2009/02/23 鈴木邦男

今年も、怒濤の『蟹工船』ブームだ!

①メディアや我々も「ポチ」だよ!

蟹工船
映画『蟹工船』

 「赤報隊」が映画になるそうだ。いや、違った。「蟹工船」が映画になるそうだ。もうすぐ完成し、今年の夏、全国ロードショーだ。凄い。「ブーム」は今年も続く。こうした社会派の映画がつくられるのは、いいことだ。「実録連合赤軍」もDVDになり売れている。山口二矢、見沢知廉も映画化される。『警官の血』『東大闘争』もテレビ放映された。さらに「社会派」は続くよ。面白いことになりそうだ。

 今、新宿のK'cinemaで高橋玄監督の『ポチの告白』を上映している。衝撃の警察映画だ。3時間15分と、長い映画だが、グイグイと引きつけられる。長さを全く感じさせない。凄い映画だ。「この国には絶対逆らえないものが二つある。天皇陛下と警察だ」と、チラシに書かれたコピーも過激だ。
 2月12日(木)最終回の後、9時45分から、トークがあって出た。高橋玄監督、元公安警察の北芝健さん、そして私だ。なぜこの映画が完成から3年間も上映されなかったのか。その真実も監督の口から語られた。聞いていて思った。やはり、「タブー」なのだ。「逆らえない」ものなのだ。アメリカ映画だと、いくらでも「悪徳警官」が出てくる。警察の闇を描き、批判した映画はある。いくらでもある。でも日本ではない。そんなのを作ってもヒットしない。それ以上に、そんなものを作って警察に睨まれたくないのだ。だから映画で警察が出てきても、皆、「いい人」ばかりだ。そして警察の「協力」をあおいで映画をつくる。テレビだって、「警察24時」のようなものばかりつくる。「犯罪捜査の為に警察はこんなに頑張っているんですよ」といった「報道番組」だ。あれも〈洗脳〉だ。さらに、「指名手配の犯人がまだ捕まりません。こんな男です。ぜひ情報を下さい」と国民に呼びかける。テレビは警察の〈広報〉だ。一億二千万国民を「総岡っ引き」にしようとしている。
 「この日本を守っているのは俺達だ。命をかけてやっている。ガタガタ言うな」というのが警察の言い分だ。特に公安はそう思っている。だから、何だってやる。冤罪だって作る。
 この映画のチラシには私の推薦の言葉も載っていた。

ポチの告白
映画『ポチの告白』
〈「俺たちは命をかけてお前ら国民を守ってやっている。この位のことをして何が悪い!」
 警察はそう思っている。ポチの正直な告白だ。でも、その腐敗不正を見逃してきたメディアや我々だってポチなのだ!〉

 これも警察にとっては「愛日映画」なのかもしれない。「日の丸をバックにした警察」を真向から批判し、斬る。勇気のある映画だ。「天皇陛下と警察」と並べて、「逆らえないもの」と言っている。問題のあるコピーだ。右翼から抗議は来ないのか。でも、来ない。皇太子さま、雅子さまへのバッシングを初め、「何でもあり」の状況になっている。「私は皇室を大切に思っている。だから文句を言いたい」と皆、勝手なことを言う。嫌な雰囲気だ。

②野村さんは赤報隊に会っている。「告白」した彼なのか?

北芝健 高橋玄監督 鈴木邦男
(左から)北芝健氏、高橋玄監督、鈴木(2/12)

