2018/07/30 鈴木邦男

『「右翼」の戦後史』には驚いた!

1日に1回は本屋に行く。知ってる本屋もあるし、知らない町で、初めて行く本屋もある。ついつい、長居をしてしまうこともある。金のある時は、何回も何回も衝動買いすることもある。

この前、新宿で真っ黒の本を見つけた。何だこれは、と思って手に取った。〈「右翼」の戦後史〉と書かれていた。講談社現代新書だ。安田浩一さんの本だ。

右翼の歴史という本なのかな、と思って、目次を見、そして本文を読み始めた。

凄い。すぐに引き込まれた。やめられない。いい本だ。思い切って買った。

右翼の歴史について書いた本は何十冊とある。何百冊かもしれない。私だって書いてような気がする。

しかし、これは違う。私の知らなかったことも随分と書かれている。

たとえば〈第五章 宗教右派の台頭と日本会議の躍進〉だ。あの岡山県奈義町のことが詳しく書かれていた。私も随分と驚き、いろんなとこで書いてきた。しかし、現地に行ったこともない。取材もしてない。それで書いてきたのだ。

安田さんは違う。ちゃんと現地に行き、キチンと取材している。〈大日本帝国憲法の復原を求めた町〉として奈義町のことを書いている。

〈岡山県奈義町ー鳥取県との境に接する人口約6000人ほどの小さな町である。町の大半は山林と原野で占められ、鉄道駅も高速道路のインターチェンジもない過疎地だ。
 この町が、かつて一度だけ、日本中の注目を集めたことがあった。1969(昭和44)年、同町議会で「大日本帝国憲法復原決議」が可決された。日本国憲法を破棄し、明治時代に制定された大日本帝国憲法を「復原」させよ、という内容だった。「改憲」ではなく、明治憲法そのものの「復原」である。敗戦から20年以上も経過してから、なぜ大日本帝国憲法復原を訴えたのだろうか〉

これは安田さんが書いている。うまい。誰だって興味を持つ。

私だって、この話が一番謎だった。ずっと、不思議だった。

今の憲法がおかしいのなら、「アメリカによって押し付けられた憲法を改正しよう」と言った方が理屈が通る。でも、その前の明治憲法に戻したとこから、始めるという。ちょっとおかしいのでは、と思った人が多い。

安田さんは2017年、町議会を訪ねた。凄い。行動力がある。

そして、「当時の決議提案理由書」が残っていたという。その中に、これは日本国憲法を憲法として認めることのできない理由が示されているという。

アメリカによって押しつけられた「押しつ付け憲法」が日本にさまざまな「弊害」をもたらしてると説く。

〈続けて同書は、「思想の自由」「表現・言論の自由」は、「罵詈雑言の自由にもつながる」とし、現行婚姻制度も伝統的な家族制度を「抹殺する」、ストライキを認めた「勤労者の団結権」も「従来は非合法」であったはずだと嘆いてみせるのだった。最終的に、この理由書は現行憲法を「万悪の源」と位置づけ、「菊花薫る道義国家日本の再建」のためには「明治欽定憲法復原以外に無し」と結んだ〉

これだけ見ると、過激なネトウヨの提案のようでもある。

しかし、違う。これを町議会に出したのだ。

〈当時、町議会(定数17議席)では、この提案を10対7で可決した。接戦だった。議会事務局で議事録を確認すると、保守系議員の一部からも同提案に疑問が相次いでいたことがわかる。「改憲決議ならば賛成するが、旧憲法復原には意味がない」。「本来、国会で議論されるべきものではないのか」。もっともな意見ではあるが、2時間の質疑を経て、議案は可決された。こうして山間の小さな町が決議した「大日本帝国憲法復原」は、たちまち世人を騒がせることとなったのである〉

ほう、10対7だったのか。

そして、この議決の中心人物を取り上げる。

〈取材を進めていくうちに、この議決の立役者ともいうべきひとりの人物が浮上した。
 延原芳太郎ーー終戦直後から奈義町の町会議員として活動し、議決当時は町の農地委員会会長も務めていた人物である。当時の関係者が語るには、「地元のポス的存在でした。町会議員を小僧扱いするような人で、渋々従った議員もいたと思います〉

