書くことが一杯あって大変だ。「週刊新潮」は誤報を認め、謝罪した。「朝日ジャーナル」が怒りの復活をした。「日本の黒幕200人」に何故か私が取り上げられていた。「アエラはよかったね。畳が沈むアパートに住んでるんですね。楽しそうですね」と言われてる。そう、トランポリンのような部屋ですよ。それと、私が生まれた昭和18年8月2日は、月曜日だった。ということを最近知った。世紀の発見だ。だから行動的な少年になり、右翼になったんだ。調べてみたら分かる。右翼も左翼も、革命家は皆、月曜日に生まれている。週末の、休みになんか生まれちょらん。
それでは、5月5日(火)の「革命イベント」の紹介からしよう。チラシを見て驚きましたね。のけぞりました。私がゲバラになっている。内海信彦さんが三島になっている。現代版「とりかえばや物語」だ。私が三島をやったら、「思い上がってる!」「不遜だ!」と批判されるだろう。おこがましいですよ。内海さんの場合も同じでしょう。このチラシを作った人はうまいですね。さすが、美学校の生徒さんたちだ。
このイベントは、「左右レボリューション21」と銘打っている。モー娘。の「LOVE REVOLUTION 21」から取ったのだろう。モー娘。ファンの私にはピンときましたね。
内海信彦さんは河合塾コスモで教えている。そこで私も時々会う。「今度、一緒に革命トークをやりましょうよ」と言う。内海さんは美学校でも教えている。そこの生徒たちが企画したのだ。なかなかいい。5月5日(火)、午後3時から5時半までだ。その前にはライブ、パフォーマンスがある。楽しみだ。神保町の文房堂ギャラリーでやる。
内海さんは私より10才若い。中学生の時に三島事件に遭遇したという。小学生で北一輝の『日本改造法案大綱』を読み、愛国小学生になったという。凄い子供だ。よく読めたもんだ。よく理解できたもんだ。私なんて、小学生の時は、まだ字も読めない。九九もできない。アホな子供だった。
内海さんは中学になると、右翼を卒業。左翼になった。そして、高校、大学と、左翼だ。革命家だ。その早熟の革命家・内海さんと、遅咲きの右翼が5月5日、激突する。あっ、そうか。この日は「子供の日」じゃないか。「永遠の子供」同士のお遊戯ですな。「早熟の天才革命少年」が勝つか。「遅咲きの落ちこぼれ右翼少年」が負けるか。どっちにしろ、私は負けるだろうよ。で、どこまで抵抗できるか。そこが見所だ。そして見事に玉砕してやりますよ。
では、「週刊新潮」問題だ。遅すぎたが、ともかく誤報を認めて、謝罪した。これは立派だと思う。
〈朝日新聞「阪神支局」襲撃事件。
「週刊新潮」はこうして、「ニセ実行犯」に騙された〉
というタイトルで、「週刊新潮編集長 早川清」それに「本紙取材班」が、書いている。10ページも。それに、写真もないし、小見出しもない。読み辛い。ビッチリと字だけが詰まっている。読まそうという工夫が一切ない。そう、読んでもらいたくないのだ。でも、経過は説明しなくてはならない。訂正、謝罪もしなくてはならない。そこで、自分を客観視して、書いてみた。「私たちは…」ではなく、「週刊新潮はなぜ騙されたか」と書いている。うまいやり方だ。ビッチリ文字だけの10ページだったら、よほど興味がある人でなくては読まない。
でも、自分たちが見つけ、信じた「実行犯告白」が、嘘だったと認めている。これは潔い。もっとも、朝日新聞、産経新聞、週刊文春などが、この「実行犯」の島村征憲氏を捜し出し、取材した。そこで、島村氏は「自分は実行犯ではない。週刊新潮が勝手に書いた」と言ったもんだから、もう、庇えなくなった。それに島村氏は1回20万ずつ「原稿料・取材料」をもらい、それが4回で80万。それに「新潮45」に載った分が10万で、90万もらったと「告白」。さらに13万は、何かの名目で引かれた。と不満を言っている。どうでもいい話だ。 それに、島村氏は、不思議なことに、事件の関わりは否定してない。
