刺激的な3日間だった。
9月30日(金)は私も出演した映画の先行試写会。会場の渋谷ロフト9は超満員。凄い映画だった。「ヘエー、こんな凄い映画に私も出たのか!」と思いました。
翌、10月1日(土)は大阪で「鈴木邦男と読書会」。私の書いた『〈愛国心〉に気をつけろ!』をテキストにして出席者が「鈴木を語る」「本を語る」。
そして各人の読書体験、お薦めの本を語ります。
本を読んでる人が少ないと言うが、決してそうではない。こんなに本を読んでる人がいる。本についてこんなに熱く語る人がいる。感動でした。
そして、10月2日(日)は名古屋で、〈寺脇研トーク&シンポジウム=日本のこれからを考える〉。
寺脇研さん、飛松五男さん、そして私の3人で熱く語り合いました。
今まで名古屋では、いろんな会場でやってましたが、ここが一番よかったですね。
集まりやすかったのか、いや、頑張って人を集めたのでしょう。教室は満員でした。
「ネットの告知を見た」「ブログを見た」という人も多く、驚きました。
何と、札幌から来た人もいました。広島から来た人も。
寺脇さんが文科省時代に、「ゆとり教育」といわれた真実について、熱く語ってくれました。えっ、そういうことだったのかと驚きました。
又、飛松さんは、日本の警察の現状、治安について、詳しく語ってくれました。
だから、9月30日から10月2日までの3日間は、熱く、刺激的な3日間でした。
では、どこから始めようかな。
そうだ。10月1日(土)の大阪の読書会からにしよう。
この風変わりな読書会は、正式には「循環する読書会」という、「オートファジー」の読書会ということか。
「循環する」というと、何やら、エコかな。自然エネルギーなのかな、と思ってしまう。本を読むと、精神も肉体も活性化されて、人間そのものの進歩・改造に繋がる。そんな意味でつけられたのかもしれない。
その3日後、10月4日(火)の新聞を読んだら、大隈良典さんがノーベル医学賞を受賞したと出ていた。
「オートファジー」でノーベル賞を取った。これは「細胞の自食作用解明」と説明されてるが、ちょっと分からない。その中で、「栄養を再利用」「不要物の浄化」と書かれていた。そうか、「循環」系なのだ。
産経新聞(10月4日)には、こう書かれていた。
〈成人は1日に160〜200グラムのタンパク質を体内でアミノ酸から合成し利用している。だが、食事などで摂取するタンパク質やアミノ酸は1日わずか60〜80グラム。不足分の調達に大きな役割を果たしているのが、細胞内で劣化したタンパク質などを分解し再利用する「オートファジー」だ。新生児も生まれた直後はオートファジーで栄養補給する。胎盤から離れると母親から栄養を得られず飢餓状態に陥るため、自分の細胞内のタンパク質を分解して生き抜いているのだ。山などで遭難した人が、水だけで何日も生き延びられることがあるのも、オートファジーのおかげだ〉
そうか。今までの「蓄積」があるので、それを分解して、活用し、命をつなぐことが出来るんだ。
「精神衛生」や「読書」にも言える。今まで人に教わってきたこと。読んできた本を、(ずっと忘れていても)突然思い出し、「あっ、これはこういうことか」と発見がある。
それが生きる希望・意欲になる。
あるいは、失敗の体験も、それを分解し、その中からプラスの教訓だけを引き出して、今後の生活に役立てている。「オートファジー」だ。
産経新聞では、さらにこう言っている。
〈大隈良典氏の研究で、こうした飢餓の解消だけでなく、細胞内の老廃物を分解する浄化や、侵入した細胞や異物を分解する防御など、複数の重要な役割を担うことも判明した〉
今までの体内に蓄えてたものを分解し、それで飢餓を脱する。自分の力で、生き延びるのだ。「自衛」だ。
又、老廃物を分解する浄化、侵入した異物を分解する、〈自主防衛〉だ。憲法9条ではないか。
柄谷行人は『憲法の無意識』(岩波新書)の中で言っている。
これを平和憲法だから、守りたいと思うのは、「戦後の体験」だけでなく、そのずっと前からの、たとえば江戸時代の300年とか、それ以前の日本が軍隊もなしに、でも国の防衛をしっかりやってきた。その遠い昔の「記憶」に支えられている。ということらしい。
これも、「オートファジー」じゃないか。過去の歴史・体験を分解し、利用することで、この国も生き延びてきたのだ。
この日本を愛し、この国の文化・伝統を守りたいというのも、「オートファジー」だ。
それが愛国であり、真の保守だ。
そうだ。大阪の「オートファジー読書会」。いや違った。「循環する読書会」の時に、長野から来た平田君が、オートファジーな旅について報告していた。
平田君は、見沢知廉という作家の弟子だった。
