細野豪志さん(衆議院議員)の講演を聴いた。終わって、話をした。
今、一番忙しい人だ。そして一番、輝いている人だ。
民進党を離党し、今は新党づくりに忙殺されている。
衆議院解散、総選挙と政局は一気に流動化し始めた。その前に新党を作る。党名を考え、人間を集め、規約、綱領を作り…と。寝る時間もないだろう。
そんな人が、よく、この時に講演会に来てくれたもんだと思った。
9月20日(水)の12時から、第364回・経営塾フォーラムだ。ホテルオークラの別館で行われた。
講師の予定はかなり前に決められていた。しかし、こんなに状況が流動化し、切迫するとは思わなかっただろう。だからこそ、よく来てくれたと思った。
この日は夜は「創」の出版記念トークがあるし。他にも用事があったが、この細野さんの話は聞かなくちゃ、と思って行った。
あっ !と思ったが、出席の返事を出してなかった。忙しくて忘れてたのだ。
いかんな。と思った。「実務をきちんとやらなくちゃ」と竹中労は言ってたな。「革命は実務だ」と言っていた。
偉そうに「俺は国のために死ぬ!」「命を懸けて闘う」と言う人はいても、そんな人に限って、実務が出来ない。電話オルグ、手紙による勧誘…などは出来ない。
又、そういうことをする人を馬鹿にして、「事務屋が…」と言ったりする。
でも、そういう運動の基礎的なことが出来ないとダメだ。と竹中労は言っていた。
「革命は実務だ」と言ってたし。竹中労という名をもじって、「自分は竹中労務店と言われてる」と自嘲する。
そのことを思い出し反省することが多い最近の私であります。
実務は出来ない。予定も間違える。手帳に書いたつもりでも字が汚くて読めない。それでダブルブッキングをしたりする。いかんな。
本や書類も乱雑に置いてある。このままじゃ、寅次郎のゴミ屋敷になってしまう。そうなったら生きてはいけない。
そう思い、時間があると部屋の掃除をしている。でも、なかなか、片付かない。「断捨離」の本も随分買って読んでるのだが。
あっ、いけない。こんなことを書いててはダメだ。細野さんのことだ。
ともかく、いま、日本で一番忙しい人だ。いい機会だ。ぜひ聞きにいかなくちゃ、と思った。返事を出してなかったが、ともかく虎ノ門のホテルオークラの別館に行った。
断られたら仕方がない。と思って行ったら、「あ、鈴木さん。久しぶり」と言われて、入れてくれた。ありがたい。
私は以前、この経営塾フォーラムで講演をしたことがある。「経営塾」というテーマには最もふさわしくない人間だ。
又、「経営塾」だから、世の中の経営者、企業人、会社の役員、サラリーマンばかりだ。左右の活動家、市民運動家などは一人もいない。
そんな人の前で講演したのだ。「私の話など、全く役立たないと思いますが」と、断わって話を始めた。その時のことを今でも思い出す。
それ以来、毎月、案内が送られてくる。一度講演した人は「ご招待」だ。ありがたい。多くの人の話を聞き、とても勉強になっている。私が会う機会のない人たちに会えるし、ありがたい。
今回の細野豪志さんだが、以前、「朝まで生テレビ」に一緒に出た。それが初めてだ。
おとなしいし、冷静な人だ。いきなり怒鳴ったり、相手を罵倒することはない。
政治家としては、シャイだし、控えめ過ぎる。そう思ったくらいだ。1971年生まれ。若い。民主党(民進党)政権では、いろんな大臣を歴任した。しかし今年、民進党を辞めた。新党を作るという。
経営塾の案内にはこう書かれている。
〈風雲急を告げる中で9月にも新党を結成し、来たるべき総選挙に臨むといわれますが、その新党の中身、戦略など細野さんの決意と今後の展開を交え、日本の政治動向について語っていただきます〉
この日の細野さんの演題は、ズバリこうだ。
「野党再編へー新しい政権政党をつくる」。
会場は満員だった。
細野さんはまず1時間ほど話をし、そのあと質疑に応じる。
