週刊誌のインタビューはかなり受けている。
最近では、「赤報隊事件・30年」に関したもの、「憲法改正」「愛国心」に関するものが多い。
こうした時局的なものは、ぶっつけ本番で、初対面で記者と会って、喋っている。
でも今回の取材はそれらとは全然違う。準備も大変だったし、喋る内容もかなり考えながら、喋った。
いや、それよりも取材記者の苦労が大変だったと思う。こんな大変な取材はちょっとない。本当にご苦労さまでしたと言いたい。
「週刊現代」(7月22日・29日号)だ。7月10日(月)に発売になった。
この中で〈読書〉について取材された。
それも、「最近、面白かった本は何ですか?」とか、「何かの本の書評」ではない。今までの読書体験、つまり、〈人生〉にとっての読書の意味を問うような取材だった。
テーマは、「わが人生最高の10冊」だ。
これはすごい。今年読んで面白かった10冊ではない。最近の10冊でもない。今までの人生の中での10冊だ。
その10冊によって、自分が作られてきた。そんな本をあげて話す。初め、この読書のための企画を聞いてやる気をなくした。
とても大変だ。出来ないよ、と思った。
でも、やった。喫茶店「ミヤマ」の会議室でインタビューを受けたが、最も知的で、文学的な話だったと思う。
「あらかじめ、10冊のリストをメールで送って下さい」と言われた。メールはないから、ファックスで送った。
日本の本だけでなく、世界の本もあげて、「外国文学も入れて下さい」と言うので、影響を受けた文学、思想書を何冊か入れる。それで10冊だ。
この選ぶことが大変だった。あるいは〈自分の全て〉をここにさらすようなものだ。
主に文学書をあげた。1〜3位は世界。4〜7位は日本。そして8〜10位は漫画だ。インタビューの2週間前かな。「週刊現代」に送った。そして、発売日。載ってました。
この1位から10位までのリストは以下だ。
1位 ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』(上、中、下)
2位 トルストイ『戦争と平和』(全4巻)
3位 スタンダール『赤と黒』(上、下)
4位 高橋和巳『邪宗門』(上、下)
5位 三島由紀夫『文化防衛論』
6位 芹沢光治良『人間の運命』(全18巻)
7位 司馬遼太郎『街道をゆく』(全43巻)
8位 さいとうたかを『ゴルゴ13』シリーズ
9位 バロン吉元『柔侠伝』シリーズ
10位 山川惣治『少年王者』(全10巻)
さらに、「最近読んだ1冊」をあげて下さいと言うので、嵯峨仁朗作『死刑囚 永山則夫の花嫁=「奇跡」を生んだ461通の往復書簡=』(柏艪舎)をあげた。これらは、取材記者と会う前に、書いて送った。
そして、取材当日。取材が始まって驚いた。
詳しい。やけに詳しい。この作品のどこに感動したのか。その時、自分の運動と関係してそう思ったのですか。そこで何が変わりましたか…と、やけに細かいことを聞く。
この記者も昔、読んだことがあるのかな。と思った。トルストイやドストエフスキーぐらいは皆、読んでるだろう。多分、それもあるだろう。
でも、この記者のすごいのは、私があげた「ベスト10」の全てを読んできたのだ。2週間ほどの内に。
これには驚いた。「何もそこまでやらなくても…」と思った。「長いのが多いので苦労しました」と言う。
『戦争と平和』『赤と黒』なんて、今なら、私も読み返せない。大変だ。
それと、『人間の運命』18巻もあり、本を取り寄せて全部読んだそうだ。
司馬の『街道をゆく』は全43巻だ。気が遠くなるような話だ。こっちの方が大変だ。
この努力をし、苦労をした記者さんに、私の方がインタビューしたい思いだった。
インタビューした人は朝山実さんという。ライターだ。
『アフター・ザ・レッド』という本を出している。いい本だ。連合赤軍の人々を中心に、〈その後〉を取材して書いている。これはすごい本だと思った。
出た当時、『アエラ』で私は書評をした。朝山さんは、作家として忙しいのに、私のあげた「10冊」を読んでくれて、申し訳ない思いでしたね。
