世界騒乱だ。戦争状態だ。去年は「イスラム国」によって世界中が恐怖のどん底に落とされ、年があけると、さらに全世界で戦乱が勃発した。
自爆テロがある。戦闘機が撃墜される。北朝鮮では「水爆の地下実験に成功した!」と大はしゃぎだ。中国の制止も振り切ってやったのだ。
台湾は政権交代で、中国・台湾は一触即発だ。韓国も、国内に大きな問題を抱え、「慰安婦問題」では日本に妥協したと政府が突き上げられている。
日本国内ではバス事故があり、又、SMAPの解散で大騒ぎだ。
若者たちにとっては、北朝鮮やロシアの問題よりも、SMAPの解散の方がずっと心配だし、放っておけないのだろう。
そして国会では、民主党の議員が安倍首相に爆弾的な質問をやった。
1月12日(火)だ。「あなたは拉致問題でのし上がったのか?」と。又、北から帰ってきた5人の拉致被害者を「一時帰国の約束だから」と言ってもう一度、北へ帰そうとした。どうしてそんな酷いことを考えたのか? と質問した。
安倍さん、これにはキレた。「その本」と私と、どっちが本当か! 「私の発言、違うなら議員辞める!」とまで発言した。
「何もそこまで言わなくても…」と周りの自民党議員も思ったことだろう。
「あれ! この本は蓮池さんの本じゃないのか」と思って、見ていたら、確かにそうだった。
蓮池透さんの『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々」(講談社)だ。
しかし、一冊の本をめぐって、これだけの激論が交わされ、首相がキレたのだ。凄い本だ。
翌、1月13日(水)の「産経新聞」のトップにこのことが出ていた。
〈安倍晋三首相が12日の衆院予算委員会で声を荒げて激怒する場面があった。きっかけは、野党議員の「(首相は)拉致を使ってのし上がったのか」という誹謗中傷ともとれる質問。首相は当初、「議論する気にもならない」とかわしていたが、平成14年の拉致被害者帰国の経緯をめぐる自身の説明に異論をはさまれると「私の言うことが違っていたら、国会議員を辞める」と自らの進退にまで言及。夏の参院選を意識し、国益を度外視しても政敵の実績に傷をつけようと試みる野党の姿勢に、最後は堪忍袋の緒が切れたようだった〉
最後は、ちょっと感情的な民主批判のようだが、首相を怒らせた本について、こう書いている。
〈質問したのは民主党の緒方林太郎氏。緒方氏は、拉致被害者の蓮池薫さんの兄で家族会元事務局長の蓮池透さんによる著書『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)を引用。「拉致問題はこれでもかというほど政治利用されてきた。その典型例は安倍首相だ」との一節を紹介し、「首相は拉致を使ってのし上がったのか」と質問した。これに対し、首相は「その質問自体が、この問題を政治利用しているとしか思えない」と、努めて冷静に答弁した〉。
ここまでは首相も冷静だし、うまくかわしている。
ところが、日本に帰った5人の拉致被害者を「一時帰国したから北朝鮮に帰すか、あるいは日本に残すか。
首相は、「日本に残すべきだ」と促し、小泉総理の了解を取り5人の被害者は日本に留まりましたと自分のフェイスブックで説明していた。
〈これに対し緒方氏は、本の中に、首相は5人が北朝鮮に戻るのを止めようとせず、5人が日本に残る意志を曲げないため結果的に日本に残るため尽力したとする趣旨の記述があることを紹介し、真偽を正した。 首相は「他の拉致被害者に聞いてもらえばわかる。国論を二分しようという(北朝鮮の)策謀に引っかかってはだめだ」と反論〉
〈私が言ってることが真実だとバッジをかけて言う。違っていたら私は国会議員を辞める」と断言した。首相は緒方氏に「独自の取材を全くせずに、私の名誉を傷つけようとしている。極めて不愉快だ。1人の本だけで誹謗中傷するのは、少し無責任だ」とも述べ、怒りが収まらない様子だった〉
しかし、一冊の本をめぐって、これだけの議論がなされている。今までもないだろう。産経新聞の1面全部を使い、さらに二面、三面を使って、この異様な国会論戦を伝えている。
安倍首相は、この本は誹謗中傷だと言う。だったら、名誉毀損で訴えたらいい。
それに、こんなことも言う。これは「北の謀略」だと。いや、こんなことをしてると、「北の策謀」に引っかかると言う。