そうか。よく分からなくて、町議会のボスに従った議員もいたんだろうな。これでかなり分かった。

〈延原には複数の別の顔もあった。岡山市に本部を持つ右翼団体の幹部、そして熱心な「生長の家」信者としての顔でもある。ちなみに大日本帝国憲法の復元は、「生長の家」の創始者である谷口雅春の持論でもあった。先の関係者が続ける。
 「延原さんは谷口教祖に心酔していました。生長の家岡山強化部にも所属し、先頭に立って復原に向けた議会工作に動いていました」〉

議員に睨みを利かせる一方で、地元で学習会を繰り返し、町の有力者たちにも「復原」を訴えて歩いた。その延原は1990年に92才で亡くなっている。

そうだったのか。私も昔、生長の家で話を聞いたような気がする。

確かではないが、安田さんはさらに行動的だ。取材を続ける。延原さんの家を探し、長男に会って話を聞くのだ。これも凄い。

子供の頃から、息子はよく父親に連れられ、「生長の家」の集会に行ったという。そして今、その息子も地元の「行動右翼」のリーダーになってるという。

では、その後、この「復原決議」はどうなったのか。

〈69年に奈義町で決議された「大日本帝国憲法復原決議」は、その後、各地に飛び火することはなかった。世間的には「田舎町の椿事」として認識されるだけだった。
 だが、決議を実質的に後押しした生長の家は、翌70年、県庁所在地の岡山市で「正統憲法復原改正全国大会」を開催。教祖の谷口も同地を訪ね、参加者を前に講演を行なった。その記録は後に「諸悪の因 現憲法」(日本教文社)として出版されている〉

そうか。じゃ、又、その本を読んでみよう。このことは単なる「椿事」ではないと安田さんは言う。

〈この時期から日本の右派勢力は、憲法改正を最大の政治課題に掲げるようになる。
 いま「椿事」を笑うことができないのは、大日本帝国憲法の復原、すなわち現憲法の破棄を大真面目に訴える者たち(なかには政治家もいる)がそれなりの影響力を持った立場にあるからだ。少なくとも憲法はもはや「改正」が目前にある〉

そうなのだ。ここから改憲運動か始まる。そして生長の家やその学生たちによる運動を詳しく紹介している。さらに「日本会議」についても書く。

そして、在特会などのネトウヨについても書く。

さらに面白いのは、「第四章 新右翼の誕生」という章がある。

ここは、他の本とは大きく違う章だ。普通、新右翼というと「一水会、鈴木」が中心に出てくるが、ここでは、「楯の会」に入れなかった牛嶋という男が出てくる。

今、大学の先生をしている。そして、彼こそが「新右翼」のルーツだという。「一水会、鈴木」ではないという。ここも面白いし、異色の右翼史だ。全体としてみても、教えられることが多い。

