2018/04/23 鈴木邦男

映画と本の違い

①なぜ映画だけが…

本や漫画について、出る前に「読んでくれ」と言われることはない。

随分昔はあった。「こんな本を出したいのだが、果たして大丈夫かどうか。読んでくれ」という依頼がいくつかあった。

天皇制の問題などについて果たして大丈夫か、不安なんだろう。

国家権力が弾圧するとか発禁にするというのではない。「許せない!」と思った右翼が襲ってくるのではないか。それが心配なのだ。

私が読んだ限りでは、それほど危ないものはなかった。表現を少しまともにすればいい、と思ったことはあったが。

ともかく今は、事前に「世に出していいかどうか」と心配するような本はない。出したかったら、どんどん出したらいい。下らなかったら、買う人がいない。それだけの話だ。

ところが、映画や絵画などでは、〈事前〉に「観てくれ」「大丈夫だろうか」といった相談がある。

特に政治的なテーマにからんだ映画だ。イルカ漁を描いた映画「ザ・コーヴ」がそうだった。又、従軍慰安婦を描いた映画などだ。

昔は、天皇制をめぐる映画もあったが、今はほとんどない。きちんと批判したものならば、天皇制否定の映画だからといって、右翼がすぐに押しかけるわけではない。

これらが全て、ナショナリズムや愛国心と結びついて論じられる。だからこそ、大きな騒ぎになる。

「ザ・コーヴ」の時は、「イルカ漁は日本の文化だ」「伝統だ!」という主張が大手を振って、これに反対する者は「非国民だ」「反日だ」などと言われた。

私は決して、「伝統」でも「文化」でもないと思っているので反対した。

イルカ漁反対の映画だって、多くの人に観せて、そして討論したらいいと思った。

ところが、ネット右翼たちは、「ザ・コーヴ」を上映した映画館を取り囲み、攻撃した。

「こんな反日的な映画を上映するな!」「許さん!」と言った。

日本人にとって「いい映画」「悪い映画」は自分たちが決める。これは「悪い映画」だ、というわけだ。

私はこれに反対した。もし「悪い映画」ならば、自由に観せた方が、自分たちの正しさが伝わり、「ほら、悪い映画だったろう。こんなのは観せたらダメだよな」と言える。でも、それをやらないで、力づくで、観せないとする。

私はそこで抗議に行ったら、いきなりハンドマイクで殴られた。血がタラタラと流れた。カーッとなって、反撃しようと思ったがやめた。多数に一人だ。

それにこっちが反撃したら、その「反撃」だけを暴力だとして私一人が捕まる危険性があった。実際、そうだろう。警察は…。警察とグルだろう。「政治的」な警察だ。

映画を観て、トークをするというのなら賛成だ。そんなイベントもいくつかあった。最近も、「これは大丈夫ですかね」と心配した配給会社の人から観せられる映画があった。従軍慰安婦の映画とか、捕虜虐殺の映画、戦争責任の映画などだ。

あと、日韓、日中などの民族問題のからんだ映画がある。「いい映画だと思うが、その前に、反日的だ!と言われて潰されては大変だ」と心配するわけだ。

②慰安婦の映画を観た

4月14日(土)には、在日の活動家の人に頼まれて、慰安婦の映画を観た。

長い映画だったし、暗い映画で、胸が塞がれた。しかし、実にリアルで、説得力があった。

終わって、監督の朴さんが、「なぜこの映画を作ったか」を話していた。とてもいい映画で、真摯な映画だと思った。

終わってから、監督に挨拶をして、「今までで一番よかったです」と言った。

私は、いろんな討論会に呼ばれるし、こうした政治的に論争のある映画は、だいたい観ている。だから、その中でも、この映画はリアルだし、正確に描いている。

それは日本にとって、不都合なことであっても〈歴史〉なんだし、きちんと描く必要がある。歴史を真正面から見ることも、貴重な映画になってると思った。

③朴烈の映画を観た!

4月14日(土)は、椎野さんと一緒に、韓国のテロリストの映画を観た。

「朴烈=植民地からのアナキスト」だ。金子文子との愛も含めて描いた大作だ。

日本は批判されてるし、日本の天皇制も批判されている。しかし、当時の韓国の人々からは、このように見えたのだろうし、それは仕方がない。

この映画で驚いたのは、テロリスト朴烈の真摯な生活だったし、金子文子との愛だった。

「大逆事件」として一括されてしまうことが多いが、朴烈その人の人間性や思想などもよく描かれていた。我々にとっては知らないことばかりだったので、とても勉強になった。

これは決して「反日映画だ」として葬り去られる映画ではない。朴烈の描き方も真面目だし、天皇制への批判も、歴史として描いている。恣意的な誹謗中傷はない。これは驚きだった。

