爆弾犯に言われた。「いいよな、新右翼は。“真面目だ”というだけで、すぐトップになれるんだから」と。
その人は、新左翼の活動家で、爆弾闘争をやっていた。そのため、機動隊に何人か重傷者が出た。それで10年以上、刑務所に入った。そこで見た新聞に、新右翼のことが出ていた。Kという、ボーッとした新右翼の代表が出ていた。新聞は彼をかなり誉めていた。貧乏で、真面目だという。だから、トップになったと出ていた。
「いいよな、新右翼は。ハードルが低くて。“真面目だ”というだけで、すぐにトップかよ。新左翼じゃ、“真面目”な奴はいくらでもいる。それだけでは、トップになれない。アジ演説、オルグの技術、政治的な力、交渉力、努力、勉強量…などが問われる。でも、新右翼は、“真面目だ”というだけで、トップだ」
「10年経って、この爆弾犯は出所した。ロフトプラスワンで、たまたま、「真面目なトップ・Kに会った。そして、10年前の新聞記事の話をした。
今はそんなことはないが、昔は、ハードルが低かったし、ゆるかったようだ。「新左翼は人材が一杯いるし、上に行くのは大変だ。その点、新右翼は人材難だから、すぐにトップになれる」と思って入ってきた人もいる。自衛隊を辞めて、民間で「皇軍」を作ろうと思って新右翼に入った人もいる。共産党や統一教会をやめて入った人もいる。こうなると、「転向者」の坩堝だ。でもそれはそれで、「競争」が激しくなる。上に行く倍率も厳しくなる。
ただ、“真面目な”人間は優遇されたらしい。そして、トップだ。
今はそんなことはない、と言ったが、今は「真面目さ」プラス「能力」が要求されている。一水会の木村代表、統一戦線義勇軍の針谷氏を見ても、それは分かる。運動家としての能力、経歴は群を抜いている。演説、オルグ能力、交渉力、政治力も抜群だ。昔なら、「入会したい」といったら、誰だって入れた。しかし、今は一水会でも、試験がある。その問題集は、前に、『ダ・カーボ』に出たことがある。他の団体でも、試験や面接がある。そのうち、統一的な「右翼検定」が行われるだろう。漢検、英検、そして右検だ。この3つの資格を取れば、どこの企業でも入れる。人生はバラ色だ。(そのはずだ)。
さて、政治家の話だ。〈能力〉だけで評価されるのが政治の世界だ。いや、そのはずだ。政治家の子供に生まれた、というだけで議員になれる。これはおかしい。それで、「世襲反対」「世襲制限」が言われている。少なくとも同一選挙区から出るのは禁止しよう。そういう法律も出来るだろう。いいことだ。政治家は〈能力〉だけで評価されるべきだ。「人がいい」「ボーッとしている」「真面目だ」というだけでは政治家になれない。無能で、漢字も読めないが、「人間が真面目だから」では政治家になれない。そんな無能な人間に政治をやってもらったら大変だ。
その点、河村たかしさんは立派だ。偉い。最近、名古屋市長に当選した河村さんだ。まさに、「能力と実行力」の人だ。5月8日(金)、「たかじん」の収録で会った。元気一杯だ。凄い行動力、能力だ。それにプラスして、人間も真面目だ。これだけ揃った人は、ちょっといない。それに、自己に厳しい。これには感動した。だって、市長の給料を三分の一にした。公用車を廃止して、バスで通勤する。天下りした人間には、面談し、「辞めろ!」と言う。凄い。
ただ、疑問だったのは、何故、衆院議員を辞めて、名古屋市長選に出たかだ。だって、民主党は次の選挙では、与党になるといわれている。政権与党の議員として活躍したいと思うだろう。大臣にだってなれる。その栄光の「勝ち馬」から、わざわざ下りて、なぜ、名古屋市長選なのか。あまりに勿体ない話ではないか。テレビにはよく出ているし、人気者だ。「民主党の顔」だと思っていた。それに、自ら、「総理を狙う」と言っていたのだ。だったら、なおさら、衆院議員を辞めるのはマイナスではないのか。そう思っていた。「たかじん」の時は、こんなテロップが流れていた。