10冊については、朝山さんが、解説と、自分の思いつくこと、印象に残ったことを書いてコメントをしている。
さらに、私との取材の中で聞いたことをまとめている。それを2ページにまとめている。
もっと長くやりたかったのかもしれないが、2ページにコンパクトにまとめている。
「なぜ改憲が危ないと思ったのか」「なぜ左傾しているのか」「ロシア文学を読み始めた理由は…」などについて、聞かれて、私は喋っている。
聞き方もうまいし、今までの取材記者にはないような角度から質問をしてくる。
そうだ。全体のタイトルは、こうだ。
〈読書には右翼も左翼も関係ない〉。
多くの人が読んでくれたらしい。長野の平田君もツイッターで多くの人に知らせてくれたし。
そうだ。この「ベスト10」とも関連するが、7月9日(日)に又、長野に行った。
佐久間象山を祀る「象山神社」にお参りし、それから、近くの大本営跡に行った。
巨大な地下壕を掘って、そこに国会や皇居、NHKなどを移し、そこを拠点にして本土決戦をやろうとしたのだ。その跡を見た。
さらに、今回の主目的だった「皆神山」だ。
「みなかみやま」と読む。世界中の神々がここに集まるというので、「皆神山」という。
だから、その麓に大地下壕を掘った。世界中の神々がついている、と思ったのだ。
今から見るとカルトだ。おかしい。でも、当時は本気になってやったのだ。
長野は日本の中心だし、山の中だ。木々が多い。空襲もしづらいだろう。そんな理由もあった。
でも、それよりも「世界中の神」がついている。これは大きい。アメリカなんか問題ないと思った。でも負けちゃった。
この山は初め「水上山」(みなかみやま)と表現されたのだという。
そこにやってきた大本教の出口王仁三郎が、これは神聖な山だ。世界の神々が集まってくる。「皆神山」と呼ぶべきだ、と書いて以来、皆神山と言われるようになる。そんな経緯がある。
それも確かめてみたかった。だから、7月9日(日)の朝早く、東京を発って、長野に向かったのだ。「チーム・バチスタ」だ。いや、違った。「チーム・瀧沢」だ。
三島のことなら全て知っているという瀧沢さんが、その知識と直感を武器に、日本の歴史を見直そうとしている。
レンタカーを借りて、東京から5名。さらに長野からは現地の案内人(平田君)が乗り込んで、ナビゲーターを務める。
それにしても、高橋和巳の『邪宗門』に書かれているが、大本教は国家によって凄まじい弾圧を受けて、神殿はダイナマイトで爆破された。
爆破するなんて、何とも罰当たりなことをした国家権力だ。
「週刊現代」では、『邪宗門』について、こう書かれている。
〈百万の信徒を擁し戦前、治安維持法によって徹底弾圧された教団の人々の叙事詩的長編〉
でも、その弾圧された大本教の出口が、この「みなかみやま」に来た。素晴らしい。そこで、「皆神山」と名付けた。
それを何と、かつて弾圧した日本国家が評価し、そのまま「皆神山」と認め、そこに地下壕を掘り、大本営を造ろうとした。
おかしいじゃないか。だったら、まず、大本教に謝れよ。と私は思った。
まず謝罪、そして戦後補償だろう。その上で、出口の言ったことを認めるなら、認めたらいい。そう思っていた。
皆神山に行き、皆神神社に行った。
確かに、出口王仁三郎の書いた石碑もある。ここに来て、この山、この神社を大いに評価し、認めたことは確かだ。
大本教の人々も、いろんな碑を建てたり、小さい神社を造ったりしている。
又、他の宗教もここを認め、そのことを書いた碑もある。
又、「神木」もある。広い、平地もある。
ここから両手を上げて声を上げたらUFOが来るのではないか。と思われた。それで皆で両手を上げて、呼んでみた。
しばらく我々はそこにいたが、UFOは来なかった。まだまだ私の信仰が足りないらしい。
でも本当に来て、「じゃ、乗って下さい」と言われたらどうする。帰ってこれるかどうか分からない。
「とりあえず代表の瀧沢さんだけ乗せてもらいます」と言うしかないよな。
ともかく、そんな神聖な山であり、神社でした。