でも、見沢は自殺し、平田君は、その後、途方に暮れていた。
そんな時、ある人間から、不可能とも言える指令を受ける。「ミッション・インポシブル」だ。
何と、「師・見沢知廉」に会ってこい、と言う。会ってこれこれのことを聞いてこい、と言う。
「でも、見沢は、もう死んじゃいましたよ」と言う。
「だから、恐山に行くんだ。そこで、イタコに会って見沢を降ろしてもらえ」。
そう言って、旅費を渡されたという。
でも、イタコが見沢を全く知らなかったらどうしよう。降ろせない。
そうだ。ある程度の基礎知識は知らせておいた方がいい。じゃ、事前に会って、話したらいい。
彼は「ミッション」を一つ一つ、愚直に実行した。
そして、「当日」を迎えて、恐山で見沢は来てくれた! 師と弟子はしっかりと抱き合い、泣き濡れたという。
その詳しい話は『紙の爆弾』で対談する予定だ。凄い話が聞けるだろう。
「自殺」の真相や、〈あの事件〉の真相も聞ける。又、見沢が今、何を思い、何を憂えているかも分かる。
「今、生きていたら…」と思う。
天才だった。ドナルド・キーンさんと会ってたら、『石川啄木』のように評伝を書いてもらえただろう。
又、自分の力で、小説をどんどん書いただろう。
彼のペンネーム「見沢知廉」は、三島由紀夫を意識してつけられた。
自分もいつか作家になると、獄中で思った。
そして本を読みまくり、小説を書いた。
外にいるお母さんが清書して、いろんな文学賞に応募した。
そして新日本文学賞を取った。
だから、出獄した時は、作家「見沢知廉」として出てきた。
『天皇ごっこ』は大ヒットだった。さらに小説を書き続ける。新潮文庫に入る。
そして、三島由紀夫の隣りに並ぶ。「ミシマ」の直前に並ぶために「ミサワ」というペンネームにしたのだ。よく考えたもんだ。
でも、「三島の直前に自分の本が並んだらいいな」と思うことは出来る。そんな「妄想」は世の多くの三島ファンが考えたことだろう。
しかし、それを「妄想」ではなく、本当に実現してしまう。これは見沢にしか出来ない。天才たるゆえんだ。
今の「保守の時代」では、さらに書いていただろう。惜しい。
じゃ、見沢の才能をこの平田青年の身体に降ろしてくれ! 平田青年の手を通して、書いてくれ。と私たちは願う。恐山で、そんな必死の願いもしたようだ。
さて、見沢は「復活」するのか。
あっ、いけない。恐山の話だけで終わってしまう。この世の話もしなくては。
9月30日(金)の映画先行試写会は、よかった。
渋谷ロフト9が、超満員だった。あんなに人が入ってのは見たことがない。「ベースメント」という不思議な映画を見たかったからだ。
又、出演者の話を聞いてみたかったからだ。私は1日だけ撮影に出た。だから「全体」はどんな映画か分からなかった。
初めて全体で見て、驚いた。凄い映画だ。〈現代〉に肉迫し、斬っている。
ルポライターの仕事はどうあるべきか。権力と闘うとはどういうことか。ヤクザ、JKビジネス…と絡んで物語は展開する。
正義感に燃えた刑事も出てくる。私だ。
舞台挨拶で私は言った。「今の世」という映画では、「右翼」という、人から嫌われる役をずっと演じてきました。しかし、この映画では「正義の刑事」を演じました。こっちの方が私の〈リアル〉かもしれません。楽しませてもらいました…と。
そうだ。佐野監督とは、次の映画に出てくれと言われてる。「新左翼・過激派のボス」の役だ。こっちも、私の「本当の姿」かもしれない。面白い。
とにかく、この「ベースメント」。それから試写がどんどん行われ、映画も上映される。楽しみだ。ぜひ見て下さい。
次に10月1日(土)だ。大阪の読書会もよかったね。
恐山に行ってきた平田青年が特別報告をする。
そして、この日のテキスト『〈愛国心〉に気をつけろ!』(岩波ブックレット)を読んで、寅ちゃんがレポートする。
私との出会いから始まって、この本の紹介。
そして、なぜ今〈愛国心〉を問題にするか。などについて話す。
さらに出席者全員が、この本を読んで感じたことを話す。
又、この他にも、最近読んで感動した本について話す。
初めての人も多かった。私のブログを見て来た、という人もいた。ありがたい。
翌、10月2日(日)は名古屋だ。飛松さん、寺脇研さん、という豪華なメンバーだ。だから人も多かった。
今回は「飛松塾」ということで飛松さんが挨拶。そして、寺脇さんが講演。「ゆとり教育」について話す。
文科省にいた時に、これを実現し、後に「ゆとり教育だ」といって批判された。
しかし、その批判は全て間違っていた。と詳しく説明する。
これは全く知らなかった。〈学力テスト〉の例を出しながら、子供たちの学力、知力は、どうなっているかも説明する。
