中野図書館では月に30冊、本を借りられる。正確に言うと、期限は2週間で、15冊だ。だから1ヶ月で30冊だ。私は目一杯借りている。
それに、いろんな人が本を送ってくれる。ありがたい。月に10冊か20冊ある。だから、月に40〜50冊は、ただで本を読んでいる。
それに本屋に行った時、金もないのに、衝動買いしてしまう。
家は本で一杯だ。でも、本を捨てられないので、どんどんたまる。このままじゃ、ゴミ屋敷になってしまう。「寅次郎化」するみやま荘だ。
あそこまで落ちたらオワリだ。何とか人間らしい生活を維持しようと必死で、整理、整頓に励んでいる。
祥伝社からは『憲法が危ない』を出してから、そこの本をいろいろ送ってもらっている。ありがたい。
時代小説が多い。文章がいい。鳥羽亮、佐伯泰英、 …などはいい。文章に引き込まれる。文章の勉強にもなる。
東郷和彦さんからは『返還交渉=沖縄・北方領土の「光と影」』(PHP新書)を送ってもらった。ありがたいです。勉強になってます。
御厨貴さんからは『明治史論集』(吉田書店)という本が送られてきた。
驚いた。厚い。580頁もある。定価は4200円だ。こんな高価な本を、申し訳ありません。じっくり読ませてもらいます。
これは、まるで教科書だ。歴史を学ぶ上での貴重な資料だ。近代日本をつくる上での〈明治〉の資料だ。
本のカバーにはこう書かれている。
〈「実証」と「物語」の間。単行本未収録作品群で、御厨政治学の原型を探る〉
それと、人に会った時に手渡されることも多い。
5月11日(木)の一水会フォーラムの時、長野から来た平田竜二君に3冊の本をもらった。「ぜひ読んで下さい」と言う。
彼の書いた本かと思ったら違う。まだ、「自分の本」はない。
1冊は筑波昭の『津山30人殺し=日本犯罪史上空前の惨劇』(新潮文庫)だ。
そしてプロレス本が2冊。川田利明自伝『俺だけの王道』(小学館)。そして鈴木健の『UWFインターの真実』(エンターブレイン)だ。
この2人は東京で店を出してるし、ぜひ行きましょうと言う。
いいね、行ってみよう。と言ってるが、なかなか機会がない。
又、「津山30人殺し」の〈現場〉にも行ってみたいと思ってる。
岡山県だ。この事件は、いろんな人が書いている。小説にもなり、映画にもなった。
横溝正史の小説が一番有名だ。『八つ墓村』という作品になっている。
「横溝正史記念館にも案内しろ、と言ってましたね。お前の住んでる所から近いし、って言ってましたね。それと、猿橋も。僕は両方とも行って、ちゃんと下見をして、鈴木さんがいつ来てもいいように準備してるんですよ。でも全然、来てくれないし、もう2年になります」と平田君はブツブツと言う。
エッ? 2年になるのか? 2か月前に言ったんじゃないのか。2年か。申し訳ない。じゃ行こう。
「いつ行きます?」「よし、あさって行こう」と、急きょ決めたんですね。
次の日、5月13日(土)、文京区民センターで、〈狼〉の集会がある。だから、14日(日)にしようと言ったのだ。
平田君は、翌日の〈狼〉集会にも出るという。
それは1974年に起きた三菱重工爆破事件を始めとした連続企業爆破事件だ。
「東アジア反日武装戦線」といって、その中に、〈狼〉〈さそり〉〈大地の牙〉というグループがあった。
左翼の事件だが、なぜか右翼の血盟団のような気がした。あるいはカミュが書いた『正義の人々』のような。
それで、1975年に本を書いた。『腹腹時計と〈狼〉』(三一新書)だ。
これが生まれて初めて書いた本だ。産経新聞社を辞めた直後に出した。
〈右翼が左翼のテロ活動に共感した〉〈左右の接近だ〉とマスコミには言われた。騒がれた。
事件が発生した時は、ものすごい批判で、誰も、彼らの心情を考えたり、冷静に事件について考える人はいなかった。オウム事件などと同じだ。
ものすごいバッシングだ。運動の支援者たちも声を上げられない。
それから40年が経って、やっと、考えられる時代が来た。こうして、集会も開かれるようになった。
この「連続企業爆破事件」を考える集まりも今年で5回目だ。私は、全部出ている。
2013年より始まり、毎年のように開かれ、今年は5月13日(土)で5回目だ。
この日のテーマは、
〈東アジア反日武装戦線と私たちの来た道、行く道。5年連続集会、虹の彼方へ〉