 それに、右翼の人たちは今、「週刊新潮」への対応で忙しい。例の、4週続いた朝日新聞阪神支局襲撃事件の「実行犯の実名告白」だ。児玉誉士夫、野村秋介といった右翼界のビッグな名前も出てくる。野村さんが「声明文」を書いたという。野村さんが下書きを書き、カオリさんにワープロを打たせたという。「噴飯ものだ。あり得ない!」と野村さんに近い人たちは激怒している。
 私も、「野村さんが声明文を書いた」ということはないと思う。ただ、野村さんは生前、「赤報隊に会った」と言っていた。野村さんの事務所を訪ねてきたし、7人のグループだと言っていた。それを聞いて、私も、いろんな所に書いた。それを野村さんにも見せた。だから、間違いがない。
 「週刊新潮」で「実行犯」だと告白した島村征憲氏は、この時の「7人」のメンバーなのか。だったら、確実に〈接触〉はあるはずだ。そのことを中心に書けばよかった。でも私の書いたものに依拠したくなかったのか。「新事実」を書いている。又、昔、「週刊SPA!」で、「赤報隊に会った!」と書いた男もいた。この男の会った「赤報隊」、野村さんが会った「赤報隊」、そして「週刊新潮」で告白した「赤報隊」。三つの「赤報隊」だ。闇の世界から現われて、表の世界に顔を出したのは、この「三回」だけだ。そのどれかが〈真実〉だ。いずれ明らかになるだろう。

北芝健 高橋玄監督 鈴木邦男
トーク中の高橋監督、北芝氏、鈴木(2/12)

 では、『蟹工船』の話だ。本当は、初めから、この話をしようと思っていたのだ。『ポチの告白』のトークを終えて、打ち上げに行く時だ。映画館のロビーに、新作映画のチラシがあった。そこにあったんですよ。『蟹工船』が。「今夏、待望の全国ロードショー」と書かれていた。小林多喜二の原作を基に、「新機軸で映画化」するという。脚本・監督はSABU。主演は松田龍平。他には高良健吾、西島秀俊、新井浩文らだ。大杉漣、森本レオも出る。「TKO」の木下隆行、木本武宏も出るという。どんな映画になるのか、楽しみだ。革命映画になるだろう。
 「このセカイを突き破れ!」とコピーが書かれている。「実録連合赤軍」を意識したコピーだ。革命映画の登場だ。チラシには、こう書かれている。

〈支配する者と支配される者。果てなき欲望と絶望の激突。原作160万部突破!社会現象、流行語TOP10・驚異のヒット再燃ベストセラー。新機軸で映画化〉

 そうか。160万部も売れたのか。凄い。新潮文庫を初め、『蟹工船』は売れに売れた。多喜二の小説が全て収められた『ザ・多喜二』(第三書館)という本も売れた。『雨宮処凛が読む「蟹工船」』という本も出た。コミック版も出ている。一週間で300冊も売れた書店もあったそうな。それに、このブームで日本共産党に入る人がドッと増えたという。去年は「9千人増えた」と言ってたが、今年は、サンプロに出た志位委員長が「1万3千人増えた!」と誇らしげに言っていた。凄い。

③1万3千人も共産党に入った。『蟹工船』ブームで!

鈴木邦男、安田好弘弁護士、林健治
「和歌山カレー事件を考える人びとのつどい」で。(左から)鈴木、安田好弘弁護士、林健治さん(2/14)

 『蟹工船』は小林多喜二が昭和4年に書いたものだ。80年前の作品だ。プロレタリア文学の傑作だ。新潮文庫では『党生活者』と共に収められて居る。私は学生時代から、何回か読んだ。読むたびに、感動し、勇気を与えられる。『ザ・多喜二』も読んだし、多喜二の小説は全て読破した。
 『蟹工船』は、実は一度、映画化されている。今から56年前だ。1953年に、山村聡監督・主演で映画になっている。今、DVDになっている。私は買って、見た。なかなかいい。迫力がある。プロレタリア映画になっている。
 もう一つ、多喜二のDVDがある。2006年に作られた。タイトルは、『時代(とき)を撃て、多喜二』という。「生きたい、書きたい」というサブタイトルが付いている。30才で官憲に虐殺された多喜二の切ない願いが込められている。池田博穂監督だ。
 映画が完成した2006年に、中野ZEROホールで上映会をやっていた。見たいと思ったが、忙しくて行けなかった。今、DVDが出ていたので買って見た。てっきり、「劇映画」だと思っていた。誰かが多喜二に扮し、党活動をやり、天皇制国家と闘い、逮捕され、拷問され、殺される…と。多喜二の「闘い」を描いた濃いドラマだと思った。これこそが究極の「反警察映画」だ。そうなるのかと思ったら、違う。もっと、学問的、文学的な作品だ。