「つめこみ」だけでは、考える力がつかない。「ゆとり」と言われる時代に、学び、自分の頭で考えるようになったので、〈学力〉も伸びたのだという。「ゆとり教育批判」の意図的なものを感じた。
さらに飛松さん、私も加わって3人でトーク。今の日本の問題、今ここにある危機について語り合った。
そして、会場の皆からの質問を受ける。
愛知県だけでなく、結構遠いところからも来ている。驚いた。札幌から来た人もいた。
又、昔、一水会で活動していた幹部の荒木氏も来てくれた
随分と久しぶりだ。ネットで見て、来てくれたのだ。ありがたい。二次会の懇親会でも、ゆっくり話しました。
そして最終の新幹線で帰りました。
そうだ。『これからどこへ行くのか』の話も出た。
名古屋の女性は、「これはいい本だ。鈴木さんが今まで出した本の中でも最もいい。これについての読書会を名古屋でやりたい!」と言う。
ありがたい。だから、近いうちにやるでしょう。
そのあと、当時としては珍しいメールによる〈往復書簡〉をやった。思想的問題を中心にして。ただ、私の力不足で〈論争〉にならず、叱られたこともあった。
「私は文章が下手で…」と相談したら、「それは羨ましい」と言われた。
エッ?と思った。「それは、努力して文章が上手くなる喜びを味わえる。僕なんて、初めから文章がうまかったから、その〈上達する喜び〉がなかった。寂しい。あなたがうらやましい」と言う。冗談ではなく、大真面目に言う。それだけ、ものを書く事には自信を持っていたのだ。
カメラマンのアラーキー。有田芳生さん。テレビ局の黒住さんなどに会う。
①映画「ベースメント」の先行試写会が行われました。そのあと、出演者の挨拶、トークがありました。私も出演者の一人として出席しました。9月30日(金)の午後7時から「渋谷ロフト9」です。もの凄い人でした。ここが超満員になるのは初めて見ました。映画もよかったです。私は自分が出演しましたが、全体はどうなっているのか分からない。初めて映画の全体を見て、理解し、感動しました。
⑪10月2日(日)、前日に大阪に泊まり、朝、名古屋に行く。皆で昼食のあと、午後2時から「ウィルあいち」センタールーム。とてもきれいで、使いやすい。〈寺脇研トーク&シンポジウム=日本のこれからを考える〉。
会場に行ったら、「飛松塾in名古屋」になっていた。まあ、どっちでもいいや。要は、寺脇、飛松、鈴木でトークするんだ。
会場は一杯。名古屋だけでなく、近県からも来てくれた。元一水会にいた荒木氏も来てくれた。嬉しいことだ。
又、思想家、田中卓先生のお孫さんも来てくれた。初対面だ。正式には、田中卓先生のお孫さんと結婚した教師だ。田中先生は90才を過ぎた今もお元気だ。
小林よしのりさん、高森明勅さんも来られるという。私も以前、伊勢のお宅にうかがって、お話をお聞きした。又、お話をうかがいに行きたいです。
会場には、札幌から来た人もいて、驚きました。又、私の『どこへ行くのか』を読んで、「ぜひ名古屋で読書会をしたい」と言う人も。ありがたい。
⑰前に名古屋で集会をやった時は、1階が「ボストン美術館」になっていて、ゴーギャンの大きな絵が掲げられてました。私の『これからどこへ行くのか』(柏艪舎)の表紙もゴーギャンです。
だから、この2つを重ねて写真を撮ったら面白いだろう、と考えた人がいたんですね。これを実行し、写真を見せてくれました。いいですね。いつか本当にタヒチに行って、こんな風景を見てみたいですね。そうだ。この「名古屋・ボストン美術館」は来年3月で閉館だそうです。残念です。その前に又、行ってみないと。
⑱タクシーに乗って移動中、こんな看板を見つけました。「鈴木質店」か。鈴木という姓は多いから、質屋だってあるでしょう。でも、顔も似ている。ドッペルゲンガーか。あるいは私が本当にやっているのか。なんか、パラレル・ワールドを見るようです。行ってみなくては。
⑲「劇団再生」の鶴見直斗さんと。初台の東京オペラシティ3階の「近江楽堂」に出ていたんです。三島由紀夫作の『近代能楽集』の中の「葵上」に。女性の生き霊の話ですが、現代劇にしたら、こうなるだろうという話です。とても面白かったです。篠田賢一さんの演出もよかった。背広姿の直斗さんもよかった。10月4日(火)午後7時からの回を見ました。
㉗全国紙の記者に取材されました。「ミヤマ」の会議室で。私の『これからどこへ行くのか』を熱心に読み、付箋を沢山付けてきて、質問します。驚きました。こんなに熱心に丁寧に読んでくれた人はいません。
「じゃ、写真を撮らせて下さい」とお願いし、撮りました。こっちの方が、質問してしまいました。
「どこがよかったですか?」
「いつも、付箋するのですか?」
「付箋は、コクヨの何号ですか?」…と。