2017/12/25 鈴木邦男

「見果てぬ夢」を見続けた男たち

①山平氏の名著が復刊する!

『ドキュメント 新右翼』 『ドキュメント 新右翼』

「これはすごい本だ!」と思わず唸った。まだ本屋には出てない。1月10日発売だ。

その見本誌が送られてきたのだ。山平重樹氏の『ドキュメント 新右翼=何と闘ってきたのか』(祥伝社新書)だ。祥伝社はすごいことをやる、と思った。

それに、新書や文庫があってよかった。昔の名著がこういう形で蘇って読むことが出来る。

表紙には三島と「楯の会」の写真が大きく出ている。そして、こういうキャッチコピーが。

〈日本会議の中枢メンバーはここにいた!〉
〈見果てぬ維新革命。三島由紀夫、野村秋介、鈴木邦男らの闘いと知られざる「歴史」を追う〉

実は、この本は30年前に二十一世紀書院より刊行されたものだ。平成元(1989)年に、『ドキュメント 新右翼 見果てぬ夢』というタイトルだった。

〈その頃の事象を書き下ろした序と終章を加え、全体を加筆・修正したものです〉

と書かれている。「序」は「日本会議の源流」。そして「終章」は「維新革命家の死」(1991〜2005年)だ。野村秋介、見沢知廉、三浦重周の最期が書かれている。

大量に加筆、修正されている。だから新書としては珍しく厚い。458ページもある。定価は1100円だ。新書を超えた本だ。

内容も素晴らしい。新右翼の歴史について、これほど詳しい本はない。歴史について、闘った人々について、熱い思いをもって書いている。これ以上の本はない。これが全てだ。

では何故、30年も経って、この本が復刊されることになったのか。

山平氏は「序」で書いている。

〈私が約三十年前に上梓した『ドキュメント 新右翼 見果てぬ夢』(二十一世紀書院)が今回復刊となったのは、一も二もなく、平成二十八(2016)年に始まった、日本会議ブームの賜(たまもの)である〉

日本会議については多くの人が書き、新書、単行本が何冊も出、週刊誌、月刊誌でも大きく取り上げられた。

その中でも菅野完の『日本会議の研究』(扶桑社新書)、そして藤生明の『ドキュメント 日本会議』(ちくま新書)は特にすぐれている。

日本会議の源流として、生長の家などの右派学生運動があり、そのことを山平氏の本には書かれている。

〈日本会議の「源流」を記す大著に熱視線〉とのタイトルで、「週刊朝日」(平成29年7月21日号)で藤生は取り上げている。

又、菅野の本では、生学連の知られざる闘いが詳しく書かれている。

〈新右翼のムーブメントがまだ歴史になっていない30年前に、歴史として描ききった。その構想力、筆力に脱帽する。早すぎた名著というべき作品だ〉

と菅野氏は絶讃する。では、「果てなき夢」とは何か。

当時、学生運動をやっていた全ての右派学生の夢だが、ある男のことが特に書かれている。実は、私が言ったというのだ。

ウーン、そうだったのかな。と思った。山平氏はこう書く。

〈拙著では鈴木氏が早大闘争を経て全国学協委員長に就任した直後、執行部の安東巖氏や椛島氏らによって座を追われたものの、まもなくして起きた三島事件に衝撃を受けて一水会を結成、新右翼のリーダーの一人として活躍する姿を活写しているのだが、そもそも「果てなき夢」というタイトルも、当時の鈴木氏の話。〉

②「日本会議」もここから生まれた

〈第1章〉のトビラ 〈第1章〉のトビラ
〈日常生活にとって、われわれの民族派運動なんて、なければなくてすむもんだ。だけど、オレたちが夢を見ることをやめたら、どうなる?夢を見続けてこそ、オレたちの運動は持続するんだ」に由来する。それから48年、鈴木氏はいつも「維新」という“果てなき夢”を見続けているのだろうか〉。

そうだ。30年ぶりにこの本が復刊するというので、山平氏にインタビューされたんだ。

高田馬場の「みやま」で会って、かなり話をした。そのことも出ている。「僕は負け組。日本会議は勝ち組」という話をした。

又、あの時は悔しかったけど、今となっては、あの時、追われてよかった、と思っている。

追い出されて、いろんな人がいる大海に押し出された。左翼も、アナキストも、危ない宗教もいた。その中で闘い、教えられて、自分の考えを作り、運動をやってきた。その体験は大きいと思う。