和歌山カレー事件を考える人びとのつどい
「和歌山カレー事件を考える人びとのつどい」で開会の挨拶をした(2/14)

 多喜二の生涯を紹介し、作品が朗読される。多喜二ゆかりの人が出てきて話をする。多喜二研究家が出てきて文学の解説をする。知らないことも多かったので、勉強になった。『新潮日本文学アルバム・小林多喜二』を映像で見るような感じだった。
 多喜二の文学の解説が特によかった。『蟹工船』では、「納豆の糸のような雨」といった表現がある。労働者の目で見た形容だ、という。表現・描写の一つ一つが、プロレタリア的だし、労働者の眼なのだ。ブルジョア的な、手垢のついた「表現」「形容」はしないぞ!という心意気が見える、という。これは知らなかった。ものを書く人間として、ショックだった。そういえば、表現が確かに労働者的だ。「手や足は大根のように冷えて、感覚なく身体についていた」「船は、背に食いついている蛇を追払う馬のように、身体をやけに振っている」「兎が飛ぶどォー兎が!」「もう海一面、三角波の頂きが白いしぶきを飛ばして、無数の兎が恰も大平原を飛び上がっているようだった」。うーん、うまいね。とても勉強になった。私なんて、いつも、いい加減な形容詞しか使ってない。リアルな描写も出来ん。「これはリアルだ」と書くだけでは、リアルではない。どこがどう、リアルなのかの具体的な描写がなくてはならん。それも、労働者の言葉、労働者の表現で…。私ならば、「民族派の、生活臭のある言葉、表現」でやらにゃならんのかもしれん。難しい。私には無理だニャン。

神田香織さん(講談師)と。「和歌山カレー事件を考える人びとのつどい」で
神田香織さん(講談師)と。「和歌山カレー事件を考える人びとのつどい」で(2/14)

 それにしても不思議だ。理解が出来ない。『蟹工船』を読んで、なぜ、日本共産党に若者が入るのだろう。それも、1万3千人も入ったという。分からん。
 派遣やフリーターの生活は、まるで『蟹工船』の世界だ。「オレっちもカニコーだ!」と思って入党したのか。しかし、全く違う。カニコーじゃ、労働者が酷使されるだけではない。どんどん死んでゆく。殺されてゆく。又、新潮文庫の『蟹工船』には、『党生活者』も入っている。入党した人は、これも皆、読んだはずだ。
 当時の日本共産党は非合法だ。入っただけで逮捕された。それなのに、多喜二は、「危ない活動」「非合法活動」に入り、レポ(連絡)やオルグ(勧誘)をやる。それも皆、当時は、「犯罪」だ。党に潜入したスパイによって多喜二は警察に捕まる。拷問され、殺される。「アカなんか殺していいのだ」と警察は思っていた。どれだけの人々が警察によって殺されたことか。それも、「天皇陛下」の名のもとに殺したのだ。ひどい話だ。警察こそが「日本最大のテロリスト」だ。それに比べたら、右翼や左翼のテロなど小さい、小さい。無きが如しだよ。

④新左翼過激派こそが、「多喜二の闘い」を継いでるよ

阿佐ケ谷ロフトで「希望と革命」についてトーク
阿佐ケ谷ロフトで「希望と革命」についてトーク(2/16)

