7月29日(土)の「生誕祭」には全国から多くの人々が駆けつけて下さり、とても盛大に、そして楽しい集いになりました。本当にありがとうございました。
椎野礼仁さんが総合司会をしてくれ、午後1時から5時まで、阿佐ヶ谷ロフトで行われました。「今年は映画の心だ」とテーマが打ち出されてます。
映画に詳しい寺脇さん。映画「ベースメント」の監督、出演者が出るし、「沈黙」「いぬむこいり」に出たPANTAさんも出るし…と。それで、映画を中心に語ろうということらしい。
そして、演歌の岡大介さんもいる。「歌と映画」のイベントだ。
それに、忘れてはならないのは、女優のあべあゆみさんも一肌脱いでくれた。本当に脱いだのだ。そして、見事な「唐獅子牡丹」の刺青を披露してくれた。
全体の構成を紹介しよう。
第1部 「教育勅語、加計学園、前川さんを語ろう」
出演は寺脇研さんが中心。寺脇さんは元ミスター文部省。ゆとり教育を推進。
今は映画評論やプロデューサー、落語プロデューサーとしても活躍。
この人がいなくなったので、文科省の堕落が始まったと言われている。古巣の文科省がこんなことになって悔しいでしょう。その実態を語ってもらった。
又、国会の喚問されている元文科省次官の前川さんは寺脇さんの後輩。かなりのアドバイスをしてると言われるが、果たしてどうなのか。そんなことも聞きました。
この2日前、新宿で、私は芝居を観た。寺脇さんが脚本を書いた芝居だ。
私は夜に行ったが、「今日の昼の部に前川さんが観に来てくれた」と言っていた。残念、会いたかったですね。
夜の部は松元ヒロさんと寺脇さんのトーク。そして、お芝居だ。
新宿ゴールデン街で飲んだくれてるオヤジたちの話だが、このオヤジたち、昔は暴れていた。
一人はどうも、寺脇さんがモデルのようで、こんな芝居を書けるのか。面白かった。
生誕祭では、この「ミスター文部省」に、昔の文部省、今の文科省の話をたっぷりと聞きました。加計学園などについても、よく分かりました。
そうだ。第1部は寺脇さんがメインと書いたけど、実は演歌師の岡大介さんがいたんだ。
第1部が始まると同時に、まず岡さんが歌をうたってくれた。これで気合を入れたのだ。
岡大介さんは、沖縄の楽器「カンカラ三味線」を手に、明治、大正の自由民権運動で歌われた「演歌」で世の中を鋭く批判する。反体制の歌なんだ。
面白いし、歴史の勉強にもなる。
1時から2時までが、第1部。10分の休憩をおいて、第2部が始まる。
第2部は、映画「ベースメント」の世界だ。JKリフレを正面から描いた映画で大評判になっている。
私も刑事役で登場して、悪徳ヤクザを暴力的に粉砕している。
そのヤクザも来てくれた。「すみません。あの時はやりすぎて」と謝りました。
井川監督や、主演の増田さん、きれいな女優さんも来てくれた。話が盛り上がりました。
主人公の増田さんはライターだ。これはおかしい。許せないと思えるところは、どこにでも完璧に取材し、発表する。
次はぜひ、右翼、左翼、そして公安の実態を暴いてほしい。この主人公なら、何だって出来るだろう。映画の無限の可能性を感じた。
主演の増田俊樹さん。ヤクザ役の成田賢壱さん。そして「ミス東スポ2015」に輝いた璃乃さんなどが登壇。楽しい話をしてくれた。
終わって璃乃さんのチェキ会もありました。
そして第3部。
しかしその前に、今年もあべあゆみさんの背中一面の唐獅子牡丹を披露してくれました。写真OKというので、舞台に皆、群がっておりました。
「あっ、触ってはダメですよ」と注意が。