15時に集会は始まった。
今までの経過報告。関係者の挨拶。又、救援連絡センター事務局長・山中さんの講演がある。そして、浴田由紀子さんの挨拶がある。
会場には、「お帰りなさい、浴田さん!」「ご苦労さまでした」と書いた貼り紙が…。
そうなんだ。先月、出所したのだ。「東アジア反日武装戦線」のメンバーとして逮捕され、その後、日本赤軍ハイジャック闘争で「奪還」される。アラブへ行き、闘い、そして世界を回る。
そこで逮捕され、日本に戻される。さらに裁判。
だから、計20年以上、刑務所に入っていた。1974年の事件なのに、2013年にやっとシャバに出てきたのだ。
獄中の話を中心に、浴田さんは淡々と話す。とても感動的な話だった。
それに、獄中で書いた本が、入口で売られていた。
獄中で書いたというと、「獄中記」かあるいは俳句、短歌だと思うが、違う。
何と童話なのだ。これはすごい。中にいると、権力や、外の世界の人々への恨みつらみが出て、書いた本が多い。
でも、浴田さんは、それを超えて、〈童話〉だ。「今度、ゆっくり話を聞かせて下さい」とお願いした。
この集会には平田君も来ていた。平田君は師の見沢知廉のことを思い出し「こいつは見沢の書生でした」と浴田さんに紹介したら、「見沢さんの本は沢山読みました」と言う。
平田君に聞いたら、「2人は文通をしてました」という。
浴田さんに許可を得て、「書簡集」として出したらいいのに、と私は言いました。
集会のあとに懇親会があり、家に帰ったのは、遅かった。
それから仕事をして、寝たのは朝方だった。
ちょっと寝て、5月14日(日)の午前7時、新宿に向かう。8時30分の新宿発あずさ7号に乗る。10時05分に山梨市駅に着く。
すでに駅に平田君が待っていた。もっと早い列車に乗ってきたのか。あるいは、深夜バスで来たのかな。
「バスはあまりないので、タクシーで行きましょう」と平田君。タクシーで1000円ほどだ。
山梨市の案内図が出てるので見たら、いろいろな温泉がある。でも変なのだ。その名前が変なのだ。
「ほったらかし温泉」。さらに「温泉ぷくぷく」。
タクシーで着いたところは高台だ。いや、山の上だ。
何でもここから見る夜景はとてもきれいなんだという。「新日本三大夜景」と大きく書かれている。
「新」なんてあるの? 私は「日本三大夜景」は見ている。函館、長崎、神戸かな。
では、この「新三大夜景」はどこなんだ。スマホで検索して見た。
福岡、黒部、そしてこの山梨だ。
山の上だから眺めはいい。うっとりと見ていた。5月14日(日)だ。話を戻す。
あっ、いけない。私は横溝正史記念館に来たのだ。
どこだろう。見渡したが、それらしい建物はない。
おかしいな、と思っていたら、「あれです」と平田君が指さす。
「あれは民家だろう」と言ったが、「いえ、あれがそうです」と言う。
何でも、ここ山梨に疎開してきて、この家で原稿を書いてたという。
平田君は前に来たことがあるというので、案内してもらった。
本当に「普通の家」だ。「ここに座布団をしいて、こうして原稿を書いてたんですよ」と記念館の人が話してくれる。
玄関のところに文庫本がズラリと並んでいる。すごい。
私はこの全てを読んだ。江戸川乱歩や森村誠一、湊かなえなどが有名だが、その論理性、説得力からいって、推理小説の第一人者が横溝正史だと思う。私は学生時代から読破している。
横溝はかなり古い人のように思えるが、実は1980年代まで生きていたんだ。会ってみたかった。
『辞林21』(三省堂)には、こう書かれている。
〈よこみぞ せいし 横溝正史 1902〜1981.小説家。神戸生まれ。論理的で日本の風土に溶接した推理小説でブームとなる。「獄門島」「八つ墓村」など〉
この「八つ墓村」は岡山県・津山の30人殺しをモデルにしている。
他にも「本陣殺人事件」など、岡山を舞台にした作品は多い。
それらのポスター、映画のチラシなどが記念館には置かれている。
横溝ファンの私としては、とても堪能できた。
それから、スマホでタクシーを呼ぶ。
一応、バスの停留所はあるが、1、2本しか出てない。「1時間に1、2本」じゃない。1日に1、2本だ。
「あっ、昼のバスは終わった。あと、夜しかないね」と隣りの人が言っていた。
それで仕方なく、スマホでタクシーを呼んだんだ。10分ほどで来る。