 ともかく、多喜二の活動した頃の日本共産党は、警察からも、そして世間からも、「危ない人々」「犯罪者」「非国民」と思われていたのだ。限りなく、デンジャラスな世界だ。何せ、入党しただけで捕まる。お金をカンパしただけで捕まる。そして拷問され、殺される。恐ろしい。その中で、日本共産党は闘ったのだ。小林多喜二も闘ったのだ。凄い。偉い。
 ところが今、日本共産党には、そんなデンジャラスな雰囲気はない。入党したからといって逮捕されない。日共に勧誘したからといって拷問され、殺されない。合法政党だ。つまり、多喜二の本を読んで、多喜二と同じ闘いをしたい、と思っても、もう日共にはそんな雰囲気はない。あの当時の「緊張感」や「過激さ」や、「危険さ」を求めるのなら、むしろ新左翼過激派に入るしかない。あるいは、「赤報隊」に入るしかない。
 2月16日(月)、阿佐ケ谷ロフトに出た。新左翼過激派の「戦旗派」にかつて所属して危ない運動をしていた早見慶子さん、秋山喜一さんたちと話をしたので、そのことを言った。「君たちこそが、ゲンダイの小林多喜二じゃないか!」「君たちこそが、今『党生活者』を書け!」と。多喜二の生活・闘いに感動して日共に1万3千人も入党した。その若者を取り戻せよ!「お前たち、勘違いをするな! 多喜二の活動を追体験したいのなら、我々新左翼過激派に来いよ!」と。そう呼びかけ、レポし、アジり、オルグするべきだろうよ。と、私はアジってやりましたよ。

早見慶子さん(中央)、金垣広行さん(右)と。阿佐ケ谷ロフトで
早見慶子さん(中央)、金垣広行さん(右)と。阿佐ケ谷ロフトで(2/16)

 この日のロフトは、メインテーマが〈「希望は戦争」か?「希望は愛」か?〉だった。「希望は戦争」の赤木智弘さんも来ていた。司会は金垣広行氏。他に「夜回り組長」の石原さんが出る予定だったが、出れなくなり、その「穴埋め」で私は前日、頼まれたのだ。ロフトには、そんな時でもないと出してもらえない。だから、行きましたよ。カゼを押して。しかし、いつまでも、カゼをひいている。集中して寝りゃいいのに、京都に行ったり、ロシアに行ったりしている。それに、見沢知廉氏の見舞いに行ったり…と。だから、カゼの治る暇がない。
 そうだ。「見沢さんは本当に生きてるんですか?」「生きてるんなら会わせて下さいよ」と何人かから言われた。知らねえよ。そんなこと言ってる奴がいるのかよ。
 では、ロフトの話だ。早見、秋山氏は元「戦旗派」だ。会場にも、元戦旗派の人がいた。いわば、戦旗派の決起大会のようなもんだ。早見さんは、その当時の過激な闘いが忘れられなくて、『I LOVE 過激派』(彩流社)という本を出している。けなげじゃないか。戦旗派といったら、成田では暴れる。皇居にロケット弾を撃つ。天皇制国家を実力で打倒しようとしたんだ。敵ながら天晴れですよ。それで、全国の右翼が、「売国奴!」「非国民!」「国賊!」と叫んで、戦旗派の事務所に押し寄せた。あの時は、私も行ったな。「国賊め、許さん!」と叫んで。

赤木智弘さん、高木尋士さんと。阿佐ケ谷ロフト
赤木智弘さん、高木尋士さんと。阿佐ケ谷ロフト(2/6)