今まで会った細野さんとは全く違うと思った。控えめで、かなりシャイな人だと思っていた。
ところが、この日は、実に堂々としている。そして、キラキラと輝いていた。なぜ民進党を辞めたのか。なぜ自民ではダメなのか。について語る。
今、新党を作ることに忙殺されてるが、大体、名前も決まってない。現在、綱領も決まってない。ないないづくしの中でのスタートだ。
そうか、大変だな、と思った。党名では、自由、民主、社会、維新…といった主義主張を表わす漢字はほとんど残されていない。
では、新たな発想で、主義・主張と関係なく付けるか。
細野さんと言えば民進党を辞めたというが、それと同時に改憲の試案を総合雑誌に書いて発表した。
「何で自民党の改憲作戦に乗るのだ」
「改憲反対だけでいいんだ。余計なことをするな」と党からも言われたようだ。
細野さんの話で驚いたが、自民党との「違い」を示すために、あえて、全てに反対してるという野党議員もいる。
しかし、外交、防衛など一致出来ることは、一致していいと思う。
選挙戦の時に、自民の「全て」が悪い、と言って、「安倍はファシストだ」「安倍は独裁者だ!」と言う人もいる。市民運動でも、そう言って安倍を否定する人々が多い。「独裁者」「ファシスト」というのなら野党の党首の方が当てはまる人がいそうだ。
細野さんは、そういう雰囲気を感じたのだろう。自民と一致出来る場合は一致していい。
大体、外交・防衛では、大半、認めるという人々もいる。でも100%、安倍が悪いと言っている。
その点について細野さんはこんなことを言う。
「私たちは野党の議員の前に、国を代表する国会議員なのだ」
すごい! これは深い。野党だから、何にでも反対すべきだ、という考えはない。でも、それを言える勇気はさすがだ。
講演が終わってから、細野さんと話をした。
「この前はどうもありがとうございました」といきなり礼を言われた。
アレッ、何だろう、と思ったら、私は皇室典範の問題で民進党で講演を頼まれて、話をした。そのことを言ってるのかな。
というと細野さんがまだ民進党だった頃なんだ。私が講演したのは。その前に小林よしのりさん、高森明勅さん…などが呼ばれて話をした。
〈野党議員の前に、国民を代表する国会議員なんだ〉
という言葉はよかったですね、と私は言った。
皇室典範の改正を巡る懇談会を民進党でやっていて、そこで私は呼ばれ、講演したのだ。
細野さんがいたし、野田さんもいた。私の隣に山尾志桜里さんがいた。
私は民進党には知り合いの議員は多くいる。優秀な人も沢山いる。
しかし、ちょっと考えが違うと、お互い批判し合い、罵倒する。潔癖なんだろう。
その点、自民党なんか、いろんな人がいる。考えの全く違う人でも自分の派閥に入れている。どんなに嫌いな人物でも、「ここは」という時に支援する。大人の考えだ。悪魔の知恵かもしれない。
そんなズルさを民進党も持っては、と思った。
でも、そうした大人の知恵のない政党だから、細野さんを追い出した。いや、細野さんの方から飛び出したのだ。でも、これで、もっと大きな世界に出られた。
この日の講演を聴いて思ったが、実によかった。堂々としてるし、輝いていた。これから大変だと思うが、頑張って下さいと言いました。
この日は一度、家に帰ってから、夕方、出かける。
6時半から神保町の東京堂書店でトークだ。私の『言論の覚悟 脱右翼篇』(創出版)が最近出たが、その出版記念トークだ。
お相手は武田砂鉄さん(作家)。出版社を辞めてからは、代表作の『紋切型社会=言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版)がヒットし、ベストセラーになっている。
どうしたら売れる本をかけるのか。私の方で聞きたいことが多くあったが、演題は私の本についてだ。
