10月30日(日)、午後3時45分から渋谷アップリンクに行く。
渡辺真也氏が監督した映画「Soul Odyssey=ユーラシアを探して」のプレミア上映だ。
真也氏は今、ドイツの大学で教えている。又、この映画のために世界各国で上映会をやっている。忙しい。
だから日本でのプレミア上映会は3日だけだ。3日間とも、上映後はゲストとのトークがある。
10月17日(月)は、畠山直哉さん(写真家)。
10月24日(月)は、国分功一郎さん(哲学者・高崎経済大学准教授)。
そして10月30日(日)は、森村泰昌さん(アーティスト)。
ゲストも凄い。3日間行きたい。でも、混んでて、そうはいかない。
「30日に行きます」とメールした。実は予約制なのだ。
あとで聞いたら、全て完売で、「もっとやってくれ」という声が多かったという。
このゲストなら当然だ。いや、映画そのものが衝撃的で、哲学的なのだ。
30日に話を聞いた渡辺真也氏と森村泰昌さん。この二人は、10年ほど前に知り合ったが、私はとても大きな衝撃と影響を受けた。
今の私が出来上がったのも、二人の影響が大きいと思う。私の中に、(何万分の1か)、真也氏と森村さんがいて、それが暴れ、発言し、表現しているのだと思う。
10年前、渡辺真也氏と会った時、彼は27才の青年だった。
アメリカで仕事をしていて、日本にたまたま帰ってきた時だった。
友人に紹介された。芸大の茂木健一郎さんの研究室で会った。食事をご馳走になりながら、茂木さん、真也氏、友人たちと話をした。
その時、真也氏は、「今年、ニューヨークで憲法についてのシンポジウムをやりたい」と言う。
美術だけでなく、政治にも興味を持ってるのかと驚いた。
憲法24条を書いたベアテ・シロタ・ゴードンさん。憲法の映画を作ったジャン・ユンカーマンさん。他に大学教授を二人。
それで、憲法改正問題についてのシンポジウムをしたいと言う。
当時、真也氏は27才だ。ニューヨークの美術館に勤めていて、キュレーター(学芸員)をやっている。
それだけでも凄いのに、国際的なシンポジウムをやると言う。若いのに大したものだと思った。
「そこにぜひ鈴木さんを呼びたいんです」と突然言う。
エッ? 冗談だろう、と思った。27才の青年の大風呂敷だ。誇大妄想だ。そう思った。
でもそうは言えないから、「面白いね。私でよければ行きますよ」と返事をした。どうせ実現などしないよ、と思って。
でも実現したんだ。切符が送られてきて、単身、行った。
満員だった。日本の憲法改正問題について話すのだ。それもアメリカで。
大事件だった。ドルで講演料ももらった。この時の体験は自分史の中でも大きい。
このHPでも報告してるし。写真も出てるので、検索してほしい。
それからも真也氏は何度も日本に来ている。反戦・反原発をテーマにした美術展をやったり、講演会をやったりしている。
森村泰昌さんも同じ頃に知り合った。
この「ユーラシアを探して」のパンフレットには、森村さんをこう紹介している。
〈「あなた」と「わたし」の重なり合いから、美しき「わたし」を創出し続ける孤独な格闘者。1951年大阪市生まれ。大阪市在住。最新の展覧会として、2016年に大阪の国立国際美術館で開催された個展「森村泰昌:自画像の美術史—「私」と「わたし」が出会うとき」があり、その中で映画も上映された。芸術とは何か、「わたし」とは何かについて、渡辺真也に多くのヒントを与えてくれたひと〉
日本では「現代アートの第一人者」として紹介されることが多い。画家という範疇には収まらない。
大阪での国立国際美術館での展覧会には私も行った。
ゴッホ、フェルメールなどの名画の中に自分自身が入り込み、内部から見る。今までこんなことをした人はいない。考えた人もいない。
又、映画も上映されている。ヒトラーの映画だ。チャップリンの「独裁者」をさらに自らが入り込んで、新しいものを作る。
又、レーニンになり切って、ロシア革命を再現する。奇抜な発想だ。
「美術史の中の人間になり切って、そこから見えてくるもの、分かるものもある」という。
「それを考えた初めは何ですか」と真也氏がトークの時に聞いていた。
「築地本願寺で、松岡正剛さん立案の会でやったんですが、『三島由紀夫』でしたよ。その時に鈴木邦男さんも来てくれて、それから知り合ったんですよ」と言う。