その大海に押し出してくれたことに感謝している。元のままだったら、とても出ていく勇気はなかった。そんな話もした。

又、日本会議の人が何故、「勝ち組」になったのかも話した。いわゆる右派、右翼とは全く違う。真面目だし、実務能力がある。それで信頼されて、あれだけの運動体を作ったのだ。そのことを説明した。

この本の大体の目次を紹介してみよう。

第2章 第2章

加筆された「序」があり、

第一章 新右翼の誕生。早大、生長の家、日学同、全国学協、そして楯の会の活躍が書かれている。

「三島由紀夫と森田必勝の絆(きずな)」「『論争ジャーナル』グループの背反」なども書かれている。又、「激化する内紛」も書かれている。私などはとても書けない内容だ。

「日学同と全国学協の主導権争い」
「民族派の内ゲバ」
「委員長を解任された鈴木邦男」
「怒りの都落ち」

第二章は「直接行動」と銘打っている。三島事件や経団連事件などが書かれている。一水会の誕生も出ている。

第三章は「愛国・反権力闘争」編だ。統一戦線義勇軍が登場し、赤報隊事件もある。そして、加筆された終章「維新革命家の死」だ。

今、読んでもドキドキする。当時の雰囲気に浸りきる。時代なんて簡単に飛び越してしまう。

本当に、いい本を出してもらい感謝、感激だ。

③三島と「楯の会事件」についての本も出る。

第3章 第3章

この本は1月10日に発売だ。売れるだろう。今から楽しみだ。

それと、同じ頃、もう一冊の名著が復刊する。保阪正康さんの『三島由紀夫と楯の会事件』(ちくま文庫)だ。

普通は三島事件と呼ばれるが、保阪さんはあえて「楯の会事件」と呼ぶ。その理由を書いている。

あの事件については、この本が一番、正確だし、客観的だ。

今まで、何十冊という本が、三島とあの事件について書かれてきた。支持する側、反対する側と、初めから分かれていた。でも、「客観的」に、「歴史」として書かれたものは少ない。あるいはないかもしれない。

昭和史には詳しい保阪さんが、その難しい立場に挑戦して、書く。「昭和維新の運動の中で、どう位置付けるべきか」をまず考える。

よく言われているように、2.26事件についてではなく、5.15事件との流れの中で、この事件を取り上げる。

そして、5.15に参加した橘孝三郎を訪ね、話を聞く。その中で阿部勉ら「楯の会」の人たちに会って話を聞く。そんな努力も実って、素晴らしい本になった。

さらに、今回、文庫化する上にあたって、私が「解説」を頼まれて書いた。私なんかでいいのかな。と思ったが、必死で書いた。

井上章一『京都ぎらい』 井上章一『京都ぎらい』

保阪さんは、前に対談をして、昭和維新運動について話している。『昭和維新史との対話』(現代書館)だ。

さらに、阿部勉氏などについて本当に温かく描いてくれ、そのエピソードも書いている。死期迫る阿部氏との最後の酒席でのシーンは何度読んでも涙が出る。

これはドキュメントでありながら、美しい文学になっている。橘孝三郎との付き合いもそうだ。文庫があってよかった。こうして昔の名著が現代に蘇る。

山平さん、保阪さんの本を1月には皆も読める。文句なしに素晴らしい本だ。

井上章一さん。岡村正史さんと。12/12
井上章一さん。岡村正史さんと。12/12
井上、岡村両氏のトーク
井上、岡村両氏のトーク
サンボ仲間の金子さん
サンボ仲間の金子さん
存英雄さんと
存英雄さんと
伏見稲荷で
伏見稲荷で
外国人が訪れる「No.1」です
外国人が訪れる「No.1」です
山の頂上まで続く千本鳥居
山の頂上まで続く千本鳥居
「おもかる石」です
「おもかる石」です
伏見稲荷の正面です
伏見稲荷の正面です
新幹線から
新幹線から