もしかしたら、今まで書かれた右翼の本で、最も優れたものかもしれない。私はそう思いましたね。

とても衝撃を受けたし、面白かった。いろんなことを教わった。皆さんもぜひ、読んでみたらいいでしょう。新書で840円と安い。この価格以上の価値はある。

つまらなかったと言う人はいないだろうが、そう思ったら、私に言えばいい。私がお金を返します。そのくらいの自信を持ってお薦めしたい本ですね

。この本の他の○についても紹介したいが、それは又、いつかやってみよう。

他にも推薦する本を書こうと思ったが、次の機会に。では又、来週。

【だいありー】

  1. 7月23日(月)前日は大阪でカレー事件の集会があり、懇親会に出たら遅くなったので、寅次郎君と一緒に新大阪のホテルに泊まる。
     その翌日、昼の大阪発の新幹線で帰る。3時過ぎに東京駅に着く。
     そのあと、上野に行き、「エッシャー展」を観る。よかった。
  2. 7月24日(火)午前中、原稿。
     午後3時、学校。
     夜、雑誌の対談。
  3. 7月25日(水)午前中、原稿。
     午後5時、辻元清美さんの講演会に行く。先月、予定していたが、地元の高槻が地震で中止になった。このやり方はいい。
  4. 7月26日(木)学校は休み。でも図書館で勉強する。
     夜、映画「ジュラシック・ワールド」を観る。面白かった。
     「ジュラシック」と、「コナン」、「ミッション・インポシブル」のシリーズは全部観ている。世界の映画の最先端を行く映画だと思っているからだ。
  5. 7月27日(金)家で仕事をする。
  6. 7月28日(土)午後2時から4時半。「マガ9学校」。専修大学神田キャンパスで。5号館7階591教室。
     第1部。山本譲司さんと江川紹子さんの対談。
     第2部。山本譲司さん、江川紹子さん、そして鈴木邦男のトークセッション。山本譲司さんが最近出した本を中心にして皆で話をした。
     『刑務所しか居場所がない人たち=学校では教えてくれない、障害と犯罪の話』(大月書店)だ。とてもいい本だった。一気に読んでしまった。
     山本さんは国会議員だったが、2001年に秘書給与流用事件で逮捕され、服役。獄中体験を書いた『獄窓記』(ポプラ社)が新潮ドキュメント賞を受賞。障害者福祉施設で働くかたわら、『続 獄窓記』(ポプラ社)『累犯障害者』(新潮社)などを著し、罪に問われた障害者の問題を社会に提起。現在は高齢受刑者や障害のある受刑者の社会復帰支援に取り組む。
     刑務所を出たばかりで、初めて京都で講演をした時、私は京都まで行き山本さんの講演を聴いた。
     そして、終わって、遅くまで話し合った。それ以来、山本さんの本は全て読んでいる。凄い人だと思う。  
      この「マガ9」のあと、六本木に行って高木さん(劇団「再生」)とトークをした。
  7. 7月29日(日)午前中、原稿。
     午後から図書館で勉強。

【写真説明】

7月20日(金)。「のりこえねっと」の記者会見が開かれ、私も出ました。TOKYO-MX「ニュース女子」が辛淑玉共同代表に「偽ニュース」を流し、誹謗中傷したことがあった。この日はMXテレビが謝罪し、それを受けての記者会見だ。

のりこえねっと側は、辛淑玉、佐高信、宇都宮健児が、出席した。テレビ局側から謝罪を書いた文書も配られた。又、辛さんから詳しい説明があった。

午後2時から、衆議院第2議員会館の第7会議室。多くの取材陣の前で、のりこえねっとの記者会見。私は途中で退席。

このあと、隣の参議院議員会館大講堂で開かれていた〈ストップ・ザ・アベ3選〉集会に出た。これも4時から始まっていたが、正式には、「主権者は私たち・市民が政治を変える! 市民大集会」だ。

「のりこえねっと」記者会見。7/20(金)

①共同代表が並んでいる。私も話しました。

「のりこえねっと」記者会見。7/20(金)
「のりこえねっと」記者会見。7/20(金)
辛淑玉さん

②辛淑玉さんが詳しく報告してくれました。

辛淑玉さん
辛淑玉さん
辛さんと佐高さん

③佐高さんが辛さんと会って。

辛さんと佐高さん
辛さんと佐高さん
抱き合ってますね!

④そして、抱き合ってました。アラアラー。

抱き合ってますね!
抱き合ってますね!
多くの記者が集まりました

⑤多くの取材陣が集まりました。

多くの記者が集まりました
多くの記者が集まりました
金竜介弁護士と

⑥金竜介弁護士と。

金竜介弁護士と
金竜介弁護士と
「ストップ・ザ・アベ」の集会で。7/20(金)

⑦参議院会館で行われた〈ストップ・ザ・アベ3選〉集会に出ました。多くの人が集まりました。

「ストップ・ザ・アベ」の集会で。7/20(金)
「ストップ・ザ・アベ」の集会で。7/20(金)
孫崎享さん

⑧孫崎享さんの講演です。

孫崎享さん
孫崎享さん
初鹿明博さん

⑨初鹿明博さんです。

初鹿明博さん
初鹿明博さん
私も話しました

⑩私も話しました。

私も話しました
私も話しました
会場の人と

⑪会場にいた人と。

会場の人と
会場の人と
懇親会で

⑫懇親会で。大勢が集まりました。

懇親会で
懇親会で
京大の先生と

⑬京大の先生と。

京大の先生と
京大の先生と
当日の司会者と

⑭司会をしてくれた人です。

当日の司会者と
当日の司会者と
「カレー事件」の集会。森達也さん。7/21(土)