〈かつては、自ら「総理を狙う」と公言していたものの、民主党党内の賛同が得られず、目標を下方修正し、不況に苦しむ地元・名古屋のために立ち上がり、先の名古屋市長選で、50万票を超える過去最多の得票数で初当選〉
エッ?「下方修正」なのか。「そんなことはありません」と本人は否定していた。しかし、あれだけ、テレビに出て、ズバズバと言っていたのに、党内では孤立していたのか。「ズバズバ言い過ぎるからだ」「党と反対のことを言っている」…と批判する人もいる。でも、鳩山、岡田といった、民主党の「いつもの顔」よりは、ずっといいではないか。しかし、河村さんは孤立しているようだ。こんなに思い切ったことが出来る人なのに。有能な人なのに…。国会議員では、700人の中の1人だ。いくら1人が言っても、変わらない。その点、地方自治体の首長ならば、1人の力で何でも出来る。そこで名古屋市長選に目を付けたのかもしれない。「それはありますね」と本人は言っていた。迂回して総理を狙うのかもしれない。
「この人は、大統領型の人なんですよ」と宮崎哲弥さんが言っていた。なるほどと思った。党内で賛同者を集め、派閥を作り、トップになって、それで総理に…というタイプではない。全国民に向かって、政策を訴えて、大統領になる。そういうタイプだという。じゃ、「首相公選制」になったら、河村総理が実現するかもしれない。
それにしても、名古屋市の公用車を廃止した、自らもバスで通っている。これは凄い。十台以上ある公用車は売り払うのだろう。市長が公用車で通勤しないのだから、その下の人間たちも、車には乗れない。バスや自転車で通っている。まあ、公用車は1台か2台置いて、外からお客さんが来た時に、出迎えたらいい。又、市長の給料は年間2400万円あったが、これを三分の一にする。800万円だ。これは又、思い切ったことを言った。誰だって、金は欲しい。これは当然の給料だ。だから、今まで誰も何も言わない。「もらえるもの」として当然視し、誰も疑問に思わない。
名古屋市民だってこのことを疑問に思わなかっただろう。「2400万円は少し高いかも知れないが、でも政治には金がかかるから」と、漠然と思っている。「でも、そんなことはありません。その思い込みが間違っている」と河村さん。
どこの議会だって、自分の給料を減らすことを言い出す人はいない。100万減らすことだって反対する。いや、1万円減らすことだって反対する。それにしても、奥さんは反対しなかったのか。あるいは後で聞いて、愕然としているのかもしれない。
又、天下りをした人に、「退職金を莫大にもらっているんだから、天下りはやめろ」と言う。「さらに仕事をしたいのなら、次はボランティアでやれ」と言っている。僕らだって、全く考えつかなかった発想だ。それに、天下った人間を呼びつけ、「高い退職金をもらったんだから、もう、天下るな。それがいやで、まだ仕事したいのなら、ボランティアでやれ」と言い渡したのだ。
それに、「こんなことをしてるのは日本だけです。外国ではありません」と河村さんは言う。「日本の常識は世界の非常識だ」と。
そうだったのか。これは知らんかった。
又、河村さんは「市民税10%減税」を言っている。これも「絶対に出来る」と断言していた。
「たかじん」で、河村氏と比較されて批判されたのは、千葉県知事選で当選した森田健作氏だ。「政党と縁の無い完全無所属」を掲げて知事選を戦いながら、実は「自民党東京都衆議院選挙区第2支部」の代表を務めていた。さらに、政治献金をこの政党支部で受け取り、そっくり政治家・森田健作の資金管理団体に流していた。それを見抜けなかった選管や千葉県民だって責任はあると思うが、どうも、後から後から、まずい話が出てくる。新たなパチンコのCR機「おれは男だ!」をめぐる“利権疑惑”まで出ていた。
河村氏と森田氏は、同じようにテレビで顔が売れた候補だ。しかし、全く違う。河村氏はいわゆる「タレント候補」とは全く別だ。人気だけ、顔が知られているだけで、「政治能力」のない、又、見識もない「タレント候補」とは違う。そのことを痛感させられた。
