条はつくれない」
「死刑廃止は日本の伝統文化」
「日の丸が泣いている」
あとは、実際に、この本を手に取って読んでみて下さい。前がき、あとがきは、こうです。
「prologue。夢を持て、理想を語れ!」鈴木邦男
「Epilogue。自由を奪われるな」福島みずほ
では次に、『秘伝』(10月号)だ。俳優・榎木孝明さんに私が突撃取材をしたのだ。
福島さんと同様、「意外な取り合わせ」だと言われた。
しかし、私はどうしても話をしたかったし、聞いてみたかった。
「1ヶ月の不食」についてはテレビ、週刊誌を初め、多くのメディアに出て語っている。
しかし、この『秘伝』が一番詳しいし、本質をついてると思う。たっぷり時間をとってくれたし、又、「実技」つきだからだ。
わざわざ畳の部屋で話を聞き、「武道家」榎木さんの面も十分に見せてもらった。
私は何度、挑戦してもポンポンと投げ飛ばされてしまう。
榎木さんは薩摩示現流の達人だし、「気」を使って、どんな大男でも投げ飛ばす。柔道3段、合気道3段の私がまるっきり赤ん坊扱いだ。
さらに今回は、相手に気を入れる。気を散らす。という魔術的な技も見せてくれた。
不思議だ。そうした武道の心得があるから「1ヶ月の不食」も出来たのだろう。
そして、「常識に囚われた」我々とは違う。そこから抜け出した自由な境地に飛べるのだ。そのことを感じた。
インタビューは6ページだ。かなり、しつこく私は聞いた。
さらに、榎木さんに投げ捨てられる写真もバッチリと載っている。連続写真で。そして、解説入りで。武道雑誌だけあって、その点は詳しいし、正確だ。
どうやって相手を崩し、倒すのか。脱力することによって、かえって強くなる。気をどう入れ、どう散らすのか。…も書かれている。
このインタビューのタイトルはこうだ。
〈「不食」「引き際の美学」「潜在能力の引き出し方」について語る〉
〈“心の常識”に囚われない! そこから生まれる可能性〉
この「心の常識」にはショックを受けた。
「食わないと死んじゃう」「8時間、寝ないとダメだ」「生き埋めになったら70時間が勝負だ」…と。こんな「常識」に囚われている。
それは違う!と榎木さんは言う。「力を入れたら、抑えられる」と思っている。逆だ。
脱力した方が人間を動かせる。それを実演してみせる。連続写真で。
そこにこう説明が入っている。
〈榎木氏と鈴木氏が初めて会ったとき、鈴木氏が武道経験者などを「力を入れずに投げていたことが印象に残っている」と鈴木氏。今回の取材に対して、鈴木氏は3年ぶりに榎木氏に投げられた。脱力し、また気配を消すと、簡単に相手を倒し、投げることができる〉
実際にやられてみないと分からない。いくら頑張ってもダメだった。3年前に投げられている。
それから、いろいろ考えた。こうしたらいいのでは…と。
ところが、全くダメだった。いくら考えても分からない。
さらに、もう一つ、凄い技をかけられた。これも連続写真が載っている。そして〈「気の作用」を使う〉と書かれている。
これは離れた相手をコントロールする。
右は「気を入れる」3枚の写真。左は「気を飛ばす」2枚の写真。
編集部の説明はこうだ。
〈身体への作用として、「気」がとても重要な要素であると、榎木氏は言う。右列は、①〜②正対する相手に「気」を入れると、③胸の部分を押しても、動くことはない。左列は①「気」を飛ばすと、②軽く押すだけで、相手は後ろに崩れてしまう。「自分の『思い』によって相手に『気』を入れ、また『気』を飛ばすことができるんです」と榎木氏〉
これは一体何なんだ!と思った。
離れて、相手に「気」を入れて、相手を強くすることが出来る。
さらに、その「気」を飛ばすと、もう、その相手は弱い。小指1本でも倒せる。
これは不思議だった。私がやられたんだから、分かる。
飛ばされ、倒されたのは事実だ。「気」を入れた。「気」を飛ばした。と言う。
しかし、なぜ、そうなるのかは分からない。自分がやってみても出来ない。協力して、倒すことなんて出来ない。
「誰でも出来るんです」と榎木さんは言うが、私は出来ない。
又、今度会った時に、挑戦し、しつこく聞いてみようと思う。
そうだ。9月17日(土)には、代官山で、武術家の甲野善紀さんに会った。
そこで、身体の動き・使い方について講習していた。
『秘伝』を読んでいた。「榎木さんに武術を教えたのは甲野先生ですか?」と聞いたら、「いや、榎木さんは昔から示現流をやってたし、随分と研究してるんですよ」と言う。
でも、お二人は仲がいいし、アドバイスし、刺激し合っているのだろう。
内田樹さんもそうだ。格闘家の須藤元気さんは甲野さんに教えてもらったというし。この日は、久しぶりに甲野さんに何度も投げ飛ばされた。