⑮翌、7月21日(土)は大阪で「カレー事件」の集会でした。講演は森達也さん。

「カレー事件」の集会。森達也さん。7/21(土)
「カレー事件」の集会。森達也さん。7/21(土)
森さんと私のトーク。左は司会の寅次郎君

⑯このあと、森さんと私のトークがありました。司会(左)をするのは寅次郎君です。

森さんと私のトーク。左は司会の寅次郎君
森さんと私のトーク。左は司会の寅次郎君
林健治さん

⑰林健治さんも車椅子で駆けつけてくれました。

林健治さん
林健治さん
安田弁護士と林さん

⑱安田弁護士と林さん。

安田弁護士と林さん
安田弁護士と林さん
会場は満員でした

⑲会場は満員でした。

会場は満員でした
会場は満員でした
森達也さん、風見愛さん、鈴木

⑳森達也さん、風見愛さんと。

森達也さん、風見愛さん、鈴木
森達也さん、風見愛さん、鈴木
河合先生と

㉑河合先生と。

河合先生と
河合先生と
「エッシャー展」を観ました。7/22(日)

㉒7月22日(日)。上野で「エッシャー展」を観ました。

「エッシャー展」を観ました。7/22(日)
「エッシャー展」を観ました。7/22(日)
1時間以上並びました

㉓もの凄く混んでました。暑い中、1時間以上並びました。

1時間以上並びました
1時間以上並びました
「菊とギロチン」

㉔映画「菊とギロチン」は絶讃公開中です。

「菊とギロチン」
「菊とギロチン」
パンフレットに書きました

㉕「パンフレット」に書きました。

パンフレットに書きました
パンフレットに書きました
「ストップ・ザ・アベ」の集会です。7/20(金)

㉖これは7月20日(金)の集会のチラシです。

「ストップ・ザ・アベ」の集会です。7/20(金)
「ストップ・ザ・アベ」の集会です。7/20(金)
「アエラ」(7/30号)

㉗「アエラ」(7月30日号)「現代の肖像」に井浦新さんが出てました。

「アエラ」(7/30号)
「アエラ」(7/30号)

【お知らせ】

  1. 7月7日(土)より、映画がロードショー上映されてます。テアトル新宿です。瀬々敬久監督の「菊とギロチン」です。
    〈「女相撲」×「 ギロチン社」が世界に揺さぶりをかける! アナーキーな青春群像劇!!〉です。アナキスト運動、そして女相撲とのかかわり、我々の知らなかった世界がそこにあります。パンフレットには、PANTA、森達也、田原総一朗などが熱いメッセージを書いてます。私も書いてます。
  2. 7月30日(月)。これは凄い映画です。現在の日本の政治情況を的確に捉えています。その名もズバリと「国家主義の誘惑」です。フランスで作られました。7月28日(土)より、ポレポレ東中野で上映されます。9月30日(月)の昼からの上映のあと、渡辺謙一監督と私のトークがあります。映画のイントロダクションでは、こう書かれてます。
    〈国益・国家の名の下に秘密裏に決裁、反対意見には耳を貸さず、新造語を連発し、嘘を通す─ 日本社会の“いま”を浮き彫りにした フランス発ドキュメンタリー。
     明治維新から今日までに見られる日本人の天皇・憲法・戦争観は歴史的にどのように熟成されてきたのか?〉
  3. 8月4日(土)阿佐ヶ谷ロフト〈鈴木邦男生誕100年祭〉
    12時開場 13時スタート
    第1部【出演】白井 聡、ほか
  4. 8月17日(金)一水会フォーラム。北川正人氏(千代田化工建設株式会社元社長)
    「世界地図の真のとらえ方(仮題)」。
  5. 9月11日(火)一水会フォーラム。講師:田母神俊雄氏。
  6. 9月16日(日)「大杉栄メモリアル2018=言葉と歌で日本の近現代史を振り返る=」。新発田市生涯学習センター。午後1時より。第1部講演。栗原康氏。「米騒動から百年。大杉栄がみた大阪の米騒動」。
    第2部。大杉栄と絶叫詩人・福島泰樹
    第3部。対談。「大学紛争から50年」改めて問う右と左とは。福島泰樹:鈴木邦男。
    申し込み・お問い合わせ、「大杉栄の会」斎藤徹夫。
    FAX 025(422)3372へ。