 そんな戦旗派なんだから、「多喜二が好きなら、我々のとこに来い!」と言えばいい。早見さんも、戦旗派時代の非合法、過激な運動を、もっともっとリアルに書けばいい。『女・党生活者』でもいい。中川文人氏は『女過激派、愛欲の日々』『女ゲリラ、爛れた生活』を書けと言ってたが、私はそんな失礼なことは言わん。でも、多喜二と同じ闘いをやつてきたんだ。〈記録〉として、〈文学〉として残す必要がある。
 そうだ。テレビ朝日で、『警官の血』をやってたな。二夜連続で。佐々木譲の原作だ。祖父、父、本人と三代の警官だ。祖父は警察内部の内ゲバで公安警察官に殺される。父は、「潜入捜査官」として、赤軍派に入り込む。そして大菩薩峠の軍事合宿に参加する。全員逮捕される。その後は、「東アジア反日武装戦線〈狼〉」などに潜入する。凄い話だ。よく、ここまで描いたと思う。
 「大菩薩峠」の逮捕の時は、「実は公安が潜り込んでいて、それで逮捕されたんだ」という話が実際にあった。本当は、ズサンな組織で、予備校生なども、訳も分からず参加した。警察にだって筒抜けだ。「いや、そんなことはない。鉄の組織だった。公安のスパイが潜入したから、逮捕されたんだ」と赤軍派は言っている。そう「思いたい」だけなのだ。
 ただ、警察が目をつけ、監視する必要のあった運動だったことは事実だ。テレビドラマを見て、そのことを再確認した。

 若松孝二監督は、次は『山口二矢』を撮りたいと準備を進めている。又、大浦信行監督は、映画『見沢知廉』の撮影に入ったという。骨折して病院に入院している見沢氏にもインタビューしたのだろう。8月21日(金)〜23日(日)の『見沢知廉生誕50年展』では「劇団再生」の「天皇ごっこ〜調律の帝国」の舞台、そして高木尋士氏と私のトークがあります。そこに、大浦監督も参加してくれることになりました。「死後に成長する命・言葉・人生」をテーマに、3人で、トコトン語り合います。ご期待下さい。急遽、見沢知廉氏も「特別出演」するかもしれません。
 そうだ。今週の写真ですが、2月14日(土)に行われた、「和歌山カレー事件を考える人びとのつどい=第1回東京集会」の写真も載せました。何と、私が「開会の挨拶」ですよ。「何でお前が」と皆、驚いたでしょぅが、私も驚きました。マイクも嫌がって、ピイピイ音を出して、通じませんでした。抵抗してたのでせう。主催者を代表して、ともかく挨拶しました。林眞須美さんの夫の、林健治さん、安田好弘弁護士とも写しました。講談師の神田香織さんにも会いました。