松岡さんから招待されて見に行った。三島になり切って、やるという。
どんなことをやるんだ、と見ていたら、完全に三島になり切って、あの市ヶ谷での檄をやる。ウワー!と思った。
終わって、楽屋を訪ねた。「凄かったですね。三島の気持ちが分かったでしょう」と話をした。聞いた。
それが初対面で、それからは森村さんが日本で展覧会をやる時は、全部見ている。
森村さんも忙しい人で世界中を飛び回っている。でも住まいは大阪だ。
前に、『美術手帖』で対談した。美術の専門誌で対談させてもらい光栄だった。
大阪鶴橋の仕事場に行った。又、前に実家だったお茶屋さんにも行った。
とても楽しかったし、有意義だった。
だから、私にとって、とても大きな影響を受けた二人だ。
真也氏と森村さんも親しいし、名古屋だったかな。真也氏と一緒に森村展を見に行ったこともある。
真也氏は日本でも随分と活躍してたのに、今はドイツに行っている。
「日本は沈滞している。真也氏が来て、かき回してくれないと」と言いましたよ。
真也氏のプロフィールも紹介しよう。やはり、映画のパンフレットからだ。
〈渡辺真也。ベルリン工科経済大学講師。1980年静岡県生まれ。ニューヨークの大学工学院美術修士課程を終了後、現在、ワタリウム美術館で開催中のナム・ジュン・パイク展『2020年 笑っているのは誰 ?+?=??』(2017年1月29日まで)など、国民国家に焦点を当てた国際美術展を世界各地で企画・開催。博士論文「ヨーゼフ・ボイスとナム・ジュン・パイクのユーラシア」を執筆中。これまでキュレーターとして活動して来た渡辺にとって、この映画が初めての作品の初監督作品となります〉
国分功一郎さんは、この映画をこう評しています。
〈全く新しい映画的考古学の試みがいま、ユーラシアの歴史の未知の地層を明らかにしようとしている〉
そうか。「映画的考古学」か。確かにそうだ。
考古学的であり、哲学的、思想的な映画だ。それも日常生活を通じて、考えさせる。
たとえば、我々は、「にほんじん」として意識する。
その意識が過剰な人がいるが、「アジア人」とは思わない。ましてや、「ユーラシア人」とも思わない。
思ってもいいいはずなのに、なぜなのか。「世界人」「世界のプロレタリアート」として自覚する人は少しはいる。
でもそれは、イデオロギーとして考えているはずだ。身体的自覚はない。
真也氏はアメリカでの生活の中で、「アジア人」と呼ばれた体験がある。日本にいては絶対にしない体験だ。そこから真也氏の問いと旅は始まる。
このパンフに真也氏が、書いている。
〈この映画は、私、渡辺真也のユーラシア大陸横断の旅を辿ったものです。8年に渡るアメリカ生活で私は「アジア人」と呼ばれる様になりました。日本人である私は、アジア人として生まれたのではなく、その時をもってアジア人になったのだと気づきました。同じくその頃、私はドイツ人アーティストのヨーゼフ・ボイスと韓国人アーティストのナム・ジュン・パイクによる生涯に渡るコラボレーション活動『ユーラシア』に出会いました。彼らは分断されたヨーロッパとアジアを、一つの大陸文化『ユーラシア』として統一しようと試みたのです。彼らの『ユーラシア』の夢を実現すべく、私はベルリンから故郷である静岡まで、13ヵ国を横断し、文化の連続性を探る旅に出ました。私はこの映画を、あなた自身の映画を作りなさい、と励ましてくれた故クリス・マイケル監督に捧げます。マイケル監督が自身の出生場所だと主張していたモンゴルのウランバートルでは、シャーマンを通じてマイケル監督との交遊を試み、彼の映画『レベル・ファイヴ』の背後にある秘密を解き明かしていきます。芸術を、そして魂の不滅を信じる全ての人に、ぜひ見て頂きたい映画です〉
まさに、その通りの映画だった。
昔は、アジアを考えた人がいた。「大アジア主義」にはいい意味も、悪い意味もあるが、アジアを抜きにして日本は考えられなかった。
でも今は、「脱亜」ばかりが強調されている。
中国、韓国、北朝鮮などがある「アジア」とは関係ないと皆、思っている。そして「日本」にだけ目が向いている。
ましてや、ヨーロッパとアジアを一つに見る「ユーラシア」なんか、見ている人はいない。渡辺真也氏だけだ。