柔道3段、合気道3段なのだが、全くダメだ。何度、挑みかかっても、投げ捨てられる。
しかし、受け身は出来るから大丈夫だ。
今年は、内田樹さんと本を出したし、榎木孝明さんと、『秘伝』で対談した。
又、甲野善紀さんともこうして会って、教えてもらっている。
活字・理論の世界だけでなく、そこを超えた肉体・武道の世界でも教えてもらっている。
これは幸せだと思う。私の書くものも影響されるし変わるだろう。さらに深く。さらに高く、勉強する課題が沢山ある。
日本ではなぜ出来ないのか。それをやると歯医者が失業するからなのか。根本的な問題を話してくれる。終わってから、私もいろいろと聞きました。
経営塾が終わって、ポレポレ東中野へ。東京の予備校の生徒たちが、福島に行って被災農家の話を聞いて、考える。そんな映画が出来た。「大地を受け継ぐ」だ。井上淳一監督作品だ。この日は特別上映会。それを見る。とても素晴らしい映画だ。満員だった。
上映後、監督と出演した生徒たちが挨拶をする。
終わって、近くの居酒屋で打ち上げ。
保阪さんは、昔から知っている。三島事件や日本の右翼思想についても書いている。5.15事件や橘孝三郎についての本もある。この本もいい。戦争・戦後史では、一番、活躍している。
7時に終わり、急いで代官山へ。「晴れたら空に豆まいて」で武術家・甲野善紀さんの講座がある。途中から入ったが、「いい所に来た」と相手をさせられ、投げ飛ばされた。
凄い人だ。武術を通しての体の動かし方を、他のスポーツや介護の世界にも応用して教えている。重い人間をどうやって抱えて移動させるのか。その実践もやってくれる。
又、人間の押さえ方、倒し方、その防御法なども。『秘伝』では榎木さんに投げ飛ばされるし。今年出た内田樹さんの本でも、合気道で投げ飛ばされた。おかげで、身体は調子がいい。
しかし、この3人は、何をしてもかなわない。凄い先生たちだと思うし、現代の「サムライ」だと思う。
最終電車の頃まで、甲野さんの話を聞き、実技を教わった。
⑪首の歪み、痛みを治してあげると言われて。でも、日本刀で斬るんです。ポンと叩くのでしょうが、怖いです。ズドーンともの凄く重く感じました。でも、首が楽になりました。「私にも」「俺にも」と希望者が続出でした。
⑲新発田市にある「蕗谷虹児記念館」には、いつも行ってます。三島由紀夫の豪華本『岬にての物語』は蕗谷が表紙、そして中の挿し絵を描いてます。これも展示されてます。これだけを見に来る「三島ファン」も多くいるそうです。
㉒9月16日(水)正午から。ザ・キャピタル東急ホテル。「第340回経営塾フォーラム」に出ました。志賀俊之さん(日産自動車取締役副会長)の講演で、「グローバル化と企業文化」。知らない世界の話なので、とても勉強になりました。終わって、いろいろと話を聞きました。グローバル化、そして車の「自動運転」などの話は特に興味深かったです。
㉓浜田和幸さんが、質問してました。「自動運転」は、車だけでなく、政治や経済にも使えるんですか?と。凄い発想をする人だ。浜田さんは、「議員は何百人もいらない。自動化したら、議員は7人で済む」と言ってました。
㉔9月11日(金)、代官山の「山羊に聞く?」。「平早勉さん写真展開催記念トークイベント」。(左から)鈴木、大久保鷹さん(役者)。榊芽久美さん(女優)。平早勉さん。そして、この日、特別出演の三坂知絵子さん(女優)。
㉙9月14日(月)。明治大学リバティタワー。〈青木昌彦・姫岡玲治を偲ぶ会〉が開かれました。2人を偲んでるのではなく、1人です。ペンネームが姫岡で、本名は青木です。60年安保闘争時の伝説的な活動家で、理論家です。その後、アメリカに渡り、経済学者になり、ノーベル賞を取るか、とも言われました。とんでもなく優秀な人がいたんですね、学生運動の世界には。惜しくも今年、7月15日、米スタンフォードにて亡くなりました。77才でした。
㉝『宿命』を書いた高沢皓司さん(作家)も来てました。私は、何度か病院にお見舞いに行ってます。「大丈夫ですか?」と思わず聞きました。「お付きの人は?」と聞いたら、「1人だよ」。1人で、歩いて来てました。
㉟昼間たかしさんの新著『コミックばかり読まないで』(イーストプレス)は面白いし、衝撃的な本です。宮台真司さんが推薦の言葉を書いてます。私も書いてます。この出版記念イベントが9月30日(水)、新宿ロフトプラスワンで行われます。私も出ます
㊱福島を描いた映画「」が完成し、特別上映会が9月16日(水)午後3時半より、行われました。ポレポレ東中野で。上映は来年2月だそうです。井上淳一監督が挨拶しました。井上監督は若松孝二監督の助監督をしてました。熱いアジテーションでした。