【だいありー】
青木理さん(中央)、木村三浩氏(右9と。一水会フォーラムで
青木理さん(中央)、木村三浩氏(右9と。一水会フォーラムで(2/17)(撮影・平早勉さん)
  1. 2月16日(月)昼、取材。夕方まで寝てた。調子が悪い。夜、8時50分、阿佐ケ谷ロフトに行く。〈「希望は戦争」か?「希望は愛」か?〉のトークライブの二部に出る。第1部は、「世代間戦争は必要か?」だった。貧困、フリーター、派遣の話らしい。予定表を見たら、「なぜマスコミは過激な言動を語る人が好きなのに、過激なことをする人を嫌うのか?」という一文があった。これはいい。この話をしたかった。
     第2部のテーマは「男性の主夫はなぜ少ないのか?」。難しい。ついて行けなかった。ただ、私は、場違いにも、「蟹工船」ブームの話をした。元過激派の早見さんたちに頑張ってほしいと言った。この日の出演者は、赤木智弘さん(評論家)。元戦旗派の早見慶子さん。秋山喜一さん。そして司会は、金垣広行さん(市民)。会場から、平野悠さんが吠えていた。「劇団再生」の高木氏も発言していた。
     新聞記者も何人か来ていた。終わってから、「赤報隊」について取材された。「週刊新潮」に「実行犯」だと実名告白した人だ。「きっと私の冤罪を晴らすために、真犯人が名乗り出てくれたのでしょう。感謝しております」と言った。
  2. 2月17日(火)午前中、原稿を書いていた。午後、仕事の打ち合せ。7時から、サンルートホテル。一水会フォーラム。元共同通信記者の青木理さんが講師で、「最新・北東アジア情勢と我が国の決意」。なかなかいい話だった。勉強になった。青木さんの『日本の公安警察』(講談社現代新書)は、ベストセラーだ。私も、『公安警察の手口』を書く時、随分と参考にさせてもらった。又、「オーマイニュース」でも連載をやらせてもらい、お世話になった。ありがとうございました。
一水会フォーラムの二次会
一水会フォーラムの二次会で(2/17)(撮影・平早勉さん)
  1. 2月18日(水)午後1時から河合塾コスモ。国語科の会議。現代文、漢文、古文、小論文などの先生方が集まって会議。どうやったら国語力、読解力をつけられるかについて話し合う。
     夜、7時から古澤俊一氏の送別会。新宿の中華屋さんで。「古澤氏出獄10周年。送別会」と大きな横幕が。東京の生活を切り上げて、故郷の浜松に帰るという。古澤氏は、野村秋介さんの運転手をやっていた。野村さん自決の現場にも立ち合っている。そして、「朝日新聞社立て籠り事件」に参加し、刑務所に。それから10年。又、何か心に期することがあるのだろう。その決意のほどは分からないが、一緒に写真を撮った。最後になるかもしれないので。(写真は来週載せよう)。
     体調がよくないので、途中で帰る。申し訳ない。明日発売の『週刊新潮』(2月26日号)を見せてくれた人がいる。朝日襲撃事件「実行犯」告白手記の第4回目(最終回)だ。静岡事件で発表された犯人のモンタージュと島村氏はそっくりだ。これにはギョッとした。いくつかの〈物証〉も持ってるし、何らかの関わりがあったのかもしれない。でないと、『週刊新潮』もあそこまでやらないだろう。それに、野村さんと島村氏の〈接点〉は確実にあるのだし。それに、昔、私が会った「赤報隊」だって…(以下次号)。
  2. 2月19日(木)11時半、高田馬場サンルートホテル。地方で市民運動をやってる人に会う。今、世界を揺るがしている、ある「陰謀事案」について、レクチャーを受ける。12時半、新聞社の取材を受ける。3時から河合塾コスモ。「現代文要約ゼミ」。5時から「基礎教養ゼミ」。今週は、私が選んだ本で、竹内洋さんの『学問の下流化』(中央公論新社)を読んで、皆と話し合う。なかなかいい本だ。本の帯にはこう書かれている。
〈うけ狙いのポピュリズムとオタク化の進む学界。紋切り型の右翼・左翼から抜け出せない、論壇。書店に溢れるお手軽な「下流」新書〉
 

 きびしい批判だ。実は、この本の中には、私の本(『愛国者は信用できるか』)の書評も入っている。初出は『読売新聞』(2006年7月16日朝刊)だ。ありがたいです。

一水会フォーラムの二次会で
一水会フォーラムの二次会で(2/17)
〈左(派)の姜尚中(東大教授)には右(派)の鈴木邦男(本書の著者)を並べたい。論客という意味だけで並べるのではない。左右を問わず論客は、正論をぶつから、どこかいかがわしさをぬぐいきれない。しかし、この二人に共通するのは、「この人は嘘をいわない」とおもわせるキャラである。反対陣営の意見にも十分考慮する軟らかさも共通している。九州弁(姜)と東北弁(鈴木)の訛りがかすかにまじる話しかたにも共通で、親しみを感じさせる〉

 いやー、ありがたいです。嬉しいですね。ここまで誉めてもらったことは今までありません。そして、本の書評に入る。さらに最後が特によかったです。ありがたかったです。

〈本書カバー裏著者略歴欄には住所が掲載されている。批判や質問をいつでも受けつけるという意味で載せているのだろうが、「みやま荘」という1960年代木造アパート的名称が著者高感度をアップさせずにはおかない〉

