断捨離の本を読んで部屋を整理していた。
不要になった書類は思い切って捨てる。読んだ本は人にあげる。どうしても必要な本だけは取っておく。
いつか読もうと思って買った、高価な本も、かなり売った。
これはお金がなくて売ったのだ。それを買った人がいて、懐かしいような、恥ずかしいような気持ちだ。
自分の都合で娘を売った酷い父親のようだ。申し訳ない。
書類や本を整理していて、つい読み耽ったりもする。まあ、これもいいだろう。
『本棚が見たい!3』(ダイアモンド社)を見つけた。
これはいい本だ。私も取り上げられ、本棚の写真が載っている。ありがたい。光栄だ。
どんな人が載ってるのだろう。本の帯には「…の本棚」と10人以上の名前が出ている。
〈橋本治、唐十郎、清水義範、櫻井よしこ、 C.W.ニコル、有田芳生、勝目梓、市川崑、大森一樹、大槻ケンヂ、森本哲郎、生島治郎ほか〉。
私はこの「ほか」に出ている。
「エッ! 大槻ケンヂさんの本棚も出てるのか」と驚いた。かなり昔に出た本なので、忘れていたんだ。
いつ出たのかな。1998年2月初版だ。今から17年前か。
でも、その前に月刊「ダイアモンド・エグゼクティブ」に連載され、それをまとめたのだ。
大槻さんは1998年1月号(17年前)。私は1996年10月号。
今から19年前だ。そうか。この頃はいい本が沢山出ていたんだ。
パソコンや携帯がなかったからだ。本を読む人が多かったし、考えていた。
大槻ケンヂさんの本棚の写真が載っている。格闘技とUFO、推理ものが多い。アーティストなのに、音楽の本は余りない。
松田隆智の『謎の拳法を求めて』。堀辺正史『ザ・喧嘩学』なんて本もある。『嗚呼風雪空手道』『古流武術概論』などもある。『空手バカ一代』は全部ある。
又、UFO、超能力、宇宙人の本も多い。『オカルトがなぜ悪い!』という本もある。
さらに、シャーロック・ホームズ全集。江戸川乱歩全集…がある。現代書館の「フォア・ビギナーズ」シリーズもある。『ライヒ』『フロイト』『観音経』…などだ。幅広く読んでる。いいことだ。
今、気がついたけど、この『本棚が見たい!3』の帯にこんなキャッチコピーが書かれていた。いい文章だ。
〈鳥が木の枝を一本一本くわえて巣をつくるように、読みたい本を一冊また一冊と買ってきては書物の壁を築いていく。気がついてみるとそこに“わが精神の巣”ができている…。(本書内容より)〉
ウーン、いい言葉だ。そうだよね。
私たちは鳥だ。だから翼があって、右の翼が大きいか、左の翼が大きいかで、分類されている。
私もよく「翼くん」と言われている。
たかじんさんに放送中に言われたことがある。「はい、では次に“キャプテン・右の翼くん!”」。
思わず笑っちゃいましたね。「キャプテン翼」は知ってたけど、「右の翼くん」、だなんて。
でも、この本の帯だ。『本棚が見たい!3』だ。鳥が巣をつくるように…は誰の言葉だろう。
編集者か、あるいは、そこに出ている人か。大槻さんか。少なくとも私ではない。こんな、洒落た言葉は言えない。
まるで詩人だ。コピーライターだ。じゃ、唐十郎かな。橋本治かな。もう1回、読んでみよう。そうしたら分かるだろう。
さて、「大槻ケンヂの本棚」だ。本棚の写真が出て、そのあと、大槻さんの話が載ってる。
まず、取材した人のリードがある。
〈連載が始まってからご登場いただいたのは89人。これまでのところ大槻さんが最年少である。まして格闘技やらUFOの本が目立つ本棚を前にして思わず退(ひ)いてしまいそうになったのだが、定番メニューともいうべき読書史の詮索を始めてみて安堵した。「このごろマニアっぽい雑誌ばかり読んでいて、そのぶん読む冊数が減ってるようなんです。本読みとしちゃ、よくないですよね」。“本読み”なんて、ごく自然に飛び出してくると何となくホッとする〉
ヘエー、“本読み”って言葉があるのか。私なんて使ったことがないな。
月に30冊読むくらいでは、「本読み」とは言わないのかな。
