「死刑」について、集中的に勉強した。
10月25日(水)から10月31日(火)にかけて、テレビに出て「死刑」の話をしたり、死刑反対の国際的集会に2回出たり。そして、死刑についての、かなり難しい本を読んだ。
こんなに死刑について集会、激論が集中し、勉強することがあるんだ、と自分でも驚いている。
⑴10月25日(水)午後6時から四谷の上智大学の隣りにある聖イグナチオ教会で、「死刑執行停止を求める宗教者の集い」が行われ、参加した。
こんな集会が行われていたのかと驚いた。だって、いろんな宗教、宗派を超えて、「命の尊重」を訴える宗教者が集まったのだ。
ここはカソリックの教会だが、プロテスタントの人も来ていた。それだけではなく、仏教関係の人も。真宗大谷派の人。それに大本教の人も。そこでお互いの祈りを捧げ、メッセージを発する。
そのあと、市民運動をやってる人や、個人が紹介され、メッセージを発する。
菊田幸一さん(明大名誉教授)。弁護士の小川原優之さん。そして私も発言した。これは画期的な集まりだと思った。感動した。
⑵10月27日(金)。大阪・読売テレビ「そこまで言って委員会」に出る。
この日のテーマは「死刑」。反対派は、森達也、田嶋陽子、須田慎一郎さんと私。賛成派の方は、門田隆将さん、竹田恒泰さんなど。
激論になった。こうした議論になると大変だ。
⑶10月31日(火)。イタリア文化会館で、死刑反対集会に出る。
九段の二松学舎大学の向かいにあった。大きいし、このイタリア文化会館の大ホールで行われたのだ。
入ってビックリ。超満員だった。一番後ろまでビッチリだった。通路に椅子を入れてくれ、やっと座れた。
カソリック、プロテスタント各宗派の人たちがいる。又、原田正治さん、袴田巌さんのお姉さんもいる。世界各国から死刑反対の人々が集まって発言する。
主催は「聖エジディオ共同体」で、〈未来を構築するために=平和の道を拓く=〉集会だ。
登壇者は、パオロ・カルヴェッティさん(イタリア文化会館館長)。聖エジディオ共同体の代表の人。日本からは原田正治さん、袴田秀子さん、古川龍樹さん(生命山シュバイツァー寺)などが発表する。
10月25日(水)の四谷の教会でやった集会とも共通するが、「国家、宗教、宗派を超えた」命の尊重、死刑反対の集まりだった。とても感銘を受けたし、勉強になった。
終わって、近くのレストランで懇親会が開かれ、そこにも参加した。
そうだ。創価学会の幹部の人も来ていて、挨拶していた。私もいろいろ話を聞きました。
それに、この集会には立正佼成会の人も来て話していた。この二大宗教が同じ場に立つなんて、ないと思ってたので、驚きだった。
これは素晴らしいと思った。宗教者が集まって、国家主義を強調したり、国防、改憲を訴えるよりはずっといい。
「命は大切だ」「命を大切にしよう」ということは、どこの宗教だって一番大切なことのはずだ。宗教の原点を教えられたような気がした。
私は、テレビなどで討論したし、聖イグナチオ教会でも発言した。
「右翼運動に半生をかけた」とテレ朝では紹介されたが、40年以上、右翼運動をやってきた。
右翼の人は100%近くが「死刑賛成」だ。死刑の存置派だ。「人を殺したら、自らの命で償うのは当然だ」という考えだ。
でも長い右翼の歴史の間で、私は、ずっと疑問に思っていた。
「命の大切さ」だ。高校はミッションスクールだったし、大学からは「生長の家」の運動をした。宗教にドップリと浸かった生活だ。
その中で、〈生命尊重〉をずっと考えていた。それが大きいと思う。後に「死刑反対」の信念を固める基礎になったと思う。
又、フランスの元法相・バダンテールさんの話を聞いた。
それで、ナショナリストの誇りを揺さぶられたことがあった。
フランスは30年ほど前に死刑を廃止した。フランスは長い間、ギロチンを始め、残忍な死刑を実行してきた。
ところが死刑を廃止した。