【だいありー】

立川志の輔さんと。12/15(金)
立川志の輔さんと。12/15(金)
「ザ・ニュース・ペーパー」を観ました。12/19
「ザ・ニュース・ペーパー」を観ました。12/19
「草の根論壇」12月号 「草の根論壇」12月号
  1. 12月18日(月)今日は1日、図書館で勉強した。そして調べものをした。
  2. 12月19日(火)午前中、原稿。
    2時、取材。
    7時、銀座博品館。「ザ・ニュース・ペーパー」の公演を見にゆく。面白かった。来年で30周年だそうだ。おめでとうございます。
  3. 12月20日(水)午前中、原稿。
    1時から映画「鎌倉ものがたり」を観る。それから、日比谷図書館に行く。映画「獄友(ごくとも)」の完成試写会を観る。
    素晴らしい映画だった。金聖雄監督の3本目の映画だ。冤罪で捕まり、死刑を宣告され、長く刑務所にいて、その後、再審請求で無罪になって出所した人たちが主役だ。狭山事件の石川一雄さん、布川事件の桜井さん、杉山さんなどが出演している。
    上映後、その主人公たちが壇上に上って話をしていた。
『東京人』(2012年9月号) 『東京人』(2012年9月号)
  1. 12月21日(木)午前11時、経営塾に行く。オータニ別館。今日の講師は、 セブンイレブン 社長の古賀一樹さんの話を聞く。感心した。
      終わって、いろいろと話をした。
     その後、上野の国立西洋美術館に行く。「北斎とジャポニズム」を観る。よかった。
  2. 12月22日(金)午前中、原稿。
    午後から対談。
  3. 12月23日(土)昼、地方の人と会う。
    歌舞伎座に行く。夜の部を見る。長谷川伸の「瞼の母」だった。
  4. 12月24日(日)午前中、原稿。
    午後から雑誌の座談会に出る。
映画「獄友」試写会で。12/20
映画「獄友」試写会で。12/20
「獄友」のワンシーン
「獄友」のワンシーン
そのあと、出演者が舞台に
そのあと、出演者が舞台に
挨拶する金聖雄監督
挨拶する金聖雄監督
坂田明さんと
坂田明さんと
東京駅のそばのイルミネーション
東京駅のそばのイルミネーション
椎野事務所で。12/20
椎野事務所で。12/20
「サイゼリヤ」で忘年会
「サイゼリヤ」で忘年会
「東中野の桜を守れ!」
「東中野の桜を守れ!」
桜の木が並んでます
桜の木が並んでます
鈴木邦男「政治と文学を語る」
鈴木邦男「政治と文学を語る」
私が出てました
私が出てました

【写真説明】

『ドキュメント 新右翼』

①1月10日、発売です。山平重樹さんの「ドキュメント 新右翼』(祥伝社新書)です。文句なしに、いい本です。
〈見果てぬ維新革命。三島由紀夫、野村秋介、鈴木邦男らの闘いと知られざる「歴史」を追う〉

〈第1章〉のトビラ

②これが第一章のトビラです。「新右翼の誕生(1966〜1969年)」。下は、全国学協結成大会で挨拶する私ですね。

第2章

③第二章は「直接行動(1970〜1977年)」。三島と楯の会の4人ですね。

第3章

④第三章「愛国・反権力闘争(1978〜1990年)」。上は一水会の街宣ですね。下は赤報隊事件ですね。

立川志の輔さんと。12/15(金)

⑤12月15日(金)。六本木で立川志の輔さんの落語を聴きました。面白かったし、とても勉強になりました。終わって、挨拶しました。

井上章一さん。岡村正史さんと。12/12

⑥12月17日(日)、井上章一さんと岡村正史さんのトークがあるので聞きに行きました。京都まで。

井上章一『京都ぎらい』

⑦井上章一さんの『京都ぎらい』が売れてます。「25万部突破」と書いてます。今はもっとでしょう。昔、井上さんが『美人論』を書いてベストセラーになった時、対談しました。

井上、岡村両氏のトーク

⑧井上さん、岡村さんの対談です。

サンボ仲間の金子さん

⑨一緒にサンボを練習していた金子さんも来てました。ソ連にサンボを習いに行った時も一緒です。金子さんは柔道4段。そしてアマレスのチャンピオンです。今は学校で教えてます。