大槻さんの話だ。高校の頃、安部公房にのめり込んで、『第四間氷期』とか『箱男』とかを読んでいた。
授業中も机の下に本を隠して読んでいた。ある時、教師に見つかった。叱られると思ったら、「おまえ、こんな本を読んでるのか」と逆に誉(ほ)められてしまった、という。
うん、これは分かる。でも、山上たつひこの『がきデカ』も好きで読んでたし、安部公房も、山上も、同じように想像力を刺激してくれる。そう思って読んでたという。
小学校時代は江戸川乱歩にはまっていた。『パノラマ島奇談』『二銭銅貨』『D坂の殺人事件』など代表作はほとんど読破したという。早熟な子供だったんだ。
中学に入ると一気に「読書少年化」する。三田誠広、筒井康隆、平井和正、南伸坊、橋本治、椎名誠、赤瀬川原平、沢木耕太郎、高橋三千綱、村上龍、村上春樹…。を読み漁ったという。これも凄い。
「こう言う人たちがワーット出てきた時代にたまたま遭遇したんであって、読書傾向を聞かれると困るんですよ。同じ時代の連中と話していると、青春の通過儀礼みたいな小説は共有してるんですよ。たとえば村上龍さんの『コインロッカー・ベイビーズ』とか」
そうか、青春の通過儀礼として読んだのか。いいねー。
今の若者たちは本を読んで通過儀礼なんてないよ。携帯だし、パソコンだ。そして、女だ。
オラたちの通過儀礼はなんだったのかな。「万引き」と「喧嘩」かな。最近はやってないな、両方とも。
大槻ケンヂさんはミュージシャンであると共に、作家でもある。フランス文学者の鹿島茂さんは『週刊文春』のコラムで「大槻ケンヂを読め!」と書いてたそうだ。
それを読んで、この取材者は、「思わず拍手してしまった」と言う。
さらに。
〈とりわけ本棚探検隊のお薦めは『のほほん流読書のすすめ』(角川文庫『のほほん雑記帳』所蔵)。なにしろ夢野久作の『ドグラ・マグラ』、三島由紀夫の『仮面の告白』、太宰治の『晩年』と、『UFO 超能力大図鑑』、『地球の歩き方』といった本が等価の読書論なのだ〉
そうか。知らなかった。読んでみよう。大槻さんは言う。
〈『ドグラ・マグラ』も凄い小説ですよね。最初は食いつきが悪くて、三度トライしてやっと読み切ったんですが、読み終わっても謎ばかり残る。その不思議さがたまらない小説ですね〉
大槻さんは深いね。この本(『本棚が見たい!』)が出た時は、大槻さんのことは知らなかった。
その後、いろんな所で会って、いつもミュージシャンとして理解していた。「本読み」として見なしてはなかった。
今、この本を再読して、全く別な魅力を感じた。
それでスマホからメールした。「今、読み返してみたんですが、とてもいいですね。“本読み”の大槻さんと、どこかで対談したいですね」と言ったら、すぐに返事が来た。
「今日は阿佐ヶ谷のロフトに出ます。これから向かいます」と、「じゃ、会いに行こう」と思い立ち、行ったんですよ。
それが、一番初めの写真です。だからこの『本棚が見たい!3』を私が持ってます。そして開いてるのは大槻さんのページです。
大槻さんが持ってるのは内田さんと私の対談本です。
そうだ。私の「本棚」の話もちょっと付け加える。
「本の虫」で、月に30冊は読んでる。「元祖ノルマ読み」だという。
いえいえ、「元祖」じゃない。他の人は公言しないだけで、ノルマを決めて読んでる人は多いだろう。
「1日4時間は読書する」「1日1冊読む」「月に50冊読む」「月に1万ぺージ読む」という人もいた。300ぺージの本なら30冊以上だ。
中には、「月に30キロは読む」という人もいる。でも箱に入って、ただ重たい本もあるし…。
みやま荘に取材に来た記者が書いている。
〈読書の守備範囲も広域にわたる。事実、東京のご自宅で、本棚を拝見している合間に、探検隊に紹介してくれる「最近、この本がおもしろかったですよ」の多いこと。本の山から取り出す『日本文壇史』(伊藤整。講談社文芸文庫)。『日本博覧人物史』(紀田順一郎。ジャストシステム)。『基礎日本語辞典』(森田良行。角川書店)に始まり、漫画や演劇にまで広がっていく。帝国劇場で「芍薬の花」の舞台を見れば「原作者の泉鏡花の作品を全部読んでやろう」と思い、実行してしまうところに本の虫の一端がうかがえる。しかし、併読・乱読・ノルマ読みが主の部屋にしては意外なほど小ざっぱりと片付いている。そこかしこに小さな山の本があるものの、書架の数はテーブルと同じ三本に過ぎない〉