でも、その時でも国民の世論調査をしたら、80%ほどが「死刑賛成」「存置」だったという。
その時、法相だったバダンテールさんは言っていた。
「生命の尊重は世論調査で決めるものではありません」。「死刑賛成か反対かも、国会の議論で決めるものではない。国会議員がリードしていく問題です」と言う。
「命の大切さ」は、議論し、数が多い方に決めるのではない。多数決で決められるものではない。政治家が国民に知らせ、リードしていくべきだと言う。これには驚いた。
さらに、(前にも書いたが)、日本の死刑について、彼はこんなことを言っていた。
日本は世界で最初に死刑を廃止した国です。それなのに今は死刑存置国になってます。そして、死刑を残す最後の国になろうとしています」
これはショッキングな話だった。日本は平安時代、250年間、死刑を廃止していた。人を殺すと祟ると思われていたからだ。
地震、津波、大火などの大災害として襲ってくる。これは殺された人間の怨みによる、ということで、死刑をやめて「島流し」にした。
しかし、武士の世の中になると、そんな「迷信」は捨てられた。武士のリアリズムで死刑は復活された。今も続いている。
80%以上の人が「死刑賛成」と答える。先進国の中では日本とアメリカの一部の州くらいだ。
ヨーロッパのEUをはじめ、死刑を廃止した国が多い。ますます多くなっている。
イタリア大使館やフランス大使館なども日本の死刑反対には協力している。
「日本は素晴らしい国だが、一つだけ残虐な刑罰が残っている」。そう思っているのだ。
だが、イタリア大使館、フランス大使館の立場で、死刑反対の集会も行われている。これは素晴らしいと思う。決して「内政干渉」ではない。
又、フランス、イタリアの死刑反対への取り組みに素直に感動し、この点では、「日本は遅れてる」と思う。
国家は重武装し、「来るなら来い!」と身構える必要はない。戦争をしません。平和国家です。人は殺しません。死刑には反対です…と、「寛容さ」を打ち出す方がいいと思う。
国家がイデオロギーを持って、国民に対し「こうすろ」「ああすろ」と言うのは、よくないと思う。
改憲運動をしてる人の中にも、「強い国家を作る」「他国になめられない武力を持つ」ということを目標にしてる人が多い。
しかし、違うだろう。と思う。国家は透明でいい。自由で、寛容でいい。「日本らしさ」とは元々、そういうものだった。「大和」とはそういうことだった。
その中で、国民一人一人は、どんな考えを持とうと自由。それが日本だった。「日本人だから、こう考えろ!」「愛国心を持て」と強制されることはなかった。
9条の次は、多分24条そして21条を変えようとしてるのだろう。
24条は、結婚は二人の合意のみに基づいて決まる。世界でも最も民主的な条文だった。
ところが、これに不満を持つ保守派の人たちは反対する。
家族は小さな「単位」だ。それが多く集まり、大きくなって「国家」になる。だから「国家」といって、「家」がまだ、国の中に残っている。
家族は互いに愛し合い、尊重し合わなくてはならない。と自民改憲案ではなっている。
「こうあるべきだ」「夫婦はそれを支える」と倫理を強制するのはおかしい。
だったら、「夫婦喧嘩」も違憲。夫婦別姓や同性婚も違憲になる。又、父親の権威を強くすることにしたいらしい。
そうだ。大事な本もあったのだ。死刑について、気になる本があったので、買って読んだ。
難しい本だし、分らないとこもある。でも最後まで読み通した。本当に勉強になった。
萱野稔人さんの『死刑 その哲学的考察 』(ちくま新書)だ。
「かやの・としひと」と読む。難しい。今は津田塾大学で教えている。この萱野さんとは何度かお会いした。何度か対談をした。
普通こういう本だったら、「死刑反対です」とか、「私は死刑存置派です」とまず自分の立場を書きます。
