7月1日(土)、いよいよ発売になりました。白井聡さんとの対談本です。
タイトルもすごいです。『憂国論』です。サブタイトルは「戦後日本の欺瞞を撃つ』です。祥伝社新書です。
祥伝社新書からは今年3月10日に出した『憲法が危ない!』に続いて2冊目です。
この『憲法が危ない!』は、かなり売れましたし、評判を呼びました。何せ、『赤旗』や『朝日新聞』『東京新聞』に取り上げられ、テレビ朝日、TBSテレビ、そしてNHKでも取り上げられました。
私の本で、これだけ評判になった本は他にはありません。昔、「腹腹時計と〈狼〉」を出して、マスコミにかなり取り上げられましたが、あれを思い出しました。
麻布高校、中央大学でも呼ばれて講演しました。
札幌では小林節さんとトークをしましたし。
そして、祥伝社新書の第2弾です。白井聡さんとの対談本です。
先週末に見本誌が送られて来ました。いいですね。又物議を醸し、評判を呼ぶでしょう。
表紙には二人の写真が。そして、こう書かれています。
〈対米従属がさらに加速〉
〈「堂々たる売国」へ向かう日本!〉。
そして、本のカバー(裏)では二人のこんな言葉が紹介されています。
〈自民党はアメリカに大政奉還したらいかが。という話でもあるが、本当に人材難だー白井〉
〈三島が生きていたら、こんなひどい安倍政権の暴走はなかったー鈴木〉
すごいことを書きますね、二人とも。
白井さんは、とても優秀な政治学者、思想家です。
今は、京都精華大学、早稲田大学で教えています。『未完のレーニン』を出した頃から知ってました。
その後、『永続敗戦論』で大ブレークしました。さらに、『「戦後」の墓碑銘』、『戦後政治を終わらせる』などの本を書き、日本の戦後政治を鋭く斬っています。
日米関係、そして、自民党政治に対して、こういうことだったのかと私らは知らされました。
内田樹さんを初め多くの人々と対談しています。若手思想家の中では群を抜いています。
対談するに当たって、私は随分と本を読みました。どの本も、すごいと思いました。これだけ日米関係について、書いた人はなかなかいません。それを「永続敗戦論」として規定しています。
又、自民党の歴史にしても、教えられることが多かったのです。関連本を含めて20冊ほどを読み、対談に備えました。
そして、ハッと気がつきました。白井さんは1977年生まれだ。若い。
そうすると、私らが体験し、見てきたことは皆、「生まれる前」のことなのか。
三島事件(1970年)。連合赤軍事件(1972年)。東アジア反日武装戦線の連続企業爆破事件(1974年)…も、皆、「生まれる前」なのか。
私らにとっては「つい昨日」のように思えるのに。ガーンと頭を殴りつけられた感じですね。
そうか、こんな若い世代の人と話して、本を作るなんて、考えてみたら初めてです。「共通の基盤」があるのだろうか、と不安になりました。
孫崎享さん、内田樹さん…と、今まで対談した人は、皆、近い年代の人たちです。三島や連赤はつい昨日のように憶えている世代です。「あの時は学生で、大変だったよ」とか、話せます。
でも白井さんは、まだ生まれてません。話が合うのだろうか、不安になりました。
いやいや、そんなことよりも、白井さんの「永続敗戦論」だ。ここで話をし、〈戦後〉〈戦後政治〉というジャンルで、白井さんに教えてもらおうと思いました。三島や連赤や新右翼なんて、そんな話にはならないだろう。
「永続敗戦論」の白井さんを迎えて対談するんだ。白井さんの世界に入って、そこで大いに話をしよう。と思いました。
ところが、です。ところが、白井さんは開口一番。こんなことを言うんです。これには驚きました。
〈白井 この対談のために三島由紀夫の関連文献を調べていて、いくつもの発見があったのですが、驚愕した1冊が『三島由紀夫 幻の皇居突入計画』という本です。「これはとんでもない本だ」と思って手に入れたら、著者は山形大学名誉教授の鈴木宏三さん。鈴木邦男さんの弟さんじゃないですか(笑)」〉
これにはビックリ。いきなりの奇襲で、私は完全に戸惑ってしまいました。
そして、三島だけでなく、野村秋介さんのことや、新右翼、平田学派…と、ぐんぐん攻め上ってきます。
「生まれる前のこと」だから、あまり関心はないと思ってたし、触れることもないと思ってたのに。
