9月2日(土)は盛岡で講演会だった。日帰りで、慌ただしく行ってきた。
現地にいた時間よりも、列車に乗ってる時間の方が長かった。
9月5日(火)は、上祐史浩さん(「ひかりの輪」代表)と西道弘さん(元公安調査庁)の3人で、話し合った。公安、宗教、右翼…についてだった。
ロフトは超満員だった。9月8日(金)は、劇団「再生」で、高木尋士氏とプレトークをした。見沢知廉についてだ。
9月15日(金)は弘前で講演だ。
今月は、講演、対談、座談会などが多い。
9月中旬、下旬も、いろいろある。テレビが2本、講演が3本、ラジオが1本。
その間に、「ノルマの読書」もこなさなきゃいけん。毎月、40冊のノルマはこなしている。
この前テレビで、小学生がクイズを解く番組があった。全国の頭のいい小学生が集まって、闘うのだ。
その中で小学生の3年か4年の女の子の紹介をしていた。何と「年1000冊」の本を読むという。
ゲッ、私は小学生に負けてるよ。高木氏だって負けてるね。
「小学生だから、どうせ漫画だろう」と言う人もいるが、そうではない。ちゃんとした文学、評論を読んでるのだ。
大体、ここに登場した小学生たちは、多分、漫画なんて読んでない。読んでたら、とても、まとめて勉強する時間を取れない。
それに、スマホなども持ってないんじゃないか。たとえ、持ってたとしても、メールをしたり、ゲームをしたり…などはやらないだろう。そんな気がした。
「年間1000冊」というと、月平均で「100冊」ほどか。
「30冊」「40冊」は何とか読めるが、「月100冊」では、どうしたらいいのだろう。ぜひ、その小学生に聞いてみたい。
中にはスポーツをしてる子供もいる。「スポーツをしていて、帰ってきてから勉強出来ますか? 眠くなるでしょう」と聞いていた。
それに対し、「そうですね。だから勉強は朝にやってます」と答えていた。これは見ていてとても勉強になった。
私も考えた。本のノルマを上げるか。でも、今すぐは無理だ。それで、他のこともノルマを決めてやろうかな。
たとえば、講演は月に5回。柔道は月に5回。映画は月に5本…とか。
でも、原稿や講演は向こうから頼まれるものだ。自分はやりたいと思っても、そうは簡単に出来ない。
それに、人生で学ぶのは本だけではない。他の人の話を聞いたり、あるいは、地方に出かけて、学ぶことも多い。
最近は「聖地巡礼」をやってるが、「反対の聖地」も行っている。
そうだ。ロフトでは上祐さんに「聖地巡礼」の話を聞こうと思い、忘れてしまった。今度会ったら、ゆっくり聞いてみよう。
「ひかりの輪」として上祐さんが「聖地巡礼」をやっている。神社なども行っている。昔、オウムにいた時はとても出来なかっただろう。神社やお寺に行くなんて。でも今は行ける。
それと、「考えの違う」人の話を今月は聞いた。これはとても役に立った。
ロフトでは、元公安調査庁の人と話をした。
元公調、元公安の人とは、オープンな形で会ったことは一度もなかった。
左翼の人とは何回も会って討論してるが。
左翼、市民運動は、たとえ考えが違っても、社会に向かって訴えている、その立ち位置が似てるので、つい「仲間」のような気がする。
その点、公安、公調は、運動してる人をただ、付け回し、スキが会ったら逮捕しようと待ち構えている人間だ。そう思っていた。
ちょっと説明しておくが、「公安」といった場合、警察庁の警備課の中にある、れっきとした警察官であり、逮捕権、ガサ権などもある。
又、交通違反で切符を切られた人間の罪をチャラにすることも出来る「力」がある。
それに対して、公安調査庁というのは、警察ではない。法務省の役人だ。ただ、調べているだけだ。逮捕権はない。
力がない分、金はあるので、金に物を言わせて、情報を集める。右翼、左翼にも金を出して、話を聞く。
運動の現場に行っても、警察の公安が中心で、この公調は邪魔にされる。「どけ!」とか言われる。
逮捕権がないということは、それに伴う特権もないのだ。
たとえば、右翼や左翼が、「スピード違反で切符を切られた。何とかしてくれ」と言われても、何も出来ない。
警察の公安なら、「わかった」と言ってチャラに出来る。淫行で逮捕される直前の人間を助けたこともある。
でも公調はそれが出来ない。ただ金がある。だから、酒を飲ませたり、女を抱かせたり、あらゆる手を使って情報を取ろうとする。
右翼や市民運動の人の中でも、だから、公調に会うのに罪悪感を持たない人もいる。
何せ、自分から電話をして、「情報を売りたい」という人だっている。金目的なのだ。
それに、「これは大した情報ではない。それに公調は逮捕権がないのだし、うちの組織にも関わらないだろう」と思うらしい。
西さんに聞いたら、「確かにそんな人はいます。でも、そんな人の情報は余り価値がありません」と言う。
それよりも、警察の公安ではなく、なぜ、わざわざ(力のない)公調に入ったのか。それで生活は楽しいのか。それが疑問だった。
それには西さんも、確かに力はないし、悔しい思いはしました、と言う。でも我々はナンチャッテ〈公調〉ですからと言う。
おたく的な人が入ってくるし、「国を守るために命をかける」といった人はいない、と言う。
宗教だって、いろんな宗教を見れるし、調べられる。それで、入ったという人もいるらしい。
だったら初めから、キリスト教なり、オウムに入ればいいじゃないか、と思うが、入信する勇気はないらしい。しかし公調に入る方がずっと「勇気」が必要だと思うのだが…。
