1月8日(日)。12時半。新宿のネイキッドロフトに行く。不思議な映画、そしてエキサイティングな映画「ベースメント」の特別上映会だ。
それを見て、その後、監督や出演者のトークがあるという。じゃ、もう一回、見に行くか。と思ったのだ。
実は、この映画、私も出ている。
主人公のフリライターと、薬(ヤク)を売っているヤクザが話している。ヤクザは大声をあげて、一般客を威嚇したりする。
そこへ、ブラリとやってきた「鈴木刑事」がこいつを見つけ、制裁する。というシーンだ。
演技だということを忘れて、つい熱くなって、ガチでやってしまった。パンチや蹴りも本気で入れちゃった。
撮影は去年の秋だった。待ち時間が長くて、やっと出番になると、ともかく、ヤクザを怒鳴り、取り押さえ、投げ飛ばし、壁に頭をぶつけて…と。ヤクザをとことん、いたぶった。
でも、何で俺はこんなことをしてるのか。このヤクザは何をしたんだ。それに、隣りにいるルポライターは何で、ヤクザと同席してるのか。
そういった「全体の筋」はわからなかった。ただ、一部分の「喧嘩シーン」に出ただけだ。
だから、どんな映画なのかも知らなかった。
それが、去年の年末に、特別試写会をやったのだ。
渋谷のロフトだ。お客はびっちりと詰め掛けた。
何か、変な映画が出来たらしいよ。見てみよう。と噂が噂を呼んで、ロフトは超満員だった。
私は初めて、〈全体〉を見た。
エッ! こんなすごい映画だったのか。驚いた。社会派の映画だ。ルポライターが主役だ。
増田さんだ。彼が、いろんな社会の闇を取材する。
「実は、この映画の本が出来たんです」と製作者が言う。
エッ? まず原作となる本があって、それを基にして映画になるんじゃないのか。と思っていたら、こういう例もあるらしい。
映画がバーンと出来てしまい、それが評判になる。それで、本が出来る。
この映画の製作、脚本は井川楊枝さんだ。
元々、取材記者だ。いろいろ危ない取材もしている。原稿もたくさん書いている。
勿論、この映画の脚本は書いて、それで映画は進んだ。
映画で、どんどんと話は膨らみ、暴走していった。
だから、映画が完成した段階で、その進化したものを、まとめて本に残したいと思ったようだ。
だから、『ベースメント』(TO文庫)として書き下ろしで出した。〈映画原作。2017年初春より全国公開〉と書かれている。
〈危険ドラッグ、JKビジネス、特殊詐欺…。日本のアンダーグラウンドを描く〉
と表紙には書かれている。面白い。一気に読んでしまった。
「30代 映画監督」が、コメントを寄せている。
〈役者の存在、人称の交替するカメラ、経験を重ねた監督の演出が化学反応し、映画の嘘は現実のリアルに変わる。日本の深淵から湧き出る何かに戦慄し続ける映像体験。この作品は全く得体が知れない〉
そうなんだ。得体が知れない映画だ。これは新しいジャンルを開発した。と思った。
ルポライターは何にでも興味を持つ中年男だ。
JKビジネス、ドラッグ。一体、どうなってるんだろうか。書けなかったこともある。それを映像の世界であらわす。
そうか、こういう表現方法があったのか。これだったら、他にもどんどん展望が広がる。
右翼、左翼の世界。公安警察の世界。風俗の世界。ヤクザの世界。ネトウヨの世界。…いくらでもあるぞ。ライターの増田さん、どんどん突撃取材して下さいよ。
これはすごい映画だと思った。とてつもなく大きなテーマに挑んでいる。
そんなすごい映画に私は出たんだ、と感動しましたね。
上映後は、井川さんや、監督、出演者が前に出て、トークをする。
私はただ、見に来ただけだったのに、呼ばれて前に出された。
それに、グラビアアイドルの吉沢さりぃさんも来ていた。グラビアの世界、そして、この映画に出た印象などについて語ってくれた。
小柄だが、ものすごくプロポーションがいい。
増田さんが思わず聞いた。「あのー、バストはいくつなんですか」。
失礼な人だ。でも、彼女、全く嫌がることなく、答えていた。
「107cmなんです。Kカップです」。
エッ? 100cm以上あるのか。初めて見たよ。
それに、Kカップなんてあるのか。CカップやDカップが一番大きいのかと思ってたら、さらにあるんだ。
皆視線が全部、さりぃさんの胸に集まってました。しばらく、巨乳論議が続きました。
ハッと気を取り直して、映画の話。さらに、映画で何が出来るか。何を告発して行くのか。…などについて話し合いました。
ウーン、ものを書く以上に、伝わる。表現手段としては大きな武器だ。
三島由紀夫だって、映画の魅力には取り憑かれていた。自ら出演するだけでなく、監督もやった。
話は尽きないが、ロフトは夜の予定もあるので、5時で打ち切り、そのあと、井川さんや出演者の人たちと、居酒屋へ。でも、手羽先の店だ。私は食べれない。
でも酒を飲み、皆と話しました。
この日、最初から最後まで、映画の話ばっかりだった。こういう集まりもいいね。
そうだ。1月15日(日)は「読書対談」がある。
高木さんと本の話だけをする。これもいい。楽しみだ。
「今日は一日、本の話だけをする」「次の日は、映画の話だけをする」と決めてかかるのもいいね。