「本の虫」のわりには本がないじゃないか。という失望があらわれている。
私が説明する。
「ほとんどの本は昨年の暮れに仙台の実家に送ってしまいました。この部屋では原稿を書くことを主にしようと割り切ったのです。気分によって机を変えながら書いてます」。
〈となると、本棚探検に行かざるをえない。聞けば仙台に送るまでは六畳間にスチール本棚で15本分の蔵書があったとか。いやがうえにも杜の都への期待がふくらむ〉。
そうなんですよ。みやま荘に来たってムダだ。ほとんど本はないし。これじゃ『本が見たい!』になりませんよ。
「もっとも仙台まで行くんなら別ですが」と言ったら、即座に「行きましょう」と返事が返ってきた。
だから、翌日、一緒に仙台まで行った。
そうそう、「なぜ、みやま荘に本がないか」だ。
スッキリして原稿を書きたい、という理由もあるが、本が多すぎて、家が潰れそうだ。
それに、どこに何があるか分からない。「確か、この辺にあったはずだが」と思って探して、1週間探しても分からないことがある。
だったら、図書館に行った方が早い。あるいはネット古書店で買うとか。
そうだよな。「整理されてない資料は、『ない資料』なんだ」と思った。それで仙台の実家に送った。
仙台の家の中には、広い土間がある。昔、米屋をやってた時の店の部分だ。
でも先祖が米屋じゃなくて、父親が税務署勤めで全国を回り、辞めて郷里に帰ってきた。その時、仙台で借りたのがこの家だ。
元米屋だという。大きな土間がある。
私は、段ボールで40箱くらい送って、土間にそのまま積んでると思ったら、本棚を買って、整理してくれたのだ。それが、写真に載っている。
その実家も今はない。父母も亡くなり、家も売り払った。
私の2万冊の蔵書も本屋に売ったり、兄や弟が(大事そうな本は)引き取ってくれたり…。
ともかく、この本に載った本棚はない。この本の中だけにある。そして、私のイメージの中だけにある。
だから、『本棚が見たい!3』は実にありがたいし、貴重な本だ。
出来たら、「通行」出来たらいいのにね。この本の中にビョンと入り込み、本を読む。疲れたら又、みやま荘に戻ってくる。
では、時間を戻して、仙台だ。
『本棚が見たい!』のスタッフやカメラマンを連れて、ゾロゾロと仙台の実家に帰ってきたので、母親も驚いていた。
記者は書いている。
〈さて、仙台である。歴史を感じさせる天井の高い民家には懐かしさを感じさせる落ち着きがある。しかし板張りの部屋に案内されたとたん、探検隊一同の口から悲鳴にも近い驚愕の声が上がった。そのボリューム! とりわけ古書店を想起させる全集ものの多さ。整然と並んだ新書や文庫の類も全巻揃っているはずだ。『ぼくが大学生のときに中央公論社の『世界の名著』(全81巻)、河出書房の『世界の大思想』(全45巻)などが出て、それを全部読みました。毎月一冊くらいずつ出たので、飯を食わなくても買いましたね』
他に全集本は筑摩の『現代日本思想大系』『戦後日本思想大系』、河出の『世界思想教養全集』『世界文学全集』などが並び、いずれも全巻通読しただけでなく、再読したものもあるという。著書の中で、『読書もある意味では格闘技』と語るのもむべなるかな〉
この取材に応じた時は、私は専門学校と予備校で教えていた。週刊「SPA!」でも連載していた。
母親も、「やっとマトモな生活に戻った来た」と喜んでいた。
〈そんな鈴木さんにとって、予備校と専門学校で教鞭をとるようになり、時を同じくして一般誌への連載が始まった二年前は大きな転機だった〉
「学校で教えていると絶対に必要な本がありますから、いまは30冊にこだわりません。月20冊ぐらい、生徒に教えるためにも、一回読んだ本でも読み返してみようと思って、漱石や芥川などを全部読みました」
