2月21日(火)でした。高田馬場の喫茶店「ミヤマ」の会議室です。
カナダから来た、マイク佐藤さんと対談してました。カナダで温泉を掘り、それを広めている人です。たまに日本に帰ってきます。
学生時代は右派の運動をしてたのですが、卒業してからはカナダに単身、渡り、温泉掘りをしています。
午後2時から始まり、5時になりました。
「もう時間だ」とレーニンさんが言い、「じゃ土風炉に移ろう」と帰り支度をしてた時に、入ってきたんです。祥伝社新書の編集長・水無瀬さんが。
「やっと出来たんです!」と持ってきてくれたんです。わざわざ。すみません。
とうとう、今年、2冊目の本が出来たのです。今年1冊目の本は、先週紹介した、内田樹さんとの対談本『慨世の遠吠え2』(鹿砦社)です。
おかげさまで評判が良く、売れてるそうです。
カラーグラビアのページがあり、合気道をやってる写真もふんだんにあり、実に楽しい本になりました。
又、内田さんの「あとがき」も素晴らしくて、皆、感動してました。
勿論、一番感動したのは私です。鹿砦社も力を入れてます。福本さんの頑張りがあって、こんな素晴らしい本が出来ました。
さて、今年の第2弾です。水無瀬さんが持ってきてくれた本です。私の書き下ろしで、『憲法が危ない!』(祥伝社新書。780円)です。
タイトルはシンプルですが、ズバリと直言しています。
表紙のカバーには、こう書かれています。
〈改憲運動に半生を捧げた理論派右翼は、なぜ今、異議を申し立てるのか?〉
そして、あの言葉が書かれています。
「自由のない自主憲法より、自由のある押し付け憲法のほうがまだいい」。これは今でもそう思っている。我ながら、うまいことを言ったと思っている。
実は、この本を書くことで、吹っ切れたことがある。
初め、この本のタイトルは『憲法改正を急ぐな!』だった。
この時は、まだ「憲法改正」は〈正義〉だという考えがあった。キチンと見直すべきだ。
でも、今のように余りに熱くなって、あれもこれも改憲しよう! 家族制度を守れ! 軍隊を強固にしよう、核も持て、核の方が安いんだ。日本の若者はだらしがないから徴兵をしろ!…と、どんどんエスカレートする。
文句ばっかり言ってる人間は、さらに文句ばかり言う。そんな方向に行く。
昔、こんなことを言ってた人がいた。一人一票なんて「悪平等」があるから〈家〉はなくなる。家をまとめるなら、「一家に一票」でいい。
父親が、皆の意見を聞いて、最後は父親が判断して、「一家としての一票」を入れる。
そうすると家族はまとまり、争いはなくなる。そんなことを言っていた。
参ったなー。今時、こんなことを言う人がいるのかよ。と思った。
妻や子供がどこに投票しようと、気にしなければいい。
それなのに、「一家で一票」となると、皆の意見を父親の一票として代表する。何日間でも説得するか。無理だろう。
ただ、それでも父が納得しなかった場合、どうするか。大激論になるか、あるいは(不幸にして)大喧嘩。あるいは「殺し合い」。
ハッと我に返ったのだ。今までは、どうしても「改正するんだ!」ということにこだわっていた。アメリカから押し付けられたものだ。叩き返したらいい。
ただ、今、「改憲」がやれそうになると、いろんな不満が一挙に出てくる。
若者は、だらしがないから徴兵をしろ。軍隊が動きやすいように個人の自由は制限しろ、となる。憲法の「自主」にだけ目を向けると、その反動が見えない。
巨大な軍、核…などといったら、世界中の反発を買う。
そして、巨大な軍隊を整備し、動かせるように、人々のデモ、集会などはやめさせられる。
強大な国家になるが、国民は弱くなり、デモも出来ない国になる。それではダメだ。
ちょっと論点を整理する。
憲法改正は必要だ。ただ冷静にやれたらいいのだが、多分、混乱する。随分と闘いがあった。
