面白い本が2冊出ている。売れている。私も少し書いている。
その紹介からしよう。
『私にとっての憲法』(岩波書店)と『日本の新宗教50』(宝島社)だ。憲法と宗教。日本を支える二つのテーマだ。
まず、最初の本だ。何と53人が書いている。
憲法についてよく書いている人。あるいは、ほとんどコメントしてない人。…なども出ていて面白い。
PANTAも書いている。保坂展人、保阪正康、坂元ヒロも書いている。
坂本龍一、白井聡、高遠菜穂子、竹下景子、西山太吉、仁藤夢乃、久米宏、内田樹、色川大吉、赤川次郎…と、53人だ。
「施行70年。いまこそ語ろう! 53人の憲法論」と表紙カバーには書かれている。
53人も書いてるし、資料もあるので厚い。266ページもある。定価は1700円だ。
何ヶ月か前に私は原稿を依頼された。今年の初めだったか去年の年末だったか。
その時は、てっきり、「岩波ブックレット」か「岩波新書」だと思った。そして、700円か800円くらいのブックレットか新書になると思ってたのだ。
ところが、出来たのはガッチリした単行本だ。
ブックレットか新書と(勝手に)思ってたので驚いた。
ブックレットか新書ならば、定価も安く出来るし、1万部以上は軽く出るだろう。
ところが、53人になった。人数が少なかったらブックレットや新書にするつもりだったのか。それは分からない。
書けない人、海外に行った人…などを勘定に入れて、全員に依頼の手紙を出したのだろう。
ところが、全員が原稿書いて寄越した。嬉しい叫びだ。そこで急遽、単行本にしたのかもしれない。
ともかく、これはいい本だ。
その本と、国立公文書館で行われた貴重な展示「誕生 日本国憲法」の二つだね。〈憲法70年〉の今年、注目すべきは。
昔は改憲派の集会に毎年、行ってたけど、今は全く行かない。言ってることは同じで、ただの「昔への回帰」だけだし。
そして、この原稿を書いてる時、岩波の〆切が過ぎたが、書けなかった。
催促の電話があって、編集者と会った。
『憲法が危ない』(祥伝社新書)を書いてから、もう書くことはないような気がした。
このあと何を書いても、喋っても、同じような気がした。
その悩みを編集者に話した。
「いや、いろんな切り口がまだまだあるはずですよ」と励まされた。
ウーン、そうかな。私はもう、終わりじゃないのかな。と思いながら話した。
昔の「改憲青年」だった頃を思い出して話してたら、ある事件を思い出した。
学生の時、「模擬国会」をやった。
改憲・護憲が真っ向から対立し、闘うのだ。
そして改憲派が勝利する。それでこそ、国民に「改憲の正しさ」を理解してもらえる。ウォーやろう、やろうとなった。
でも皆、「改憲派」をやりたがる。当然だ。最後には勝つ「正義の味方」なんだし。
しかし、悪役の「護憲派」がいないと、盛り上がらない。
それも、すぐに負けたらマズイ。悪辣に立ち回り、攻め込む。そして最後の最後に、「負けました」「私が間違ってました」と謝る。
その「悪役」が必要だ。でも、誰もやりたがらない。当然だ。
そして、何と、その役目が私に回ってきた。
「お前は暴力派だと言われているし、いっそ悪役をやってくれ。どうしても必要だ!」。
「この模擬国会が成功するかどうかはお前にかかってるんだ!」と皆に、頼まれた。集団で説得された。
それで仕方なく、引き受けた。
でも、ヤダな。悪役では。
それと、ハッと気がついた
。護憲派の論理を知らない。日本国憲法はアメリカが押し付けた。その憲法は「諸悪の根源」だ。そう言ってきたから、この憲法の「よさ」なんて知らない。想像したこともない。
それで、本を集めて猛勉強をした。そして、「模擬国会」の場へ臨んだ。
ところが、改憲派は、「これは正義だ」「いつも言ってるじゃないか」と思い、傲慢に押している。勉強もしてない。