『言論の覚悟』は3冊目だが、今回のが一番いいと武田さんも言う。
それに時代背景もある。急に安倍政権が改憲を言い出したり、自衛隊を外に出したりしていた。
「戦争準備内閣だ!」と騒ぐ人もいる。それはないと思うが、「強い国家」を希求してるのは事実だ。
これは国民一人一人もそう思っている。その国民の不安、思いを先んじて、すくい上げる。そんな感じがする。
問題は安倍政権というよりも、ぼんやりと「強い国家」を願う国民の考え、日本の「空気」にこそ問題があるのではないか。
又、私は、長年やっていた〈右翼〉を辞めた。今は、「左翼だ、リベラルだ」と言われることが多い。
なぜそんな「転身」をしたのか。武田さんからも聞かれて、その話をした。自分の転身については、いろんなとこで書いている。
今、安倍政権は「お仲間内閣」とか言われている。政治家は皆、お仲間が中心の「お仲間サークル」だ。
左右両翼の人。市民運動の人。宗教…と。目につくものは皆、「お仲間」集団だ。
学生だって、主婦だって、自分と考えの合う人たちとつるんでいる。
「仲間」とはこういうことなのか。同じ考えの集団に長くいると、個人の進歩はない。皆で同じことを言い、さらに過激な方向に向かう。
その運動を長い間、やってきたんだし、それを背景に発言した方が有利だ。そう思う時もある。
たとえば、今なら、「俺こそ愛国者だ。50年も愛国運動をやってきた」と言った方がウケるだろう。本も出るだろう。でも、それでは無責任だと思う。
同じ考え方の仲間だけで運動をやり、その結果、何が生まれたか。いい点もあったが、悪い点もあった。それはキチンと言うべきだろう。
今や、日本での政治は、「かつての右翼」のようになりつつある。少なくとも思想的な雰囲気、空気ではそうだ。
「中国、韓国になめられるな」
「国防を強くしなくては」
「憲法さえ変えたら自主自立の国になれる」…などと言っている。
「自分たちの失敗をわざわざ言うことはない」「左翼の批判だけをしてればいい」と言う人もいる。
しかし、それでは無責任だ。自分たちがやってきた運動の良さも含め、欠点、批判をきちんと公表すべきだと思う。
私たちは「右翼」である前に一人の日本人なのだ。細野さん流に言えば、そういうことになる。
今月は、私自身の講演が多かった。
図書館からも随分と本を借りた。地方に行くことも多く、その度にカバンに本を詰め込んで歩いた。
その中で、本をなくした。図書館から借りた本だ。前にも書いたが、本をなくしたら、同じ本を買って弁償しなくてはならない。
現金での弁償はやってない。前にもなくして、同じ本を買って返した。今度の本は新書で安かったが、書店でなくてアマゾンで取り寄せた。
これも人間が雑になってるからだ。反省しよう。
でも、今回は燃えている。輝いている。講演も多くの人が聴きに来ていた。
私の最近出した、『天皇陛下の味方です』を中心に話をする。嬉しかったですね。3時間ほどびっちり、話をしました。
①9月20日(水)。昼からホテルオークラ別館で経営塾フォーラム。講師は細野豪志さん。民進党を辞めて、今、新党を作ろうとしています。講演も素晴らしかったです。いつもはおとなしい人なのに、今は熱が入ってます。燃えてます。今、最も忙しい人でしょう。又、今最も輝いている人です。
⑩9月16日(土)。昼に東京に着き、その日、夕方から阿佐ヶ谷で行われた映画祭とトークを観に行きました。瀬々敬久監督の「菊とギロチン」の映画です。大正アナキストの激動の歴史が展開されます。その後、瀬々監督と足立監督のトークがありました。
⑪瀬々監督と。「初めまして」と言って名刺を渡そうとしたら、「あっ、鈴木さん。久しぶり。前にPANTAさんと一緒に飲みましたね」と言われました。いかんな。忘れっぽくて。瀬々監督の映画は随分と観てるのに。今回もよかった。今時、こういう思想的な映画を撮れる人はなかなかいない。