12月29日(木)の河合塾コスモの『読書ゼミ』で栗原康さんの本を読みました。『アナキズム――一丸となってバラバラに生きろ』(岩波新書) です。面白い本です。
「一丸となって」と「バラバラに生きろ」が相矛盾ですが、そこはいいのでしょう。面白いことを書く人です。
この人は以前にコスモに来てもらって、話してもらったこともあるし、知ってる人も多いのです。私も昔からの知り合いですし、とても面白い本を書いてます。
前にも言いましたが、アナーキズムについて書いてると、文章が全く変わります。それまでは学者が書いている冷静な文章が、一転して、怒りをあらわにします。
凄い変わりようです。かなりムチャクチャなことを言ってるようですが、その中に、キラリと光る真摯さがあります。〈そういうこともあるよね〉と私は、教えられ、反省しています。
例えば、この本の表紙には、こう書かれています。
〈人生は爆弾である
正しさをぶちこわせ!
アナーキーな精神が、歌う!叫ぶ!笑う!
主義を超えた真実への問い
自由な生をつかみとるために〉
これだけ見ると、ただの暴力派だ。ただ暴れればいい。誰も止められない。
でもこの人、それだけじゃない。物事の本質をついている。
例えば、「反体制」「左翼」「リベラル」と言いながら、政府批判だけでなく、私たちは悪いんじゃない。だから、正しい姿勢、正しい主張と言って、それだけを押し通そうとする人がいる。
かなり乱暴だけど、彼の言ってることは正解だ。マスコミ人が「反体制」「左」には多いのだ。
いや「右」になったのか。自分は「国のために闘ってる!」「正義だ」。そして他国への憎しみを煽る。
この本は、こんな調子で、今までの「左翼」の本ではない。アナキズムの本なのに、アナキズム批判もする。
ただ、「アナキストなんですね」とか、その正しいことを主張するのではない。
又、アナキズムへの批判も書いている。そして、アナキストたちの一人一人について書いている。
我々は、大杉栄とか伊藤野枝とか、その程度のことしか知らないが、何百人も書いている。さらに、その人脈が今もずっと続いている。私の知り合いの人もいる。
又、例えば平岡正明だ。この人に随分と教えてもらった。アナキストや活動家という人は頭は優秀だが、肉体は弱い人が多い。だがこの平岡は別だ。空手をやっていた。極真空手の黒帯だ。だから私は尊敬している。
そうだ。太田竜、竹中労と平岡正明は、「三バカ大将」と言われた。バカと言ってるが、結構左からは尊敬されていた。
そして平岡は空手の師である大山倍達と対談し、本を出している。徳間書店から出している『武道論』だ。勿論、師とは、武道の話をしている。さらに、政治論までやっている。
日本は、軍備がなくても、どこも攻めてくる国はいないと言うのだ。
〈大山 戦争を放棄した日本は全員が空手をやって、一億人が空手の有段者になればいい。そしたら戦争を仕掛ける国はない〉
これは面白い。日本は、全国民一億人が、空手で武装していたら、占領されない。ハイキックで倒されるかもしれない。これでは恐くて占領など出来ないよ。武器は持てないが、最強の国民になる。これこそ空手の精神であり、アナキズムの精神だろう。そう感じましたね。この本を読んで学んだことは多いですね。