ただ、江戸時代の中期からもう「皆神山」と呼ばれてたようで、別に大本教の出口が、ここに来て、そう呼んだからではないようだ。いろんな文書を読んでみたが、そうなっていた。大本教の人に会ったら、聞いてみよう。
ここで、「ベスト10冊」。3位にあげているスタンダールの『赤と黒』について、少し、説明しよう。
新潮文庫で上、下2巻だ。他のと比べた短い。すぐ読めるだろう。
朝山さんは、こう解説を書いている。
〈貴族が存在する時代、ナポレオンを崇拝するが、出世のために聖職者を志す青年が女で失敗する。人間臭さがいい〉
事前に、全部読んで、書いてくれてるんですね。ご苦労さまです。
「赤」は軍人の制服だ。「黒」は僧侶だ。
貧しい青年にとって、出世するにはどちらかになるしかない。
日本だって、そんな時代はあった。軍人になれなくて、僧侶を目指した主人公。ジュリアン・ソレルの物語だ。
実は、この小説は、世の活動家諸君に励ましを与えた。
そうか。体制を倒すには、いろんな方法があるんだと。
活動家になって現状を変えるだけではない。軍人になる。新興宗教に入る(オウムに入る)。市民運動をやる。…というような道があることを教えてくれたのだ。
ジュリアン・ソレルは野心満々な男だ。この男に影響を受けた青年は、「赤」や「黒」だけではなく、学生運動に行って、自分の野望を達成しようとした人も多い。
左翼になりたいが、頭のいい奴が多い。その点右翼は、頭が弱いから、ここに入ったら、すぐにトップになれる。そこを使って運動をした方がいいだろうと思う人もいた。
見沢氏だって、そうかもしれない。彼だって、ジュリアン・ソレルだ。
いやいや、学生運動や宗教運動をする人は皆、ジュリアン・ソレルだ。早大で全共闘に対し闘った右派の学生もいた。
その拠点になったのが、早大正門近くの喫茶店「ジュリアン」だった。矢野潤さんが経営していた。この小説の主人公からとった名前だ。
だから、右派学生も集まり、拠点になった。
森田必勝氏を連れて来て、オルグしたのもこの喫茶店だった。
思い出が沢山ある。「ジュリアン物語」でも書いてみたい。
「赤と黒」物語でもいいが、当時は、「ジュリアン」といっても、あっ、スタンダールだって、学生は皆、分かった。今じゃ分からん。本を読まないからだ。
だから、当時はいい時代だった。皆、本を読んでいたし、必死で物事を考えていた。
そんな時代を体験したのだから「ベスト10冊」も書けるのだろう、と思った。
夜、7時半から、ロフトプラスワンに行く。大島てるさんが出るので、話を聞きに行く。
アパートなどの「事故物件」を取材し、ネットに発表している。大家さんから抗議されたり、裁判になることもあるが、闘っている。とても勉強になるし、関心があった。
始まる前に行って、控え室で話しました。村田らむさんとも会いました。『紙の爆弾』の忘年会でよく会ってたので、大島さんに紹介してもらいました。
それにしても、ものすごい人だった。国会前は広いが、ここは、狭いスペースに人がドッと集まる。
車を舞台にして、コスプレしたり、大きな看板を出したり、ビデオを見せたりしながらやる。
これはすごい。私も演説しました。こんなに多くの人の前で喋ったことはあまりないので、感動しました。
先週も、国会前で「脱原発」の演説をしたし、まるっきり、「活動家」だ。
私のあとに山本太郎さんが喋ってました。『本を送ってもらってありがとうございました。僕のことを書いてくださって」と言っていた。
白井聡さんが山本さんの「直訴事件」について評価し、詳しく喋っていた。「その後」のことも書いていたので、とても教えられた。
新宿街宣は、夜遅くまで続きました。前に、ラジオで対談した深月ユリアさんにも会いました。「えっ、まるで裸じゃないですか」と驚きました。
でも、いいですね。こういうコスプレは。何枚も写真を撮りました。
雨宮さんは、バンバンと本を出してるし、深笛さんも最近、『罠』を出し、大評判になっている。愛犬家殺人事件についての本だ。
なぜ、2人が誘ってくれたのか分からなかった。「本が売れてる作家の2人が、もう終わった、かわいそうな鈴木を呼んで、慰めてくれる会」かと思った。いかんな。ひがみ根性じゃ。
