2018/06/25 鈴木邦男

三島の映画を観て、トークをした

6/16(土)。椎根和さんと。鈴木(左)。瀧沢さん(右) 6/16(土)。椎根和さんと。鈴木(左)。瀧沢さん(右)

三島由紀夫原作の『不道徳教育講座』が映画になってるという。

全く知らなかった。三島研究家の瀧沢さんが見つけてくれたのだ。日活で映画にされたという。そして、日活と話をして、ファルムを借りてもらった。

凄い。「じゃ、皆と一緒に観て、その後、椎根和さんとトークをしましょう」と言う。いいですね。ぜひお願いします、と承知した。

そして、6月16日(土)にこの企画は実現したのだ。午後5時から、神保町の坂本さんのところで、まず映画の上映。それが終わって、椎根さんとトーク。

それが又、凄く内容の深いものだった。一方的に三島についての講義を聴かされた感じだ。私は凄く勉強になった。

又、瀧沢さんが司会をやってくれたが、資料も随分とそろえている。話もうまい。私よりも瀧沢さんがトークをした方がよかったのに、と思った。

その資料を見てたら「三島由紀夫映画化作品一覧」という紙があった。知らなかったが、30本以上ある。当時の作家の中では1人だけ群を抜いている。それも「のべ」だという。

何のことか分からないので聞いたら、同じ小説が何度も映画化されている。

たとえば「金閣寺」は他の会社から「炎上」と題を変えて映画化された。又、「黒蜥蜴」も何度もいろんな会社から映画化された。有名なところでは「潮騒」だ。吉永小百合、山口百恵、堀ちえみ…と、いろんな人が出て、映画化された。だから「のべ」なのだ。

皆、熱心に聞いてました 皆、熱心に聞いてました

私が印象に残っているのは、小学校3年の時に観た「夏子の冒険」だ。それと、50代で観た「にっぽん製」だ。

この2本ともなかなか上映されないし、レンタルビデオ店にもない。三島没後20年か30年の時に大森の映画館でやったので観た。「夏子の冒険」は秋田市で観たのだ。

勿論、三島の名も知らない。親類のおじさんに連れて行かれたのだ。そのおじさんだって三島のことは知らなかったと思う。ただの「冒険映画」だと思って、子供の私を連れて行ってくれたのだろう。

さて、『不道徳教育講座』だ。これが映画になってるとは全く思わなかった。

だって、小説ではない。三島のエッセーだ。それも小さな断片的な話を集めて本にしている。とても映画になどなりにくい。そう思っていた。

ところがなっていた。どんな映画になったんだろう。興味もあった。

日活で1959年に作られている。「60年安保」の前の年だ。監督は西村克己。主演は大坂志郎。

原作の『不道徳教育講座』は今、角川文庫から出ている。これには単行本もあり、「続編」もあるようだが、文庫では一冊にまとまっている。読みやすい。

人間は、もっともっと不道徳なことをやるべきだ。という三島のブラックな提言だ。

例えば、こんな風に。

椎根さんと瀧沢さん 椎根さんと瀧沢さん
「知らない男とでも酒場に行くべし」
「大いにウソをつくべし」
「人に迷惑をかけて死ぬべし」
「童貞は一刻も早く捨てよ」
「女から金を搾取すべし」
「友人を裏切るべし」
「弱い者をいじめるべし」
「沢山の悪徳を持て」

…といったことが次々と書かれている。一つの項目について、2ページか3ページだ。それらを大量に集めて、この本を作っている。

果たして、こんなバラバラなことばかりの集合作品が、一つの映画になるのだろうか。

あまり期待しないで私は観ました。ところが、面白かった。私の予測は全く外れた。

いろんな「不道徳」を並べながら、それらが一つのストーリーになっている。これは映画を作った脚本家がうまいのだ。これには舌を巻いた。椎根さんも初めて観たというし、「これは作りがうまいですね」と感心していた。

映画が終わって10分休憩。そのあと、椎根さんとのトークが始まった。

椎根さんは元「平凡パンチ」の編集長。三島番も長いことやっていた。だから三島のことは何でも知っている。

それに、もの凄い勉強家だし、知的だ。三島だけでなく、他の作家、三島が影響を受けた作家、三島が影響を与えた作家などについても、詳しく知っている。

川本さん(映画評論家)も来ました 川本さん(映画評論家)も来ました

トークの相手に選ばれたのは光栄だが、私ではとても付いていけない。力不足だ。今の文芸評論家だって、ちょっといない。やはり、三島しかいないですよ。そう思っている。

この映画が終わって、「三島と映画」の話をするものと思ってたら、何と夏目漱石と三島の話をする。全く予測のつかない人だ。

漱石の『それから』を読んでたら、三島の『奔馬』との共通性を発見したという。でも2人は全く知らないし、時代が違う。漱石は三島が生まれる前の人だ。名前も知らないし、今後そんな作家が世に出ることも予測はしてない。