あれ、さっきと同じ運転手さんだ。まさか、1台しかタクシーはないのかな。と言いながら、駅に行く。
列車に乗って、今度は大月で降りる。有名な「猿橋」を見るのだ。先月かな。
NHKの「日曜美術館」で取り上げている。又、テレビ東京の「美の巨人」でも取り上げていた。
猿橋の入り口には、「日本三奇橋」と大きく書かれていた。
エッ? じゃ、他の二つは何だろう。調べてみた。
一つは山口県の錦帯橋。そして黒部の橋。錦帯橋はすでに見た。だから、あと一つの富山県の黒部の橋を見なくっちゃ。そうだ。大月の「猿橋(さるはし)」の話だ。
もしかして『辞林21』に載ってるかな。いや、ないだろうな、と思って引いたら、出ていた。
〈さるはし 猿橋 日本三奇橋の一つ。山梨県大月市にあり、桂川に架かる木橋。両岸の懸岸から刎木(はねき)を何段にも重ねて突き出し、橋圧を受ける構造のもの〉
これは実際に見るしかない。普通、川にかかる橋というと、川から大きな杭を出し、支える。それを何本も出して支える。
ところが、川が急だったりすると、杭では支えきれない。じゃ、刎木を両端から伸ばして行き、橋を架ける。
じゃ、なぜ「猿橋」というのか。いろんな説があるが、猿が河を通る時、両手両足を広げ、そこを他の猿が掴み、これが「橋」のようになる。「猿で出来た橋」を渡るのだ。そうだ。猿橋は下の川が深くて、急だ。
それで、川に行く。そして、ゴムボートに乗った。いい体験をした。
平田君もありがとう。おかげで、横溝正史館に行くことができた。それに天下の奇橋・猿橋も見ることができた。よかった。よかった。
やはり、家で本を読んでるだけじゃ分からないことが沢山ある。どんどん外に出て見て回らないと…。そう思いましたね。
7時から、「書泉グランデ」で足立正生監督の「断食芸人」のDVD発売記念のトークがあったので、聞きに行く。
出演した女優の井端珠里さんも出演していた。〈断食芸人DVD発売記念。足立正生監督&井端珠里さんトーク〉。
「足立監督の世界観に付いて行けるかどうか分からなかったんですが、必死にやりました」と井端さん。
そうか、「世界観」か。「革命思想」かもしれない。「いやいや、あれは紙芝居ですよ」と足立さんは謙遜していた。
トークは盛り上がり、会場からも質問が出る。PANTAさんも駆け付けて、話をしていた。
終わってから、「新宿に行きましょう」とPANTAさん。新宿のK's cinemaで今、「いぬむこいり」が上映されて、連日、満員だそうだ。
4時間の長い映画なのに、毎日、トークが行われ、PANTAさんも出ている(私もこれからある)。「じゃ、私も行きます」と、行った。新宿までPANTAさんの車で乗っけてもらう。
「三平」に着いて驚いた。「いぬむこいり」の片嶋一貴監督。脚本の中野太さん。それに主演女優の有森也実さんもいる。そして、元文科省の寺脇研さんもいる。今は映画プロデューサーだ。
皆、酔って、映画の話だ。すごい。学生の議論のようだ。
団鬼六さんには生前、何度かお会いし、お世話になった。書くものでも、舞台でも、プロの凄(すご)みを感じた。
この日は、鬼六さんの未亡人、それに、伊藤文學さんが来ていた。未亡人の黒岩安紀子さんが中心で出る。話をしたり、歌ったり…と。
又、団鬼六さんの作品の「朗読」もある。
高須基仁さん、伊藤文學さんなども語ってくれた。
実は、湖西市長の三上元さんから電話で、「20日(土)に東京で用事があるので、前の日でも会いませんか」と。それで、19日に会った。「この前、行って、とてもいい店なので。鈴木さんなら、よく知ってると思ったので」。
私も、知っている。でも行くのは初めてなので、嬉しかった。三上さんは湖西市長を辞めて、今はフリーだ。今後の話も聞いた。
⑳このあと新宿の居酒屋「三平」へ。PANTAさんが車で連れて行ってくれました。新宿K's cinemaで映画「いぬむこいり」が上映中で、連日、トークイベントをやってます。その打ち上げに合流しました。監督や出演者がいます。
㉗伊藤文學さん(左)と河北新報社・常務の佐藤純さんです。河北は仙台を拠点にした東北のブロック紙です。初対面です。「あっ、僕も仙台ですよ」と言いました。「鈴木さんとは何回も会ってるじゃないですか」と言われました。