ただ、ロフトで西さんと会って、「そういえば、公調の人とは初めて公の席で会いました」と言った。ヒッソリと会ったことがあったが、こうして第三者の目と耳がある中で会ったのは初めてだ。それはいいことだと思った。
完全に理解したわけではないが、西さんと話をして、公調に入る人の考えが少しは分かった。
それと、9月6日(水)に元検事の古畑恒雄さんに会った。
普通なら、絶対に会えない人だ。月刊『創』の篠田編集長が紹介してくれた。
元検事で、今は弁護士だ。そこの事務所で、話を聞こうとした。
でも人が急に増えた。それで、近くの貸会議室を借りたのだ。元検事を囲む会だ。そして、「元検事と被告人の会」だ。
この人は、連合赤軍事件があった時、長野で連合赤軍の青砥さんに会って、取り調べた。
ものすごい凶暴な人間たちだと思っていたら、普通の青年で、驚いたという。爽やかだったという。
お父さんが心配して長野に来たので、その時、時間があったので、善光寺を案内したという。そんな検事さんなんて普通いない。
息子(青砥さん)に会わせるが、息子は一切、口を利かない。父は必死に説得しているが、全く耳を貸さない。
取り調べも大変だったが、なぜか二人の間に通じるものが出来た。
「職業は?」と聞くと、即座に「革命家です」と答えた。それが、爽やかで、驚いたという。
こういう青年は早く出して、父親の元に返してあげなくては…と思ったという。
検事が、そんな温情をかけるのだろうか。これは意外だった。
でも古畑さんは言う。そう思う検事もいるんです、と。
求刑は20年。10数年で仮釈で出た。「もしこれが30年だったら、もう、出てからも、やり直しがきかない」と古畑さんは言う。やり直しのきく人生、やり直しのきく社会にしなければダメだという。
古畑さんは早稲田出身だ。「じゃ、鈴木さんと同じじゃないか。殴り合ったんじゃないですか」と言う人もいたが、「私は昭和8年生まれです」と古畑さん。私よりも10歳上だ。とてもそうは見えない。若い。
そういえば、私らが子供の頃は、悪党が改心して善人になる、という漫画や小説が一杯あった。「今は全くない」ということを思い出した。
今は、悪は徹底的にやっつけろ! 殺してしまえ!という感じだ。社会に「寛容さ」や同情心がない。たとえ犯人が反省しても、受け入れようとしない。そんな排除の論理しかない。
又、検事について、私らも全く誤解していた。いや、一方的な知識しかなかった。
(右であれ左であれ)事件を起こした被告人について、検事は断罪し、少しでも罪を重くしようとする。弁護士は、それに反対する。そして裁判官が「まあまあ」と言って判決を下す。そういうシステムかと思っていた。
検事は、徹底的に悪を憎み、犯人を憎む。そういう人ばかりだと思っていた。私の少ない体験でも、そんな検事ばかりだった。
ところが、古畑さんは違う。何とかして、少しでも罪が軽くなって、社会に出て、「やり直し」が出来るようにする。それが検事の役目だという。
そんな検事が他にもいますか? と聞いたら、「います」と言う。
ただ、そんな人たちは出世はしないだろう。又、検事として「成果」も上げられないだろう。だから表に出ることはない。
古畑さんは、いい先輩に恵まれたと言う。
有名な正木ひろしさんや、団藤さんにも教えられた。最終的に弁護士になるにしても、「検事を体験しておくのはいい」と正木さんに言われ、それで検事になったという。
今は弁護士で、死刑反対運動もやっている。その時、かつて検事をやっていた体験がものすごく役立っているという。
こんな検事はいないと思った。日本の司法も、捨てたもんじゃないと思った。
この日は、『創』の篠田さんが声をかけた人たちで、10人以上が集まった。
皆、逮捕され、検事に調べられた体験を持った人ばかりだ。
皆言っていた。「こんな検事に会ったことはない。青砥さんが羨ましい」と。
漫画家の山本直樹さんも来ていた。連合赤軍の漫画『レッド』を今、描いている。山本さんもビックリしていた。我々の想定外の人がいるんだ。
日本にもいろんな人がいる。考えの違う人もいる。
でも、その人たちを含めて、多くの人が平和に幸せに暮らすために話をする。そのルール作り。意見の違う人との接し方。それを学んだ、と思った。
こうした人の話は、もっともっと、多くの人たちに聞かせるべきだと思った。
9月に自分で話す講演も多かったが、それ以上に、今まで会ったことのない人から話を聞き、教えられることの方が大きかった。
これは又、じっくり考えてみたい、と思った。
〈激論!今注目の元公安×鈴木邦男×上祐史浩。イスラム・右翼・オウムから見えた「公安の秘密」と「宗教の未来」とは!?〉。
会場は超満員でした。緊張の中で始まりました。
7時半に始まり、10時に終わるはずが、質問も多く出て、11時過ぎまでになりました。
でも、誰一人として帰りません。ピーンと緊張の糸が張り詰めたままでした。
①9月5日(火)。ロフトプラスワンでトークをやりました。入り口の所に、こんな案内が。
〈イスラム・右翼・オウムから見た「公安の秘密」と「宗教の未来」とは!?〉
〈激論!今注目の元公安×鈴木邦男×上祐史浩〉
すごいですね。この「案内」の方が暴走しています。
㉑連合赤軍の漫画『レッド』を描いている山本直樹さんも来てました。月刊『創』の篠田編集長も。実は篠田さんが古畑さんと取材で知り合い、今日、お呼びしたのです。よく来てくれたと思います。普通なら、凶悪事件の被告たちと会おうとは思わないでしょう。でも古畑さんは違います。「人間はやり直しが出来る」「更生出来るんだ」と信じ、検事の仕事を続けて来たと言います。我々にも「先入観」が取れて、とても勉強になりました。