「これはすごい本だ!」と思わず唸った。まだ本屋には出てない。1月10日発売だ。
その見本誌が送られてきたのだ。山平重樹氏の『ドキュメント 新右翼=何と闘ってきたのか』(祥伝社新書)だ。祥伝社はすごいことをやる、と思った。
それに、新書や文庫があってよかった。昔の名著がこういう形で蘇って読むことが出来る。
表紙には三島と「楯の会」の写真が大きく出ている。そして、こういうキャッチコピーが。
〈日本会議の中枢メンバーはここにいた!〉
〈見果てぬ維新革命。三島由紀夫、野村秋介、鈴木邦男らの闘いと知られざる「歴史」を追う〉
実は、この本は30年前に二十一世紀書院より刊行されたものだ。平成元(1989)年に、『ドキュメント 新右翼 見果てぬ夢』というタイトルだった。
〈その頃の事象を書き下ろした序と終章を加え、全体を加筆・修正したものです〉
と書かれている。「序」は「日本会議の源流」。そして「終章」は「維新革命家の死」(1991〜2005年)だ。野村秋介、見沢知廉、三浦重周の最期が書かれている。
大量に加筆、修正されている。だから新書としては珍しく厚い。458ページもある。定価は1100円だ。新書を超えた本だ。
内容も素晴らしい。新右翼の歴史について、これほど詳しい本はない。歴史について、闘った人々について、熱い思いをもって書いている。これ以上の本はない。これが全てだ。
では何故、30年も経って、この本が復刊されることになったのか。
山平氏は「序」で書いている。
〈私が約三十年前に上梓した『ドキュメント 新右翼 見果てぬ夢』(二十一世紀書院)が今回復刊となったのは、一も二もなく、平成二十八(2016)年に始まった、日本会議ブームの賜(たまもの)である〉
日本会議については多くの人が書き、新書、単行本が何冊も出、週刊誌、月刊誌でも大きく取り上げられた。
その中でも菅野完の『日本会議の研究』(扶桑社新書)、そして藤生明の『ドキュメント 日本会議』(ちくま新書)は特にすぐれている。
日本会議の源流として、生長の家などの右派学生運動があり、そのことを山平氏の本には書かれている。
〈日本会議の「源流」を記す大著に熱視線〉とのタイトルで、「週刊朝日」(平成29年7月21日号)で藤生は取り上げている。
又、菅野の本では、生学連の知られざる闘いが詳しく書かれている。
〈新右翼のムーブメントがまだ歴史になっていない30年前に、歴史として描ききった。その構想力、筆力に脱帽する。早すぎた名著というべき作品だ〉
と菅野氏は絶讃する。では、「果てなき夢」とは何か。
当時、学生運動をやっていた全ての右派学生の夢だが、ある男のことが特に書かれている。実は、私が言ったというのだ。
ウーン、そうだったのかな。と思った。山平氏はこう書く。
〈拙著では鈴木氏が早大闘争を経て全国学協委員長に就任した直後、執行部の安東巖氏や椛島氏らによって座を追われたものの、まもなくして起きた三島事件に衝撃を受けて一水会を結成、新右翼のリーダーの一人として活躍する姿を活写しているのだが、そもそも「果てなき夢」というタイトルも、当時の鈴木氏の話。〉
〈日常生活にとって、われわれの民族派運動なんて、なければなくてすむもんだ。だけど、オレたちが夢を見ることをやめたら、どうなる?夢を見続けてこそ、オレたちの運動は持続するんだ」に由来する。それから48年、鈴木氏はいつも「維新」という“果てなき夢”を見続けているのだろうか〉。
そうだ。30年ぶりにこの本が復刊するというので、山平氏にインタビューされたんだ。
高田馬場の「みやま」で会って、かなり話をした。そのことも出ている。「僕は負け組。日本会議は勝ち組」という話をした。
又、あの時は悔しかったけど、今となっては、あの時、追われてよかった、と思っている。
追い出されて、いろんな人がいる大海に押し出された。左翼も、アナキストも、危ない宗教もいた。その中で闘い、教えられて、自分の考えを作り、運動をやってきた。その体験は大きいと思う。