アーティストとして一つの共同体を作っている。これがEUになる。
今、EUに入るためには死刑を廃止しなくてはダメだ。
ちょうどいい。日本も死刑を廃止してEUに入ったらいい。
いや、ユーラシアがEUになる。東アジア共同体を言ってる人がいる。
さらに、ユーラシア共同体も構想したらいい。
映画のあと、森村さんは急いで大阪に帰る。
そこで、真也氏を囲んで、15人ほどが飲む。そして解散。
「あっ、またハロウィンをやってるよな」と思って、見学した。
警察官は大動員しているが、ハロウィン参加者は、皆、礼儀正しい。遊びだと割り切っている。
こんなことで捕まりたくはない。昔の政治党派も入り込むスキはない。
かつてのコミケのようにナチスや中国人民軍の格好をした人もいない。
スターウォーズや、スパイダーマン、ハリーポッターといった映画、そしてアニメが主役だ。
若い人だけでなく、オッサンもいる。それに外国人も髄分といた。
これは新しい「国際交流」になる。「ユーラシア」を代表する祭りになる。
沿道の人々も、皆、好感を持って見ていた。
次の日の新聞も書き方は優しかった。「産経新聞」(11月1日)は、こうだ。
〈渋谷ハロウィン、マナー向上〉〈ごみ激減、逮捕者は1人〉。
去年は随分と荒れたが、今年はマナーがグンと向上した。ゴミも少なかった、という。いいことだ。
ハロウィンは、この4、5日前から毎日、やっている。その集計でこうだ。素晴らしい。
と思っていたら、次の日の新聞を見て驚いた。「産経新聞」(11月2日)だ。
〈ハロウィンから一夜、渋谷で清掃活動〉〈ごみ散乱…熱狂の疵跡〉。
エッ? 前日と全く逆の報道じゃないのか。
渋谷の祭りを書いた記者に反感を持つ記者が、「いやいや、こんな面もあるぞ」と思って書いたのか。
あるいは警察や国家権力からの弾圧・横槍が入って、「ハロウィンを褒めるな!」と言われたのか。不思議な記事だ。
でも、前の日の記事の方が本当だと思うけどね、私は。3日間もハロウィンを見た私が言うのだから、正しいと思いますよ。
しかし、血だらけのメークや、ハリーポッターや、悪魔の格好をして、そのまま電車に乗って渋谷に来るんだから、勇気がありますね。偉いよ。
来年は私もメークして、来よう。
〈ザ・ラストクイーン=朝鮮王朝最後の皇太子妃〉。日本の皇族でありながら、韓国王朝の皇太子の元へ嫁いだ李方子(り・まさこ)妃をモデルにしたオペラだ。李方子妃を演じるのは、歌を通して日韓を繋いできたプリマドンナ・田月仙(チョン・ウォルソン)。自らがその実像に迫るため、日韓で取材を続け、台本を練り上げてきた。
圧倒的な迫力だった。私は田さんとは日韓関係の集会で何度かお会いしている。このオペラのことも聞いていたので、早々に申し込み、期待して待っていた。
とてもかわいそうで、運命に翻弄された妃と思っていたが、強い意志を持ち、愛で両国の友好を築こうとしたのだ。力一杯、尽くされて亡くなった。そんな感動的な舞台だった。
帰りは、ハロウィンの渋谷を見る。賑やかだった。なかなかいいじゃないかと思った。
「ケンカしたの?」と皆に聞かれたが、そんなことはない。あるいは、パラレルワールドか。目も頭もズキズキするので、1日、寝ていた。
私は最後の「締めの挨拶」をさせられた。おめでとうさん。これからも元気で頑張って下さい。
①10月30日(日)、渋谷のアップリンクで渡辺真也氏の初監督作品「Soul Odyssey=ユーラシアを探して」の上映がありました。そのあと、森村泰昌さんとのトークがありました。満員でした。映画もトークも素晴らしかったです。
⑭10月31日(月)、北とぴあ、さくらホール。午後1時半より、JR東労組の集会です。いつもは日比谷公会堂でやってるんですが、今は、改修中で、北とぴあになりました。「ここだけが唯一闘っている!」と思いますね。14年前の「冤罪・浦和電車区事件」の弾圧に負けずに闘っています。それだけにとどまらず、改憲反対を叫び、自らの「平和政策」を提起しています。会の正式名称はこうです。
〈改憲絶対反対!安全保障法廃止!
新基地建設反対!脱原発社会実現!〉
〈美世志会と共に、あらゆる平和運動への弾圧を許さず、「平和政策」の実現を目指す大集会〉