「国会論議」になったら、まるっきり弱い。「護憲派」の私に攻めまくられた。
そして何と、私が勝っちゃった。
凄まじいブーイングだった。「裏切り者だ!」「売国奴だ」「恥を知れ!」と散々言われた。
もしかしたら、あれで私は目覚めたのかもしれない…。そう思い、遠い日のことを思い出して、書いてみたんですよ。岩波の本に。
50人以上の他の人たちの文章もとても勉強になった。皆さんも読んでみて下さい。
そしてもう1冊だが、これは、家の近所の「セブンイレブン」で買った。本屋には置かないで、セブンにだけ置いてるのかもしれない。
私もよく知らない宗教も出ている。「日本会議」がらみの宗教もあるし、とても勉強になった。
これは、別冊宝島編集部編で、こういう本だ。
『日本の新宗教50=完全パワーランキング=人脈力・資金力・政治力を全比較』
さすが宝島だ。面白い。読ませる。
第1章 日本の新宗教 実力ナンバーワン決定戦①
=「信者数」「資金力」「集票力」編
第2章 日本を動かす ザ・新宗教ベスト10
第3章 私が見た「カリスマ」の素顔
第4章 知られざる実力派 進撃の新宗教ベスト15
第5章 日本の新宗教 実力ナンバーワン決定戦②
=「有名人」「海外布教」「学校」編
第6章 日本をザワつかせる過激な新宗教ベスト10
第7章 独自の存在感を放つ「個性派」新宗教ベスト15
目次をざっと見ても、面白そうだ。つられて、ついつい読んでしまう。
宝島には変なポリシーがないようだ。何でもやってしまう。
ここでアッと思うのが第3章だ。
私が見た「カリスマ」の素顔〉だ。これは面白い企画だ。
麻原彰晃のことを田原総一朗さんが語る。
池田大作のことを二見伸明(元公明党副委員長)が語る。
そして「生長の家」谷口雅春先生のことを私が語るのだ。
緊張したし、大変だった。
3人の見出しはこうだ。
〈私が見た「カリスマの素顔」〉。
あれっ、これは全体のテーマだ。3人が、このテーマのもとに、各々のカリスマについて語っている。実にリアルで正直だ。
①〈麻原彰晃は「ごまかす」ことができない男。実直すぎる“真面目さ”にヤバさを感じた。(田原総一朗)
②〈ロジカルなのに感情に訴えかける演説。池田大作が「カリスマ」と言われる秘密。(二見伸明・元公明党副委員長)
③僕にとって谷口雅春先生は、“人生最大の師” 宗教家・思想家であり、哲学者だった。(鈴木邦男)
これだけでも面白そうでしょう。
他に、50の新宗教の集票力、集金力などのランキングや、交友、世界への進出度など、とにかく詳しい。
又、政界との繋がり。日本会議との関係…なども出ている。
宝島社は、こういう本は作るのがうまい。他の出版社では、とてもやれない。
それに、この本は、本屋にはない。何度か、大手の本屋を探したが、ない。
その代わり、セブンイレブンにはある。もしかしたら、セブンイレブンにだけ置いているのかもしれない。これはきっと売れるだろう。
『憲法が危ない』(祥伝社新書)は出版して2ヶ月になるが、売れていて、けっこう評判になっている。
何と、日本共産党の『赤旗』に書評が出た。
さらに、TBSの「サンデーモーニング」では、この本を中心にして、私も喋らされた。ありがたい話だ。
『赤旗』に私の本が載ったなんて、初めてだ。
それも、「右翼のダメさかげん」を批判したのではない。書評なのに、きっちりと認め、誉めている。驚きだ。
「落ちこぼれ右翼」をこんなに評価していいの? と思ってしまいます。
長年、改憲運動をしてきた私も、最近の改憲ムードは危ないと思うし、かつて「改憲派」だったことへの「責任感」からこの本を書いた。と、私の「動機」を紹介している。
〈国民の自由を制限する自主憲法より、自由のある「押しつけ憲法」を選ぶ、と訴えます〉。と言います。
ベアテさんとの出会いがきっかけで、憲法観が変わった。
そのあとはこう書いてます。