何でもかんでも「憲法を改正しよう!」という怒号が多くなった。
勉強もしないで、「憲法さえ改めたら、いい方向に行く」。そう思ってる人が多いのだ。
そんな状況に対して、「憲法改正を急ぐな!」と言っていて、いいのか。「改正」は必要なのか。いらないだろう。
祥伝社でも、「急ぐな!」ではちょっと弱いのではないか。という意見が出て、私の方にも意見を出せ、と言ってくる。
それで、『憲法が危ない!』になった。
内田さんとの『慨世の遠吠え2』も評判になっているが、この『憲法が危ない!』も読んでいて、やはり、タイトルは変えてよかったと思う。
『憲法改正を急ぐな!』だと、改憲派の生き残りだ。そして、上から目線である。
その点、今回のタイトルは「改憲」は、キッパリと拒絶している。いい本が出来た。ありがとうございました。と礼を言いました。
この本を書いていて、驚いたのは、社員の皆さんがとても優秀なことだ。
たとえば、学生の時、こんな歌をうたわされてたな、と思い出した。
そこのとこをちょっと書いたら、「それはこの歌でしょう」と、探してくれる。
すごい。「日本は若いのだ」の歌だ。「国が桜の花ならば、一人一人は花ビラだ」という歌は今でも思い出して、口に出している。
その2番は、「日本が火を吐く島ならば、一人一人は溶岩だ!」という歌だった。
ゲッ! 俺たちは岩かよ、と思った。
日本と一体のものとしてまとめようとして、無理をしてる感じもした。
又、フランスの国歌、日本の国歌…。随分と違う。
日本は平和的だ。「これじゃ、戦争を戦えない」と言って、陸・海軍は、「軍歌」をやたらと作った。国歌が平和的だからだ。なんでも作られた軍歌の数は5百とも千ともいう。
それから、この本には、第24条を書いたベアテさんに頼まれて、「憲法24条の歌」を探した。
それも見つかった。全文を紹介した。
さらに、今の憲法が出来た時、「憲法音頭」が出来て、皆で歌い、踊ったそうだ。
しかし、今、覚えている人はいない。そんな状況も説明した。私の本にしては珍しく、「歌でつづる戦後日本」になった。プロの歌手の人や、音楽家の人たちにも聞いてみたい。
さらに、3月には、もう2冊、控えている。保阪正康さんと「昭和維新」について考えた本だ。さらに、白井聡さんと永久敗戦化する日本について話し合った。三島についてもかなり話し合った。
では、その本が出来た時に、又、書こう。
そうだ。高橋和巳の本が、河出書房新社から出た。これもいい。実にいい。
高橋和巳の文章も、紹介されている。三島由紀夫との歴史的対談も収められている。
当時の作家が書いた和巳論。そして、今の人々が書く和巳論。それが、一緒に収められている。私も書いている。
いい機会に、チャンスを与えてもらい、嬉しかった。
佐高信、三田誠広、それに坂本一亀さんも書いてる。
この人は坂本龍一さんのお父さんで、「伝説の名編集長」だ。高橋和巳、三島由紀夫を育てた人だ。
又、その下で仕事をした田辺園子さんも書いている。これは一冊、全てが「高橋和巳」だ。この本のタイトルがいい。
『世界とたたかった文学・高橋和巳』(河出書房新社。1900円)だ。文句なしに素晴らしい。
いい本に出会えるることは人生で一番の喜びだと思う。大事に読んでいる。
マイクさんは、右派学生運動をやり、その後、カナダで活躍している。その頃の話を聞く。
そして、「論争ジャーナル」の中辻さんと会う。編集長の弟さんだ。ほとんど50年ぶりだ。嬉しかった。
今月の講師は、松本徹さん(三島由紀夫文学記念館館長)。なかなか勉強になりました。
防衛省では、午前と午後、1回ずつ、見学に応じている。とてもよかった。「東京裁判」の行われた法廷。三島が絶叫した屋上。これは歴史遺産だ。感動した。