オールヌードのあべさんに、礼仁さんは、「正面に回って撮ってもいいですか?」と質問。
「別料金です」。いや、違った。「ダメです」とやんわり断わっておりました。
ともかく美しいです。「ミロのヴィーナス」を鑑賞している気持ちでした。
そうだ。何十年か前、日本に「ミロのヴィーナス」が来た時、私も何時間も並んで観たんですよ。
ものすごい警備でした。防弾ガラスに入ってました。
その数年後、フランスに行った時に、ルーヴル美術館に行ったんです。
そしたら何と、入り口を入ってすぐにその「ミロのヴィーナス」が立っていたんです。
警備の人なんていない。入場者はベタベタと触っている。日本だったら、銃殺されるよ。フーン、大らかだな、と思いました。そして私も触りました。
では、「生誕祭」に話を戻しましょう。そして、最後の第3部だ。
PANTAさんが出演です。「いぬむこいり」では、ゲバラのようなゲリラの親分を演じていた。
又、遠藤周作原作の「沈黙」では、長崎の農民に扮していた。とてもよかった。
特に、この作品について話が集中した。
舞台は、日本の長崎だが、原作に合うような場所がない。世界中探して、ここしかない、と思ったのが台湾だった。
そこで長期ロケをやる。日本よりも、当時の日本をよく表わしている。
荒れた海。人を拒むような断崖絶壁。荒涼たる雰囲気がよく出ていた。
日本のキリスト教文学としては、遠藤周作と三浦綾子だ。
それに、芥川龍之介の小説もある。なぜ、日本ではキリスト教が大きく根付かなかったのか。それについて芥川は苦悩して、書いている。
ある婦人が、キリスト教の信仰を得る。やっとのことで信仰する。
そして宣教師に聞く。「私が死んだら父母に会えるでしょうね。喜んでくれるでしょうね」と。
でも、答えは否定的だ。「あなたの父母は、キリスト教の信仰を得てないので、天国には行ってない。向こうでは会えない」。
それでその婦人は絶望し、キリスト教の信仰を捨てる。一人で天国に行くよりは、たとえ地獄でもいいから、父母に会いたいと思ったのだ。何とも日本人らしい精神風土なのかと思った。
そんな形で、信仰について考えさせられる小説が芥川にはいくつかある。ぜひ全集を読んでみたらいい。
この「生誕祭」の舞台だ。
第3部はPANTAさんを中心に、映画関係者が沢山出てくれた。
まず、祝大輔さん(映画監督)。映画「沈黙」でJapanese Set Consultant(日本人が見ておかしな点がないか等チェックする)として活躍。
又、映画「いぬむこいり」関係者。さらには映画「眼球の夢」の関係者も出てくれた。
又、アーチャリーも。さらに第1部で出た寺脇さんも再登場。
というわけで、大盛況の中に終了しました。午後5時、近くの居酒屋で懇親会。「去年と同じ店ですが、名前は違います」と礼仁さん。
説明が分からない。どういうことだ。去年は「白木屋」だったが、潰れたんだ。同じ場所で、「目利きの銀次」になった。料理も同じだったし、店を全部借り切っての懇親会でした。
あとは酒を飲むだけだなと、ホッとしていたら、ここで大事件が。
礼仁さんの傍で、サブ司会をやってくれた瀧沢さんが1冊の本を私に渡した。「これ、お誕生日のプレゼントです」と。
あれっ? 岩波のブックレットだ。私が書いた『〈愛国心〉に気をつけろ!』だ。
「これ、オラの本だよね」とつぶやいたら、「よく見て下さい!」と叱られた。
眠い目をこすって見たら、確かに違う。ビミョーに違う。アッと叫んで、ビールをこぼしてしまった。