〈大切なのはすべての被害者を取り戻すことではないか。北朝鮮には常に日本の国論を二分しようという策謀がある。こんなものにひっかかっては駄目だ。あなたがこう言う質問をすること自体、私は本当に残念だ〉
これでは、まるで蓮池さんと民主党の議員が北朝鮮の策謀に乗せられている。と言ってるようだ。
安倍首相に反対するのは、皆「北のスパイ」になるのか。これはないだろう。
緒方氏は、これにひるまず、では、「蓮池さんは嘘を言っているのか」と追及する。鋭い。
それに首相が答えて…。
〈私は誰かを嘘つきとは言いたくない。私の言っていることが真実だとバッジをかけて申し上げる。私が言っていることが違っていたら、国会議員を辞める。そうはっきり申し上げる〉
つまり、蓮池さんが嘘を言ってるというのだ。だったら蓮池さん当人を国会に呼んだらいい。本人もいつでも出るだろう。そして、はっきりさせたらいい。
もしかしたら、事前に蓮池さんに話があったのだろうか。16日に「座・高円寺」で蓮池さんに会った時に聞いた。それは全くなかったという。「私に聞いていれば、もっと攻め方を教えたのに」と言っていた。本を読んだだけで、緒方氏は、「これは使える」と思ったのだろう。もっと詳しく話を聞き、「攻め方」を考えようとは思ったが、秘密裡にやらなければならない。そう思って、蓮池さんや講談社には一切話をしなかったのだろう。国会での激論を見ると、どちらからも「名誉毀損」が成り立ちそうだ。
しかし、それよりも、拉致被害者をどう取り戻すかだ。それをまず第一に考えてもらいたい。
蓮池さんもそれを第一に考えている。
しかし首相にしろ、救う会にしろ、国内での派手なパフォーマンスはやるが、北には届いてないし、救出に結びつかない。そのことへの焦りがある。
「救出のためだから」と、多くの国会議員に呼ばれた。
しかし、ほとんどは、その議員の広告塔にされ、選挙に利用されただけだったという。家族会の中から、選挙に出た人もいた。
「一昨年の衆院選で、拉致被害者の両親を選挙に引っ張り出し、政治利用していないか」と緒方氏は質問する。
これは蓮池さんの本にも具体的に詳しく書いている。
しかし、首相の答えは、つれない。
〈両親の話をあなたは全く聞いていない。本の引用だけで独自の取材をまったくせずに私の名誉を傷つけようとしている。極めて不愉快だ。20年前、私たちが一生懸命、拉致問題をやっていたときに、あなたは何をやっていたのか。今ここで批判することは北朝鮮の思うツボで、こういう工作はずっとあった。常にマスコミを二分し、国論を二分して、この問題で戦う力を落とそうとしてきたのが今までの歴史だ〉
「あなたは何をやってきたのか!」と逆襲している。
産経は他のコラムで、「そうだ。では、民主党がそんなことを質問する資格があるのか」と書いていた。
そんなことを言ったら、国会質問は誰もできない。
拉致問題は常に首相はじめ政府が敢然とやってきた。民主など野党は何もやらず、政府を批判してきただけだ。そう言いたいのだろう。
しかし、本当に戦ってきたのか。それを蓮池さんの本は問うている。
今まで、いろんな本が出てきたが、これが、一番衝撃的だし、問題の本質を衝いている。
蓮池さんも、命をかけて書いた、と思う。
この本の帯には、「完全に隠蔽されていた日朝交渉の全裏面史!!」と書かれている。これで初めて知ることは多い。
一般的には、日本政府は頑張っている。家族会、救う会も必死でやっている。「対話と圧力」でやっている。でも北は全く誠意がない。許せない。…という感じだ。
しかし、本当に交渉してるのか。本当に戦っているのか。そのことを蓮池さんは問う。内部にいたからこそ、一番そのことを知っている。
この本のタイトルが凄い。よくここまで言えたと思う。
それに、左翼系の出版社ではなく、一般の大手の出版社が、こんなドギツイ題名の本を出した、ということが凄い。
それだけ問題は大きいし、緊急の問題なのだ。
本の題名だけでなく、目次も凄い。
政府、政治家、マスコミ。さらに、家族会、救う会についてもズバリと斬り込む。こんな本は今までなかった。
では、目次だ。
序章 「救う会」に乗っ取られた「家族会」
第一章 拉致を使ってのし上がった男