「みやま荘」に住んでいてよかった。もう35年も住んでいる。生涯、「みやま荘」ですよ。
 そうだ。この本には早見慶子さんの『I LOVE 過激派』の書評も入っていた。大いに誉めてました。

  1. 2月20日(金)〆切の原稿が三つあったので、寝床で、必死に書く。午後、週刊誌の取材。赤報隊のことだ。近くのスパゲティ屋に来てもらって、最後の〈秘密〉を喋った。「枝豆スパゲティ」を食べながら。
  2. 2月21日(土)取材と原稿。それから、図書館に行く。夜中の3時にテアトル新宿に行く。映画「実録・連合赤軍」がDVDになり、それを記念した映画上映とトークだ。若松孝二さんと3時20分から1時間半話した。次回作品『山口二矢』についても聞いた。楽しみだ。 夜中なのに超満員。それも若者ばかりだ。驚いた。
  3. 2月22日(日)前日は、朝までトークをして、打ち上げ。ロクに寝ないで、勉強会に。朝10時半から5時までびっしり。眠たかった。でも、とても勉強になった。
【お知らせ】
  1. 河合塾のカリスマ講師・牧野剛先生の本が又、出ました。『人生を変える大人の読書術』(株式会社メディアックス・1500円)です。〈ビジネスでの交渉術に強くなりたい! 仕事場でアイデアマンと言われたい! そんなあなたには牧野流読書術がピッタリ!〉と本の帯には書かれている。表紙は、牧野先生がゴロリと横になって本を読んでいる写真が。まるで、『ゴロニャン読書術』だ。いいですね。なかなか面白い。「反権力の原点は『カストリ雑誌』」、「子供のために、本を置け!」「ピンチを乗り切る読書術」「斬新なアイデアはこうして生まれる」「要約が役に立つ」「七三一部隊に見る牧野流真実」「疑問が解決する瞬間」…と。目次を見ただけで楽しくなる。詳しくは来週又、紹介しよう。
  2. 凄い本が出た。いや、凄い資料だ。『資料で読む戦後日本と愛国心』(全3冊)(日本図書センター)だ。1冊5800円だから、全3冊で2万円近くする。「愛国心」について書かれた、あらゆる本、雑誌、新聞、国会議事録の資料が収められている。

    第1巻「復興と模索の時代」(1945〜1960)
    第2巻「繁栄と忘却の時代」(1961〜1985)
    第3巻「停滞と閉塞の時代」(1986〜2006)

    そして、この第3巻に私の『愛国者は信用できるか』が収められている。その全てではないが、「愛国と憂国=その決定的な違い」の部分が12ページにわたって収められている。この3冊読むと、日本の「愛国心」がどのように議論されてきたか。その「全て」が分かる。3巻だけは送られてきた。1、2巻も買って、全巻読破してみよう。読み終わった時には、「愛国心」博士になっていることだろう。
  3. 3月5日(木)宝島SUGOI文庫の『左翼はどこへ行ったのか』発売です。
    この日、大阪の「ムーブ」に私が出るそうです。
  4. 3月28日(土)、29日(日)劇団再生の新作公演です。「詩編・レプリカ少女譚」です。公演前に高木尋士さんと私のトークもあります。阿佐ケ谷ロフトで7時半からです。
  5. 3月30日(月)「月刊現代」休刊を考える集い。
  6. 5月5日(火)夕方、内海先生との討論会。
  7. 8月21日(金)〜23日(日)。劇団再生の主催で「見沢知廉生誕50年展」が行われる。「天皇ごっこ〜調律の帝国」の舞台化。そして、トークライブとして高木尋士氏と私の「死後に成長する命・言葉・人生」があります。お楽しみに。この日、50才で誕生した見沢氏は、これから、どんどん若くなって、さらに多くの可能性に挑戦するのでしょう。
     トークには、映画『見沢知廉』を撮っている大浦信行監督も3回共、参加することになりました。ご期待下さい。