でも『それから』を読むと、三島の出現を予言してるという。これには驚いた。

名前やら、使っている特殊な形容詞のことも具体的に取り上げて話をする。凄い。全く気がつかなかった。これは三島だって知らないことだろう。椎根さんは凄いことを知ってる、と又もや感心した。

さらに、マルグリット・ユルスナールの話をする。この人こそ、最も三島を理解した人だという。

この人の本が何冊か日本でも出ている。「これを読みなさい」と1冊の本が前に渡された。『三島あるいは空虚のヴィジョン』(河出書房新社)という本だ。読んだが、難しい。よく分からない。三島を評価してるのは分かるが、あとは理解出来ない。だから当日、ご本人に解説してもらった。この本の訳は澁澤龍彦だ。

この本のカバーには、こう書かれている。

〈私たちのあいだには共通の深淵があるのです。----ヨーロッパ第一級の文学者ユルスナールが三島由紀夫の根源的空虚のありようと、死を決意するに到った謎に正面から迫った注目すべきエッセー。異色の文学論ついに刊行!〉

ともかく、凄い人のようだ。そして、凄い本のようだ。

私には、ちょっと難しかったが。私はまだ本を読んできたからいいが、この日、集まった人たちは、ユルスナールも知らないし、本も読んでない。そして、いきなり椎根さんからその話をされたのだ。大変だったと思う。

でも、誰も帰る人はいない。少々難しいが、これは三島の謎に迫る話だと思い、熱心に聞いている。凄い迫力だった。ちょっとない勉強会だった。こんな勉強会ってあるんだ、と思った。

瀧沢さんの力ですよね。私なんて、とてもやれなかった。自分の理解したことだけを、さらに噛み砕いて話そうとする。

私ならば。だから、こういう高度な勉強会のやり方が分からない。さすが椎根さんだと。さすが瀧沢さんだと恐れ入った。

もうすぐ、三島没後50年だ。その時には、三島映画が又、ドッと出るだろう。私も全て観るつもりで観てみたい。

映画の話だけでも、かなりあるが、それは又、三島の勉強会の時に…。

「共謀罪はいらない」集会。5/15(金)
「共謀罪はいらない」集会。5/15(金)
星陵会館は満員でした
星陵会館は満員でした
講師の斎藤貴男さんと
講師の斎藤貴男さんと
大下敦史さん追悼の集い。6/17(日)
大下敦史さん追悼の集い。6/17(日)
大下さんのビデオが
大下さんのビデオが
山本義隆さんの記念講演
山本義隆さんの記念講演
白井聡さんの記念講演
白井聡さんの記念講演
そのあと懇親会。居酒屋「祭」で
そのあと懇親会。居酒屋「祭」で
大勢が集まりました
大勢が集まりました
三上治さん
三上治さん
「祭」のマスターと
「祭」のマスターと

【だいありー】

亀井静香さんと。木村三浩氏(左)鈴木邦男(右)
亀井静香さんと。木村三浩氏(左)鈴木邦男(右)
初沢亜利写真展で。6/18(月) 初沢亜利写真展で。6/18(月)
  1. 6月18日(月)午前中、原稿。
     午後3時、四谷3丁目で木村氏と会って、亀井静香さんの事務所に行く。6時まで会談。
     そのあと六本木に行く。カメラマンの初沢亜利さんの写真展を見る。北朝鮮の写真などがあった。素晴らしかった。
  2. 6月19日(火)午前中、原稿。
     午後2時、取材。
     6時、雑誌の対談。
  3. 6月20日(水)午後1時、試写会。
     6時、憲政記念館で辻元清美さんの講演会だったが、先の大阪地震のため延期になる。彼女の地元・高槻は震源地で大変だ。そちらに行ってるとのこと。
北朝鮮兵士の写真の前で 北朝鮮兵士の写真の前で
  1. 6月21日(木)河合塾コスモ。
     午後3時、「現代文要約」。
     5時、「読書ゼミ」。今週読んだ本は、山本有三の『心に太陽を持て』(新潮文庫)。実はこの本は、昭和10年に初版が出た。私の小学校3年の「国語」の教科書に載っていたのだ。名作だ。ただ、これからの日本の「保守化」に使われるとしたら、それは困ると思う。
     そのあと、高円寺グレインに行く。ネットTVの「ユリアの館」に出る。出演は、八鍬千夏氏(アニマルコミュニケーター)。Erica(ジプシー、魔女)。増山れな(映画監督)。そして私。司会は深月ユリアさん。なかなか深い話が聞けました。
  2. 6月22日(金)午後から新聞の取材。
     6時から新宿で唐組の芝居を観る。テント だ。「ユニコン物語」。大鶴義丹、大久保鷹が出る。とてもよかった。
  3. 6月23日(土)午後5時、雑誌の座談会。
  4. 6月24日(日)午後1時、浅草。「アリの街のマリア」の芝居を観る。かなり現代風に変えている。
「よど号」の人たちの写真も
「よど号」の人たちの写真も