そうだね。太宰治、川端康成、井上靖。など全集で読んだ。
又、児童文学を読んでなかったので、いい年をして、「全集」を読んだ。『ピノキオ』『小公子』『ガリバー旅行記』…などだ。
学生時代に読んだ思想書、哲学書を見つけて再読したこともある。
〈ただし、以前の書き込み内容と再読の印象が異なることが多く、重複してでも必要なものは新しい本で読むべきだと認識する。また、手元に多くの本があると著書の中で引用が多くなる。「自分がないなあと思ったのです。一回全部捨てなくちゃダメだろうと思った」こともきっかけになり、過去の本は仙台に送ることに決めたという〉
かつての私の本棚は、この本の中にあります。この本の中にしかありません。「幻の本棚」は、こうして今も残っているのです。
『本棚が見たい!』は1〜3巻まで出ている。もう一度、読み直してみようと思い、今、ネット古書店で探して申し込みました。
全巻読破したら又、報告しましょう。
昨日、夕張に行って、炭鉱の跡地、「幸福の黄色いハンカチ」撮影地、そして「坂本九ちゃん思い出記念館」を見てきたんです。そしたら、今日、娘さんの大島花さんに会えるなんて。
会場は満員でした。福島みずほさんなど多くの人に会いました。寮美千子さん(詩人・作家)にも会いました。
「二人とも池上彰さんの本『先生!』に出てるんです」と人権センターの人が紹介してくれました。池上彰編の『先生!』(岩波新書)には太田光、平田オリザ、押切もえ…など27人が書いてます。
寮美千子さんは、『詩が開いた心の扉』を書いてます。少年刑務所を慰問して、詩の話をし、詩の指導をし、少年たちの書いた詩を読んでいる。頭が下がります。実に感動的な文でした。
私もこの本の中で書いてます。「巨大な疑問符を与えてくれた」。先生には叱られ、殴られ…。反抗し、疑問に思っていたが、その「巨大な疑問符」が、その後の生きる上での指針になった。ということを書いた。
午後、図書館。
夜、桜新町へ。内田樹さんのお母さんが亡くなり、そのお通夜に行く。
⑥11月28日(土)です。4時から。世田谷区「ビリケン・カフェ」で。「三島由紀夫と若松孝二と語る」。瀧沢亜紀子さん(話し手)。花田光さん(聞き手)。超満員でした。〈映画「11.25自決の日=三島由紀夫と若者たち」から。監督若松孝二と三島由紀夫とその時代を語る〉。花田さんは声優です。2人で映画の科白を語ってます。
⑨瀧沢さんは、この日のために「ワンカラ」に行って、声を出す練習をしてきたそうです。参考資料も沢山持ってきてました。「これはよかった」と見せてくれた本が。別冊太陽の「三島由紀夫」です。
「あっ! オラが金に困って売った本だ!」と叫びました。私が売ったブックオフで買ったと言ってましたし。2500円の本を私は250円で売って瀧沢さんは1000円で買ったそうです。椎野さんも、「鈴木さんが売った本を買った」と言ってました。じゃ、中間を通さないで、直接2人に売った方がいいのかな。
⑬11月29日(日)。夕張に行きました。炭鉱の跡は見れませんでしたが、いろいろ見て回りました。ここは、「坂本九ちゃん思い出記念館」です。亡くなってもう30年も経つんですね。日本中の人々に元気を与えてくれた九ちゃんでした。
㉕満員でした。このあと大島花さんのライブがありました。「上を向いて歩こう」など、お父さんの歌も歌ってました。しかし、偶然です。昨日は、「坂本九ちゃん思い出記念館」に行って。今日は娘さんの花さんに会えるなんて。花さんも驚いてました。
㉖帰り道、こんなポスターが。「国際手配中のよど号グループ」です。「似ている人を見かけた時は110番でお知らせください」と書かれています。「似ている人」どころか、「本人」たちと何度も会ってます。この7人のうち、6人と会ってます。北朝鮮に行った時に、何回も。亡くなったと言われてる岡本武さんもいますね。「死んだというのは嘘で、密かに日本に帰ってるんだ」と警察は思ってるんでしょうか。