その大海に押し出してくれたことに感謝している。元のままだったら、とても出ていく勇気はなかった。そんな話もした。
又、日本会議の人が何故、「勝ち組」になったのかも話した。いわゆる右派、右翼とは全く違う。真面目だし、実務能力がある。それで信頼されて、あれだけの運動体を作ったのだ。そのことを説明した。
この本の大体の目次を紹介してみよう。
加筆された「序」があり、
第一章 新右翼の誕生。早大、生長の家、日学同、全国学協、そして楯の会の活躍が書かれている。
「三島由紀夫と森田必勝の絆(きずな)」「『論争ジャーナル』グループの背反」なども書かれている。又、「激化する内紛」も書かれている。私などはとても書けない内容だ。
「日学同と全国学協の主導権争い」
「民族派の内ゲバ」
「委員長を解任された鈴木邦男」
「怒りの都落ち」
第二章は「直接行動」と銘打っている。三島事件や経団連事件などが書かれている。一水会の誕生も出ている。
第三章は「愛国・反権力闘争」編だ。統一戦線義勇軍が登場し、赤報隊事件もある。そして、加筆された終章「維新革命家の死」だ。
今、読んでもドキドキする。当時の雰囲気に浸りきる。時代なんて簡単に飛び越してしまう。
本当に、いい本を出してもらい感謝、感激だ。
この本は1月10日に発売だ。売れるだろう。今から楽しみだ。
それと、同じ頃、もう一冊の名著が復刊する。保阪正康さんの『三島由紀夫と楯の会事件』(ちくま文庫)だ。
普通は三島事件と呼ばれるが、保阪さんはあえて「楯の会事件」と呼ぶ。その理由を書いている。
あの事件については、この本が一番、正確だし、客観的だ。
今まで、何十冊という本が、三島とあの事件について書かれてきた。支持する側、反対する側と、初めから分かれていた。でも、「客観的」に、「歴史」として書かれたものは少ない。あるいはないかもしれない。
昭和史には詳しい保阪さんが、その難しい立場に挑戦して、書く。「昭和維新の運動の中で、どう位置付けるべきか」をまず考える。
よく言われているように、2.26事件についてではなく、5.15事件との流れの中で、この事件を取り上げる。
そして、5.15に参加した橘孝三郎を訪ね、話を聞く。その中で阿部勉ら「楯の会」の人たちに会って話を聞く。そんな努力も実って、素晴らしい本になった。
さらに、今回、文庫化する上にあたって、私が「解説」を頼まれて書いた。私なんかでいいのかな。と思ったが、必死で書いた。
保阪さんは、前に対談をして、昭和維新運動について話している。『昭和維新史との対話』(現代書館)だ。
さらに、阿部勉氏などについて本当に温かく描いてくれ、そのエピソードも書いている。死期迫る阿部氏との最後の酒席でのシーンは何度読んでも涙が出る。
これはドキュメントでありながら、美しい文学になっている。橘孝三郎との付き合いもそうだ。文庫があってよかった。こうして昔の名著が現代に蘇る。
山平さん、保阪さんの本を1月には皆も読める。文句なしに素晴らしい本だ。
㉒ミュージシャンの坂田明さんに会いました。初め、分からなくて。でも聞いたら、本人でした。「昔、会った時はとてもスリムだったのに」と思いました。「遠藤誠さんに紹介されたんですね。あれは30年前ですよ」と言う。それからいろいろあって。「だから太ったんです」。
㉔それから高田馬場の椎野礼仁事務所に行きました。北朝鮮にいる「よど号グループ」がウェブサイトを立ち上げた。それを礼仁さんたちが手伝っているのです。その打ち合わせや報告を含めて、会議をやった。(注:次の日の産経新聞にこのウェブのことが大きく出てました)。又、最近、北に行ってきたので、その報告会もやった。
㉛『東京人』(2012年9月号)が目に付きました。あれ、見たことあるよな、と思ってたら、「1972年」の特集でした。連合赤軍事件のあった年ですね。他にも沢山、事件がありました。3人の座談会をやってました。アレッ?私も出てるよ。渡れてた。他は泉麻人さん。御厨(みくりや)貴さんです。