不思議な体験をした。自分は、まだまだ勉強不足だと思った。
それに、日本に生まれたから日本人ではない。外国に生まれ、外国から日本に来た人の中にも、「日本人」はいる。
日本にうまれたひとよりも、もっともっと日本を知り、日本を愛している人もいる。
その人たちこそむしろ、「本当の日本人」かもしれない。そんなことを感じた。
たとえば、ドナルド・キーンだ。日本が好きで、日本文学が好きで、三島由紀夫、川端康成、谷崎潤一郎などを世界に紹介している。彼なしには日本の作家が世界に知られることはなかった。
又、ドナルド・キーンは、日本に帰化している。もう完全な日本人だ。普通の日本人よりも何万倍も「日本人」だ。
さらに、この人だ。小泉八雲だ。1月21日(土)、ヤマハ銀座スタジオで「小泉八雲の世界」を聞いた。そして痛感した。
この人も、完全な日本人だ。日本に住んでいる何万人もの日本人が、束になってかかってもかなわない。
この日、俳優の佐野史郎さんが小泉八雲の朗読をすると聞いたので、聞きに行ったのだ。
佐野さんは優れた表現者であり、勉強家だ。去年、代官山で武術家の甲野善紀さんと対談していた。
「武術も俳優も似ている」と言う。肉体を使って自らの表現をするからだ。と言う。
なるほど、と思った。その時、「小泉八雲に興味を持って時々、朗読会をやってます」と言っていた。
ヘエー、八雲に興味を持ってるのか。と思った。
でも、どこでやってるんだろう。そうしたら、教えてくれる人がいた。
「小泉八雲の世界」と題して、全国でやっているという。日本だけでなく、ギリシャまで行って、そこで朗読会をやった。
ギリシャは小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の出身地だ。ものすごい歓迎と熱狂に包まれたという。
佐野史郎さんは、武術家の甲野善紀さんとは昔からの知り合いだ。
自分から会いに行っている。武術を通して、日本をより深く知ろうとしたのだろう。
八雲だって、その文学を通して、日本とは何かを考えようとしたのかもしれない。
学生時代に私は、八雲は随分と読んだつもりだった。
でも、深くは理解していなかった。自分のものにはなっていなかった。全部、読んでみなくちゃ、と思った。『辞林21』(三省堂)で、八雲を引いてみた。基礎的なことだが、まだ知らないこともある。
〈こいずみやくも【小泉八雲】(1850〜1904)作家・英文学者。本名、ラフカディオ=ハーン(Lafcadio Hearn)。ギリシャ生まれのイギリス人。1890年(明治23)来日。松江の人、小泉節子と結婚。のち帰化。松江中・五高・東大などで教鞭をとりつつ、日本研究をまとめ、海外に紹介した。評論「東の国から」「心」「神国日本」小説「怪談」など〉
『怪談』は有名だ。有名すぎて、八雲といえば、「あの怪談」か。「雪女」か。と、それだけで終わり、分かった気になっている。
これはいけない。私もそうだ。「東の国から」と「神国日本」は少し読んだことがあるが、大系的に読んでなかった。
又、『怪談』だって、日本の各地に伝わる恐い話をアトランダムに集めて書いただけだろう。と思っていた。
ところが違ったんだ。八雲の朗読会を聞いて、その深い世界に驚いた。
又、『怪談』は昔のことではない。今でも、言える。又、今も「続いている世界」だと思った。
そうか、佐野史郎さんも松江か。それで八雲には子供の頃から関心があったのか。
この朗読会のパンフに書かれた佐野さんの略歴を見て、そう思った。
〈松江市出身。劇団シェイクスピア・シアター。唐十郎の劇団状況劇場を経て、1986年「夢みるように眠りたい」(監督:林海象)で映画、主演デビュー。1992年テレビドラマ「ずっとあなたが好きだった」(TBS)のマザコン男“冬彦”役が社会現象となる〉
そうだね。私もこのドラマは毎週見ていた。佐野さんに会うと、つい「冬彦さん!」なんて呼びかけてしまう。「よして下さいよ」と佐野さんに言われている。
状況劇場にいたのか。その頃は知らない。でも、松江に生まれたのが大きいな。八雲も松江に住んでいたし。