「自分は実行犯ではない。プランナーだ」と言っている。一段階、上がったのだ。朝日襲撃の全体の計画を立て、「実行犯」にやらせた。彼が阪神支局を襲い、記者1人を殺し、1人に重傷を負わせた。じゃ、島村氏に言われてやった「実行犯」が別にいるのだ。だったら、それを捜し出し、「週刊新潮」が載せたらいい。「私こそ本当の実行犯だ!」と。売れるだろうよ。売れないかな。
それにしても、島村氏も、往生際が悪い。「ゴメン、ゴメン。全て嘘でした」と認めたらいい。プランナーであるはずもない。あるいは、次は、どこかで、「私は朝日襲撃のプランナーだった」と書くつもりなのか。でも、2匹目のドジョウはいない。それよりも、日本一の週刊誌・「週刊新潮」をいかにして手玉にとり、騙したか。その「必殺の説得術」こそが聞きたい。全国のセールスマンだって、ぜひ聞きたいだろう。相手の心をとらえる対話術。その気にさせる説得術なんて本を出してもいい。そういうセミナーを開いてもいい。口べたな人や、交渉に自信のない人。女を口説くのが下手な人がドッと受講するだろうよ。これは貴重な才能だ。もったいない。「いっそ、外務大臣にして、北朝鮮と交渉させろ!」といっていた評論家もいた。この人は偉い。
大谷昭宏さんがテレビで言ってた。「朝日も偉い。自分の社の人間が殺されている問題だ。そして、「週刊新潮」は朝日批判もしている。しかし、裁判に訴えることなく、あくまで言論でやり、追い詰めていった。これは評価すべきだ」と。私もそう思いますね。と同時に、「誤報を認め、素直に謝罪した週刊新潮も偉い」と言っていた。私もそう思う。
私は初め、「週刊新潮」は〈物証〉を見せられて信じたのかと思った。ところが、それはない。ただ、口先のトークだけで、「週刊新潮」を信じ込ませたのだ。凄い才能だよ。島村氏は。前にも書いたけど、「週刊新潮」は日本一の週刊誌だ。記者魂が半端じゃない。全て疑ってかかる。猜疑心の塊だ。それをコロリと騙すのだ。詐欺師ならば天才詐欺師だ。「人間国宝」にしたらいい。
その「騙し」「説得」の秘訣を聞いてみたいものだ。「週刊新潮」から、いくら金をもらったか。喋った中のどこが誇張されたか。補足されたか。そんなことはどうでもいい。どうやって、「週刊新潮」の信用を勝ち取り、〈お話〉を信じさせたか。それを聞きたい。その過程で、私の名前が出たっていい。
「実は、鈴木邦男にチエをつけられて、やった」と白状してもいい。実際、そう疑っている人もいる。その人は、こんなことを言う。「鈴木が5回も島村に手紙を出し、本を送ってやったからだよ。それを読んで島村は赤報隊のことを勉強し、事件を起こしたんだよ」…と。
まあ、その可能性は否定しない。網走刑務所にいる時、島村氏から手紙があった。それで、5回、文通した。レコンキスタや私の書いた本も随分と送ってやった。それは事実だし、私も認めている。封筒の表書きと裏書きの部分だけは、「月刊タイムス」(5月号)に載せた。内容は紹介できないが、字はきれいだし、文章もうまい。勉強もしている。真面目な人だな、と分かる。児玉さん、野村さんの本も随分と読んでいる。好きなんだ。さらに私に送られた本を読んでいるうちに、尊敬が昂じて、自分も作中人物になっちゃった。児玉、野村さんに会ったと思った。まァ、野村さんに会ったことはあるのかもしれない。
私も島村氏とは「文通仲間」だ。いつか会えるだろう。それは楽しみにしている。何なら、どっかの週刊誌で対談でもさせてほしいな。