「いや、日本の暗い面を描いてるから悪い」と言う人もいるかもしれない。

しかしそれは、おかしい。日本の暗い面、悪い面も描き出し、その中で、どうそれを考えるか。それと付き合うのかが「愛国者」と言えるだろう。

暗い面、悪い面は見ないで、避けて通るのは、「歴史に直面」する勇気がないだけだと思う。

「これはぜひ上映して下さい。反対する人がいたら、堂々と討論をしましょう。私はいつでも出ます」と言った。それだけの価値ある映画だと思った。

それにしても、どうして映画だけなんだろう。〈事前〉にそれだけ問題になるのは。

本などはない。講演などもない。多分、それだけ「映像の力」は大きいのだ。本とは比べ物にならない。

映画の印象は大きいし、後にまで残る。はっきりと像を作って残る。

私は小学校の時に観た映画を今も覚えている。そして今でも影響を与えられている。

だから、映画を作り、世に送り出す人々は、その動き、影響が気がかりなのだ。

「朴烈」は大阪アジアン映画祭ですでに上映され、すごい評判になったという。なかなかこれだけの重厚な映画はない。当然だと思った。

ただ、国際的な映画祭に間に合わせようとして、字幕は全て英語だ。私が観た時も、英語を読んで理解しようとするから、完全には理解出来なかった。これから日本上映向けに字幕スーパーを書き替えるのだろう。大変だ。

でも、東京でも大きな反響を呼ぶだろう。今年中か、来年早々になるのか。上映が楽しみだ。

【だいありー】

  1. 4月16日(月)昼、寝てた。
     夕方5時、木村三浩氏と会う。叙々苑で焼肉をご馳走になる。
  2. 4月17日(火)午後1時30分。代々木で椎野礼仁さんと待ち合わせ。小林三四郎さんの事務所に行く。
     「見てほしい映画があるので」といって、映画を観せられる。「朴烈=植民地からのアナキスト」だ。「大逆事件」を起こした朴烈と金子文子の物語だ。
     確かに危ない時代の危ないテーマだが、映画は、リアルに、正確によく描いている。「反日映画だ」と言われることはない。いい映画だと思った。
     あの時代のこと、あの事件のこともよく描いている。歴史の勉強としても貴重だと思った。
  3. 4月18日(水)午後1時30分。「みやま」で新聞社の取材。
     その後、図書館。
  4. 4月19日(木)今日から河合塾コスモの授業が始まる。
     3時、「現代文要約」。
     5時、「読書ゼミ」。今日はこの本を読んだ。小林恭子の『英国公文書の世界史』(中公新書ラクレ)。〈一次資料の宝石箱〉と書かれている。驚きの世界だった。とても勉強になった。
  5. 4月20日(金)また、病院に検査に行く。朝9時20分に受付に並ぶ。MRI、CI、レントゲン、血液検査などを受ける。
  6. 4月21日(土)午前11時から銀座TCC試写室。明治時代、沖縄からニューカレドニアに鉱山労働者として出稼ぎ移民した人々の歴史を描いた映画を観た。「まぶいぐみ=引き裂かれた移民史」だ。とてもいい映画だった。原作者の三木健さんにも会った。5月19日からポレポレ東中野で公開される。
  7. 4月22日(日)図書館。帰って寝てた。
一水会フォーラム。4/9(月) 一水会フォーラム。4/9(月)
講師の佐々木良昭さんと 講師の佐々木良昭さんと
アーチャリーと対談した。4/13(金) アーチャリーと対談した。4/13(金)
テキストの説明を聞いている テキストの説明を聞いている
対談のテキスト 対談のテキスト
左は司会の礼仁さん 左は司会の礼仁さん
対談が終わって 対談が終わって
映画の撮影はまだ続いてます 映画の撮影はまだ続いてます
岩井さん(左)も合流して、居酒屋へ 岩井さん(左)も合流して、居酒屋へ
高田馬場の駅前で 高田馬場の駅前で
おかげで元気になりました おかげで元気になりました
顔色も良くなったと言われてます 顔色も良くなったと言われてます
安藤さんの写真展とトークです。4/14(土) 安藤さんの写真展とトークです。4/14(土)
安藤さんと斎藤さんのトーク 安藤さんと斎藤さんのトーク
堀潤さんが司会です 堀潤さんが司会です
あっ!映画「選挙」に出たんだ! あっ!映画「選挙」に出たんだ!
よく集まりましたね。立ってる人も多いです。 よく集まりましたね。立ってる人も多いです。
帰り、新宿で座ったら、椅子の横に箱が… 帰り、新宿で座ったら、椅子の横に箱が…
こう書かれてました こう書かれてました

【写真説明】

一水会フォーラム。4/9(月)

①4月9日(月)の一水会フォーラムです。会場は満員です。右が講師の佐々木良昭さん。「最新の中東情勢を考える」です。活発な質問も出ました。

講師の佐々木良昭さんと

②講師の佐々木良昭さんと。

アーチャリーと対談した。4/13(金)