ちょうど、こんな光景です。試合場に2人が入って、礼をした。私は相手の出方をうかがい、構える。でも相手は、いきなり私の懐に飛び込んで組みます。「ああ、待って。まだ闘う準備をしてないから」と叫びたいのですが、アッという間に投げられてしまった。そんな感じですね。
この若い天才はすごい。とてもかなわないと思いました。
永続敗戦論」「戦後政治を終わらせる」の続編的なものを期待して対談に臨んだ私でしたが、完全に意図が外れました。
だから、目次も、私の目論見とは全く違っています。こうなってます。
『憂国論』
はじめに 白井聡
第1章 三島由紀夫と野村秋介
第2章 戦後の「新右翼」とは何だったのか
第3章 天皇の生前退位と憲法改正
第4章 日本の行く先
おわって 鈴木邦男
いやー、完全に白井さんに先手を取られ、いきなり懐に飛び込まれて、投げ捨てられた感じでしたね。
三島、野村、新右翼…について、こんなに関心があるとは思いませんでした。それに、よく知ってるし、分析も鋭い。まだ生まれる前のことなのに、どうして? と思いましたね。
ドイツの宰相ビスマルクは言ってます。「愚者は体験に学び、賢者は歴史に学ぶ」。
でも、「歴史に学ぶ」なんて実際には出来はしない。皆、自分の運動や体験からしか学んでない。
その点、私らは「いい時代」を生きた。いい教師に出会えて、いい敵に出会えた。と思ってました。
若い人たちに対してジェラシーを持つが、同時に、「君らは三島、連赤の時代を知らないだろう」と言える。と思って、「優越感」を持っていたのです。
でも、でも。白井さんに会って、それは完全に破砕されました。
あっ、体験から学んで、なんて言ってるけど、何も考えないし、戦略を持ってなかった「愚者」だったんだ、私は。と思いましたね。
ビスマルクの言葉は、当たってたんですね。少なくとも、この場合は。
それにしても白井さんは、生まれる前のことなのに、どうしてこんなに詳しいんだろう。
さらに、私らが知らない「情報源」を持っているようだ。
たとえば、皇居には多くの新聞が毎朝、配達されてる。その中で、どの新聞を天皇陛下は真っ先に読むか。知ってますか、と聞かれた。知らないばかりでなく、そんなこと考えてもみなかった。
でも、白井さんは、ちゃんと知っている。どこから聞いたんだろう。すごい。
さらに、山本太郎さんが園遊会で天皇陛下に手紙を渡そうとしたあの〈直訴事件〉について、「その後」も語ってくれた。
エッ? あの事件は皇室を動かしたのか。知らなかった。そんなことが沢山ありました。
私はやっぱり「愚者」ですよ。ただ、時局の流れをボーッと見てきただけだ。これがどんな意味を持つか、考えてもみない。
又、一つの事件と他の事件の関係性も知らない。
又、「新左翼のナショナリズム」「新左翼の憂国」「ねじれたナショナリズム」の話には驚きました。
共産党に反対した「反日共」「反代々木」の新左翼は、日共に対抗し、対抗するために、運動論だけでなく、理論的にも対抗する。
その時、ロシア、中国と共存する日共に対抗し、どうしてもナショナルになる。という。
これは全く知らなかった。だから、新左翼の愛国、ナショナリズムに、新右翼はどうして気がつかなったのか。「YP体制打倒」というのなら、その点で、一致、共闘出来たのではないか。と鋭い問題提起をするんです。
ウワー! 知らなかった。考えつかなかったよ。
『腹腹時計と〈狼〉』を出した時、それは「左右接近だ」などとマスコミに言われた。そんな表層的なことではないんだね。深く反省しました。
タイムマシーンに乗って、あの時代に戻り、もう一度、右派学生運動をやり直したい気分ですね。
「学生運動なんて、もう昔に終わったことだ」「歴史だ」と、悠然と構えていたので、白井さんの言葉で、急に焦りましたね。いかん。「やり直さなくては!」と思いました。
こんな気持ちにさせられたのは初めてです。国に対して憂えているのではなく、自分自身に対して憂えてます。「おい! 鈴木。お前は何をやってきたんだ!」と、もう一人の鈴木を叱っています。
さて、この焦燥感はどこへぶつけたらいいのでしょうか。「鈴木はどこへ行くのか」ですね。
そうだ。中央大学も、とてもよかったですね。
6月23日(金)。中央大学八王子キャンパスに行ってきました。とても広い敷地です。山だって入ってます。
そこの目加田先生のゼミで話したのです。