略歴の続きは、こう書かれている。
〈1999年には映画「カラオケ」を初監督。幼少期から幻想怪奇の世界に親しみ、松江ゆかりのラフカディオ・ハーン=小泉八雲にも惹かれていた。映像の仕事にたずさわるようになり、ますます小泉八雲作品と関わる機会も増え、八雲の朗読は今やライフワークとなっている。鳥取境港出身の写真家、植田正治をモチーフとした映像監督作品「つゆのひとしずく」(DVD/2006年/東映アニメーション)も八雲の随筆から引用されている。また、これを機会に、写真にも傾倒。2008年には東京と大阪で初の写真展「あなたがいるから、ぼくがいる」を開催した。BOWWOWの山本恭司氏とは松江南高校の同級生。音楽を通じて、当時から深く親交が続いている〉
そうか。松江に生まれたのが大きかったんだ。だから、幼少期から幻想怪奇の世界に親しみ、八雲に惹かれていたんだ。
それに、この朗読会では、隣りにギターの山本恭司さんがいる。朗読をより効果的に、そして立体的に表現してくれる。世界的なアーティストだ。
この人も松江生まれだ。そして佐野さんとは松江南高校の同級生だという。
この日、佐野さんは、朗読が終わってから山本氏を紹介し、「よし、私もやろう」と、自らもギターを弾く。これには驚いた。
じゃ、私も松江にも行ってみなくちゃ。あれっ、大学時代に行ったのかな。全国をオルグして回ってたし、大学や神社のあるとこは、くまなく回っている。でも、もう記憶が薄れている。
松江じゃないが、松阪に去年行った。
何気なく宿のテレビを見てたら、佐野さんが出ていた。松阪に来ていた。
ここは、小津安二郎監督の出身地だという。知らなかった。記念する公園があるし、監督が教えていた学校がある。そこを訪ねていた。
小津安二郎監督の作品を主に上映する映画館もある。ほう、すごいな、と思っていた。
次の日、その映画館に行ってみたが、休みだった。残念。小津作品を中心にやっている。今度、行ったら又、行ってみよう。
学校や公園も見てみたい。松江と松阪。名前が似てるが、関係はない。
でも、松江は、出雲大社のそばだし、松阪は伊勢神宮のそばだ。「松」が神社と関係あるのかもしれない。
さて、佐野史郎さんの朗読劇だ。
1月21日(土)、午後4時からヤマハ銀座スタジオで行なわれた。
初めて来た。ちょっと探した。ヤマハ銀座の地下2階にある。
そんな大きくない。満員だった。
〈小泉八雲の世界 Vol.10〉だ。10回目だ。1年に1回だから、もう10年になるんだ。
今回のテーマは「転生」だ。「てんしょう=絶望の淵から蘇る輪廻のしらべ=」と書かれている。
「転生」は普通、「てんせい」と読む。しかし、ここでは、わざと「てんしょう」と読ませている。生まれ変わりのことだ。
その「転生」についての話を八雲の小説・評論の中から8つ、取り出して朗読する。
必ずしも『怪談』からだけではない。たとえば、「振袖火事」は『霊の日本』からだし、「幽霊」は『カルマ』からだ。
一番、面白かった「勝五郎転生記」は『仏の畑の落穂』より、と書かれている。
勿論、『怪談』から取ったものもある。「力ばか」「おしどり」「お貞のはなし」などだ。
「お貞のはなし」は衝撃的だった。
長尾長生にはお貞という許嫁がいた。しかし、体が弱く、亡くなってしまう。それからしばらく経ち、長生は旅に出て、伊香保温泉に立ち寄る。
そこで何と、お貞に瓜二つの娘に出会う。時を超え、お貞はその娘に生まれ変わり、長生と出会うのを待っていたのだ。
昔、読んだけど、完全に忘れていた。佐野史郎さんの朗読でやられると、美しくも、恐ろしい話として蘇ってくる。
そして、この日の最大の話はこれだ。「勝五郎転生記」だ。
生まれる前の記憶があった勝五郎という男の子のお話だ。
武蔵の国、多摩郡中野村と程窪村という村が舞台で、現在の八王子市東中野と日野市程久保にあたる。
この話は、国学者の平田篤胤が残した記録にも残っている実話だ。
生まれ変わる前の男の子のお墓は高幡不動に、勝五郎のお墓も八王子の永林寺に今も残っている。
2年前、私はこの高幡不動に行ってきた。