〈国のすべきことは戦争しないこと、安全保障を言うならまず近隣国と仲良くし、どんなことがあっても戦争しない関係を築くこと。そうせずに非難し合っているのは失政から国民の目をそらすためだと喝破。かつては犯罪多発も失業増もすべて憲法のせいと憲法に責任転嫁していたという著者ならではの説得力です。「言葉だけの『愛国者』による空疎なナショナリズムの蔓延(まんえん)に警戒せよとの訴えに同感です〉
すごいですね。「落ちこぼれ右翼」に全て、同感してますよ。
あとは何だろうな。「アエラ」でもすごい特集をやっていた。「右傾化する女たち」。
さらに、「右傾化する日本はどこへ」。「メディア・狙い撃ちされる『ものを言う人びと』」「気がつけば多数。自民党の右の右」。「伝統的右翼、ネトウヨを叱る」。
なかなか硬派な特集だ。
〈片山杜秀さん。「右翼は反体制にもなる」〉
〈鈴木邦男さん「愛国心は犯罪者を救う」〉。
さらに西部邁と中島岳志の「師弟対談」だ。
ラストは青木理の〈過剰な「正義」が無残な暴発を遂げた〉。連合赤軍論だ。なかなか力作です。
あと、田原さんが朝生の30年について書いていた。
単行本で、『暴走司会者』。これは、読みでがあった。
他に新聞、週刊誌でも「朝生の30年」は取り上げられていた。
私のところにも取材に来た。
「あのう、30年目ですが」と電話が来る。
「あっ、朝生ですね」と言うと、「いえ、赤報隊です」と言う。
そうか。赤報隊も30年か。朝日、毎日、共同などから取材された。
「もう時効なんだし、本当のことを言って下さいよ」と迫る新聞記者もいる。そう言われると困る。
そんなこんなで、やたらと忙しいこの頃だ。
連休になっても、仕事は片付かない。予備校は連休でもやってるし。熊野、ソウル…と、見るとこもあったし、本もやたらと読んでいる。
ということで、何か、まとまりがつかないままに終わる。
会場では、福田文昭さんはじめ、多くの写真家に会った。又、いろんな人々に紹介された。
〈今回の特別展では、日本国憲法の原本をはじめ、その誕生にまつわる資料を展示するとともに、憲法担当の国務大臣として実に1300回余の答弁にあたった金森徳次郎が果たした役割にも注目しました。憲法の「産婆役」にとどまらず、憲法を「国民の憲法」たらしめようとした金森の姿勢には、今日においても取り上げる価値があるのではないでしょうか〉
すごい男だと思いましたね。この金森は、じっくりと資料を見、映像を見、イヤホンガイドをじっくりと聞き、そこに3時間ほどいました。皆も、資料を見入っていて、動きません。
「憲法が出来て70年」。「70年、何がめでたいのか!」と言ってる人もいますが、めでたいんですよ。
その憲法を作るために、命をかけた人々がいた。「押し付け」だけでなく、いかに、占領軍と闘い、国会で闘い、日本の憲法にしようとした人々がいた。
今とは人間の質が違う。今、ムードに煽られて「改憲だ!」と言ってる人々とは人間のスケールが違うと思いましたね。
これに抗議し、山城さんを励ます集いだ。でも、逆に、山城さんに皆が激励されていました。
司会は、八王子市議の佐藤あずささん。社民党委員長の吉田忠智さん。元衆議院議員の平野貞夫さん。元国立市長の上原公子さん。多摩市長の阿部裕行さんなどが挨拶しました。
私も挨拶しました。前田朗さん、古今亭菊千代さん、神田香織さんも挨拶してました。
内海愛子さん(恵泉女学園大学名誉教授)にも久しぶりに会いました。「前に雑誌で対談しましたよね」と言ったら、「あっ、朝日ジャーナルですね」と言います。
「でも、辻元清美さんもいたから、座談会です」。
そうか。思い出しました。本当に久しぶりです。あの頃は辻元さんが国会に出る前でした。懐かしい人にも随分と会いました。
