凄いですね。こういう状況で、こういう言葉をはけるなんて。私は文句なしに感動しましたね。テニスの大坂なおみ選手ですよ。9月10日に、何度も何度もテレビで見ていました。
全米オープンは満員。そして異様な雰囲気。チャンピオンのセリーナ・ウィリアムズを観客は皆、応援していた。
大坂は、〈敵地〉で、やりにくいなんてもんじゃない。全くのアウェイだ。
そこで、女王セリーナと闘った。セリーナへの応援の声で会場は圧倒されていた。そこで、よくぞ最後まで闘えたもんだと思う。
我慢して、我慢して、闘い、そして、何と勝った! 勝利が決まった瞬間、マイクを突きつけられて大坂はこう言ったのだ。謝った。
「みんながセリーナを応援していたことは知っています。こんな結果になってごめんなさい」。凄い! こんなことを言った人は大坂だけだ。
自分を苦しめ、そして応援の声で自分を圧倒していたファンに対し、恨み言を言わず、「ごめんなさい」と言ったのだ。どんな選手だって、政治家だって、言えない。それを言ってるんだ。凄い人だと思った。本当に、いいものを見たと思った。
大坂にとって、セリーナは子供の頃からの憧れの存在だった。インタビューで「みんなセリーナを応援してることは知っている」と言ったが、もしかしたら大坂だって、セリーナのファンだし、好きだったらしい。応援していたのかもしれない。
しかし、そんなファンとしての自分とも闘いがある。頑張った。そして、そんな自分に対しても、「ごめんなさい」と謝ったのだ。
決勝戦の前からずっと見ているが、大坂は、たどたどしい日本語だが、言ってる内容が凄い。
お父さんはハイチ出身だが、お母さんは日本人。でも彼女は「日本人」としての意識が強い。「大阪で生まれた人はみんな、オオサカという名字になるよ」なんてマスコミに冗談も言ったのだった。
又、受賞スピーチに出た時、「これは、おそらく、史上最悪の受賞スピーチになりそうです」なんて言ってのけている。
でもこれは多分、今年の最も感動を与えた言葉になるでしょう。「現代用語の基礎知識」を出してる自由国民社の言葉でもトップになるんだと思います。
私らは、子供の頃から日本語を使っているが、こんな気の利いたことは言ったことがない。ライター、政治家でも、いないだろう。
この言葉には〈生命〉が入っている。恨みも、憎しみも、全てを吹き飛ばした。たいしたもんだ。もし自分ならどうだろう、と考えてみたらいい。とてもこんな言葉は出てこないだろう。
何で自分だけ責められるんだ。私だって頑張ったのに!…という、ここぞとばかりに出てきそうだ。抗議、弁解の言葉ばかりが出てくる。日本の政治家などそうだよな。そして嘘をついてしまう。安倍政権が、そうだよ。
さらに、気遣いだ。日本の災害にも気遣っている。何度も何度も言っている。優しい人だと思う。
9月12日の産経新聞では、「憧れのセリーナに感謝」と見出しが出ていた。女王のセリーナが「感謝」だ。これはいい。
「でも私は日本人だ」「自分で自分を誉めてあげたい」なんてことは言わない。あとは、「ごめんなさい」だ。謝っている。「ごめんなさい」これはいい。実に感動的だと思った。
北海度根室市に住んでいるおじいさんは電話をもらって、「とにかく嬉しい」と言っていたそうだ。
「(大坂は今月中にも日本に戻る予定だが)直接会って、偉い、って、しっかり誉めてあげたい」
「北海道を襲った地震では、甚大な被害が出ている。なおみには、災害を恐れないプレーヤーになってもらいたい。被災された方々を元気づけられたら」。その期待にきっと応えてくれますよ。
彼女は「日本に帰ったら何をしたい」と聞かれ、「トンカツ、カツ丼、カツカレー、抹茶アイスを食べたい」と答えていた。20才の若者なんだ。
地震や大雨、災害が続く日本で、この大坂選手の活躍と、言葉は、唯一、明るく、人々を励ましてくれている。テニスがあってよかった、と思った。