児玉誉士夫がらみで、次の話題だ。4月12日(日)、マニアの上映会があって、昔の東映の大作「日本の黒幕(フィクサー)」を見た。20年以上前の映画だし、完全に忘れていた。主人公は、児玉とおぼしき人で佐分利信が演じている。それに田中角栄とおぼしき人が出てくる。さらに、山口二矢のような右翼テロリストも出てくる。この映画の脚本を書いた高田宏治さんが上映後、トークをして、そして、隣りのもんじゃ焼き屋で、懇親会。じっくり話を聞いた。高田さんは、映画の脚本は150本。テレビの脚本は500本も書いたという。凄い。
この上映会を主催しているのは、川本純基さんだ。懇親会の時、私を紹介してくれた。
〈「日本の黒幕」上映を記念して、『「日本の黒幕」200人』に入っている鈴木さんに来てもらいました〉
何言ってんの。ジョークやろ、と思っていた。そしたら、カバンから一冊の本を出す。別冊宝島の『「日本の黒幕」200人』という本だ。初めて見た。政財界、右翼、ヤクザ界の黒幕・200人が紹介されている。その中に、確かに私がいる。
「なんで?」と思った。借りて読んだ。
〈「赤報隊事件の黒幕」と
公安が最後までマークした男〉
と書かれている。つまり、容疑者だから「黒幕」なのか。変な話だ。文中、こんな箇所がある。
〈穏やかな人あたりだけでなく、後輩を立てる配慮・度量がある。そんな鈴木邦男を慕って右翼・左翼を問わず人が集まってくる。これは、黒幕の資質のひとつに他ならない〉
でも、こんなんじゃ黒幕じゃない。ただの、「人のいいオッサン」だよ。でも、ラストの方で凄いことを言う。
〈鈴木が赤報隊事件に関わっていないと言い切れる根拠もない。穏やかな笑顔の裏側には、激しい武装闘争を経てきた民族派思想家の冷酷さがあるかもしれない。思想に殉ずるということは、そうした二面性をも包摂するものである〉
ギクッとしましたね。それに、最近出た「アエラ」の「現代の肖像」だ。この男は、今でも、過激派だ。激しい情念を必死で抑え込み、隠している。そう感じましたね、私は。「容疑者」ではなく、本当は「実行犯」なのかもしれない。「鈴木の本を読んで島村氏はプランを立てた」のではなく、「島村氏のプランに従って鈴木が実行犯としてやった」のかもしれない。推理小説のドンデン返しのようだ。凄いね。
あるいは〈実行犯〉だったことへの、贖罪から、以後、「テロ否定」「合法路線」に転換したのかもしれない。
「右翼の原罪」とは、そのことを言ってるのではないか。
「だって赤報隊事件以来、右翼の合宿には一切出てませんよ、あいつは。夜中に寝言で事件のことを口走ることを恐れてるんですよ」と言う人もいる。それもありうる話だ。いくら意志の強い人間でも、昼間は自制できるが、夜はできない。夢でうなされて、「悪かった!許してくれ!」と叫ぶかもしれない。「やっと時効だ。逃げ切ったぞ。バンザーイ!」と言うかもしれない。それを恐れているんだよ、きっと。こいつは。
実は、刑務所ではこういう事がある。本人は犯行を否認している。しかし、夜中、夢にうなされて、「悪かった!許してくれ!」と口走る人間がいる。看守は聞いている。「あのやろう。やっぱりやったんじゃないか」と思っても、「証拠」にはできない。ただ〈確信〉だけはある。そんな例があるのだ。だから、「冷酷な容疑者」のことだ。そこまで考えて、合宿などには参加しないのかもしれない。地方に行っても絶対に他人と泊まらない。又、本当は大酒飲みなのに、「飲めない」と言って、ビールを1、2杯しか飲まない。酔っ払って、あらぬ事を喋るのを警戒しているのだ。自分の中の暴力的衝動と同時に、うっかり喋ってしまう自分にも厳重に鍵をかけているのだ。用心深い男だ。冷酷な男だ。
週刊「慎重」な男だ。