【写真説明】

「共謀罪はいらない」集会。5/15(金)

①6月15日(金)星陵会館で、「強行採決から1年。やはり共謀罪はいらない」。海渡雄一さん、斎藤貴男さん、そして政党、組合の代表の人々が次々と語りました。

星陵会館は満員でした

②会場は満員でした。

講師の斎藤貴男さんと

③講師の1人、斎藤貴男さんと。

6/16(土)。椎根和さんと。鈴木(左)。瀧沢さん(右)

④6月16日(土)三島由紀夫原作の映画「不道徳教育講座」を観て、そのあと、椎根和さん(中央)と私が対談しました。司会は瀧沢亜希子さんです。とてもいい話でした。

皆、熱心に聞いてました

⑤少し難しい話になりましたが、皆、熱心に聞いてくれました。

椎根さんと瀧沢さん

⑥元「平凡パンチ」の編集長で三島番だった椎根和さんは三島のことは何でも知っています。瀧沢さんも三島研究家として優秀です。

川本さん(映画評論家)も来ました

⑦映画評論家の川本純基さんも来てくれました。いつも、アドバイスしてくれます。

大下敦史さん追悼の集い。6/17(日)

⑧6月17日(日)学士会館。元「情況」編集長・大下敦史さん追悼の集いです。多くの人が集まりました。

大下さんのビデオが

⑨大下さんのビデオが流れました。

山本義隆さんの記念講演

⑩元東大全共闘議長・山本義隆氏が記念講演をしました。とても貴重な話でした。

白井聡さんの記念講演

⑪白井聡さんも記念講演をしました。

そのあと懇親会。居酒屋「祭」で

⑫そのあと、懇親会。居酒屋「祭」に移って。

大勢が集まりました

⑬大勢が集まりました。

三上治さん

⑭三上治さんもいます。

「祭」のマスターと

⑮「祭」のマスターと。実はこの人、東京新聞の望月衣塑子さんのおじさんなんです。

亀井静香さんと。木村三浩氏(左)鈴木邦男(右)

⑯6月18日(月)木村氏と私と、亀井静香さんの事務所に行きました。

初沢亜利写真展で。6/18(月)

⑰そのあと、六本木に移って、写真家・初沢亜利さんの写真展を見ました。(初沢さんの写真の前で木村氏と)

北朝鮮兵士の写真の前で

⑱北朝鮮の兵士も撮っています。

「よど号」の人たちの写真も

⑲「よど号」の人たちの写真もありました。

【お知らせ】

  1. 6月30日(土)。快楽亭ブラック、鈴木邦男と時事放談。午後6時〜。新宿二丁目「道楽亭」。木戸銭2500円。
  2. 7月6日(金)一水会岡山集会。木村代表と鈴木が行きます。
  3. 7月11日(水)一水会フォーラム。午後6時半。ホテルサンルート高田馬場場。講師:前川喜平さん(前文科省事務次官)。演題:「昨今の騒動の真相に迫る」。
    6、7、8、9月の一水会フォーラムは同じ場所です。申し込みは電話・FAXで。電話:03(3364)2015。FAX:03(3365)7130。E-Mail:info@issuikai.jp
  4. 7月15日(日)名古屋。「愛知サマーセミナー」に出ます。
  5. 7月21日(土)大阪弁護士会で、カレー事件の集会があります。森達也さんと私が講演します。
  6. 7月28日(土)14時〜16時30分。マガ9学校。山本譲司さん(作家)、江川紹子さん、鈴木邦男でトークがあります。「刑務所から考える、ソーシャル・インクルージョン」。専修大学神田キャンパス(5号館7階571号室)で。そのあと、19時から、劇団再生で高木尋士さんとプレトーク。「天命を知るということ」。六本木ストライプハウスビルで。そして芝居「猶予された者たち」上演です。
  7. 8月17日(金)一水会フォーラム。北川正人氏(千代田化工建設株式会社元社長)
    「世界地図の真のとらえ方(仮題)」。
  8. 9月11日(火)一水会フォーラム。講師:田母神俊雄氏。