別にこの「勝五郎転生記」の話ではない。当時はまだ知らなかった。「新選組まつり」があって行ってたのだ。そこには土方歳三の銅像も建っている。
さて、「勝五郎少年」の話だ。前世の記憶がある…と、つい姉に言ってしまった。両親や祖母にも言った。
ならばと、実際に、前世の記憶のある村に行ってみることになった。
すると、何もかもが勝五郎の言っていた通りだったので、前世の記憶、そして人間が生まれ変わるのは本当のことだったのかと、大人たちは驚く。本当に不思議な話だ。
もう一つ、不思議な話がある。実はこの勝五郎の子孫が生きている。今、日野に住んでるんです。「今日はわざわざこの会場に来てくれました」と佐野さんが皆に紹介する。
4時から始まった朗読は、8時頃に終わり、そのあと、楽屋に行って佐野さんと会って話しました。
それから私は帰ろうとしたら、あの「勝五郎転生記」の子孫がいる。つい話しかけました。そして、いろいろと聞きました。
日野にお墓もあるし、「記念館」もあるのでぜひ来て下さいという。分かりました。うかがいますと約束して別れました。
本当に不思議な話でした。不思議な体験をした。
佐野さんは、若松監督の映画にも何本か出ている。三島の時は出てないが、試写会の時に来ていた。
三島と自衛隊に同行するのは「楯の会」の4人。しかし、森田だけがお供をして自決することになっている。
あとの3人は「生きてくれ!」と三島に言われてた。「我々もお供させて下さい!」と3人は訴える。「共に死なせて下さい」と。
三島は許さない。森田は3人を慰める。「生きるも死ぬも同じだ」「すぐに会える!」と。死ぬ人間が生き残る人間を慰めるのだ。ホロリとする。
これには感動しました。と私が言ったら、佐野さんが不思議なことを言う。
「そうですね。森田の言う通りです。こうして、一緒に会えたのですから」。
エッ?と思った。こうして会ってる? 映画ではそうだけど。これは現実じゃない。
「いえ、現実なんです。映画じゃないんです」と佐野さん。何か、スピリチュアルな人だと思った。
そうか。八雲にはまっていたからか。と今にして思えば分かります。
「勝五郎転生記」は、又、読み返してみたいですね。そうだ。勝五郎の子孫が言っていた。丹波哲郎の『大霊界』のⅢに、この話が出て来るそうだ。実在のお墓も出て来ると。
「YouTubeでもみれますよ」と言うので、見てみた。本当だ。出ていた。
それと、今年は、小泉八雲の「雪女」が映画になる。佐野さんも出ているそうだ。今年は「転生」の年になるでしょう。
そして恵観さんから新年のお祓いを受けました。感動です。
国内だけでなく、ドイツ、アメリカ、ロシア、北朝鮮…と世界中を駆け回り、慰霊の旅を行なってます。「あっ、北朝鮮の時は私も行ったのだ」と、映像を見つめました。
この日は、「森さんの話を聞きたい。上野を歩きたい」という人が10人以上も集まり、大勢の団体になりました。上野の森、芸大をはじめ、上野のお山を歩き、今、どうなってるかを聞く。
そして5時、上野の中のお屋敷へ。市田邸という歴史的な建物で対談を実施。なかなか、趣があっていい。
2時間ほど対談し、「かやばカフェ」に移って、食事。普通の喫茶店かと思ったら、2階は、和室で居酒屋風。お酒を飲み、食事をして、打ち上げをしました。
これはすごい本ですね。1ヶ月で増刷になってますし。神の存在をめぐっての、日本のトップ同士の対談です。
クリスチャンの佐藤さんは「神はあるのです」と言う。無神論者の竹内さんは「エビデンスを見せて」と迫ります。面白いし、知的興奮を覚えます。生徒たちも感動してました。
㉒変わったストーブがありました。扇風機かと思ったら、電気ストーブだったんですね。歴史的な建物なので、ガスストーブや石油ストーブは使えないのかもしれません。お湯はありますが、お茶はありません。外で、ティーバッグを買って来て、いれました。
㉓「市田邸」で2時間、対談し、そのあと、「かやばカフェ」に移って、打ち上げ会です。喫茶店なんですが、2階に上がると、そこは畳の居酒屋です。いろんな料理を並べて、宴会が始まりました。「アヒージョ」を食べました。「アヒルの肉ではありません」と店の人が解説してました。