③4月13日(金)。午後1時から、アーチャリーと対談しました。「自由国民社」の雑誌です。

テキストの説明を聞いている

④「まずこれを読んで下さい。それから対談しましょう」と言われ、漫画本を15冊手渡されました。その説明をするアーチャリーです。死刑をテーマにした、小手川ゆあの『死刑囚042』(集英社・全5巻)。それに日韓の民族問題を扱った山本おさむの『天上の弦』(小学館・全10巻)です。とてもすごい漫画でした。集中して読みました。そして「死刑」と「民族」をめぐってアーチャリーとじっくりと話し合いました。こんな対談も初めてですが、いいですね。

対談のテキスト

⑤これがテキストの漫画です。他に私の本が何冊かありますね。

左は司会の礼仁さん

⑥左は司会の椎野礼仁さんです。

対談が終わって

⑦対談が終わって。スタッフ全員と。自由国民社の清水さんもいますね。

映画の撮影はまだ続いてます

⑧終わって、「映画」の撮影です。まだ続いているんですね。もうすぐ終わって上映館を決めるそうです。

岩井さん(左)も合流して、居酒屋へ

⑨石川県にいる岩井さんが、この日、仕事で上京し、それが終わってから合流してくれました。金沢では本当にお世話になりました。ありがとうございました。

高田馬場の駅前で

⑩「高田馬場でぜひ撮りましょう」とカメラマンの平早さんに言われて。「馬場は自分の庭のようなものでしょう」と。早稲田、一水会…と、全部、馬場ですね。

おかげで元気になりました

⑪そのあと焼肉を食べました。「あっ、ペロリと食っちゃった。じゃ、治ったんじゃないですか」と言われました。

顔色も良くなったと言われてます

⑫そうですね。「顔色もよくなった」と言われてますし、治ったんですね。

安藤さんの写真展とトークです。4/14(土)

⑬世界的なカメラマンの安藤菜津紀さんのイラク、シリアでの写真展が新宿で行われ、見に行きました。そのあと、NPOの斎藤さんとトークをしました。とてもよかったです。

安藤さんと斎藤さんのトーク

⑭安藤さんと斎藤さん。二人ともイラク、シリアによく行ってるんですね。私も昔、イラクに行ったので懐かしかったです。

堀潤さんが司会です

⑮司会は堀潤さんでした。元気がいいです。

あっ!映画「選挙」に出たんだ!

⑯「お久しぶりです」とお客さんに挨拶されました。あれっ、映画で見た人だ。映画「選挙」に出てた山内和彦さんじゃないですか(左)。あの時は本当に選挙に出て、映画に出てたんですよね。

よく集まりましたね。立ってる人も多いです。

⑰トークは満員でした。椅子に座り切れなくて、多くの人が立って聞いてました。よく集まったものです。

帰り、新宿で座ったら、椅子の横に箱が…

⑱帰り、新宿駅の広場で、疲れて椅子に座ったんです。そしたら、椅子の横が変なんです。

こう書かれてました

⑲こう書かれてました。ここに食糧品とか医療品が入っているのでしょう。でも、「災害時」でないと開かないようになってます。

【お知らせ】

  1. 4月28日(土)『「主権回復記念日」を 考えるシンポジウム。午後6時。文京シビックセンター会議室。
    [第1部・基調報告]佐波優子、酒井信彦、木村三浩、小林興起、山口祐二郎
    [第2部・シンポジウム]佐波優子、木村三浩、西村修平他。
  2. 5月9日(水)一水会フォーラムホテルサンルート高田馬場3階大会議室。講師:孫崎享さん(元外務省国際情報局長)。演題:「日米安保の意義を問う」。
  3. 5月12日(土)午前9時から。青山のクレヨンハウスB1レストランで。「原発とエネルギーを考える」に出て話します。司会は落合恵子さんです。初めてですが、楽しみです。
  4. 6月5日(火)午後6時。一水会フォーラムホテルサンルート高田馬場。講師は樋田毅さん(ジャーナリスト、元朝日新聞記者)。今年2月、『記者襲撃・赤報隊事件30年の真実』を出版。演題「新聞社襲撃 謎の赤報隊に迫る(仮題)」。
  5. 6月12日(火)「地域・民衆ジャーナリズム賞=「むのたけじ」と共に=」の創設の集い。プレスセンター。武野大策さん他。又、鈴木も「呼びかけ人」の1人として出席します。
  6. 7月11日(水)一水会フォーラム。午後6時半。ホテルサンルート高田馬場場。講師:前川喜平さん(前文科省事務次官)。演題:「昨今の騒動の真相に迫る」。 5、6、7月の一水会フォーラムは同じ場所です。申し込みは電話・FAXで。電話:03(3364)2015。FAX:03(3365)7130。E-Mail:info@issuikai.jp