存英雄さんと

⑩プロレスラーかと思ったら、違いました。「あれっ、日本語を喋ってるよ」と思いました。存英雄さんです。ライターです。昭和プロレスとB級映画鑑賞が趣味だそうです。

伏見稲荷で

⑪会場は伏見稲荷のそばなので、早目に行って、お参りしました。後ろはずーっと鳥居です。

外国人が訪れる「No.1」です

⑫これはスゴイ!と、外国人がドッと見に来てるんですね。山の頂上まで、鳥居があります。外国人がドッと来るのも分かります。

山の頂上まで続く千本鳥居

⑬千本鳥居です。山の頂上までずーっと鳥居があります。

「おもかる石」です

⑭ここには「おもかる石」がありました。「試し石」で、これを持った時、軽いと感じたら願いはかなう。重いと感じたら、願いは叶わない。私にはとても重く感じられました。

伏見稲荷の正面です

⑮ここが正門ですね。

新幹線から

⑯京都に行く途中ですね。ボーっとして、新幹線の窓の外を見ていたら、雪景色になりました。

「ザ・ニュース・ペーパー」を観ました。12/19

⑰12月19日(火)、〈立川志の輔in六本木〉を見ました。終わって、楽屋を訪ねました。

映画「獄友」試写会で。12/20

⑱12月20日(水)は、映画「獄友(ごくとも)」の特別試写会に招待されました。

「獄友」のワンシーン

⑲「獄友(ごくとも)」のワンシーン。

そのあと、出演者が舞台に

⑳映画が終わって、そのあと、出演者(獄に入った人ばかりです)が挨拶。

挨拶する金聖雄監督

㉑挨拶する金聖雄監督。

坂田明さんと

㉒ミュージシャンの坂田明さんに会いました。初め、分からなくて。でも聞いたら、本人でした。「昔、会った時はとてもスリムだったのに」と思いました。「遠藤誠さんに紹介されたんですね。あれは30年前ですよ」と言う。それからいろいろあって。「だから太ったんです」。

東京駅のそばのイルミネーション

㉓東京駅のイルミネーションを見ました。

椎野事務所で。12/20

㉔それから高田馬場の椎野礼仁事務所に行きました。北朝鮮にいる「よど号グループ」がウェブサイトを立ち上げた。それを礼仁さんたちが手伝っているのです。その打ち合わせや報告を含めて、会議をやった。(注:次の日の産経新聞にこのウェブのことが大きく出てました)。又、最近、北に行ってきたので、その報告会もやった。

「サイゼリヤ」で忘年会

㉕そのあと、近くの「サイゼリヤ」に行って忘年会。

「東中野の桜を守れ!」

㉖東中野の駅前に貼ってました。ここは桜の名所です。でも古い桜の木はどんどん伐採してしまう。「桜を守れ!」という声が上がってる。寅ちゃん、何とかしてよ!

桜の木が並んでます

㉗ここは春には都内第一の大桜の名所になるのです。

「草の根論壇」12月号

㉘『草の根論壇』という本が送られてきました。全く知らない本です。

鈴木邦男「政治と文学を語る」

㉙と思って、ページをめくったら、いきなり〈鈴木邦男氏「政治と文学を語る」〉と出ていた。アレッ?と思いました。そうか。「絶叫歌人」の集まりで私が話し、そのあと、取材を受けたんだった。

『東京人』(2012年9月号)

日比谷図書館で映画「獄友」の試写を観て、そのあと、中にある喫茶店に行きました。カメラマンの福田文昭さんと。そしたら、そこでは珍しい本が売ってました。『東京人』のバックナンバーもあったので、見てます。

私が出てました

㉛『東京人』(2012年9月号)が目に付きました。あれ、見たことあるよな、と思ってたら、「1972年」の特集でした。連合赤軍事件のあった年ですね。他にも沢山、事件がありました。3人の座談会をやってました。アレッ?私も出てるよ。渡れてた。他は泉麻人さん。御厨(みくりや)貴さんです。

【お知らせ】

  1. 「ヤフーニュース」で出ています。私のドキュメンタリー映画の予告が出ています。中村監督が撮ってます。年が明けて、新宿の映画館で上映の予定だそうです。
  2. 岩波書店のウェブ連載「3.11を心に刻んで」に原稿を書いてます。今、アップされてます。
  3. 山平重樹氏の『ドキュメント 新右翼』(祥伝社新書)が1月10日に発売になります。これは素晴らしい本です。三島事件以降の一水会や〈新右翼〉運動の歴史とその後が詳しく書かれています。
  4. 保阪正康さんの『三島由紀夫と楯の会事件』(ちくま文庫)が1月に発売になります。頼まれて、私が「解説」を書きました。あの事件を戦後民族派運動の中で位置付け、その歴史的な動き、思想を、しっかりと書いてます。
  5. 2018年1月6日(土)名古屋読書会に出ます。午後1時30分より4時30分まで。テキストは、私の『天皇陛下の味方です』(バジリコ株式会社)です。場所はいつもの会場。「ウィルあいち」です。そのあと、懇親会です。会費は3000円です。
    申し込みは、牛嶋敦子へ。090(9151)5006
    atsuko.ushijima@gmai.com
  6. 1月13日(土)〈「虚人奇談会」歌舞伎町〉。午後6時。歌舞伎町ブックセンター(歌舞伎町2丁目28−14 tel:03-6380-2259)。康芳夫さんと私のトークです。
  7. 1月17日(水)。一水会フォーラム。ホテルサンルート高田馬場。午後6時から。武貞秀士さん(拓大特任教授)。「揺れ動く北朝鮮情勢」。
  8. 2月17日(土)岩井正和さん主催の講演会を金沢でやります。