まるで「信仰告白」を聞いてるようだ。ところが萱野さんの本の帯にはこう書かれていた。
〈究極の死刑論!〉
〈これまでの論争を根底から刷新。賛成派も反対派も、この書を読まずして死刑は語れない。必読の書〉。
「必読の書」と言いながら、けっこう難しい。カントやデリダなどの哲学者の説を引いて書いているし、ついて行けないとこがある。
でも、今まで出た死刑の本では、一番冷静に語っている。
・「死刑にされたほうがラク」という犯罪者たち
・「人を殺してはいけない」という道徳に絶対的な根拠はあるか
・「カントの死刑論」から見えてくる道徳の本質。「正しい殺人」だからか。「デリダの議論をありがたがる病」。
頑張って読んだけど、やはり難しい。私は必死に食いついて読みました。手こずったが、読了した。これは、個人の思いを深化させて、〈死刑〉を考える。いい本だ。しかし難しい。買いながらも途中で、挫折した人もいると思う。
死刑「賛成」「反対」について、これはその精神を書いている。本も随分と出た。
10月の1週間はまさに「死刑ウィーク」だった。
あっ!今、萱野さんのプロフィールを見ていたら、こんな本も出しているのだ。
『成長なき時代のナショナリズム』(角川新書)。すぐ本屋に行って買ってこよう。それと、『新・現代思想講義〜ナショナリズムは悪なのか』(NHK出版新書)。
これも買わなくっちゃ。あれ、これは読んだかな、と、疑問に思い、迷いながら勉強している私でした。
③私がゲストで出ました。〈改憲に半生。鈴木邦男氏語る「憲法改正」と安倍政権〉。ウワー!「改憲に半生」か。学生時代から40年以上やってましたからね。そして今は、かなり考えが変わりましたが…という話をしました。
⑤9条だけでなく、24条も、21条の「表現の自由」も危ない。一切の表現の自由は保障する」と言いながら、「公益及び公の秩序を害することを目的とした」ものは認められない、と言う。じゃ、全てのデモ、集会じゃないか。表現の自由がないよ。…という話もしました。
⑰10月25日(水)午後6時より、四谷の聖イグナチオ教会で「死刑執行停止を求める宗教者の集い」。宗教、宗派を超えて、世界の宗教者が、「殺すな」と訴えます。各自のお祈りをやり、そしてメッセージを訴えます。カソリック、プロテスタント、真宗大谷派、大本教…など。これはすごいことです。画期的なことです。私も指名されて、挨拶しました。
⑱日弁連に入っている小川原優之さん(左)。明大名誉教授の菊田幸一さん(右)と。小川原さんは日弁連の「死刑反対」の声明作りにも関わってます。あとで知ったのですが、この人は仙台の東北学院高の出身でした。「鈴木さんの後輩です!」と言ってました。こんな優秀な人がいたんですね。 わが学院にも。
㉗袴田巌さんのお姉さん、袴田秀子さん。原田正治さん。原田さんは実の弟が殺されながら、その犯人と会い、「死刑執行」に反対しました。今は、被害者の会、「オーシャン」の代表。この日は大分から来てくれました。
㉚「三上元さんをかこむ会」。前・湖西市長で、今回の衆院選では、立民党を応援して、全国を回ったそうです。「2、3日前の新聞に立民は小林よしのり、鈴木邦男の応援で急成長した」と書かれてましたよ、と三上さん。小林さんの演説は効果的だった。私の影響はないですよ。この日は、上京した三上さんを囲んで、「立民党の躍進」を祝う会。そして「ノーベル平和賞」を取った人々へのお祝いでした。
㉛週刊『アエラ』。11月6日号。『スリーパー』(浸透工作員)の書評です。冒頭のシーンがショッキングです。日本の俳優が海外で殺される。元公安の男が逮捕される。本人は知らないと言う。しかし、マンションには箱に入れた被害者の首があった。さらに…。最近の事件は、私が『アエラ』で紹介した事件と似ている。これはビックリです。多分、犯人はこの小説を読んでいたのでしょう。すごい小説を読みました。