5月8日(金)収録の「たかじん」は、5月10日(日)放送だった。「たかじん」では、河村たかしさんの前のコーナーで、「新型インフルエンザ」のことをやっていた。新型インフルエンザの大流行を予言した外岡立人元小樽市保健所長がゲストで出た。私もよく分からなかったので、とても勉強になった。「60才以上の人には感染しない」という記事を読んだのでそのことを聞いた。同じようなインフルエンザが50年ほど前に流行し、それで免疫になったのだろうという。又、凄いのは、「マスクやうがいは役に立たない」と言う。そういえば、世界中でマスクをしているのは日本だけだ。他もすこしいるかな。ともかく日本だけが異常に多い。患者が、他の人に感染さないようにするなら少しは役立つが、健康な人が「予防」するのには全く役立たない、という。
もっと驚いたのは、「うがい」だ。全く役立たない。単なる気休めだという。その根拠に、世界中、どこを探しても、「うがい」しているのは日本人だけだ、という。そういわれればそうだ。
又、北芝健さんが「ビデオ出演」して、「二次被害」について語っていた。
「インフルエンザで声が…」と、声が変わっても説明がつく「インフルエンザ・オレオレ詐欺」が横行する。又、「タミフルありますよ」と、ニセ物を売る「タミフル詐欺」が横行するという。
さらに、翌週の5月17日(日)の「たかじん」にも私が出た。この日は、「裁判員制度スペシャル」だった。井上薫氏(元判事)、住田裕子さん(弁護士)、本村健太郎さん(弁護士)がゲスト。「裁判員制度賛成」の論拠も十分に聞くことが出来た。私は「反対」だが、運用次第では、今の裁判に新しい風を入れることが出来るのかも知れない。又、それを信じている人々がいる。これは貴重な発見だった。5月19日(火)発売の「SPA!」の座談会でも、北芝、石原氏らと、カレー事件について話したが、裁判員制度についても、かなり突っ込んで話をした。
⑨信濃毎日新聞(5月5日付)です。「愛国心について」の特集で、私も取材されました。この中で、大沢真幸さん(京大大学院教授)は、こう言ってます。
〈頑張っても報われないとか、何を選んでも社会に影響しないとかいう無力感が背景にある。国を愛することで、国に愛されたい、認められたいという気持ちの表れ〉
なるほど、と思いました。
この記事の中では、『資料で読む戦後日本と愛国心』(全3巻・日本図書センター)も紹介されている。これは、戦後の「愛国心」についての発言、書籍、記事の全てが載っている。私の本まで載っている。詳しい。私も全巻読んで勉強しようと思っている。
⑩雨宮処凛さんの『ロスジェネはこう生きてきた』(平凡社新書・720円)が出ました。いい本です。「右翼のボーッとしたオッサン」に会って右翼の世界を知ったそうです。その後、見沢知廉氏を知り、成田闘争のビデオを見せてもらい、左右の運動に興味を持ったといいます。
右翼の「ボーおじさん」との出会いは、こう書かれている。
〈サブカル系イベントに行った際には打ち上げで新右翼団体・一水会の鈴木邦男氏に会った。鈴木さんは、ぼーっとしたオジサンだった。鈴木さんのことは「ゴー宣」に載っていたので知っていた。私が生まれて初めて出会った「右翼」の人なわけだが、鈴木さんとの出会いによって「右翼の人は温厚でいい人」という世間の右翼イメージとはかなり違うだろう印象を持ったことが、のちの右翼団体入会に繋がったものだと思われる〉
「ボーおじさん」に会ったのが、よかったのか、悪かったのか。もし、「初めて会った右翼」が凶暴で、怒鳴りつけ、殴りつけられていたら、とても右翼には入らなかった。その方が、「マトモ」に生活をしてたかもしれない。でも、作家「雨宮処凛」は生まれなかったかもしれない。何が幸いするか分からない。
〈天皇制と民主主義は両立するのか。天皇制は民主主義の例外か。民主主義の欠陥を補うものか。あるいは、完全な民主主義実現のためには廃止すべきものか。天皇制を「休む」という選択肢も含めて危ないテーマについて考えてみる〉