武者小路実篤の「新しい村」では、そんな高尚な趣味を持つ人だけが集まって、本を読み、音楽を聴き、今日は「ロダンの日」だ。今日は「ゲーテの日」だ、と決めて、本や彫刻にいそしんだという。
いいですね。私も、いつかやってみようかな。そんな共同生活を。本と芸術の日々だ。
そうだ。映画でも、「新しい村」などをテーマに作ったらいい。
ライターの増田さんが、訪ねるんだよ。でも、今はないか。じゃ、ライター仲間で作るんだよ。「愛の共同体」を。
しかし、皆、忙しいから、一緒に本を読んだり、芸術してる時間はないよね。
じゃ、年に1回くらい、数日間、集まって「合宿」はどうだろう。
普通、合宿といったら、同じ政治的考えを持ってる人たちが集まり、「安倍を倒せ!」とか「憲法改正反対!」とか気勢を上げる。
でも、政治性はなし。ただ、ひたすら、勉強する合宿だ。
そこで「取材の仕方」とか「原稿の書き方」を習う。実務的な合宿だ。そんなのもいいだろう。
しかし、それでは人が集まらないか。又、自分のスキルの磨き方だったら、個人でやっている。皆で集まってやることはないよ。と言われるかもしれない。
ウーン、じゃ、これもダメか。でも、こういう〈理想〉から出発するのはいいよね。
さっきも言ったけど、愛国党の赤尾敏さんは、実は、「新しい村」に初め入ったのだ。理想主義者だった。そして、左翼の運動にも入る。
ところが、そこで人に騙され、人間不信になる。そして右翼運動に進むのだ。
作家の保阪正康さんに聞いたけど、橘孝三郎は、5・15事件にも関与したが、農本主義者で、大著の「天皇論」を何冊も出している。英文で書いた天皇論もある。大変な学者であり、思想家なんだ。
その橘さんのとこに、保阪さんが何度も何度も通って話を聞き、取材した。本にまとめた。
さらに、そこで阿部勉さんに会い、「楯の会」の話を聞き、三島事件について書く。
昔の右翼のリーダーは皆、思想家だったのだ。橘孝三郎、北一輝、井上日召、大川周明、石原莞爾…と、皆、哲学を持っていた。思想を持っていた。
又、「楯の会」の持丸博、阿部勉なども、とても勉強家だった。
保阪さんは、阿部氏に、「小説を書きなさい」と何度も勧めてくれた。
ぜひ、やってみたらよかったのにと思う。残念だ。
そんな話を随分と保阪さんから聞いた。去年、一年にわたって聞いた。
それが今年、現代書館から本になって出る。楽しみだ。私自身が、とても勉強になった。
多分、春には出るだろう。
その前に、内田樹さんとの対談本も出る。これは校正も終わり、2月中旬に出る。『慨世の遠吠え2』だ。「呪いの時代を越えて」とサブタイトルがついている。
時間的にはこれが一番早く出るだろう。
〈憲法九条二項のリアル、グローバリゼーションの生み出す空疎、満州という素材、愛国心、現代日本のさまざまな問題を、ともに思想家で武道家でもある内田樹と鈴木邦男が己の頭脳と身体で語り尽くした超「対談」待望の第二弾!!〉
この謳い文句がいいですね。
ついでに目次も紹介します。
第1章 世界のなかの日本史
第2章 国際情勢の変化と日本
第3章 属国ニッポンの行く末
第4章 木と樹のマンガ文化論
これが今年、一番初めに出る本だ。そのあと、保阪正康さんとの本が出る。
そして、憲法についての書き下ろし本が3月上旬に出る。さらに白井聡さんとの対談本が出る。もう4冊も決まっている。
そのあとは、椎野礼仁さんが考え、整理している本が出るでしょう。お楽しみに。
そして、国立文楽劇場へ行く。「お染・久松」を通しで全部やるという。それで、来たのだ。
東京では、よく文楽を見ていたが、大阪では初めてだ。東京よりも大きいし、立派だ。やはり本場は違う。
そうか。竹中さんは、随分と創価学会を取材し、本を書いていた。アマゾンで全4冊を買って読んだ。「じゃ、その頃の話を聞かせて下さい」とお願いしました。
それから新宿へ。河合塾コスモの新年会。
小滝橋にある「四十八漁場」というお店だ。魚専門で、おいしい。
全国の港から魚が来る。48ヶ所の港、漁場から魚が来るんで、「四十八漁場」という名前になってるのかと思って聞いた。
でも違うという。「このまま乱獲を続けていけば、2048年には、絶望的になる。それを避けるために考えてます」という。文明論的な名前なんだ。
満員で大盛況でした。私もとても勉強になりました。三島の読み方を椎根さんに教えてもらいました。元「楯の会」の本多清さんも来てくれて、貴重な話をしてくれました。
①映画「ベースメント」が出来ました。1月8日(日)、ネイキッドロフトで特別上映会が行われました。
この日、何と、この映画の原作本も発売になりました。勿論、井川楊枝氏の書いたものです。危険ドラッグ、JKビジネス、特殊詐欺…と、日本のアンダーグラウンドを描きます。井川氏の独壇場です。映画同様、原作も一気に読めます。ハラハラ、ドキドキの連続です。
⑯以前、鳥羽水族館で「漁(すなど)り猫」を見て来ました。日本にはここしかいない、と思ってたら、「バカ! 大阪の天王寺動物園にもいるぞ!」とメールで教えてくれた人がいたので、さっそく行って来ました。ここは「100周年」だそうです。そんなに昔からあるのか。