第二章 被害者死亡を認めた首相の大罪
第三章 拉致被害者を利用したマドンナ
第四章 情報はゼロの外交官
第五章 「救う会」を牛耳った鵺
第六章 政治家を怖れるマスコミの罠
第七章 カンパを生活費にする男
第八章 家族会を過激にした張本人
特別対談 拉致問題の現在と最終解決(青木理&蓮池透)
かつて自分がいた所(家族会)のことも、はっきり書いた。
又、「救う会」のことも、圧力を怖れずに書いた。
命がけの告発だ。これは貴重だし、これを基にして、北とどう戦うか。どうやって、拉致被害者を取り戻すか。皆で考え、戦って欲しいと思う。
又、蓮池さんの偉いところは、他人の告発だけで終わっていないことだ。
拉致問題でのし上がって首相になった男。救う会の内情、政治家・マスコミの罪。
それを具体的な名前を挙げて告発する。
そして「自分」も罪があると、懺悔し、反省している。
これは謙虚だし、なかなかできない。
これだけでも、この本の真価、信憑性を示している。
少しでも力になるなら、少しでも状況が動けば、と思って、蓮池さんは、呼ばれればどこにで行った。
しかし、ほとんどは議員の集票のマスコットにされただけだった。
でも、行った。ある時、こんなことがあった。
〈2003年の憲法記念日に改憲派議員の集会に呼ばれ、困惑したこともある。「何を話すのか」と聞くと、「9条を変えろ」とでもいっておけとのこと。…馬鹿だった私はそれを真に受け、「憲法9条が拉致問題の解決を遅らせている」と発言し、その場では称賛された覚えがある。なんて浅はかな発言だったのだろう、と、いま思い出すだけでも冷や汗が出る〉
蓮池さんたちを利用して、自分の選挙のために、又、改憲運動のために使った国会議員も酷い。
利用されることは分かっていても、少しでも問題解決が進むならばと、ワラにもすがる思いで、どこにでも出かけて行った蓮池さんたち。涙が出る。
16日の「座・高円寺」では、そんな話をさらに詳しく聞いた。
でも、「本の力」は大きい。一冊の本が、首相を追い詰め、マスコミを、日本を動かしている。
本当を言うと、今週は、三島の本を取り上げる予定だった。今、爆発的に売れている『命売ります』だ。
1月14日に、「三島由紀夫生誕祭」をやり、そこで、この本について話し合った。
エッ、三島もこんな本を書くのか!と驚くような本だ。
面白い。冒険小説だし、アクション小説だ。エンタメだ。三島の本など読んだことのない人にも売れている。
椎根和さん、横山郁代さんと、3人で話し合った。
椎根さんは、三島の晩年、三島番をしていた。「平凡パンチ」で。だから、三島のことは何でも知っている。
「まるで007のようなとこもありました。面白い冒険小説でした」と私は言った。
昔、「全集」で読んでたが、そのことを忘れさせるような本だった。実にスリリングな本だ。
「007みたいだな」と思ったところがいくつかあって、そう言ったら、椎根さんが言う。
「そうでしょう。だって007を意識して書いたんですから」。
エッ? と驚いた。三島は007の原作者、イワン・フレミングの小説も随分と読み、「よし、これは007でやろう」と思って書いたのだという。
他にも、この作品はヨーロッパの誰々に影響を受けたんです、と個別に説明してくれる。
又、「なぜ、自決の2年前、こういう軽いタッチの本を書いたか」を説明してくれた。
ちょうど、「暁の寺」を書いていた。仏教用語が沢山出てくるし、三島は必死に勉強し、苦闘しながら書いた。
その時に、この、『命売ります』を週刊誌に連載した。
きっと三島の「息抜き」になったし、精神衛生上もよかったはずだ、と言う。
又、「こういう軽い感じの小説を通して、案外と、本人の本音があらわれるものだ」と言う。
本人の考え、人間観、女性観なども出ている。
そうなのか、と感動しましたね。
さらに横山さんからも文学的なことを教えてもらった。
今週はこの「三島生誕祭」のことを中心に書こうと思ったが、又、次の機会に。
「生誕祭」を中心に書く予定だったので、写真も、その時の写真が中心になった。
又、「本好き」の寅ちゃんのアパートを取材した。本が好きで、本を愛していて、一冊も捨てられない。本のために、アパートの部屋をもう一部屋借りた。さらにもう一部屋借りた。本のためにそれだけのことをやる人がいる。それで、見てきた。