さて、『朝日ジャーナル』(4月30日号)だ。4月14日(火)に、「怒りの復活」をした、「創刊50年」と銘打っている。でも、その間、30年位は休刊だ。これが売れたら、定期刊にする予定だという。楽しみだ。木村三浩氏が書いている。凄い。〈政治家・官僚・マスコミに舐められて漂う「諦めムード」〉だ。なかないいい論文だ。
途中のグラビアでは、〈「新・神々」と「新人類」〉が載っている。私もかつて、「若者たちの神々」で出た。そのときの写真が出ている。池袋で街宣している写真だ。今見ると、恥ずかしい。
「いまは右傾化じゃない。管理化してるだけだ。超保守的になって、右も左も切りすてられる」
そんなことを言っている。「84年5月4日号(当時40才)」と出ている。今から25年前か。そして、25年後の私がコメントしている。
〈その予言があたった。これで運動の方向性がはっきりした。右翼の人たちは言論の場がないから暴力に訴えてきたけど、僕はこういう言論の場を与えられたので、暴力に訴える口実を奪われてしまいましたね(笑い)〉
と言っている。フーン、奪われたことが不満なのか、この男は。いやいや、取り上げてくれた「朝日ジャーナル」と筑紫哲也さんへの恩義でしょう。荒ぶる魂の右翼を、取り上げてくれたんだ。変なことで捕まったら、ジャーナルや筑紫さんに対し申し訳ない。そういう思いでしょうな。だから、テロはやらない。たとえ、やっても捕まらないようにする。そういうことなのかもしれない。冷酷な男ですよ。こいつは。(笑)と付け加えておこう。便利な記号だ。
「朝日ジャーナル」を見て驚いたことがある。「若者たちの神々」は1984年4月13日から85年4月12日号まで続いた。えっ、たった1年間だけなのか。全部で51人取り上げている。今では皆、超有名人になった人たちだ。無名の容疑者なんて、私1人だけだ。それなのに、私は4回目に出ている。ということは、スタート時ですでにノミネートしてたんでしょう。申し訳ない。
順番にいうと、こんな人たちだ。
浅田彰、糸井重里、藤原新也、鈴木邦男、椎名誠、如月小春、村上春樹、坂本龍一、森田芳光、ビートたけし、野田秀樹、新井素子、北方謙三、日比野克彦、島田雅彦、林真理子、大竹伸朗、三宅一生、松任谷由実、村上龍…。
凄いね。井上陽水、中上健次、タモリ、桑田佳祐、中沢新一、田中康夫…もいる。この頃は、この人たちはまだ、「若者」で、「これから」の人だったのか。それを発掘したんだから、筑紫さんも大したものだね。ともかく、「朝日ジャーナル」は読んで下さい。新たな発見がある。
④「ラジオカフェ」の収録で、雨宮処凛さんとトークしました。(4月10日)。雨宮さんは何回か出てるようです。局の人が、「今日は雨宮さんがホスト役でお願いします」。エッと私は聞き返しました。「ホストって? じゃ雨宮さんは男なの。ニューハーフだったの?」。でも違った。「ホステス役じゃ変でしょう。だから、女性でもホスト役と言うんです」。ウーン、そうか。日本語は難しい(英語か)。
「左右レボリューション21」
5月5日(火)(15:00〜17:30)
対 談 鈴木邦男×内海信彦
◎文房堂ギャラリー
千代田区神田神保町1−21−1 文房堂ビル4F
tel: 03-5282-7941(会場直通:会期中のみ使用可能)
tel: 03-3294-7200(ギャラリー事務所)
http://www.bumpodo.co.jp/
access
「神保町」駅
(東京メトロ半蔵門線、都営三田線、新宿線)A7出口徒歩3分
JR「御茶ノ水」駅 御茶ノ水橋口徒歩10分
〈天皇制と民主主義は両立するのか。天皇制は民主主義の例外か。民主主義の欠陥を補うものか。あるいは、完全な民主主義実現のためには廃止すべきものか。天皇制を「休む」という選択肢も含めて危ないテーマについて考えてみる〉