全く装丁は同じなのに違う本だ。『〈愛国心〉に気をつけろ!』ではなく、何と、『〈鈴木邦男〉に気をつけろ!』だ。
ヘエー、すごいことをするねー。これは面白い。
今は、パソコンがあるから、こんなことも出来るんだ。表紙だけをマネして、「パロディ本」を作ったのか。やるねー、と思った。
傍に岩波書店の田中さんもいた。このブックレットを作ってくれた人だ。「ほう、すごいことをやりますね!」と驚いていた
。岩波ブックレットは沢山あるが、こんなイタズラを考えた人は他にいない。岩波書店始まって以来だろう。
元の『〈愛国心〉に気をつけろ!』は2016年6月3日発行だ。去年だ。ブックレットで500円だ。
かなり売れた。初版1万部で、2万部以上は売れたようだ。著者は勿論、私だ。学生時代の写真が載っている。
そして、下に、赤い帯があって、こう書かれている。
〈日本への愛を汚れた義務にするな! 「愛国運動」に身を投じてきた著者が、排外主義が高まる時代に覚悟をもって挑む〉
今でも覚えている。かなりの「覚悟」をもって出した本だ。
そして、このパロディ本だ。体裁は全く同じ。写真もある。文字の大きさ、配置も同じ。下の帯に要約文もあり、文体は同じだ。でも、文字は違う。
『〈鈴木邦男〉に気をつけろ!』は著者が「鈴木邦男」と同じ。いや、「鈴木邦男にたどり着いた11人」と書かれている。
ヒャー、何だこれは。11人か。私に文句を言って来たのか。
「私は、鈴木邦男に騙された。皆さんは、決して騙されてはダメです!」と注意を呼びかけているのか。
まいったなー。大スキャンダルだ。どうしよう。
でも下の帯の文を見て、アレっと思った。
〈鈴木邦男との出会いは僕の財産であり、宝物だ〉
〈鈴木邦男を愛してやまない11人が、わが「師」への思いを赤裸々に語る〉
ヒャー、嬉しいですね。批判や反論、罵詈雑言の本ではなさそうだ。
それに、目次を見たが、11人は全員、本名だ。仮名ではない。
そして鈴木への「愛」を語っている。ウワー、すごい本だ。涙ウルウルでした。
本の上の方には〈生誕祭ブックレット No.920〉と書かれている。本物の方では〈岩波ブックレット No.951〉だ。
そして、定価は920円。と書かれている。「920(くにお)」と読むらしい。手が込んでいる。
こんな豪華なバースディプレゼントはないですよ。大作家だって、ないでしょう。
作家が成功した後、大金を投じて、豪華本を作ることはある。
1冊に何万円もかけて、50冊だけ作り、お世話になった人に配るとか。
『鍵のかかる部屋』という本では、本のカバー(函)を本当に鍵で開けるようにしたり、いろんな工夫をしている。
作家がファンやお世話になった人のために作ったりするが、私のように、回りの人が作ってくれた、なんてことはない。私は幸せ者ですよ。
それに、ここに登場した人は11人とも皆、知り合いだ。私も長年、お世話になっている。
それに、こういう本を作っていることは、どこからも漏れてこなかった。時間もかかっているのに、皆、秘密を守ってきたので、「完全犯罪」だ。すごいねー。
どうも瀧沢さんと料理研究家の中谷さんで計画したらしい。しかし、よくこんな技術があったもんだ。
そして、秘密裡に、計画を立て、原稿を依頼した。さらに、原稿だけでなく、本を作るお金の分担金も出してもらったのだろう。申し訳ない。よく、それで引き受けたものだ。
それに、本屋で大々的に売ることは出来ない。「遊び」の本なんだし。でもすごい。立派だ。
せっかくだから目次を紹介しよう。
〈鈴木邦男〉に気をつけろ!