山城さんは実は初対面でした。とてもいい人ですね。闘士ですが、物腰は柔らかくて、楽しい人です。挨拶しながらも、皆を励ます。そして、沖縄の歌をうたい、踊り出しました。
安倍さんの「9条改正」。「9条1、2項はそのままで、自衛隊を明記する」といった。そのことについて聞かれる。その他、なぜ「改憲派」が「護憲派」になったのか。などについて聞かれる。
5時まで、ビッチリと。でも、当日(日曜)使うのは、10分ほどだと思いますが…と言っていた。
④金森はかつては天皇機関説事件で政府の要職を追われた。しかし、憲法改正を審議する議会では、彼に頼るしかなかった。憲法担当の国務大臣として答弁を一手に担当した。国体の変革と主権の所在をめぐる微妙な質問を、「水は流れても川は流れない」といった警句に満ちた答弁で乗り切った。
⑦これは今です。「施行70年」の今です。憲法改正の危機にあって、「いまこそ語ろう。53人の憲法論」が出ました。『私にとっての憲法』(岩波書店)です。これは実にいい本です。私も書いてます。この記念すべき本に書かせてもらい、光栄です。
⑧驚きました。日本共産党の『赤旗』(4月23日号)に載ったんですよ。私の『憲法が危ない!』の書評が。〈『憲法が危ない!』熱烈な改憲派の反省〉として。 ありがたいですね。出版社の人も、ビックリしてました。
⑨赤報隊事件から30年。いろんなところから取材されました。特に大阪、阪神からも取材に来ました。これはその一つです。「朝日新聞」(阪神版)4月9日朝刊です。
〈明日も喋ろう=阪神支局襲撃から30年=〉という連載の中で話してます。
⑩『アエラ』(5月1日〜8日号)では、「右傾化する日本はどこへ」の大特集でした。私も取材されました。『アエラ』には、私は書評を連載していますが、取材されるのは、珍しいです。
〈鈴木邦男さん「愛国心は犯罪者を救う」〉。タイトルもすごいですね。
⑪ハングルで書かれた私の本です。去年の5月、ソウル大学で呼ばれて講演しました。それが本になって売られてます。それを読んで、私のブログを見て、ソウルの芝居を観に来てくれた人が何人かいました。ありがたいですね。
⑫『日本の新宗教50』(宝島社)には、田原総一朗さんが麻原彰晃について書いてました。朝生に出演させるなど、何度か会ってます。田原さんしか書けない原稿です。〈実直すぎる“真面目さ”にヤバさを感じた〉と言います。
⑭5月3日(水)。「山城博治さんの今後の益々のご奮闘を祈念し、激励する集い」が開かれ、大勢の人が集まりました。山城さんは、沖縄平和運動センター議長で、果敢に戦ってます。権力の奸計で逮捕され、5ヶ月も勾留されました。でも、めげません。すごい人だと思いました。闘いの象徴的な人だから、権力は狙い撃ちにしたのでしょう。でも・かえって闘いは、強く大きくなりました。
⑰私も挨拶しました。本土復帰の戦いを支援するため大学の時に沖縄に行きました。その時は、パスポートを持って行ったのです。鹿児島まで夜行列車。そこから船で10時間。大変な旅でした。でも沖縄の闘いに感動しました。
㉓4月28日。劇団「再生」が、カミュの『正義の人々』を上演しました。その前に、トークをしました。高木尋士さん(「再生」代表)。アーチャリー、鈴木の3人です。『正義の人々』はロシア革命直前のテロリストの話です。テロを辞さずと思いつめた人は皆、「正義の人々」になるんですね。右翼、左翼、宗教…と。そんな話を体験を含めて喋りました。
㉗5月2日から、「現代写真の4つの源流展」が開かれ、5月1日にオープニングパーティ。そこに出席しました。ムトー清次、立木義浩、桑原史成、与田弘志の4人の写真家。これを主催したのは、元「平凡パンチ」編集長の椎根和(しいね・やまと)さんです。三島由紀夫とも親しく、『平凡パンチの三島由紀夫』などの著書もあります。「4つの源流展」というテーマの付け方も、なにか、三島的な感じがします。