そこに、ロフトの平野悠さん、加藤梅造さんも合流。この人たちも「慰められる側」だ。そして、出版社の人も。
しばらく飲んでたら、「鈴木さん、もう眠いんじゃないの? 帰ったら」と雨宮さんに言われ、「では失礼します。いいお年を」と言って帰りました。
「もう帰ったら」と言うのは愛情ですよね。ありがたいです。
そういえば昔、阿部勉氏にもよく言われたな。「鈴木さんは強くないんだから、もう飲まないでしょう。帰れば」と。嬉しいですね。こう言う心配りは。
(第1部)戦後史の中で連合赤軍事件が与えた影響
白井聡、青木理、鈴木邦男
(第2部)映像制作者がとらえた連赤
足立正生、青島武(作家・シナリオライター。連合赤軍を描いた「光の雨」等多数)
(第3部)表現者はどう描いたか
桐野夏生、山本直樹、金井広秋
私は第1部に出たが、あとは完全な「聴衆」だった。ドキドキした。聞いていても刺激的だ。よく、これだけの人を集めてくれたと思う。
素晴らしい集まりだった。とても勉強になったし、面白かった。歴史的なイベントだった。
終わって、二次会。それから平田君と用賀へ行く。昔、Uインターの社長をしていた鈴木健さんがやっているお店に行く。安生さんも働いていた。昔、プロレスライターをやってた頃を思い出して、大いに語り合いました。
⑧私の後に山本太郎さんが演説しました。迫力があります。〈『憂国の論理』ありがとうございます〉と礼を言われました。「山本直訴事件」について白井聡さんが評価し、知られざる「その後」のことも書いてます。山本さんも驚いてました。ぜひ、読んでみて下さい。
⑪7月10日(月)午後2時から、三浦瑠麗さん(東大講師)と対談しました。自由国民社で出している『現代用語の基礎知識』の増刊号に載ります。憲法改正や安倍政権の右傾化。保守と右翼の違い。…などについて話し合いました。三浦さんは、「朝まで生テレビ」では毎月出てます。頭が良くて美人で。今、一番の論客です。
⑭7月10日(月)。この対談が終わってから、私はロフトプラスワンに行きました。〈大島てるがやって来る! 事故物件ナイトvol.15〉です。前から関心がありました。左から2人目が大島てるさんです。あれれ、男性じゃないか。「てる」さんというから、てっきり女性かと思いました。それにしては、よく訴えられたり、裁判になったりしている。よく闘えるもんだと思ってましたが…。
⑰7月9日(日)。瀧沢さんをリーダーとする「チーム・バチスタ」で、車を借りて、長野県の皆神山に行きました。世界中の神々が集まってるという山です。その皆神神社にまず参拝しました。平田君や、アーチャリーもいますね。
㉑象山神社のそばに大本営地下壕があります。戦争末期、日本はゲリラ戦をやろうとし、ここ松代に大地下壕を掘り、そこに皇居、国会、NHKなどを移そうとしてました。そこを中心にしてゲリラ戦争をやろうとしたのです。松代は山の中だし、なかなか空襲もされない。
それ以上に、ここには皆神山があり、世界の神々が集まっている。さらに象山神社がある。象山という山もあるのです。それで、皆神山、象山の麓を掘って、巨大な地下壕を掘った。ヘルメットをかぶって、ここに入ります。
私はここに来るのは2度目です。
㉓このあと、池田満寿夫美術館に行きました。池田さんは亡くなり、この美術館も、もうすぐ閉館だそうです。「その前に行ってみなくちゃ」と思って、寄ったのです。
奥さんの佐藤陽子さんに以前、会ったことがあります。「池田は鈴木さんと、とても雰囲気が似ています」と言われて、気になってました。池田さんは芸術家としての大らかさでしょうが、私はただボーッとしてるだけです。でも「似てる」と言われたのはうれしですね。それで、寄ったのです。
㉔7月7日(金)午後1時に、シリア大使館を表敬訪問しました。大使は一水会で講演してくれましたし、関心のある人が多いので、一水会で計画したのです。アサド大統領の写真の前で、大使が話してくれます。シリアのお茶やお菓子も頂きました。