今週は、だから〈本の週〉だ。蓮池さんの本、三島の本、そして本を捨てられなくて、アパートの部屋を三つも借りた男の話だ。
そうだ。高木尋士さんと「宗教書」の対談をしたんだった。それも、そろそろまとめて、載せなくちゃ。
ということで、今年も、〈本〉を中心に頑張っていくでしょう。
落合から遠い、歩いて20分ほど。部屋に入ってビックリ。本への愛情じゃない。ただの無精なのだ。片付けるのが嫌なんだ。ムッとして本を蹴飛ばしてやりました。
あとは写真を見て下さい。凄い。酷い。情けない。
何か、「見ちゃいけないもの」を見ちゃった感じだった。
椎根さんは、『平凡パンチの三島由紀夫』を書いている。三島の担当編集者として、三島の最も近くにいた。横山さんは、『三島由紀夫の来た夏』を書いている。三島が毎年、来るお菓子屋の娘だった。三島は「マドレーヌ」をいつも買いに来ていた。3人で三島の魅力を徹底的に語り合う。
その後、横山郁代さんのミュージックライブ。第2部は9時から。女が語る映画「11.25自決の日。三島由紀夫と若者たち」。御手洗志帆さん。瀧沢亜希子さん。高木あさ子さん。
さらに、お客さんにも発言してもらい、「好きな小説」「好きな映画」を挙げてもらい、語り合う
11時半になってやっと閉会。盛り上がった誕生会でした。
広い会場が満員だった。数日前に発売になった蓮池さんの本が、爆発的に売れている。『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)。タイトルも凄いが、中身が凄い。
それに、この本を取り上げて国会で、民主党の議員が安倍首相に鋭い質問をした。「拉致被害者を見殺しにしたのは本当か!」「この問題で、有名になり、首相に成り上がったのか!」と。
安倍首相は激怒。「私の言葉が嘘なら議員を辞める!」と。さらに、この本を告発するか、蓮池さんと対決するか。凄い展開になってきた。
そんな緊迫した状況を受けて「座・高円寺」でも、激しいトークになった。
その後、質疑応答も。
終わって、近くの店で食事。ご苦労さんでした。
①「三島由紀夫生誕祭」。1月14日(木)午後7時より、銀座TACTで。これは第1部。三島作品、読んで語る。『命売ります』座談会。壇上(左から)鈴木。椎根和さん(『平凡パンチの三島由紀夫』)。横山郁代さん(『三島由紀夫の来た夏』)。御手洗志帆さん(司会)。
⑩第3部は、午後9時から。〈女たちが語る、「11.25自決の日」〉。「11.25自決の日」を30回見たという瀧沢亜希子さん(左)。テレビで三島の番組を手がけた御手洗志帆さん(右)。三島と三島映画について語りました。
㉚「鈴木さんと違い、本に対する愛情が僕は深いんです。本を読んで、古本屋に売ったりしません。本が部屋に一杯になったので、もう2部屋借りました」。…驚いた。そこまでする人はいない。本も感謝しているだろう。「じゃ、そのアパートを見せて下さい」となって、編集者たちと5人で出かけました。
㉛初めて会ったのは和歌山の「林真須美さん支援集会」。そのあと、姫路、大阪、そして札幌などで会う。てっきり、大阪か札幌の人かと思ったら、東京の人でした。それに私の近くらしい。私は中野区上高田1丁目。寅さんは上高田5丁目。「じゃ、アパートを見せて下さいよ」と行きました。対談の前に。
㉜中に入ってビックリ。汚い。部屋に入ったら、「あっ、鈴木さん。靴のまま上がっちゃダメですよ」「だって汚いんだもん」「ダメですよ。道路じゃないんだから」「道路の方が、もっときれいだよ」。それで土足で上がり、探検しました。
㉝雑然としてます。「中で飲もう」と思って、買ってきたジュースも飲みませんでした。「汚くて、臭うし」。それで、外に出て飲みました。3部屋借りてますが、上は6畳2間の部屋を借りている。それも2つ。下には6畳1間。だから、3世帯分、6部屋を借りている。とても掃除は不可能だ、と言う。
㊱木曜日に学校に行ったら、フェローの人が不思議なリュックを背負ってました。生徒が作ってくれたそうです。全部、お菓子の袋で。それをガムテープでつなぎ合わせてます。「お菓子リュック」と言うそうです。「鈴木さんにも作ってやろうか」と言われたんですよ。でも私は、これを背負って電車に乗る勇気はありません。