ゼミといったら、普通多くても10人位ですね。私が大学の時は、5人ほどしかいませんでした。でもこのゼミでは、比較憲法論をやったり、カール・シュミットの本を原書で読んでました。
そうした当時、中央大学は司法試験で一番多く受かると、羨望の的でした。学生運動もしっかりやってます。
今、文科系は皆、八王子キャンパスに移ってます。理科系は都内に残ってます。でも、看板学部の法学部などは都内に戻そうという声もあるようです。
この日は目加田先生のゼミに呼ばれました。私が自己紹介を兼ねて講演すると、「では、これから、鈴木さんに質問します」と学生の質問です。事前に私の『憲法が危ない!』『失敗の愛国心』『愛国心に気をつけろ』などを読んできて、それで質問するように準備してました。
よく勉強してます。鋭いです。私も、とても勉強になりました。
同じ考えの人だけで一緒に勉強しても、どうしても停滞します。右翼、左翼、市民運動もそうですね。同じ集団ではなく、時には外の集団の話を聞くべきです。
大学生はいろんな本を読んで、よかったと思ったら、その人に聞けばいい。
前の週に麻布高校に行った時も、緊張しましたが、中央大学も緊張しました。
それに、日本をどうデザインするか。そんな方法論についても話し合いました。
麻布高校、中央大学と「授業」をさせてもらい、ありがたかったです。嬉しかったです。一緒に勉強する学生のような気分に戻りました。
とにかく、今から、どこかの大学に入り直して勉強したい気分です。でもその前に、たまってる本もあるし、たまってる原稿もあるし、それをやらなくっちゃ。
②6月23日(金)、中央大学・八王子キャンパスに行きました。目加田説子先生のゼミで講演しました。「憲法と愛国心」についてです。学生たちは私の『憲法が危ない!』や『失敗の愛国心』などを読んできて、質問をします。さすが中央大学生です。私もたじたじとなりました。
⑤6月23日(金)は5時からの授業です。遅れてはマズイと思い、かなり早く家を出ました。2時頃、京王線高幡不動の駅に着きました。あまりに早すぎるので、そばの「高幡不動尊」にお参りに行きました。
そしたら、新選組の土方歳三の銅像がありました。アッと思いました。ここは前に来た!と。ここでは、毎年、新選組の法要が行われています。そして、「新選組まつり」が行われています。これは若者たちが新選組の隊士に扮して、パフォーマンスをするのです。それを去年、見にきたのです。そうか、こんなだったのか。
⑥もう一つ、驚いたことがあります。ゆっくり見ていたら、「勝五郎の前世、藤蔵の墓」がありました。これは、小泉八雲も書いてます。勝五郎という子供が8歳の時、「自分の前世は藤蔵だ」と言って、詳しく話し出したのです。皆がその土地に行ってみると、果たして勝五郎の言った通りでした。「生まれ変わり」が、科学的に立証されたのです。いろんな学者もこれを書いてます。
俳優の佐野史郎さんが、小泉八雲の「怪談」などの朗読会を全国でやってます。東京でやった時に行ったら、この「勝五郎の前世」の話をしてました。そして、「今日は、勝五郎のご子孫がここに来てます」と紹介しました。驚きです。私はすぐ行って、話を聞きました。「八王子の方に墓がある」と言ってましたが、ここのことだったんですね。「一度来て下さい」と言われたので、今度、お訪ねするつもりです。
⑧6月24日(土)新宿で、劇団「再生」のお芝居がありました。高野悦子の『二十歳の原点』です。芝居の始まる前、高木尋士さんと、その頃の時代と思想について話しました。高木さんが持ってるのが高野悦子の写真です。
⑬6月26日(月)。「シン・東京裁判。真相はこうだ!」を見に行きました。新宿文化センター大ホール。産経新聞社、月刊「正論」主催です。「大東亜戦争を語り継ぐ会」の第14回です。はじめに江崎道朗さんの講演。そのあと、江崎さん、井上和彦さん、ケント・ギルバートさん、大高未貴さんのトークでした。
⑳「第5回喜多見と狛江の小さな映画祭」の案内です。8月20日(日)、8月23日(木)〜8月27日(日)です。8月27日(日)に、私は出ます。狛江市岩戸北4-10-7-2Fの「M.A.P.」です。小田急線喜多見駅徒歩5分です。8月27日(日)は、その場所で3つの映画が上映され、トークがあります。
10:30 「赤軍PFLP・世界戦争宣言」
13:00 「9.11-8.15日本心中」
18:00 「天皇と軍隊」この上映後、私もトークで出ます。