はじめに 蛇子(瀧澤亜希子)
わたしと邦男 あべあゆみ
鈴木邦男さんとの思い出 岩井正和
鈴木邦男先生ご生誕祭を祝して かじ葉子
クニさんと俺 さかもと・ユージン
生誕祭によせて 塩田祐子
師匠と私 下中忠仁
鈴木邦男さんと私 杉山寅次郎
私と邦男さん 高木あさ子
鈴木先生との出会い 飛松五男
邦男さんの教えてくれたこと 中谷美穂
私と邦男さん 蛇子(瀧澤亜希子)
おわりに 中谷美穂
初め、この本を見た時は、「表紙」だけを作ったんだと思った。岩波ブックレットの「パロディ版」として。それだけでもすごい。
でも、ページをめくってみて驚いた。
本当に、書いてある。11人の文が載っている。
ウワー!と叫びました。元の本よりもページ数は厚い。内容だって、上だ。
これは負けた!と思った。こんなに完璧な〈遊び〉はないよ。三島由紀夫だって、これだけの本を作ってもらってはいない。
ありがたい。ただただ感動・感謝ですよ。
瀧沢さんは「はじめに」で書いてます。
〈きっと、こんな文集は二度と出せないかもしれない。自分自身、そんな気迫で中谷さんと臨んだ。邦男さんの生誕祭に合わせて何かできないかと模索していた〉
〈何か残る物を作りたかった。色々と考えていた時、無謀にも邦男さんは物書きだから今度はこちらが書いて、その最初の読者が邦男さんなら面白いんじゃないかと思った〉
初めての「読者」か。これは素晴らしい。感動しましたよ。
その他に瀧沢さんは「三島研究家」らしく、こう書く。
〈テーマを統一し、「私と邦男さん」にしてもらった。それは私なりの理由があるので、少し述べておきたい。1970年、三島由紀夫が市ヶ谷で自決する1週間前、東武デパートにて「三島由紀夫展」を開催した際に、三島自身が自らの人生を「書物の河」「舞台の河」「肉体の河」「行動の河」の4部門に分け、最後に「豊饒の海」へと流れ着くというコンセプトで展示した事を思い出した。
意味合いは違うが、私達もそれぞれ「〈人生の〉河」を経て、「鈴木邦男」という「豊饒の海」に流れ着いた気がしてならなかった〉
〈ダイヤモンドの原石のような初々しく荒々しい文集ではあるが、まずは邦男さんに読んで欲しい。そして皆さんにも読んで欲しいと思い、一生懸命製作した「心」を感じて頂ければ幸いです〉
本当にありがとうございます。最高のプレゼントでした。ただただ感心し、感動しています。人生最高のプレゼントです。
「生誕祭」は多分、もう10年位やってるでしょうが、今年が最高の生誕祭になりました。この本のおかげです。
これは書店で売ることは出来ませんが、希望者には920円でお売りするそうです。瀧沢さんや中谷さん、そして書いてる人に連絡したら、送ってくれるでしょう。こんな最高のものをもらい、私はもう、茫然自失です。
すごい映画を観て、観終わって、しばらく席を立てない、あの感じです。
でも、この「はじめに」は、終わりにこんなショッキングな予告が載ってました。
映画が終わった後に、いきなり、次の予告が出るようにです。
〈来年は第2弾として「美女!湯けむり花魁盛り」写真集出します(ウソ)〉
「ウソ」ではなく、「ホント」にしてもらいたいですね。
あべあゆみさんにもぜひ出てもらいましょう。表紙にしてもいいですね。
あと、阿部勉と共演した女優・日野繭子さんもいいですね。とお願いして、終わりましょう。
「世界最高の本」を作って下さった11人の皆さん、本当にありがとうございました。ご恩は一生忘れません。
そして、当日、ロフトに来て下さった皆さん、本当にありがとうございました。来年はさらに、面白いものになるでしょう。
石坂啓さん(漫画家)。そして、河合塾コスモに勤める典子さん(左)。さらに元スチワーデスの女性(右)もいます。三姉妹なんですが、どの人が一番上か分かりません。「私は姉じゃない!一番若い!」と皆、言います。仕方がないので、石坂家の「みつご」と私は呼んでいます。